342 / 586
ダークブレット日本支部崩壊2
しおりを挟む
男は突然動き出したディーノに驚き、目を丸く見開いている。
「ど、どうしてだ……まだ視界が戻るまで、僅かではあるがタイムラグがあるはずだ……」
「……君は頭が悪いね。その視界を潰す武器スキルは直視しなければ効果はない。っということはだ……片目を瞑っていれば2回までは、そのスキルに対応できるということさ」
ディーノは不敵な笑みを浮かべそう言い放つと、男に片目を瞑って見せた。
そう。あの瞬間に目を押さえたのは光を遮る為ではなく、ディーノが片目しか開けていなかったことを隠す為だったのだ。
男はそれを見て呆然としていると、その体がキラキラと光りに変わり出す。
キラキラとした光の粒が男の体を徐々に離れ天へと昇っていく、感慨深げに光りへと変わる自分の手の平を見つめ男が徐ろに口を開いた。
「――俺もここまでだな……この武器はお前の物だ……」
「…………」
無言のまま男を見つめるディーノに、彼はアイテムから『イザナギの剣』を渡した。
その後、感慨深げにゆっくりと天を見上げながら呟く。
「俺とお前は、同じ夢を見ていたはずなのにな……どこで間違えたのか、俺は悪党の親玉……お前は夢を叶えて、今はその先を見ている。従兄弟同士でえらい違いだな……」
徐々に消えていく男を、唇を噛み締めながら見つめるディーノ。
男はそんなディーノの方を見て優しくと微笑みを浮かべた。
「……俺のようになるなよ……健二」
「ああ、お前も向こうに行ったら、彼女に……雛によろしく言っててくれ……」
「……分かった。お前は俺達の分も頑張ってくれよ!」
「ああ」
最後に男の手を強く握ると、彼は光となって姿を消した。
彼が居なくなったにも関わらず、彼のいた場所から感傷に浸る様に瞼を閉じて、その場にひざまずいたままのディーノが震える声で小さく呟く。
「…………バカ野郎」
彼の瞳には、微かにだが涙が浮かんでいた。
戦闘を終えて、城の前で待機していたメルディウスのもとに、黒い騎兵隊を引き連れたバロンがやってくるのが見えた。
メルディウスはその姿を無事な姿を見て安堵のため息を漏らす。
「はぁー。どうやら、あっちも片付いたようだな」
「おーい」
その隣に居た小虎が、笑顔で彼等の方へと駆けていった。
そこには黒い馬に跨ったバロンの背中に乗ったフィリスが満面の笑みで手を振り返した。
「お姉さん。大丈夫だった?」
「もちろん! お兄ちゃんも一緒だし。と言うか、特になにもなさすぎて退屈してたくらいかな?」
「はぁー、全く。お前達は緊張感ってものがなくて困るくらいだ」
笑顔で話している2人に、バロンが大きくため息をついて額を押さえている。
馬から降りたバロンは、楽しそうに話している2人をその場に残し、バロンが困った顔をしているメルディウスの元に歩いてきた。
メルディウスはそんなバロンを横目でちらっと見ると、すぐに視線を前に戻した。
お互いに視線を合わせることもなく前を向いて、しばらく無言のまま並んで立っていると、バロンが徐ろに口を開く。
「――敵を制圧したのはいいが、こいつらどうする?」
「さて、どうするかな。とりあえず抵抗する様子もないし。このままでいいんじゃねぇーか?」
「そうだな」
短い会話を終えた2人は、前を向いたまま同時に大きなため息を吐く。
その目の前には、多くの敵の兵士達の列が隣の者と肩と肩がぶつかりそうなほどに、まさに寿司詰め状態と言った感じにどこまでも続いていた。すると、城の中から白いマントをはためかせた白銀の鎧の男が現れた。
悠々と歩いてきた彼のその手には『イザナギの剣』が握られている。
ダークブレットのメンバー達の視線がその男に集まる中、彼はそれを高らかに掲げると大声で彼等に向かって叫んだ。
「お前達の大将はこの俺が倒した! 人から盗んだ武器を全て俺に渡せ。そうすれば、命までは取らない事を約束しよう! そして、この後は俺がお前達を仕切るようにお前らのボスに言われた! 従わぬ者はこの剣で斬り伏せる!!」
それを聞いた者達からは、ため息と怒号が飛び交う。しかし、その反応も最もだろう。リーダーを倒されて急に『俺に従え』と言われたところで、到底歓迎のできる話ではない。しかも、今までプレイヤー達から奪ってきた武具を寄こせと言うのだ。
彼等からしてみれば、たとえそれが他人の物を奪ったとしても、苦労して手に入れた戦利品だ――それをどこの誰とも知らない者に、無条件に奪われるのを容認できるはずがない。
飛び交う怒号の中、鋭い視線で辺りを威圧した彼が、手に持っていた『イザナギの剣の柄を地面に数回打ち付ける。すると、今まで声を上げていたダークブレットのメンバーが嘘の様に静まり返った。
だが、どんなに否定しようが自分達の大将の持っていた武器を、目の前の男が持っているのは事実。
その事実がある以上。誰も大将が敗れたということを、完全に否定することはできない。
それを証明するように、その場に居たダークブレットの人間は誰一人として異を唱える者はいなかった。
いや、異を唱えられないと言った方が正しいかもしれない。何故なら、ディーノの手に握られている武器には、それだけの力が秘められていたことはここにいる誰もが知っている事実なのだから……。
それからは思っていた以上に早く収拾がついた。
誰よりも安堵したのはメルディウスとバロンだ。いくら大人しくなっているとはいえ、敵は強奪や殺人などを平気で行うギルドのメンバー達――恐怖だけで抑えつけるのには限界がある。
「ど、どうしてだ……まだ視界が戻るまで、僅かではあるがタイムラグがあるはずだ……」
「……君は頭が悪いね。その視界を潰す武器スキルは直視しなければ効果はない。っということはだ……片目を瞑っていれば2回までは、そのスキルに対応できるということさ」
ディーノは不敵な笑みを浮かべそう言い放つと、男に片目を瞑って見せた。
そう。あの瞬間に目を押さえたのは光を遮る為ではなく、ディーノが片目しか開けていなかったことを隠す為だったのだ。
男はそれを見て呆然としていると、その体がキラキラと光りに変わり出す。
キラキラとした光の粒が男の体を徐々に離れ天へと昇っていく、感慨深げに光りへと変わる自分の手の平を見つめ男が徐ろに口を開いた。
「――俺もここまでだな……この武器はお前の物だ……」
「…………」
無言のまま男を見つめるディーノに、彼はアイテムから『イザナギの剣』を渡した。
その後、感慨深げにゆっくりと天を見上げながら呟く。
「俺とお前は、同じ夢を見ていたはずなのにな……どこで間違えたのか、俺は悪党の親玉……お前は夢を叶えて、今はその先を見ている。従兄弟同士でえらい違いだな……」
徐々に消えていく男を、唇を噛み締めながら見つめるディーノ。
男はそんなディーノの方を見て優しくと微笑みを浮かべた。
「……俺のようになるなよ……健二」
「ああ、お前も向こうに行ったら、彼女に……雛によろしく言っててくれ……」
「……分かった。お前は俺達の分も頑張ってくれよ!」
「ああ」
最後に男の手を強く握ると、彼は光となって姿を消した。
彼が居なくなったにも関わらず、彼のいた場所から感傷に浸る様に瞼を閉じて、その場にひざまずいたままのディーノが震える声で小さく呟く。
「…………バカ野郎」
彼の瞳には、微かにだが涙が浮かんでいた。
戦闘を終えて、城の前で待機していたメルディウスのもとに、黒い騎兵隊を引き連れたバロンがやってくるのが見えた。
メルディウスはその姿を無事な姿を見て安堵のため息を漏らす。
「はぁー。どうやら、あっちも片付いたようだな」
「おーい」
その隣に居た小虎が、笑顔で彼等の方へと駆けていった。
そこには黒い馬に跨ったバロンの背中に乗ったフィリスが満面の笑みで手を振り返した。
「お姉さん。大丈夫だった?」
「もちろん! お兄ちゃんも一緒だし。と言うか、特になにもなさすぎて退屈してたくらいかな?」
「はぁー、全く。お前達は緊張感ってものがなくて困るくらいだ」
笑顔で話している2人に、バロンが大きくため息をついて額を押さえている。
馬から降りたバロンは、楽しそうに話している2人をその場に残し、バロンが困った顔をしているメルディウスの元に歩いてきた。
メルディウスはそんなバロンを横目でちらっと見ると、すぐに視線を前に戻した。
お互いに視線を合わせることもなく前を向いて、しばらく無言のまま並んで立っていると、バロンが徐ろに口を開く。
「――敵を制圧したのはいいが、こいつらどうする?」
「さて、どうするかな。とりあえず抵抗する様子もないし。このままでいいんじゃねぇーか?」
「そうだな」
短い会話を終えた2人は、前を向いたまま同時に大きなため息を吐く。
その目の前には、多くの敵の兵士達の列が隣の者と肩と肩がぶつかりそうなほどに、まさに寿司詰め状態と言った感じにどこまでも続いていた。すると、城の中から白いマントをはためかせた白銀の鎧の男が現れた。
悠々と歩いてきた彼のその手には『イザナギの剣』が握られている。
ダークブレットのメンバー達の視線がその男に集まる中、彼はそれを高らかに掲げると大声で彼等に向かって叫んだ。
「お前達の大将はこの俺が倒した! 人から盗んだ武器を全て俺に渡せ。そうすれば、命までは取らない事を約束しよう! そして、この後は俺がお前達を仕切るようにお前らのボスに言われた! 従わぬ者はこの剣で斬り伏せる!!」
それを聞いた者達からは、ため息と怒号が飛び交う。しかし、その反応も最もだろう。リーダーを倒されて急に『俺に従え』と言われたところで、到底歓迎のできる話ではない。しかも、今までプレイヤー達から奪ってきた武具を寄こせと言うのだ。
彼等からしてみれば、たとえそれが他人の物を奪ったとしても、苦労して手に入れた戦利品だ――それをどこの誰とも知らない者に、無条件に奪われるのを容認できるはずがない。
飛び交う怒号の中、鋭い視線で辺りを威圧した彼が、手に持っていた『イザナギの剣の柄を地面に数回打ち付ける。すると、今まで声を上げていたダークブレットのメンバーが嘘の様に静まり返った。
だが、どんなに否定しようが自分達の大将の持っていた武器を、目の前の男が持っているのは事実。
その事実がある以上。誰も大将が敗れたということを、完全に否定することはできない。
それを証明するように、その場に居たダークブレットの人間は誰一人として異を唱える者はいなかった。
いや、異を唱えられないと言った方が正しいかもしれない。何故なら、ディーノの手に握られている武器には、それだけの力が秘められていたことはここにいる誰もが知っている事実なのだから……。
それからは思っていた以上に早く収拾がついた。
誰よりも安堵したのはメルディウスとバロンだ。いくら大人しくなっているとはいえ、敵は強奪や殺人などを平気で行うギルドのメンバー達――恐怖だけで抑えつけるのには限界がある。
5
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる