249 / 586
紅蓮の宝物4
しおりを挟む
列は二列になっていて、部屋の端の方に溜まっている者達は、まだ来ていないパーティーやギルドのメンバーを待っている者達だろう。
ダンジョンクリアする前ならば、パーティーのリーダーさえそのダンジョン内に居れば、そのリーダーによって召喚してもらうことが可能だからだ。
皆、笑みを浮かべながら仲間達と楽しそうに会話をしている。
「へぇー。意外とそれっぽく造ってやがるな! そう思うだろ? ギルマス!」
「うむ。洞窟の前の像はなかなかの造形だな。だが、入り口に手を掛け過ぎて、入ってからがっかりせんと良いがな」
マスターは険しい顔でそう吐き捨てる。
彼にとってはダンジョンの外見より、出てくるボスの方に関心が強いのだろう。
「大丈夫ですよ。きっと今回は楽しめると思います!」
「なんだ? 紅蓮はいつにも増してやる気だなぁ~。まっ、強ぇーのがきても俺がお前を守ってやるよ!」
メルディウスはニヤッと得意げな笑みを浮かべると、紅蓮の頭を手でぐしゃぐしゃと撫で回す。
不機嫌そうに紅蓮が「またあなたは、私を子供扱いして……」と膨れっ面をして唇を尖らせている。
ここまで全く危なげなく敵を撃破して進んで来た彼等だったが、最大の敵はモンスターではなく、ボス部屋に入れるまでの待ち時間かもしれない。
ボス部屋の前にはマスターが思っていた通り、もう10組ほどが大きな扉の前で待機している。
本来ならば、フルパーティーの6人を更に連結させる複合パーティーで挑みたいところだが、今回のイベントは一つのパーティーのみでの挑戦と、制限が付いている為、最大戦力でのフルパーティーで挑まなければいけないのだ。
さすがに高難易度ダンジョンだけあって、制限いっぱいのフルパーティーの6人で誰もが臨んでいる。3人で――などという無謀な者達はマスター達くらいしか居ないが……。
「ちっ! なんだよ。部屋待ちかよ! こんな事なら、もっとゆっくり敵を倒せば良かったぜ!」
そう吐き捨てたメルディウスは、つまらなそうに持っていた赤い柄の大剣を背中の鞘に収めた。
その直後、横から紅蓮の声が聞こえた。
「仕方ないですよ。順番ですし……来る前にサンドイッチを作ってきたので、それを食べながら待ちましょう!」
紅蓮はサンドイッチの入ったバスケットを取り出して地面に置くと、その後に出したレジャーシートを広げ、その中心にちょこんと座った。
「ちょうど腹が減ってきたところだ! ほら早く来いよギルマス。来ねぇーなら俺があんたの分も食っちまうぞ?」
メルディウスは満面の笑みで紅蓮の横に腰を降ろすと、マスターに手招きする。
「全く仕方ないやつだ……」
マスターは呆れ顔でため息をつくと、メルディウスのその言葉に従った。
それからしばらくゆっくり食事をしながら順番を待っていると、マスターが何かに気がついたのか険しい表情で呟く。
「おかしい……」
「あっ? デザートはねぇーと思うぞ?」
「お菓子ではない! お前も食っとらんで周りを良く見んか!」
「……はっ?」
マスターにそう言われ、紅蓮特製サンドイッチを食べるのを一時中断し、メルディウス辺りを注意深く見渡した。
しかし、そこにはさっきまでと同じように、ボス部屋の前の長い列が少し伸びた程度で、別にこれと言って変化があるようには見えない。
メルディウスは首を傾げながらマスターに言い返す。
「別に変わってねぇーぞ? 俺達の後ろの連中が増えた以外にはよ」
「……はっ! そういうことですかマスター」
「うむ。紅蓮は気が付いたみたいだな……」
紅蓮とマスターはお互いの顔を見つめ合うと深く頷く。それを見てメルディウスは眉間にしわを寄せ首を傾げている。
その直後、呆れながらも紅蓮がまだ首を傾げているメルディウスに説明する。
「まだ分かりませんか? メルディウス。いいですか? 先程前に並んでいた方が、次々と私達の後ろに並んでいますよね?」
「んっ? そう言われてみればそうかもな。でっ、それがなんだってんだ?」
「もう! ……マスター」
紅蓮はメルディウスの返答に呆れ顔のまま、助けを求めるようにマスターに目を向ける。
そんなメルディウスの様子を見て、マスターも呆れ顔で額を押さえて「まったく」とため息をつくと。
「良いか? ボス部屋に入って行った者達の出入りが激しくなっている。しかも、戻ってきた者達の顔に覇気を全く感じない。これはおそらく――」
「――おそらく……なんだよ?」
「ボスは予想していた以上に強いということですね。マスター」
聞き返すように言ったメルディウスの言葉に、マスターが答えるより先に紅蓮が険しい表情で尋ねた。そんな彼女にマスターは無言のまま頷く。
負けて自分達の後ろに並び直しているプレイヤー達が弱いわけではない。皆、最前線で戦えるだけの装備を揃えている手練れ揃いなのは、身に付けている装備品を見れば分かる。
それでも勝てないほど、扉の向こうにいるボスが強いということだ。その直後、ボス部屋のドアが音を立てて開く。
ダンジョンクリアする前ならば、パーティーのリーダーさえそのダンジョン内に居れば、そのリーダーによって召喚してもらうことが可能だからだ。
皆、笑みを浮かべながら仲間達と楽しそうに会話をしている。
「へぇー。意外とそれっぽく造ってやがるな! そう思うだろ? ギルマス!」
「うむ。洞窟の前の像はなかなかの造形だな。だが、入り口に手を掛け過ぎて、入ってからがっかりせんと良いがな」
マスターは険しい顔でそう吐き捨てる。
彼にとってはダンジョンの外見より、出てくるボスの方に関心が強いのだろう。
「大丈夫ですよ。きっと今回は楽しめると思います!」
「なんだ? 紅蓮はいつにも増してやる気だなぁ~。まっ、強ぇーのがきても俺がお前を守ってやるよ!」
メルディウスはニヤッと得意げな笑みを浮かべると、紅蓮の頭を手でぐしゃぐしゃと撫で回す。
不機嫌そうに紅蓮が「またあなたは、私を子供扱いして……」と膨れっ面をして唇を尖らせている。
ここまで全く危なげなく敵を撃破して進んで来た彼等だったが、最大の敵はモンスターではなく、ボス部屋に入れるまでの待ち時間かもしれない。
ボス部屋の前にはマスターが思っていた通り、もう10組ほどが大きな扉の前で待機している。
本来ならば、フルパーティーの6人を更に連結させる複合パーティーで挑みたいところだが、今回のイベントは一つのパーティーのみでの挑戦と、制限が付いている為、最大戦力でのフルパーティーで挑まなければいけないのだ。
さすがに高難易度ダンジョンだけあって、制限いっぱいのフルパーティーの6人で誰もが臨んでいる。3人で――などという無謀な者達はマスター達くらいしか居ないが……。
「ちっ! なんだよ。部屋待ちかよ! こんな事なら、もっとゆっくり敵を倒せば良かったぜ!」
そう吐き捨てたメルディウスは、つまらなそうに持っていた赤い柄の大剣を背中の鞘に収めた。
その直後、横から紅蓮の声が聞こえた。
「仕方ないですよ。順番ですし……来る前にサンドイッチを作ってきたので、それを食べながら待ちましょう!」
紅蓮はサンドイッチの入ったバスケットを取り出して地面に置くと、その後に出したレジャーシートを広げ、その中心にちょこんと座った。
「ちょうど腹が減ってきたところだ! ほら早く来いよギルマス。来ねぇーなら俺があんたの分も食っちまうぞ?」
メルディウスは満面の笑みで紅蓮の横に腰を降ろすと、マスターに手招きする。
「全く仕方ないやつだ……」
マスターは呆れ顔でため息をつくと、メルディウスのその言葉に従った。
それからしばらくゆっくり食事をしながら順番を待っていると、マスターが何かに気がついたのか険しい表情で呟く。
「おかしい……」
「あっ? デザートはねぇーと思うぞ?」
「お菓子ではない! お前も食っとらんで周りを良く見んか!」
「……はっ?」
マスターにそう言われ、紅蓮特製サンドイッチを食べるのを一時中断し、メルディウス辺りを注意深く見渡した。
しかし、そこにはさっきまでと同じように、ボス部屋の前の長い列が少し伸びた程度で、別にこれと言って変化があるようには見えない。
メルディウスは首を傾げながらマスターに言い返す。
「別に変わってねぇーぞ? 俺達の後ろの連中が増えた以外にはよ」
「……はっ! そういうことですかマスター」
「うむ。紅蓮は気が付いたみたいだな……」
紅蓮とマスターはお互いの顔を見つめ合うと深く頷く。それを見てメルディウスは眉間にしわを寄せ首を傾げている。
その直後、呆れながらも紅蓮がまだ首を傾げているメルディウスに説明する。
「まだ分かりませんか? メルディウス。いいですか? 先程前に並んでいた方が、次々と私達の後ろに並んでいますよね?」
「んっ? そう言われてみればそうかもな。でっ、それがなんだってんだ?」
「もう! ……マスター」
紅蓮はメルディウスの返答に呆れ顔のまま、助けを求めるようにマスターに目を向ける。
そんなメルディウスの様子を見て、マスターも呆れ顔で額を押さえて「まったく」とため息をつくと。
「良いか? ボス部屋に入って行った者達の出入りが激しくなっている。しかも、戻ってきた者達の顔に覇気を全く感じない。これはおそらく――」
「――おそらく……なんだよ?」
「ボスは予想していた以上に強いということですね。マスター」
聞き返すように言ったメルディウスの言葉に、マスターが答えるより先に紅蓮が険しい表情で尋ねた。そんな彼女にマスターは無言のまま頷く。
負けて自分達の後ろに並び直しているプレイヤー達が弱いわけではない。皆、最前線で戦えるだけの装備を揃えている手練れ揃いなのは、身に付けている装備品を見れば分かる。
それでも勝てないほど、扉の向こうにいるボスが強いということだ。その直後、ボス部屋のドアが音を立てて開く。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる