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紅蓮の宝物4

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 列は二列になっていて、部屋の端の方に溜まっている者達は、まだ来ていないパーティーやギルドのメンバーを待っている者達だろう。

 ダンジョンクリアする前ならば、パーティーのリーダーさえそのダンジョン内に居れば、そのリーダーによって召喚してもらうことが可能だからだ。

 皆、笑みを浮かべながら仲間達と楽しそうに会話をしている。
 
「へぇー。意外とそれっぽく造ってやがるな! そう思うだろ? ギルマス!」
「うむ。洞窟の前の像はなかなかの造形だな。だが、入り口に手を掛け過ぎて、入ってからがっかりせんと良いがな」

 マスターは険しい顔でそう吐き捨てる。

 彼にとってはダンジョンの外見より、出てくるボスの方に関心が強いのだろう。

「大丈夫ですよ。きっと今回は楽しめると思います!」
「なんだ? 紅蓮はいつにも増してやる気だなぁ~。まっ、強ぇーのがきても俺がお前を守ってやるよ!」

 メルディウスはニヤッと得意げな笑みを浮かべると、紅蓮の頭を手でぐしゃぐしゃと撫で回す。
 不機嫌そうに紅蓮が「またあなたは、私を子供扱いして……」と膨れっ面をして唇を尖らせている。

 ここまで全く危なげなく敵を撃破して進んで来た彼等だったが、最大の敵はモンスターではなく、ボス部屋に入れるまでの待ち時間かもしれない。

 ボス部屋の前にはマスターが思っていた通り、もう10組ほどが大きな扉の前で待機している。

 本来ならば、フルパーティーの6人を更に連結させる複合パーティーで挑みたいところだが、今回のイベントは一つのパーティーのみでの挑戦と、制限が付いている為、最大戦力でのフルパーティーで挑まなければいけないのだ。

 さすがに高難易度ダンジョンだけあって、制限いっぱいのフルパーティーの6人で誰もが臨んでいる。3人で――などという無謀な者達はマスター達くらいしか居ないが……。

「ちっ! なんだよ。部屋待ちかよ! こんな事なら、もっとゆっくり敵を倒せば良かったぜ!」

 そう吐き捨てたメルディウスは、つまらなそうに持っていた赤い柄の大剣を背中の鞘に収めた。

 その直後、横から紅蓮の声が聞こえた。

「仕方ないですよ。順番ですし……来る前にサンドイッチを作ってきたので、それを食べながら待ちましょう!」

 紅蓮はサンドイッチの入ったバスケットを取り出して地面に置くと、その後に出したレジャーシートを広げ、その中心にちょこんと座った。

「ちょうど腹が減ってきたところだ! ほら早く来いよギルマス。来ねぇーなら俺があんたの分も食っちまうぞ?」

 メルディウスは満面の笑みで紅蓮の横に腰を降ろすと、マスターに手招きする。

「全く仕方ないやつだ……」 
  
 マスターは呆れ顔でため息をつくと、メルディウスのその言葉に従った。

 それからしばらくゆっくり食事をしながら順番を待っていると、マスターが何かに気がついたのか険しい表情で呟く。

「おかしい……」
「あっ? デザートはねぇーと思うぞ?」
「お菓子ではない! お前も食っとらんで周りを良く見んか!」
「……はっ?」

 マスターにそう言われ、紅蓮特製サンドイッチを食べるのを一時中断し、メルディウス辺りを注意深く見渡した。
 しかし、そこにはさっきまでと同じように、ボス部屋の前の長い列が少し伸びた程度で、別にこれと言って変化があるようには見えない。
 
 メルディウスは首を傾げながらマスターに言い返す。

「別に変わってねぇーぞ? 俺達の後ろの連中が増えた以外にはよ」
「……はっ! そういうことですかマスター」
「うむ。紅蓮は気が付いたみたいだな……」

 紅蓮とマスターはお互いの顔を見つめ合うと深く頷く。それを見てメルディウスは眉間にしわを寄せ首を傾げている。

 その直後、呆れながらも紅蓮がまだ首を傾げているメルディウスに説明する。

「まだ分かりませんか? メルディウス。いいですか? 先程前に並んでいた方が、次々と私達の後ろに並んでいますよね?」
「んっ? そう言われてみればそうかもな。でっ、それがなんだってんだ?」
「もう! ……マスター」

 紅蓮はメルディウスの返答に呆れ顔のまま、助けを求めるようにマスターに目を向ける。

 そんなメルディウスの様子を見て、マスターも呆れ顔で額を押さえて「まったく」とため息をつくと。

「良いか? ボス部屋に入って行った者達の出入りが激しくなっている。しかも、戻ってきた者達の顔に覇気を全く感じない。これはおそらく――」
「――おそらく……なんだよ?」
「ボスは予想していた以上に強いということですね。マスター」

 聞き返すように言ったメルディウスの言葉に、マスターが答えるより先に紅蓮が険しい表情で尋ねた。そんな彼女にマスターは無言のまま頷く。

 負けて自分達の後ろに並び直しているプレイヤー達が弱いわけではない。皆、最前線で戦えるだけの装備を揃えている手練れ揃いなのは、身に付けている装備品を見れば分かる。

 それでも勝てないほど、扉の向こうにいるボスが強いということだ。その直後、ボス部屋のドアが音を立てて開く。
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