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アジトへの潜入12
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自信に満ちた表情でミレイニは力強く胸を叩くと、今度は手を前に突き出す。
ゆっくりと瞼を閉じ、全神経を集中させる。すると、彼女の指にはめられていた漆黒の玉が中央にあしらわれている黄金の指輪が光りを放つ。
「いでよ! 炎帝レオネル! アレキサンダー!!」
そう叫んだミレイニは、指輪をはめている方の手を今度は天に掲げる。
直後、真上に黒い渦が発生し、その中から青い炎の鬣をまとった白毛のライオンが現れた。
――ガオオオオオオオオオオオオオッ!!
現れたライオンは天に向かって、けたたましい咆哮を上げた。
驚くエリエのその横で、ミレイニが誇らしげに言った。
「これが強力ボスモンスターの炎帝レオネルだし! ちなみに青い炎の方が赤い炎よりも温度が高いんだし。これはちょっとした豆知識だから、覚えておくといいかもだし!」
指を立てて自慢気に豆知識を披露するミレイニにエリエは少しイラッとしたものの、気を取り直して現れたライオンに目をやった。
青い炎の鬣はメラメラと揺らめきながら燃え上がってる。
その体を覆う白い毛は、まるで新雪のようにふさふさで炎の光を受けてキラキラと輝いている。瞳は青く宝石のようだし、なにより凛として堂々たるその姿は、まさに百獣の王の名に相応しいものだ。
その直後、ミレイニが現れた青い炎の鬣のライオンの体に抱き付く。
「アレキサンダー。相変わらずふかふかだし~」
抱きついているミレイニのすぐ横には、メラメラと燃える炎がある。
主人の愛情表現にライオンの鬣が更に大きく激しくなり。このままでは、ミレイニは大火傷する危険があると思い。
それを見たエリエは慌ててミレイニに叫ぶ。
「――バカ、炎が! 危ないから早く離れなさい!!」
慌てふためいているエリエが近付こうとするが、その炎の勢いと熱にたじろいでしまう。しかし、心配するエリエを余所に、ミレイニは何ともなさそうにきょとんとしている。
っと遂にミレイニの体の直ぐ側まで炎が迫ってくる。これだけ近付いていればその熱で火傷を負いそうなものだが、ミレイニはそれでも何ともないといった表情で、あんぐりと口を開いたまま突っ立っているのエリエを見て小首を傾げている。
だが、エリエが驚くのも無理はない。普通なら炎に触れているだけで、ゲームであれダメージを受けるのは間違いない。そして、腕がすっぽりと入っている今の状況下であれば尚の事だろう。
ミレイニは横に燃えている炎の鬣を見てにやりと悪戯な笑みを浮かべ、そーっと炎に手を伸ばす。
「……大丈夫だし」
「ば、ばか! なにしてるのよ!!」
(……何考えてるのよ。この子!? 炎の中に手が――)
予想外のミレイニの行動にはっとしたエリエが思わず目を瞑る。
次にミレイニの悲鳴が聞こえてくると思い込んでいたエリエの耳に飛び込んできたのは、楽しそうに笑うミレイニの声だった。
ミレイニは炎の鬣の中で体を優しく撫でていた。しかも、ライオンの方も満更ではないようだ。
喉を鳴らしながら、ゆらゆらと尻尾を振っている。
その姿にエリエの頭の血管がブチッ!っと音を立てて切れる。
「……ミレイニ。あんた人を脅かして……」
憤ったエリエがミレイニに近付こうとすると、ライオンの青い瞳が鋭く光って大きく咆哮を上げた。
エリエの殺気に反応したのだろう。一気に鬣の炎が燃え上がり、それと同じくして更に激しさを増した炎の熱がエリエを襲う。
「熱い!!」
咄嗟に後ろに飛んで距離を取ったエリエは目を丸くさせた。
それもそのはずだ。先程、エリエが熱を感じたその鬣に、ミレイニがすっぽりと顔を埋めていたのだ。
「な、なんであんたは平気なのよ!?」
「ふふ~ん。アレキサンダーは心を許した相手にしか、炎を預けてくれないのだ!」
「へぇ~」
ミレイニは素っ気なく返したエリエに不満そうに「反応薄いし」と不服そうに頬を膨らませている。
彼女としてはもっと驚いてもらえると思っていたのだろう。まるでフグの様に頬をぷっくりと膨らませたままエリエのことを睨んだ。
そこで、エリエは今更ながらにフリーダムのシステムのことを思い出す。
(……あれ? ここは建物の中。なのにどうして、あの子は固有スキルが発動できるの?)
ふと沸き起こってきた疑問をエリエは、ライオンと楽しそうに戯れているミレイニに尋ねる。
「そのライオンはあなたの固有スキルなんでしょ? どうしてこの場所で呼び出せるの?」
エリエの疑問も最もだろう。この場所――つまりは、非戦闘区域に指定されている屋内では如何なる戦闘行為も行えない。
それは戦闘行為の中に含まれている固有スキルの使用も制限されるということであり、今ミレイニが固有スキルである獣を召喚できるはずがないのだ。
「ああ、この城の階層は分かれていて、広場だけは固有スキルが使える様になってるし。他の場所ではギルドマスターが武器の使用を仲間であっても制限してるらしいし。でも、あたしだけは例外だし。あたしのスキルは『ビーストテイマー』元々は獣系のモンスターを手懐けるものだし。えーと、簡単に言うとこの指輪だし!」
ミレイニは右手の中指にはめられた指輪を前に突き出す。
ゆっくりと瞼を閉じ、全神経を集中させる。すると、彼女の指にはめられていた漆黒の玉が中央にあしらわれている黄金の指輪が光りを放つ。
「いでよ! 炎帝レオネル! アレキサンダー!!」
そう叫んだミレイニは、指輪をはめている方の手を今度は天に掲げる。
直後、真上に黒い渦が発生し、その中から青い炎の鬣をまとった白毛のライオンが現れた。
――ガオオオオオオオオオオオオオッ!!
現れたライオンは天に向かって、けたたましい咆哮を上げた。
驚くエリエのその横で、ミレイニが誇らしげに言った。
「これが強力ボスモンスターの炎帝レオネルだし! ちなみに青い炎の方が赤い炎よりも温度が高いんだし。これはちょっとした豆知識だから、覚えておくといいかもだし!」
指を立てて自慢気に豆知識を披露するミレイニにエリエは少しイラッとしたものの、気を取り直して現れたライオンに目をやった。
青い炎の鬣はメラメラと揺らめきながら燃え上がってる。
その体を覆う白い毛は、まるで新雪のようにふさふさで炎の光を受けてキラキラと輝いている。瞳は青く宝石のようだし、なにより凛として堂々たるその姿は、まさに百獣の王の名に相応しいものだ。
その直後、ミレイニが現れた青い炎の鬣のライオンの体に抱き付く。
「アレキサンダー。相変わらずふかふかだし~」
抱きついているミレイニのすぐ横には、メラメラと燃える炎がある。
主人の愛情表現にライオンの鬣が更に大きく激しくなり。このままでは、ミレイニは大火傷する危険があると思い。
それを見たエリエは慌ててミレイニに叫ぶ。
「――バカ、炎が! 危ないから早く離れなさい!!」
慌てふためいているエリエが近付こうとするが、その炎の勢いと熱にたじろいでしまう。しかし、心配するエリエを余所に、ミレイニは何ともなさそうにきょとんとしている。
っと遂にミレイニの体の直ぐ側まで炎が迫ってくる。これだけ近付いていればその熱で火傷を負いそうなものだが、ミレイニはそれでも何ともないといった表情で、あんぐりと口を開いたまま突っ立っているのエリエを見て小首を傾げている。
だが、エリエが驚くのも無理はない。普通なら炎に触れているだけで、ゲームであれダメージを受けるのは間違いない。そして、腕がすっぽりと入っている今の状況下であれば尚の事だろう。
ミレイニは横に燃えている炎の鬣を見てにやりと悪戯な笑みを浮かべ、そーっと炎に手を伸ばす。
「……大丈夫だし」
「ば、ばか! なにしてるのよ!!」
(……何考えてるのよ。この子!? 炎の中に手が――)
予想外のミレイニの行動にはっとしたエリエが思わず目を瞑る。
次にミレイニの悲鳴が聞こえてくると思い込んでいたエリエの耳に飛び込んできたのは、楽しそうに笑うミレイニの声だった。
ミレイニは炎の鬣の中で体を優しく撫でていた。しかも、ライオンの方も満更ではないようだ。
喉を鳴らしながら、ゆらゆらと尻尾を振っている。
その姿にエリエの頭の血管がブチッ!っと音を立てて切れる。
「……ミレイニ。あんた人を脅かして……」
憤ったエリエがミレイニに近付こうとすると、ライオンの青い瞳が鋭く光って大きく咆哮を上げた。
エリエの殺気に反応したのだろう。一気に鬣の炎が燃え上がり、それと同じくして更に激しさを増した炎の熱がエリエを襲う。
「熱い!!」
咄嗟に後ろに飛んで距離を取ったエリエは目を丸くさせた。
それもそのはずだ。先程、エリエが熱を感じたその鬣に、ミレイニがすっぽりと顔を埋めていたのだ。
「な、なんであんたは平気なのよ!?」
「ふふ~ん。アレキサンダーは心を許した相手にしか、炎を預けてくれないのだ!」
「へぇ~」
ミレイニは素っ気なく返したエリエに不満そうに「反応薄いし」と不服そうに頬を膨らませている。
彼女としてはもっと驚いてもらえると思っていたのだろう。まるでフグの様に頬をぷっくりと膨らませたままエリエのことを睨んだ。
そこで、エリエは今更ながらにフリーダムのシステムのことを思い出す。
(……あれ? ここは建物の中。なのにどうして、あの子は固有スキルが発動できるの?)
ふと沸き起こってきた疑問をエリエは、ライオンと楽しそうに戯れているミレイニに尋ねる。
「そのライオンはあなたの固有スキルなんでしょ? どうしてこの場所で呼び出せるの?」
エリエの疑問も最もだろう。この場所――つまりは、非戦闘区域に指定されている屋内では如何なる戦闘行為も行えない。
それは戦闘行為の中に含まれている固有スキルの使用も制限されるということであり、今ミレイニが固有スキルである獣を召喚できるはずがないのだ。
「ああ、この城の階層は分かれていて、広場だけは固有スキルが使える様になってるし。他の場所ではギルドマスターが武器の使用を仲間であっても制限してるらしいし。でも、あたしだけは例外だし。あたしのスキルは『ビーストテイマー』元々は獣系のモンスターを手懐けるものだし。えーと、簡単に言うとこの指輪だし!」
ミレイニは右手の中指にはめられた指輪を前に突き出す。
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