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敵城の主10
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エリエは驚きその矢が飛んできた方向に目を向ける。するとそこには、弓を持ったライラの姿があった。
その直後、星の体はゆっくりとエリエの体の方へと倒れた。
「……星!?」
エリエが星の体を受け止めると、星はすやすやと気持ち良さそうに寝息を立てていた。星の小さな体を抱きながら、困惑した表情でライラを見つめるエリエ。
ライラは弓を装備欄から外すと、今にも泣き出しそうになっているエリエに声を掛ける。
「エリエ、ごめんなさい。その子を助けた時には、もう間に合わなかったみたいで……」
「――間に合わなかったって……?」
ライラは涙を流しながら自分を見上げるエリエに申し訳無さそうに呟くと、アイテムの中から空になったガラス製の注射針付きの器具を取り出してそれをあからさまにエリエに見せた。
エリエは困惑した表情で、その器具を見つめる。
「これはその子に投与したものよ。でも中身は私の今の雇い主が作成した薬で、効果はその子の固有スキルの最終調整用の薬だった……」
ライラの言葉の意味が理解できずに首を傾げるエリエ。
そんな彼女の手を取ってぎゅっと握ると、エリエは瞳を潤ませながら顔を真っ赤に染めている。
「エリエ。あなたとその子を私の雇い主の元に連れて行くわ」
「……うん」
エリエは小さく頷くと、3人はその場から一瞬で姿を消した。
一瞬真っ白になったエリエの視界に飛び込んできたのは、さっき居たはずの部屋ではなく、どこかの機関の研究室の様な場所だった。
部屋の壁には大きなモニターがあり、その下には操作盤や機材が数多く並んでいる。
至る場所に触ってはいけないと思われるコードや様々な配色の配線が繋がれた機械が設置されてもいた。
辺りを見渡したエリエが、横に居たライラに尋ねた。
「……ライ姉。ここは?」
「…………」
ライラはその質問に答えることなく、無言のまま部屋に付いている大きなモニターへと向かう。
慣れた手つきで操作盤を操ると、モニターに『X』という大きな文字が表示された。
「ミスター。予定通り彼女への投薬は完了し。能力の発動を確認。しかし、相手方に何か薬品を投与されたらしく、彼女の記憶が……」
淡々と状況を報告していたライラの表情が曇る。
それ以上言葉を続けられなくなったライラに向かって、画面から柔らかい声音の男性の声が聞こえてきた。
「そうか……いや、ご苦労だったね。後は私に任せなさい」
「はい」
その優しい声音で、悪い人間ではないということはエリエも直感的に感じ取っていた。
だが、悪い人間ではないからと言って初対面のしかも顔すら見せない人物に心を許せるはずもなく。
「――ライラ君。星ちゃんをカプセルに移動させてくれるかな? 後はこちらで調べてみる」
その言葉の直後、地面が開きそこから緑色のカプセルがゆっくりと現れた。
カプセルの周りにも何やらたくさんのコードやモニターなどの機器がカプセルにまとわり付くようにして並んでいる。
ライラはエリエの元に戻ってくると、星をそのカプセルに入れるように促すのだが、エリエは警戒しているのか、星を強く抱きしめたままその場に座り込んで、一向に離れようとしない。
困ったようにため息を漏らすライラに、再びモニターから声が発せられた。
「初めて見るものだ。警戒するのも無理はないよ。ライラ君、論より証拠だ。まずは君が入ってくれ」
「えっ? ええ、分かりました」
ライラはカプセルの前にいくと、反応したカプセルが音を立てて開く。
全く躊躇することなく。ライラはそのカプセルの中に入ると、カプセルの扉がゆっくりと閉まる。
そして横に備え付けられた小さなモニターがピピッと音を立てて起動する。すると、今度は大きなモニターの方にライラの体のデータが次々に表示されていく。
身長や体重などの3サイズは勿論。他にも英語と数字が多く表示されている。
それから少ししてカプセルが開き、中から何事もなかったように、星を抱きかかえたライラが出てきた。
「ほら、大丈夫よ。ただゲーム内の体のシステムを見るだけだから」
「うん。それなら」
エリエは微笑んでいるライラに、抱きかかえていた眠っている星を引き渡す。
システムの筋力補正がある為、その数値によって人の体くらいはある程度のレベルを超えれば、子供の星でも大人を抱きかかえることができるのだ。
人体といえどこの世界ではデータで構成された物に過ぎない。つまり、その重量の数値は公平を期する為に一定値で固定されている。
男女構わず筋力値が一緒なのと同じである。もちろん、レベル制のゲームである以上は、キャラクターのレベルが高い者が有利になるのは致し方ないのだが……。
その直後、星の体はゆっくりとエリエの体の方へと倒れた。
「……星!?」
エリエが星の体を受け止めると、星はすやすやと気持ち良さそうに寝息を立てていた。星の小さな体を抱きながら、困惑した表情でライラを見つめるエリエ。
ライラは弓を装備欄から外すと、今にも泣き出しそうになっているエリエに声を掛ける。
「エリエ、ごめんなさい。その子を助けた時には、もう間に合わなかったみたいで……」
「――間に合わなかったって……?」
ライラは涙を流しながら自分を見上げるエリエに申し訳無さそうに呟くと、アイテムの中から空になったガラス製の注射針付きの器具を取り出してそれをあからさまにエリエに見せた。
エリエは困惑した表情で、その器具を見つめる。
「これはその子に投与したものよ。でも中身は私の今の雇い主が作成した薬で、効果はその子の固有スキルの最終調整用の薬だった……」
ライラの言葉の意味が理解できずに首を傾げるエリエ。
そんな彼女の手を取ってぎゅっと握ると、エリエは瞳を潤ませながら顔を真っ赤に染めている。
「エリエ。あなたとその子を私の雇い主の元に連れて行くわ」
「……うん」
エリエは小さく頷くと、3人はその場から一瞬で姿を消した。
一瞬真っ白になったエリエの視界に飛び込んできたのは、さっき居たはずの部屋ではなく、どこかの機関の研究室の様な場所だった。
部屋の壁には大きなモニターがあり、その下には操作盤や機材が数多く並んでいる。
至る場所に触ってはいけないと思われるコードや様々な配色の配線が繋がれた機械が設置されてもいた。
辺りを見渡したエリエが、横に居たライラに尋ねた。
「……ライ姉。ここは?」
「…………」
ライラはその質問に答えることなく、無言のまま部屋に付いている大きなモニターへと向かう。
慣れた手つきで操作盤を操ると、モニターに『X』という大きな文字が表示された。
「ミスター。予定通り彼女への投薬は完了し。能力の発動を確認。しかし、相手方に何か薬品を投与されたらしく、彼女の記憶が……」
淡々と状況を報告していたライラの表情が曇る。
それ以上言葉を続けられなくなったライラに向かって、画面から柔らかい声音の男性の声が聞こえてきた。
「そうか……いや、ご苦労だったね。後は私に任せなさい」
「はい」
その優しい声音で、悪い人間ではないということはエリエも直感的に感じ取っていた。
だが、悪い人間ではないからと言って初対面のしかも顔すら見せない人物に心を許せるはずもなく。
「――ライラ君。星ちゃんをカプセルに移動させてくれるかな? 後はこちらで調べてみる」
その言葉の直後、地面が開きそこから緑色のカプセルがゆっくりと現れた。
カプセルの周りにも何やらたくさんのコードやモニターなどの機器がカプセルにまとわり付くようにして並んでいる。
ライラはエリエの元に戻ってくると、星をそのカプセルに入れるように促すのだが、エリエは警戒しているのか、星を強く抱きしめたままその場に座り込んで、一向に離れようとしない。
困ったようにため息を漏らすライラに、再びモニターから声が発せられた。
「初めて見るものだ。警戒するのも無理はないよ。ライラ君、論より証拠だ。まずは君が入ってくれ」
「えっ? ええ、分かりました」
ライラはカプセルの前にいくと、反応したカプセルが音を立てて開く。
全く躊躇することなく。ライラはそのカプセルの中に入ると、カプセルの扉がゆっくりと閉まる。
そして横に備え付けられた小さなモニターがピピッと音を立てて起動する。すると、今度は大きなモニターの方にライラの体のデータが次々に表示されていく。
身長や体重などの3サイズは勿論。他にも英語と数字が多く表示されている。
それから少ししてカプセルが開き、中から何事もなかったように、星を抱きかかえたライラが出てきた。
「ほら、大丈夫よ。ただゲーム内の体のシステムを見るだけだから」
「うん。それなら」
エリエは微笑んでいるライラに、抱きかかえていた眠っている星を引き渡す。
システムの筋力補正がある為、その数値によって人の体くらいはある程度のレベルを超えれば、子供の星でも大人を抱きかかえることができるのだ。
人体といえどこの世界ではデータで構成された物に過ぎない。つまり、その重量の数値は公平を期する為に一定値で固定されている。
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