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アジトへの潜入10
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その場にいる全員が驚いて目を丸くさせていると、少女は不敵な笑みを浮かべながら告げる。
「これでもあたしはダークブレットの幹部だし。今までのは全部暇つぶしの演技だったんだし」
「――演技にしては、マジ泣きしてたけど……?」
得意げに語っていると、エリエがそう言って首を傾げ、少女は赤面させながら叫んだ。
「うっ、うるさい! ちょっと手こずっただけだし! ……もう。ギルガメシュが寝てるから悪いんだよ?」
少女は肩に乗っていたイタチの顎を撫でながら小声で叱る。イタチは怒られていることなど微塵も感じさせず、嬉しそうに少女の顔に頬擦りしていた。
少女は指差すと、その場に居る者全員に、堂々と言い放つ。
「いいか、よく聞くし! あたしは百獣の王の異名を持つミレイニ様だし。凄腕のビーストテイマーのあたしにかかれば、あんた達なんてけちょんけちょんのぎったんばったんに……」
自慢げに右腕を突き出して喋っている最中、ミレイニの前にエリエがチョコレートを差し出す。
少女はエリエの差し出したチョコレートに飛び付くと。
「これくれるの?」
っと、瞳をキラキラさせてエリエの顔を見上げた。
見下した様に、口元に不敵な笑みを浮かべたエリエが突如指を鳴らす。その直後、後ろに回り込んだサラザがミレイニの腕をがっしりと掴む。
「うわぁ~! 放せ! 放すんだし!」
「……ふ~ん。ミレイニって言うんだ。それで私達なんて……なんだって?」
「あわわわ……お、お姉さん。目が、目が怖いし……ほんのじょうだ――」
手をわきわきさせながら悪魔のような笑みを浮かべ見下ろすエリエに、ミレイニの顔から血の気が引いていく。
っと次の瞬間。エリエがミレイニの頬を思い切り引っ張る。
「いふぁい~。はおが、ほびひゃうひ~」
「……ごめんなさいは?」
「ごへんなはい! ごへんなはい! ごへんなはい!!」
瞳に涙を浮かべながら、必死に謝るミレイニ。
その姿を見てエリエは小さくため息をつくと、ミレイニの頬から手を放した。隙を見てサラザの手から逃れ直ぐ様。その場から走って離れるとエリエの手の届かない場所に移動する。
ミレイニはつねられた頬を撫でると、ビシッと指差し不機嫌そうに目を細めている。
「……もう。鈍すぎだし! あたしがその星って子を助けて上げるって言ってるんだし!!」
「……えっ!?」
驚いているエリエに向かって少女は自信満々に言い放つ。だが、正直な話。お菓子1つで買収されるミレイニをどうしても頼もしいと思えない。
今までの行動や言動を見ていると、あまりにも幼すぎると感じるし、それどころかドラゴンを操る人間にお菓子をチラつかされれば、一瞬で寝返りそうだ――。
「この上の階にいつのは氷雪系のドラゴンが待ってるはずだから、あたしが先に突っ込んで敵を惹きつけてやるし!」
「ちょっと待ちなさいよ! あんたじゃ向こうに寝返る可能性の方が高いでしょ!?」
「寝返らないし!」
「いや、寝返るかもしれないし!」
「…………」
エリエがミレイニの言葉を真似ると、ミレイニはあからさまに不機嫌そうな表情で。
「なら。寝返るし……」
「ほぉ~」
彼女の返答に目を細めて両手をわきわきさせながら、エリエがミレイニに迫って来る。
「――ッ!? いや、あの。今のは言葉のあやだし! てか、手をわきわきするのやめてほしいし! 目も凄く怖いし!」
怯えるミレイニに迫ると、エリエはわきわきと動かしていたその手でミレイニの頬を引っ張った。
手足をばたつかせているミレイニにエリエが告げる。
「……ほら、ごめんなさいは?」
「ごえんなふぁい! ごえんなふぁい!!」
ミレイニが瞳を涙で潤ませながら必死に謝ると、エリエはため息混じりに呟く。
「はぁ~、もういいわ……とりあえず。あなたは私の側から離れないこと。分かった?」
その言葉にミレイニはそっぽを向いて答える。
「あたしは百獣の王だし。あんたなんかに守ってもらう必要なんて、別にないし……」
「……なんですって~?」
「ごえんあはい! ごえんあはい!!」
泣きながら再び頬を引っ張られているミレイニを見て、肩に乗っていたイタチが呆れながら地面に降りた。
エリエが頬を引っ張っていた手を放すと、ミレイニは地面に座り込んで。
「ぐすっ……ひどいし……あんまりだし……あたしのほっぺはアコーディオンじゃないし……」
何度もエリエに頬を引っ張られたことでトラウマになりつつあるのか、両手を頬に当ててミレイニは地面に顔を伏せて泣きべそをかいている。
頻繁に頬を引っ張られていれば、警戒心が強くなるのは当然だ。そんな主人の横でイタチがぺたっと主人の顔に手を当てた。
「とにかく。ミレイニは私の言う事を聞くこと! 妹がお姉さんの言う事を聞くのは当然なのよ?」
「……妹!? あたし、いつから妹になったし!?」
突然エリエの口から出た『妹』という言葉に驚き、身を起こしたミレイニが自分のことを指差している。
「これでもあたしはダークブレットの幹部だし。今までのは全部暇つぶしの演技だったんだし」
「――演技にしては、マジ泣きしてたけど……?」
得意げに語っていると、エリエがそう言って首を傾げ、少女は赤面させながら叫んだ。
「うっ、うるさい! ちょっと手こずっただけだし! ……もう。ギルガメシュが寝てるから悪いんだよ?」
少女は肩に乗っていたイタチの顎を撫でながら小声で叱る。イタチは怒られていることなど微塵も感じさせず、嬉しそうに少女の顔に頬擦りしていた。
少女は指差すと、その場に居る者全員に、堂々と言い放つ。
「いいか、よく聞くし! あたしは百獣の王の異名を持つミレイニ様だし。凄腕のビーストテイマーのあたしにかかれば、あんた達なんてけちょんけちょんのぎったんばったんに……」
自慢げに右腕を突き出して喋っている最中、ミレイニの前にエリエがチョコレートを差し出す。
少女はエリエの差し出したチョコレートに飛び付くと。
「これくれるの?」
っと、瞳をキラキラさせてエリエの顔を見上げた。
見下した様に、口元に不敵な笑みを浮かべたエリエが突如指を鳴らす。その直後、後ろに回り込んだサラザがミレイニの腕をがっしりと掴む。
「うわぁ~! 放せ! 放すんだし!」
「……ふ~ん。ミレイニって言うんだ。それで私達なんて……なんだって?」
「あわわわ……お、お姉さん。目が、目が怖いし……ほんのじょうだ――」
手をわきわきさせながら悪魔のような笑みを浮かべ見下ろすエリエに、ミレイニの顔から血の気が引いていく。
っと次の瞬間。エリエがミレイニの頬を思い切り引っ張る。
「いふぁい~。はおが、ほびひゃうひ~」
「……ごめんなさいは?」
「ごへんなはい! ごへんなはい! ごへんなはい!!」
瞳に涙を浮かべながら、必死に謝るミレイニ。
その姿を見てエリエは小さくため息をつくと、ミレイニの頬から手を放した。隙を見てサラザの手から逃れ直ぐ様。その場から走って離れるとエリエの手の届かない場所に移動する。
ミレイニはつねられた頬を撫でると、ビシッと指差し不機嫌そうに目を細めている。
「……もう。鈍すぎだし! あたしがその星って子を助けて上げるって言ってるんだし!!」
「……えっ!?」
驚いているエリエに向かって少女は自信満々に言い放つ。だが、正直な話。お菓子1つで買収されるミレイニをどうしても頼もしいと思えない。
今までの行動や言動を見ていると、あまりにも幼すぎると感じるし、それどころかドラゴンを操る人間にお菓子をチラつかされれば、一瞬で寝返りそうだ――。
「この上の階にいつのは氷雪系のドラゴンが待ってるはずだから、あたしが先に突っ込んで敵を惹きつけてやるし!」
「ちょっと待ちなさいよ! あんたじゃ向こうに寝返る可能性の方が高いでしょ!?」
「寝返らないし!」
「いや、寝返るかもしれないし!」
「…………」
エリエがミレイニの言葉を真似ると、ミレイニはあからさまに不機嫌そうな表情で。
「なら。寝返るし……」
「ほぉ~」
彼女の返答に目を細めて両手をわきわきさせながら、エリエがミレイニに迫って来る。
「――ッ!? いや、あの。今のは言葉のあやだし! てか、手をわきわきするのやめてほしいし! 目も凄く怖いし!」
怯えるミレイニに迫ると、エリエはわきわきと動かしていたその手でミレイニの頬を引っ張った。
手足をばたつかせているミレイニにエリエが告げる。
「……ほら、ごめんなさいは?」
「ごえんなふぁい! ごえんなふぁい!!」
ミレイニが瞳を涙で潤ませながら必死に謝ると、エリエはため息混じりに呟く。
「はぁ~、もういいわ……とりあえず。あなたは私の側から離れないこと。分かった?」
その言葉にミレイニはそっぽを向いて答える。
「あたしは百獣の王だし。あんたなんかに守ってもらう必要なんて、別にないし……」
「……なんですって~?」
「ごえんあはい! ごえんあはい!!」
泣きながら再び頬を引っ張られているミレイニを見て、肩に乗っていたイタチが呆れながら地面に降りた。
エリエが頬を引っ張っていた手を放すと、ミレイニは地面に座り込んで。
「ぐすっ……ひどいし……あんまりだし……あたしのほっぺはアコーディオンじゃないし……」
何度もエリエに頬を引っ張られたことでトラウマになりつつあるのか、両手を頬に当ててミレイニは地面に顔を伏せて泣きべそをかいている。
頻繁に頬を引っ張られていれば、警戒心が強くなるのは当然だ。そんな主人の横でイタチがぺたっと主人の顔に手を当てた。
「とにかく。ミレイニは私の言う事を聞くこと! 妹がお姉さんの言う事を聞くのは当然なのよ?」
「……妹!? あたし、いつから妹になったし!?」
突然エリエの口から出た『妹』という言葉に驚き、身を起こしたミレイニが自分のことを指差している。
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