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ダークブレット日本支部崩壊9
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デュランはそれを何食わぬ顔で皆に提案してくる。
彼に何らかの思惑があってのことか、それともただ単に安易な考えからそう提案しているのかは、本人である彼以外は分かり知れないことだ。
笑みを浮かべながら唸るメンバー達を見つめるデュランに、つまらなそうに話を聞いていたバロンが言葉を吐き捨てるように告げる。
「どちらにしても……俺様には関係ない。帰るぞフィリス!」
「ちょっと待てよバロン!」
メルディウスは戸惑い気味に声を掛けたが、彼は無言のままテントを出ると馬へと向かっていった。
フィリスもそんな兄の姿に苦笑いを浮かべながら一礼して紅蓮達に微笑えむと、歩き出したバロンの後を追いかける。
直後。張り詰めていた緊張が解けたのか、メルディウスはため息交じりに伸びをすると諦めたように口を開く。
「まっ、なるようにしかならねぇーかもな……とりあえず。ジジイが待ってんだ。始まりの街に行こうぜ! 紅蓮」
「ですが……」
デュランとの話の決着のついていない紅蓮が、文句を言いたげな顔でメルディウスを見た。すると、デュランも不敵な笑みを浮かべるて外へと歩いていってしまう。
怪訝そうな顔でそれを見ている紅蓮は、少しふてくされたように口を尖らせている。
彼女が不服なのは最もだ。紅蓮の性格からして、決める時はその場で決めてから次の行動をしたいという思いがある。
しかし、ここに居るメンバー達は皆が個性的と言えば聞こえがいいが、要するに自分勝手な者達ばかりで口を開けば喧嘩が始まる始末。
真面目な話をしていても、今の様に文句を言い合うばかりで全く決まらないのだ。
そんな紅蓮を残し「俺はあいつを見張ってないといけないから、先に行くぞ」とメルディウスがデュランの後を追ってテントを出ていく。
その場に残された紅蓮は更に不機嫌になり「本当に自分勝手な人達です」と毒づく。
そこにデイビッドと小虎がやって来た。
2人はお互いの固有スキルの話をしながら笑みを見せている。
「どうしたんだい? むっとして」
「……貴方には関係ありません。今は話し掛けないで下さい」
「ん? どうして……」
そう口にしようとしたデイビッドの手を隣りに居た小虎が咄嗟に引くと耳元でささやく。
「――ダメだよ。こういう時の姉さんは刺激したら」
「どうして、紅蓮ちゃんを怒らせるとそんなに怖いのか? 大人しくて可愛い子なの――」
デイビッドが「可愛い」と口にした直後、彼の目の前を一本のナイフが横切る。
小虎とデイビッドがその方向を恐る恐る振り向くと、殺気立った紅蓮がナイフを手にこちらを鋭く睨んでいる。
「今のは手が滑りましたが……次に可愛いといえば。その首から先が無くなりますよ?」
「「……コクコク」」
2人は顔を青ざめさせたまま、何度も無言で頷いた。
それを見てナイフを仕舞うと紅蓮は「以後、気を付けてください」と小さく呟きテントの中を去っていく。
彼女の後姿を見送ると、ほっと胸を撫で下ろしたデイビッドが小虎に尋ねた。
「――あの子って褒められるの嫌いなのかい?」
「ううん。姉さんはああ見えてリアルでは大学生だから、可愛いじゃなくて綺麗って言わないとダメなんだよ。姉さんに『可愛いとちっちゃい』はNGワードなんだよ」
「あの容姿で大学生!? じょ、冗談だろ? 小虎く――」
驚きのあまり大きな声が出てしまった為、話していた内容は外にいた紅蓮の耳にも届いたのだろう。
テントの幕を破り突き破り、高速で飛んで来たナイフがデイビッドの鎧に当たり火花を散らす。
その破れた部分から見え隠れする先では、2人に殺意を含んだ睨みを効かせる紅蓮の姿があった。
2人はそっとテントを抜けると、紅蓮の目の届かないところへと慌てて逃げていく。
その姿を見て紅蓮は「仕方ない人達ですね」とため息を漏らすと、口元に微かな笑みを浮かべている。
「よう。楽しんでるな紅蓮」
するとそこに、デュランの様子を見にいっていたメルディウスが戻ってきた。
彼の言葉に、すぐに表情を戻した紅蓮が不機嫌そうにそっぽを向く。
「……楽しんでなんていません。それより、どうするんです? このままだと話し合いにもならないですし。揉め事が起きるのは目に見えてますよ?」
「まあ、そうなんだがな。こうなる事は古い付き合いだし分かってたことだろう? 最後は俺達でなんとかしようぜ!」
楽観的と言わざるを得ない言動をしたメルディウスは、自信満々に親指を立てて微笑んだ。
だが、今の紅蓮にはそれほど楽観視できない。
どんな人間であっても目の前で人が消えて行く姿を見るのは心苦しく感じるものだ。できることなら、死人を出さずに――いや、自分の目の前では決して死人を出させないと紅蓮は心に誓った。
目の前で微笑んでいる彼に、紅蓮はむすっとしながら視線を逸らすと。
「そうですね。そうなったらメルディウスにお任せします」
っと、素っ気なく答えた。
「ちょっと待て! じょ、冗談だよな、紅蓮……」
「……私は冗談は嫌いです」
「本気なのかよ!」
「さあ、どうでしょうね……」
返答を聞いて急に慌て出したメルディウスに、そっぽを向いたままの紅蓮は微かに笑みを浮かべた。
マスター達と合流する始まりの街は、ダークブレットの基地から歩いて4日ほどに場所にある。しかし、この人数を移動させるとなると、ウォーレスト山脈の細い山道を抜けるのに、おそらく2日ほど掛かると予想し始まりの街に着くのはだいたい6日ほどと言ったところだろう。
太陽があまり高くならないうちにメルディウス達は馬に跨り出発した。
* * *
彼に何らかの思惑があってのことか、それともただ単に安易な考えからそう提案しているのかは、本人である彼以外は分かり知れないことだ。
笑みを浮かべながら唸るメンバー達を見つめるデュランに、つまらなそうに話を聞いていたバロンが言葉を吐き捨てるように告げる。
「どちらにしても……俺様には関係ない。帰るぞフィリス!」
「ちょっと待てよバロン!」
メルディウスは戸惑い気味に声を掛けたが、彼は無言のままテントを出ると馬へと向かっていった。
フィリスもそんな兄の姿に苦笑いを浮かべながら一礼して紅蓮達に微笑えむと、歩き出したバロンの後を追いかける。
直後。張り詰めていた緊張が解けたのか、メルディウスはため息交じりに伸びをすると諦めたように口を開く。
「まっ、なるようにしかならねぇーかもな……とりあえず。ジジイが待ってんだ。始まりの街に行こうぜ! 紅蓮」
「ですが……」
デュランとの話の決着のついていない紅蓮が、文句を言いたげな顔でメルディウスを見た。すると、デュランも不敵な笑みを浮かべるて外へと歩いていってしまう。
怪訝そうな顔でそれを見ている紅蓮は、少しふてくされたように口を尖らせている。
彼女が不服なのは最もだ。紅蓮の性格からして、決める時はその場で決めてから次の行動をしたいという思いがある。
しかし、ここに居るメンバー達は皆が個性的と言えば聞こえがいいが、要するに自分勝手な者達ばかりで口を開けば喧嘩が始まる始末。
真面目な話をしていても、今の様に文句を言い合うばかりで全く決まらないのだ。
そんな紅蓮を残し「俺はあいつを見張ってないといけないから、先に行くぞ」とメルディウスがデュランの後を追ってテントを出ていく。
その場に残された紅蓮は更に不機嫌になり「本当に自分勝手な人達です」と毒づく。
そこにデイビッドと小虎がやって来た。
2人はお互いの固有スキルの話をしながら笑みを見せている。
「どうしたんだい? むっとして」
「……貴方には関係ありません。今は話し掛けないで下さい」
「ん? どうして……」
そう口にしようとしたデイビッドの手を隣りに居た小虎が咄嗟に引くと耳元でささやく。
「――ダメだよ。こういう時の姉さんは刺激したら」
「どうして、紅蓮ちゃんを怒らせるとそんなに怖いのか? 大人しくて可愛い子なの――」
デイビッドが「可愛い」と口にした直後、彼の目の前を一本のナイフが横切る。
小虎とデイビッドがその方向を恐る恐る振り向くと、殺気立った紅蓮がナイフを手にこちらを鋭く睨んでいる。
「今のは手が滑りましたが……次に可愛いといえば。その首から先が無くなりますよ?」
「「……コクコク」」
2人は顔を青ざめさせたまま、何度も無言で頷いた。
それを見てナイフを仕舞うと紅蓮は「以後、気を付けてください」と小さく呟きテントの中を去っていく。
彼女の後姿を見送ると、ほっと胸を撫で下ろしたデイビッドが小虎に尋ねた。
「――あの子って褒められるの嫌いなのかい?」
「ううん。姉さんはああ見えてリアルでは大学生だから、可愛いじゃなくて綺麗って言わないとダメなんだよ。姉さんに『可愛いとちっちゃい』はNGワードなんだよ」
「あの容姿で大学生!? じょ、冗談だろ? 小虎く――」
驚きのあまり大きな声が出てしまった為、話していた内容は外にいた紅蓮の耳にも届いたのだろう。
テントの幕を破り突き破り、高速で飛んで来たナイフがデイビッドの鎧に当たり火花を散らす。
その破れた部分から見え隠れする先では、2人に殺意を含んだ睨みを効かせる紅蓮の姿があった。
2人はそっとテントを抜けると、紅蓮の目の届かないところへと慌てて逃げていく。
その姿を見て紅蓮は「仕方ない人達ですね」とため息を漏らすと、口元に微かな笑みを浮かべている。
「よう。楽しんでるな紅蓮」
するとそこに、デュランの様子を見にいっていたメルディウスが戻ってきた。
彼の言葉に、すぐに表情を戻した紅蓮が不機嫌そうにそっぽを向く。
「……楽しんでなんていません。それより、どうするんです? このままだと話し合いにもならないですし。揉め事が起きるのは目に見えてますよ?」
「まあ、そうなんだがな。こうなる事は古い付き合いだし分かってたことだろう? 最後は俺達でなんとかしようぜ!」
楽観的と言わざるを得ない言動をしたメルディウスは、自信満々に親指を立てて微笑んだ。
だが、今の紅蓮にはそれほど楽観視できない。
どんな人間であっても目の前で人が消えて行く姿を見るのは心苦しく感じるものだ。できることなら、死人を出さずに――いや、自分の目の前では決して死人を出させないと紅蓮は心に誓った。
目の前で微笑んでいる彼に、紅蓮はむすっとしながら視線を逸らすと。
「そうですね。そうなったらメルディウスにお任せします」
っと、素っ気なく答えた。
「ちょっと待て! じょ、冗談だよな、紅蓮……」
「……私は冗談は嫌いです」
「本気なのかよ!」
「さあ、どうでしょうね……」
返答を聞いて急に慌て出したメルディウスに、そっぽを向いたままの紅蓮は微かに笑みを浮かべた。
マスター達と合流する始まりの街は、ダークブレットの基地から歩いて4日ほどに場所にある。しかし、この人数を移動させるとなると、ウォーレスト山脈の細い山道を抜けるのに、おそらく2日ほど掛かると予想し始まりの街に着くのはだいたい6日ほどと言ったところだろう。
太陽があまり高くならないうちにメルディウス達は馬に跨り出発した。
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