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敵城の主6
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また、強力な武器スキルを持った『イザナギの剣』もある為、まともな戦闘はエリエとのこの戦いが初なのかもしれない。
彼女のたぐいまれなる戦闘センスに男も動揺を隠しきれない。もしエリエが視界が良好な状態ならば、すでに決着がついているかもしれないが、この視力を封じされた絶望的な状態で戦えるのは、それだけ彼女の中で星の存在が大きいということだろう。
男の表情からは明らかに焦りが見え始めてきていた。
それもそうだろう。この場所ではHPの回復ができない。また、男の『イザナギの剣』は武器スキルが7つあるのだが、一つ一つの破壊力が絶大な為、敵に異常状態をかけてる状態では他のスキルは使用できない。つまり、今は武器スキル『創世の輝き』しか使えないということだ。
しかも、他の武器スキルを使用する為には、今掛けているスキルを解除する必要があり。押されている今の状況でそれはあまりにリスクが高過ぎる。
彼が他の武器スキルに変更しない理由は、今の状況ならエリエはまだ感覚だけで攻撃している状態で体に当たっても致命傷とまではいかないと判断しているからだろう。
気配で戦っているだけなのだから、彼の体の部位は見えていない。つまりは、弱点と呼べる致命的な場所は意図的には狙えない。
その証拠に、攻撃も時折掠れる程度でHPバーはたいして減ってはいない。だが、エリエは男の挑発に乗り、敵を全力で叩きのめそうと結構な気迫で押し続けている。
このままではエリエの方が、最小限の動きで回避している男よりも体力が消耗するのが目に見えていた。持久戦に持ち込まれれば、スタミナという点で、間違いなくエリエに勝ち目はないだろう……。
* * *
エリエが救出の為に懸命に戦っている最中……。
地下室の研究室。モニター越しに覆面の男に投与された薬の影響で荒い息を繰り返しながら、星はエリエの戦いを見つめていた。
もはや意識だけではなく記憶も曖昧になりつつある星は、覆面の男の居ない内に何とか逃げ出そうともがいていた。
投与された薬は記憶を消去するものだと、覆面の男は言っていた気がする。ならば、このままでは今までの楽しい仲間達との思い出まで全て消されてしまう。
逸早くこの拘束を解いて、解除用の薬を投与して貰わなければいけない。幸い星の持っていたエクスカリバーは、モニターの横にある配線の大量に付いた分析用のケースの中に入っている。
星のことを子供だと思って甘く見ているであろう覆面の男になら、拘束を解いて剣をこの手に取り戻せば、まだ形勢を逆転する可能性はある。
だが、拘束を解こうともがけばもがくほど、息苦しさから息が荒くなり、体から力が抜けていくのを感じた。
「はぁ……はぁ……だめだ。もう、どうしようもないのかな……?」
瞳を涙で潤ませながら、天井を見上げ弱気になっている星の横に突如として女性が現れた。
ウェーブのかかった肩までの茶髪に茶色い瞳の彼女は、歳はエミルより上だろうか、とてもスタイルが良く。まるでモデルの様な体型で、胸元の開いた全体的に少し露出度の高い革鎧を着ていた。
「ふふふっ、大成功ね。さすが博士♪」
星の目の前に現れた女性は微笑みを浮かべると、首に付けたネックレスのルビーの様な赤い宝石を白くて細い指で撫でた。
少女は星の元へと歩み寄ると、にっこりと微笑み星の汗が滲むおでこを撫でる。
敵か味方かも分からない謎の女性に、拘束されている星はただただ怯えた瞳を向けるしかできない。
「あら、怖がらなくていいのよ? 私はあなたを助けに来たんだから、それにあなたは知らないかもだけど、私があなたを助けるのはこれで2回目なのよ?」
「――助けに……? ……2回目?」
意識が朦朧とする中、その言葉の意味が星には全くと言っていいほど理解できてはいなかった。しかし、そんな星を余所に彼女は星の首筋に手を伸ばす。
急に伸びてきた腕に怯えながら、びくっと震える星の耳元で少女がささやく。
「……まあ、論より証拠よね」
星に触れている少女の手が光った瞬間、星の体は台の上から彼女の胸の前に移動していた。
次の瞬間。星の顔には少女の胸が押し付けられていた。それもおそらく彼女が故意に押し付けている。その柔らかく暖かい感覚に、星は頬を赤らめると困惑した表情で女性の顔を見上げた。
彼女は微笑むと、簡単に自己紹介を始めた。
「私はライラ。ある組織から、あなたを救出するように言われたの……って言っても、今のあなたでは理解できないかもね。とりあえず、その症状を抑えましょうか?」
「はぁ……はぁ……は、はい……」
突如現れた少女に星はわらをも縋る思いで小さく頷いた。
彼女を本当に信用できるかはまだ分からないが、少なくとも台から解き放ってくれたことは事実だったし、何よりも今の星はこの苦しみから少しでも解放されたいという気持ちが強かった。
彼女のたぐいまれなる戦闘センスに男も動揺を隠しきれない。もしエリエが視界が良好な状態ならば、すでに決着がついているかもしれないが、この視力を封じされた絶望的な状態で戦えるのは、それだけ彼女の中で星の存在が大きいということだろう。
男の表情からは明らかに焦りが見え始めてきていた。
それもそうだろう。この場所ではHPの回復ができない。また、男の『イザナギの剣』は武器スキルが7つあるのだが、一つ一つの破壊力が絶大な為、敵に異常状態をかけてる状態では他のスキルは使用できない。つまり、今は武器スキル『創世の輝き』しか使えないということだ。
しかも、他の武器スキルを使用する為には、今掛けているスキルを解除する必要があり。押されている今の状況でそれはあまりにリスクが高過ぎる。
彼が他の武器スキルに変更しない理由は、今の状況ならエリエはまだ感覚だけで攻撃している状態で体に当たっても致命傷とまではいかないと判断しているからだろう。
気配で戦っているだけなのだから、彼の体の部位は見えていない。つまりは、弱点と呼べる致命的な場所は意図的には狙えない。
その証拠に、攻撃も時折掠れる程度でHPバーはたいして減ってはいない。だが、エリエは男の挑発に乗り、敵を全力で叩きのめそうと結構な気迫で押し続けている。
このままではエリエの方が、最小限の動きで回避している男よりも体力が消耗するのが目に見えていた。持久戦に持ち込まれれば、スタミナという点で、間違いなくエリエに勝ち目はないだろう……。
* * *
エリエが救出の為に懸命に戦っている最中……。
地下室の研究室。モニター越しに覆面の男に投与された薬の影響で荒い息を繰り返しながら、星はエリエの戦いを見つめていた。
もはや意識だけではなく記憶も曖昧になりつつある星は、覆面の男の居ない内に何とか逃げ出そうともがいていた。
投与された薬は記憶を消去するものだと、覆面の男は言っていた気がする。ならば、このままでは今までの楽しい仲間達との思い出まで全て消されてしまう。
逸早くこの拘束を解いて、解除用の薬を投与して貰わなければいけない。幸い星の持っていたエクスカリバーは、モニターの横にある配線の大量に付いた分析用のケースの中に入っている。
星のことを子供だと思って甘く見ているであろう覆面の男になら、拘束を解いて剣をこの手に取り戻せば、まだ形勢を逆転する可能性はある。
だが、拘束を解こうともがけばもがくほど、息苦しさから息が荒くなり、体から力が抜けていくのを感じた。
「はぁ……はぁ……だめだ。もう、どうしようもないのかな……?」
瞳を涙で潤ませながら、天井を見上げ弱気になっている星の横に突如として女性が現れた。
ウェーブのかかった肩までの茶髪に茶色い瞳の彼女は、歳はエミルより上だろうか、とてもスタイルが良く。まるでモデルの様な体型で、胸元の開いた全体的に少し露出度の高い革鎧を着ていた。
「ふふふっ、大成功ね。さすが博士♪」
星の目の前に現れた女性は微笑みを浮かべると、首に付けたネックレスのルビーの様な赤い宝石を白くて細い指で撫でた。
少女は星の元へと歩み寄ると、にっこりと微笑み星の汗が滲むおでこを撫でる。
敵か味方かも分からない謎の女性に、拘束されている星はただただ怯えた瞳を向けるしかできない。
「あら、怖がらなくていいのよ? 私はあなたを助けに来たんだから、それにあなたは知らないかもだけど、私があなたを助けるのはこれで2回目なのよ?」
「――助けに……? ……2回目?」
意識が朦朧とする中、その言葉の意味が星には全くと言っていいほど理解できてはいなかった。しかし、そんな星を余所に彼女は星の首筋に手を伸ばす。
急に伸びてきた腕に怯えながら、びくっと震える星の耳元で少女がささやく。
「……まあ、論より証拠よね」
星に触れている少女の手が光った瞬間、星の体は台の上から彼女の胸の前に移動していた。
次の瞬間。星の顔には少女の胸が押し付けられていた。それもおそらく彼女が故意に押し付けている。その柔らかく暖かい感覚に、星は頬を赤らめると困惑した表情で女性の顔を見上げた。
彼女は微笑むと、簡単に自己紹介を始めた。
「私はライラ。ある組織から、あなたを救出するように言われたの……って言っても、今のあなたでは理解できないかもね。とりあえず、その症状を抑えましょうか?」
「はぁ……はぁ……は、はい……」
突如現れた少女に星はわらをも縋る思いで小さく頷いた。
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