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アジトへの潜入15
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無数に飛んでくる氷柱はミレイニの前で盾になっているアレキサンダーの体に突き刺さり止まった。
断末魔に咆哮を上げると、その巨体がドシンと地面に倒れた。
「なっ……アレキサンダー!!」
驚き目を丸くさせたミレイニは急いで倒れている白毛のライオンの元に駆け寄ると、その体に顔を埋める。
力無く横たわるその体を優しく撫でると掠れた声で呟く。
「……なにしてるし……あたしが……命令してから動くようにって……ふだんから……教えてるのに……」
ミレイニが地面に座り込んで啜り泣いていると、再びドラゴンの口が青く光った。だが、そのことに肝心のミレイニは全く気付いていない。
次にドラゴンの行動が予想できたエリエが慌てて叫ぶ。
「何してるの! 早くそこから離れなさい! ミレイニ!!」
その声が彼女には届いていないのか、ミレイニは一向にその場を動こうとしない。
いや、離れられないと言う方が正しいだろう。今離れてしまえば、その場に仲間を置き去りにすることになってしまう。
所詮はデータの集合体でしかない彼等も、ミレイニにとっては今まで苦楽を共にしてきた仲間だ。それを置き去りにして逃げることは、彼女にはできないのだろう……。
エリエは地面を蹴って走り出したものの、とても間に合う距離ではない。
「あのバカ! ……もう間に合わない!!」
どうしようもなく手を拱いていたエリエが、悔しそうに唇を噛み締めた。その直後、地面が崩れてそこから下の階に居るはずの幻獣ケルベロスが現れた。
ケルベロスはミレイニの前に立つと、けたたましい咆哮を上げた。すると、3つの頭から炎が吹き出された。
互いの攻撃が空中で激しく激突して白煙を上げると、ドラゴンの攻撃を相殺する。
ケルベロスは後ろを振り向き、喉を鳴らしながら尻尾を振った。
そう。ケルベロスは己の主の叫び声を聞いて堪らず駆けつけたのだ――。
「わあ~、エリザベス! 来てくれたの? ありがとうだし!」
ミレイニは希望に満ちた表情で、巨大なケルベロスの足に抱き付く。
その隙にエリエはミレイニの側に駆け寄ると、むっとしながら声を荒らげた。
「ばか! どうして逃げないのよ! もう少しで死んじゃうとこだったのよ!?」
「……ごめんなさい」
ミレイニはしょんぼりとしょげ返った。
その表情からミレイニが反省しているのが分かるとエリエは表情を和らげた。
「――でも、周りに仲間が居たら逃げられない。か……」
「……えっ?」
「ほら、早くそこのアレキサンダーだっけ? その子を連れて移動しよ!」
「うん!」
優しい声色でそう告げると、エリエはミレイニの頭を撫でる。
地面に伏している炎帝レオネルは相当ダメージを受けているのか、滾々と燃えていた鬣は影を潜め、まるで雌ライオンのような姿になってしまっている。
すぐにサラザ達も来て、横たわっているライオンの体を持ち上げ。
皆で力を合わせ、次の階段の入り口に運んでいる時、ふと、後ろから付いてきていたはずのレイニールの姿がないことに気が付く。
「ちょっと待って! レイニールは!?」
「えっ? さっきまで一緒に居たと思ったけど~」
そう呟いたサラザが辺りを見渡す。
すると、次の瞬間。エリエ達の目に驚きの光景が飛び込んできた。
それはドラゴンのすぐ足元に立っているレイニールの姿だった。
不機嫌そうにドラゴンを見上げていたレイニールは、次の瞬間には金髪のツインテールを揺らしながら肩を大きく回している。
「あのバカ! 何をやってるのよ!」
「あっ、エリー。あなたまで!? ちょっと~!」
エリエはライオンをサラザに任せ、咄嗟に走り出す。
サラザが止める声も、もうエリエの耳には届いていない。今の彼女の瞳にはレイニールしか見えていなかった。
それは最後に交わした星との約束『レイをお願いします』という言葉が大きく関係していた。
今ここでレイニールを失うことになれば、星がどんな顔をするか分からない。
(ここでレイニールにもしものことがあれば、星との約束が……ああ、もう! 無鉄砲な奴ばっかりなんだから!)
全力でレイニールの元に向かうエリエ。
っとその時、肩を回していたレイニールがドラゴンの足に抱き付いた。
その直後……。
「はあああああああああッ!!」
人間状態のレイニールは大声で叫び声を上げると、自分の数十倍は有ろうかというドラゴンを持ち上げ放り投げた。
少しだけ宙を舞ってドラゴンの体が地面に音を立てて倒れ、辺りに凄まじい土煙が上がる。
バタバタと動いていた尻尾を踏みつけながら、尻尾の動きを封じた金髪のツインテールを揺らしながらレイニールが天高らかに言い放つ。
「フン、見たか! これが我輩の力なのじゃ! 人間の姿でも中身は星龍。同じドラゴンのくせに、不意打ちなどするから悪いのじゃ!!」
今のレイニールの攻撃の方が、相手のドラゴンからしたらまさしくに『不意打ち』なのだが……。
そんなことなど気にする素振りも見せずに、レイニールは腰に手を当てると「はっはっはっ!」と勝ち誇ったように大声で笑う。
目を丸くさせたまま、ただただ呆然とそのレイニールの姿を見つめるエリエ。
だが、それも仕方のないことだろう。レイニールは見た目だけなら、小学校低学年の生徒と同じくらいの身長しかない。
っということは、数字にすると身長は120cm程度しかないのだ。しかし、それに対して相手のドラゴンの体長はざっと見ても30m近い。
その巨体を持ち上げただけではなく、放り投げるというのはにわかには信じ難く、エリエの思考回路がついていかなかったのだ。
エリエははっと我に返ると、急いでレイニールの手を掴む。
「ばか! 何やってるのよ!!」
「なにって……見て分かるであろう? 生意気なドラゴンを転ばせておるのじゃ!」
「ちが~う! 本来の目的を忘れない!」
「おお、そうだったのじゃ!」
レイニールは思い出したようにあっけらかんとして言った。
そのレイニールの様子を見ていた、エリエは呆れたようにため息を漏らす。
2人がそんなやり取りをしていると、倒れていたドラゴンが上空に向かってビームを放射する。
その攻撃によって、天井を見る見るうちに凍らせていく。それに目を奪われていると、ドラゴンは徐ろに立ち上がり。辺り構わず首を振り、口から冷気のビームを発射し始める。
2人は慌ててサラザ達の元へと駆けていく。
ケルベロスの3つの頭から放たれる膨大な火力によって守られているサラザ達には、敵のビームは届かないものの、あっという間に部屋の殆どが氷で覆われてしまう。
――ギオオオオオオオオオオオッ!!
ドラゴンは天を仰ぎ、断末魔の叫び声を上げて消えた――。
「……これは……」
その場にいた全員があんぐりと口を開ける中。良く分からない間にドラゴンとの戦闘は、敵のドラゴンの謎の消失という意外なかたちで終了した。
断末魔に咆哮を上げると、その巨体がドシンと地面に倒れた。
「なっ……アレキサンダー!!」
驚き目を丸くさせたミレイニは急いで倒れている白毛のライオンの元に駆け寄ると、その体に顔を埋める。
力無く横たわるその体を優しく撫でると掠れた声で呟く。
「……なにしてるし……あたしが……命令してから動くようにって……ふだんから……教えてるのに……」
ミレイニが地面に座り込んで啜り泣いていると、再びドラゴンの口が青く光った。だが、そのことに肝心のミレイニは全く気付いていない。
次にドラゴンの行動が予想できたエリエが慌てて叫ぶ。
「何してるの! 早くそこから離れなさい! ミレイニ!!」
その声が彼女には届いていないのか、ミレイニは一向にその場を動こうとしない。
いや、離れられないと言う方が正しいだろう。今離れてしまえば、その場に仲間を置き去りにすることになってしまう。
所詮はデータの集合体でしかない彼等も、ミレイニにとっては今まで苦楽を共にしてきた仲間だ。それを置き去りにして逃げることは、彼女にはできないのだろう……。
エリエは地面を蹴って走り出したものの、とても間に合う距離ではない。
「あのバカ! ……もう間に合わない!!」
どうしようもなく手を拱いていたエリエが、悔しそうに唇を噛み締めた。その直後、地面が崩れてそこから下の階に居るはずの幻獣ケルベロスが現れた。
ケルベロスはミレイニの前に立つと、けたたましい咆哮を上げた。すると、3つの頭から炎が吹き出された。
互いの攻撃が空中で激しく激突して白煙を上げると、ドラゴンの攻撃を相殺する。
ケルベロスは後ろを振り向き、喉を鳴らしながら尻尾を振った。
そう。ケルベロスは己の主の叫び声を聞いて堪らず駆けつけたのだ――。
「わあ~、エリザベス! 来てくれたの? ありがとうだし!」
ミレイニは希望に満ちた表情で、巨大なケルベロスの足に抱き付く。
その隙にエリエはミレイニの側に駆け寄ると、むっとしながら声を荒らげた。
「ばか! どうして逃げないのよ! もう少しで死んじゃうとこだったのよ!?」
「……ごめんなさい」
ミレイニはしょんぼりとしょげ返った。
その表情からミレイニが反省しているのが分かるとエリエは表情を和らげた。
「――でも、周りに仲間が居たら逃げられない。か……」
「……えっ?」
「ほら、早くそこのアレキサンダーだっけ? その子を連れて移動しよ!」
「うん!」
優しい声色でそう告げると、エリエはミレイニの頭を撫でる。
地面に伏している炎帝レオネルは相当ダメージを受けているのか、滾々と燃えていた鬣は影を潜め、まるで雌ライオンのような姿になってしまっている。
すぐにサラザ達も来て、横たわっているライオンの体を持ち上げ。
皆で力を合わせ、次の階段の入り口に運んでいる時、ふと、後ろから付いてきていたはずのレイニールの姿がないことに気が付く。
「ちょっと待って! レイニールは!?」
「えっ? さっきまで一緒に居たと思ったけど~」
そう呟いたサラザが辺りを見渡す。
すると、次の瞬間。エリエ達の目に驚きの光景が飛び込んできた。
それはドラゴンのすぐ足元に立っているレイニールの姿だった。
不機嫌そうにドラゴンを見上げていたレイニールは、次の瞬間には金髪のツインテールを揺らしながら肩を大きく回している。
「あのバカ! 何をやってるのよ!」
「あっ、エリー。あなたまで!? ちょっと~!」
エリエはライオンをサラザに任せ、咄嗟に走り出す。
サラザが止める声も、もうエリエの耳には届いていない。今の彼女の瞳にはレイニールしか見えていなかった。
それは最後に交わした星との約束『レイをお願いします』という言葉が大きく関係していた。
今ここでレイニールを失うことになれば、星がどんな顔をするか分からない。
(ここでレイニールにもしものことがあれば、星との約束が……ああ、もう! 無鉄砲な奴ばっかりなんだから!)
全力でレイニールの元に向かうエリエ。
っとその時、肩を回していたレイニールがドラゴンの足に抱き付いた。
その直後……。
「はあああああああああッ!!」
人間状態のレイニールは大声で叫び声を上げると、自分の数十倍は有ろうかというドラゴンを持ち上げ放り投げた。
少しだけ宙を舞ってドラゴンの体が地面に音を立てて倒れ、辺りに凄まじい土煙が上がる。
バタバタと動いていた尻尾を踏みつけながら、尻尾の動きを封じた金髪のツインテールを揺らしながらレイニールが天高らかに言い放つ。
「フン、見たか! これが我輩の力なのじゃ! 人間の姿でも中身は星龍。同じドラゴンのくせに、不意打ちなどするから悪いのじゃ!!」
今のレイニールの攻撃の方が、相手のドラゴンからしたらまさしくに『不意打ち』なのだが……。
そんなことなど気にする素振りも見せずに、レイニールは腰に手を当てると「はっはっはっ!」と勝ち誇ったように大声で笑う。
目を丸くさせたまま、ただただ呆然とそのレイニールの姿を見つめるエリエ。
だが、それも仕方のないことだろう。レイニールは見た目だけなら、小学校低学年の生徒と同じくらいの身長しかない。
っということは、数字にすると身長は120cm程度しかないのだ。しかし、それに対して相手のドラゴンの体長はざっと見ても30m近い。
その巨体を持ち上げただけではなく、放り投げるというのはにわかには信じ難く、エリエの思考回路がついていかなかったのだ。
エリエははっと我に返ると、急いでレイニールの手を掴む。
「ばか! 何やってるのよ!!」
「なにって……見て分かるであろう? 生意気なドラゴンを転ばせておるのじゃ!」
「ちが~う! 本来の目的を忘れない!」
「おお、そうだったのじゃ!」
レイニールは思い出したようにあっけらかんとして言った。
そのレイニールの様子を見ていた、エリエは呆れたようにため息を漏らす。
2人がそんなやり取りをしていると、倒れていたドラゴンが上空に向かってビームを放射する。
その攻撃によって、天井を見る見るうちに凍らせていく。それに目を奪われていると、ドラゴンは徐ろに立ち上がり。辺り構わず首を振り、口から冷気のビームを発射し始める。
2人は慌ててサラザ達の元へと駆けていく。
ケルベロスの3つの頭から放たれる膨大な火力によって守られているサラザ達には、敵のビームは届かないものの、あっという間に部屋の殆どが氷で覆われてしまう。
――ギオオオオオオオオオオオッ!!
ドラゴンは天を仰ぎ、断末魔の叫び声を上げて消えた――。
「……これは……」
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