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鉤爪武器の男3
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顔を青ざめさせたカレンが慌てて暴れ出す。
「――くッ! 離れろ! もうやばい!!」
だが、馬乗りにされているうえに麻痺と毒の効果で体が上手く動かない。
「フフッ……何がやばいんだ? ああ、HPか?」
男は暴れるカレンを見て、楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべている。
反応を楽しむように体を揺らすカレンの体の上にのしかかって、男はカレンの毒の効果でHPが『1』になる直前。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、カレンの耳元でそっとささやいた。
「ああ、さっきのは全部嘘。俺のでっち上げだ、安心するといいぜよ」
「なっ、何だと!? 俺を騙したのか!!」
騙されたことに相当頭にきているのだろう。鋭く睨みを利かせて憤るカレンに向かって、男がニヤッと不気味に笑い。
カレンの両手首を左手で掴むと、頭の上に合わせて強引に地面に押し付ける。
「なっ、何を……なにすんだよ!」
「――騙したわけじゃない。でも、すぐに殺された方がマシだったと思う事になるぜよ……」
なんとか男を引き剥がそうと、思うように動かないながらも身を捩り鋭く睨みつけるカレンを尻目に、男は鼻歌交じりにコマンドを操作すると、アイテム内から赤いポーションの様な物を取り出す。
フリーダムでは回復アイテムは宝石という位置付けで、例外なくそれぞれ別の宝石の形を模している。そして逆に普通のMMORPGで馴染みのポーションは、毒や麻痺など武器に追加効果を付ける為のものとされている……戦闘中は武器や防具などの変更はできても、ポーションなどでのアイテムで効果を追加することはできない設定になっていた。
しかも、他のゲームと異なりポーションは武器などに使用できるが、プレイヤーへの直接使用は不可になっていた。元々ポーション類の毒、麻痺などは装備品などに付属効果を付ける目的でのみ使用できるもので、それ以外の用途で使用する必要性がないのが理由だ――もしも使用したとしても、ポーションアイテムの効果の発動は不発に終わる。
だから男が持っているポーションを使用しても、人体には何の効力も起きないはずなのだが……先程の2重で異常状態になることもあってか、彼が何らかの方法で未知の技術を使用していることは間違いない。
それもあってか、毒と麻痺の効果で思うように身体が動かない今の状態のカレンは怯えた表情のままだ。
「なんだよ……それ……」
「ふん……今に分かるぜよ」
男はそう告げると、事もあろうか、持っていたそのポーションの中身を口に含む。
しかし、カレンにはその男の行動が理解できない。本来なら武器に使う物で、飲むものではないポーションをしかも自分の体に取り込んだのだ。
この状況と彼の行動から考えられるのは、男の身体を強化する何らかの効果を起こすものということだろう。
(なんだ? 自分で飲んだ……肉体強化系のアイテム? いやでも、どっちにしてもポーションを飲んでも効力は発揮されないはず……)
一抹の不安とともに、動揺を隠しきれないカレンは首を傾げている。次にどんな効果があるのか、それとも何の効果もないパフォーマンスなのか……。
男は笑みを浮かべると、右手でカレンの腕を抑えて、左手で頬をがっしりと掴んで口を強引に開かせる。
カレンは嫌な予感に、表情を引きつらせながら男を見た。するとその直後、男の顔がカレンの顔に迫ってくる。
男の突然の行動に、予期していなかったカレンは慌てふためく。
「なっ! 何をするつもりだ……や、やめろ……やめてぇ~!!」
カレンは迫り来る男に普段は出さないような悲鳴を上げると必死に抵抗する。だが、その抵抗虚しく出会って数分の男に、カレンの唇を奪われてしまった。すると、男の口を通してカレンの口に先ほどのポーションの中身が流し込まれる。
カレンは男が顔から手を放したのを見計らって、慌てて首を左右に振って男から逃れた。
(なんで……こんな……こんな奴に……屈辱だ!)
瞳に涙を浮かべたカレンはそう心の中で呟くと、男を鋭く睨む。
男は満足そうな笑みを浮かべると体を起こす。
ほくそ笑みながら両手首を持っていた右手解いて、カレンの頬を掴んでいた左手も放しゆっくりと立ち上がる男に、カレンが瞳を潤ませながら叫ぶ。
「俺の……俺の初めてが、こんなかたちで……絶対に許さねぇー! 絶対殺してやるからなッ!!」
殺意を剥き出しにしているカレンに、男は少し呆れながら言い放つ。
「たかが仮想世界でその反応とは、情けない奴ぜよ。お前は小学生なのか?」
「くッ! この野郎! 言わせておけば――」
(――なっ、なんだ? 体の感覚が完全にない……)
憤っていたカレンは突然襲って来た体の明らかな異変に気が付く。
その原因は、明らかにさっき口移しで無理矢理飲まされたポーションであることは間違いない。だが、何よりさっきまであったはずの全身の感覚が完全になくなっている。
「――くッ! 離れろ! もうやばい!!」
だが、馬乗りにされているうえに麻痺と毒の効果で体が上手く動かない。
「フフッ……何がやばいんだ? ああ、HPか?」
男は暴れるカレンを見て、楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべている。
反応を楽しむように体を揺らすカレンの体の上にのしかかって、男はカレンの毒の効果でHPが『1』になる直前。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、カレンの耳元でそっとささやいた。
「ああ、さっきのは全部嘘。俺のでっち上げだ、安心するといいぜよ」
「なっ、何だと!? 俺を騙したのか!!」
騙されたことに相当頭にきているのだろう。鋭く睨みを利かせて憤るカレンに向かって、男がニヤッと不気味に笑い。
カレンの両手首を左手で掴むと、頭の上に合わせて強引に地面に押し付ける。
「なっ、何を……なにすんだよ!」
「――騙したわけじゃない。でも、すぐに殺された方がマシだったと思う事になるぜよ……」
なんとか男を引き剥がそうと、思うように動かないながらも身を捩り鋭く睨みつけるカレンを尻目に、男は鼻歌交じりにコマンドを操作すると、アイテム内から赤いポーションの様な物を取り出す。
フリーダムでは回復アイテムは宝石という位置付けで、例外なくそれぞれ別の宝石の形を模している。そして逆に普通のMMORPGで馴染みのポーションは、毒や麻痺など武器に追加効果を付ける為のものとされている……戦闘中は武器や防具などの変更はできても、ポーションなどでのアイテムで効果を追加することはできない設定になっていた。
しかも、他のゲームと異なりポーションは武器などに使用できるが、プレイヤーへの直接使用は不可になっていた。元々ポーション類の毒、麻痺などは装備品などに付属効果を付ける目的でのみ使用できるもので、それ以外の用途で使用する必要性がないのが理由だ――もしも使用したとしても、ポーションアイテムの効果の発動は不発に終わる。
だから男が持っているポーションを使用しても、人体には何の効力も起きないはずなのだが……先程の2重で異常状態になることもあってか、彼が何らかの方法で未知の技術を使用していることは間違いない。
それもあってか、毒と麻痺の効果で思うように身体が動かない今の状態のカレンは怯えた表情のままだ。
「なんだよ……それ……」
「ふん……今に分かるぜよ」
男はそう告げると、事もあろうか、持っていたそのポーションの中身を口に含む。
しかし、カレンにはその男の行動が理解できない。本来なら武器に使う物で、飲むものではないポーションをしかも自分の体に取り込んだのだ。
この状況と彼の行動から考えられるのは、男の身体を強化する何らかの効果を起こすものということだろう。
(なんだ? 自分で飲んだ……肉体強化系のアイテム? いやでも、どっちにしてもポーションを飲んでも効力は発揮されないはず……)
一抹の不安とともに、動揺を隠しきれないカレンは首を傾げている。次にどんな効果があるのか、それとも何の効果もないパフォーマンスなのか……。
男は笑みを浮かべると、右手でカレンの腕を抑えて、左手で頬をがっしりと掴んで口を強引に開かせる。
カレンは嫌な予感に、表情を引きつらせながら男を見た。するとその直後、男の顔がカレンの顔に迫ってくる。
男の突然の行動に、予期していなかったカレンは慌てふためく。
「なっ! 何をするつもりだ……や、やめろ……やめてぇ~!!」
カレンは迫り来る男に普段は出さないような悲鳴を上げると必死に抵抗する。だが、その抵抗虚しく出会って数分の男に、カレンの唇を奪われてしまった。すると、男の口を通してカレンの口に先ほどのポーションの中身が流し込まれる。
カレンは男が顔から手を放したのを見計らって、慌てて首を左右に振って男から逃れた。
(なんで……こんな……こんな奴に……屈辱だ!)
瞳に涙を浮かべたカレンはそう心の中で呟くと、男を鋭く睨む。
男は満足そうな笑みを浮かべると体を起こす。
ほくそ笑みながら両手首を持っていた右手解いて、カレンの頬を掴んでいた左手も放しゆっくりと立ち上がる男に、カレンが瞳を潤ませながら叫ぶ。
「俺の……俺の初めてが、こんなかたちで……絶対に許さねぇー! 絶対殺してやるからなッ!!」
殺意を剥き出しにしているカレンに、男は少し呆れながら言い放つ。
「たかが仮想世界でその反応とは、情けない奴ぜよ。お前は小学生なのか?」
「くッ! この野郎! 言わせておけば――」
(――なっ、なんだ? 体の感覚が完全にない……)
憤っていたカレンは突然襲って来た体の明らかな異変に気が付く。
その原因は、明らかにさっき口移しで無理矢理飲まされたポーションであることは間違いない。だが、何よりさっきまであったはずの全身の感覚が完全になくなっている。
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