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ディーノの思惑2
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困惑したように震える声で男が尋ねた。
「……どうして、お前の剣が俺のこの強固な盾を貫けた?」
「さっきも言ったけど、君の部下の固有スキルの中に『ソードエスケープ』ていうスキルの持ち主がいるのさ。だから君の防具も武器も俺の剣を止められなかった」
膝を突いて俯く彼にディーノが抑揚なく告げると、彼は意気消沈しながら呟く。
「……なるほど。俺の敗因は部下のスキルを知らなかったからか……」
「いや違うね……」
ディーノは男の鼻先に剣先を突き付け言い放つ。
「――君の敗因は俺の前に立ったことだよ」
男はそれを聞いて、諦めたかの様に静かに「そうか……」とだけ呟いて瞼を閉じた。
その表情からは、すでに覚悟したような潔さを感じられる。
ディーノは持っていたダーインスレイヴを高らかに突き上げた。
その直後、ディーノの背後からドンッ!というけたたましい爆発音が複数回起こると、男の叫び声と数多くの悲鳴が辺りに響いてきた。
「おらおら~、どけろどけろ~! 俺に触れる奴は爆発すっぞ!!」
その声にディーノは舌打ちしながらも、渋々握っていた剣を鞘に収めた。
残り一撃で勝負が決まると言う場面でディーノが身を翻すと、何が起きたのか理解できずに、不思議そうに彼を見上げる男に向かって口を開く。
「君は運がいい。早く部隊をまとめて大人しくしていた方がいいよ。抵抗すると、騒がしくなる……」
「……なんだと?」
ディーノは至って冷静に、爆音と悲鳴、怒号の飛び交う場所を指差して告げる。
「俺が知る。この日本サーバーで一、二を争う強さの人間が来たようだからね」
その言葉の直後、馬の鳴き声と共に、赤い鎧に身にまとった大斧を持った男がディーノ達の前に、空中から突如として降ってきた。
赤い鎧の男は膝を突いている男に大斧の刃を突き付けると、エミルの仲間だと勘違いしたのか、ディーノに向かって親指を立てて微笑みを浮かべる。
「よっ! 大丈夫か? ジジイに言われて助けに来てやったぜ!」
「――やっぱり君か……紅蓮がいたからもしや、いや間違いなく君がいると思っていたよ……」
ディーノがそう言って微笑み返すと、赤い鎧の男は驚いたように彼の顔を指差す。
「なんでお前がここにいるんだよ! デュラン!!」
「その呼び方はやめてくれ、メルディウス。今はディーノさ」
「……また、あこぎなことやってんだろ? ふん。何がディーノだ! PTに入らないからって、いつもころころ名前を変えやがって!」
メルディウスは目を細め、彼を鼻で笑うと大斧を肩に担いだ。
ディーノはそんな彼の様子に意味ありげな微笑を浮かべるだけで、それ以上の言及は控えた。
そんな彼の態度が気に食わないのか、メルディウスはもう一度鼻を鳴らすと今度は敵の大軍の方に目を遣った。
その直後、メルディウスが大声で周りの敵に叫んだ。
「いいか! 俺達はテスターだ! 固有スキルもお前等の比じゃねぇー。降伏しろ! そしたらこれ以上。痛い目は見なくて済むぞ!!」
彼の言葉を聞いて周りでは反発の声が多く上がる一方で、武器を捨て戦闘を放棄する者もいた。
その一方で未だに戦意をせずにいきり立った者達も多くいる。それは戦意を喪失した者達よりも遥かに多い人数だ――。
だが、それは当然の反応だろう。ディーノによって多くの仲間を消され、憤っているところに突然【テスター】を名乗る者が現れたところで止まる者の方が少ない。
未だに勢いがある敵の兵士達の視線が、突然現れたメルディウスの体を突き刺す。
部隊の間で賛否の声が上がる中、重装甲に身を包んだ男が高らかに声を上げる。すると、その場に居た兵士達が一斉に止まって彼の方を見つめた。
「――もう多くの同胞達を失った……俺達の負けだ」
男はメルディウスとディーノに深く頭を下げた。
突然の幹部クラスの敗北宣言に、憤っていた部下達の間にも不穏な空気が流れている。
「……どうして、お前の剣が俺のこの強固な盾を貫けた?」
「さっきも言ったけど、君の部下の固有スキルの中に『ソードエスケープ』ていうスキルの持ち主がいるのさ。だから君の防具も武器も俺の剣を止められなかった」
膝を突いて俯く彼にディーノが抑揚なく告げると、彼は意気消沈しながら呟く。
「……なるほど。俺の敗因は部下のスキルを知らなかったからか……」
「いや違うね……」
ディーノは男の鼻先に剣先を突き付け言い放つ。
「――君の敗因は俺の前に立ったことだよ」
男はそれを聞いて、諦めたかの様に静かに「そうか……」とだけ呟いて瞼を閉じた。
その表情からは、すでに覚悟したような潔さを感じられる。
ディーノは持っていたダーインスレイヴを高らかに突き上げた。
その直後、ディーノの背後からドンッ!というけたたましい爆発音が複数回起こると、男の叫び声と数多くの悲鳴が辺りに響いてきた。
「おらおら~、どけろどけろ~! 俺に触れる奴は爆発すっぞ!!」
その声にディーノは舌打ちしながらも、渋々握っていた剣を鞘に収めた。
残り一撃で勝負が決まると言う場面でディーノが身を翻すと、何が起きたのか理解できずに、不思議そうに彼を見上げる男に向かって口を開く。
「君は運がいい。早く部隊をまとめて大人しくしていた方がいいよ。抵抗すると、騒がしくなる……」
「……なんだと?」
ディーノは至って冷静に、爆音と悲鳴、怒号の飛び交う場所を指差して告げる。
「俺が知る。この日本サーバーで一、二を争う強さの人間が来たようだからね」
その言葉の直後、馬の鳴き声と共に、赤い鎧に身にまとった大斧を持った男がディーノ達の前に、空中から突如として降ってきた。
赤い鎧の男は膝を突いている男に大斧の刃を突き付けると、エミルの仲間だと勘違いしたのか、ディーノに向かって親指を立てて微笑みを浮かべる。
「よっ! 大丈夫か? ジジイに言われて助けに来てやったぜ!」
「――やっぱり君か……紅蓮がいたからもしや、いや間違いなく君がいると思っていたよ……」
ディーノがそう言って微笑み返すと、赤い鎧の男は驚いたように彼の顔を指差す。
「なんでお前がここにいるんだよ! デュラン!!」
「その呼び方はやめてくれ、メルディウス。今はディーノさ」
「……また、あこぎなことやってんだろ? ふん。何がディーノだ! PTに入らないからって、いつもころころ名前を変えやがって!」
メルディウスは目を細め、彼を鼻で笑うと大斧を肩に担いだ。
ディーノはそんな彼の様子に意味ありげな微笑を浮かべるだけで、それ以上の言及は控えた。
そんな彼の態度が気に食わないのか、メルディウスはもう一度鼻を鳴らすと今度は敵の大軍の方に目を遣った。
その直後、メルディウスが大声で周りの敵に叫んだ。
「いいか! 俺達はテスターだ! 固有スキルもお前等の比じゃねぇー。降伏しろ! そしたらこれ以上。痛い目は見なくて済むぞ!!」
彼の言葉を聞いて周りでは反発の声が多く上がる一方で、武器を捨て戦闘を放棄する者もいた。
その一方で未だに戦意をせずにいきり立った者達も多くいる。それは戦意を喪失した者達よりも遥かに多い人数だ――。
だが、それは当然の反応だろう。ディーノによって多くの仲間を消され、憤っているところに突然【テスター】を名乗る者が現れたところで止まる者の方が少ない。
未だに勢いがある敵の兵士達の視線が、突然現れたメルディウスの体を突き刺す。
部隊の間で賛否の声が上がる中、重装甲に身を包んだ男が高らかに声を上げる。すると、その場に居た兵士達が一斉に止まって彼の方を見つめた。
「――もう多くの同胞達を失った……俺達の負けだ」
男はメルディウスとディーノに深く頭を下げた。
突然の幹部クラスの敗北宣言に、憤っていた部下達の間にも不穏な空気が流れている。
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