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紅蓮の宝物2
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その時、小虎が思い出したように少女に問い掛けた。
「そういえば。お姉さんはここで誰かと会うんじゃなかったの?」
「えっ? う~ん。でも、どこに居るか分からないし。まだフレンドにも登録してないから、メッセージとか飛ばせないんだ。だから、どうしよっか……」
少女は困り果て、思わず口をつぐんでしまう。
まあ、事件当時。友達に誘われて始めたのはいいものの、他の街に居てどうしようもなくなる……なんてことは、彼女に限った話ではなくよくある話だった。
システム上。フレンドまたは同じギルドのメンバー意外とはボイスチャットもメッセージも送れない仕様になっている。
これは嫌がらせを防止する目的で設けられているシステムでもあり、ゲーム運営が初期設定している仕様なので、プレイヤーがどう足掻いても変更できない。だが唯一、フレンドでもなくギルドメンバーでもない人物とやり取りできる方法がある。
それは銀行か商品売買の取引ページからのメッセージだ――これを利用すれば、フレンド登録していないプレイヤーとやり取りをすることが可能だ。
小虎も立ち止まって一緒になって困り顔で考えていると、紅蓮が尋ねてきた。
「その方の名前は? 名前さえ分かれば、街のギルドホールで探せますよ? 街の中に居なければダメですけどね」
「――う~ん。名前も聞いてなくて……」
それを聞いた小虎が「ならだめじゃん」と匙を投げると再び歩き始める。
先に述べたシステムは匿名での取引も可能であり、少女が取引したのもこの例外ではない様だ――。
「あはは……面目ないです……」
苦笑いして謝る少女に紅蓮は小さなため息をついて、小虎を追いかけるように歩き出すと、その後ろをしょんぼりしながら少女も続く。
それからしばらく、あてもなく繁華街を歩いていると、ふとある店が紅蓮の目に止まった。
店先には信楽焼のたぬきの置物が置かれている。頭には笠を被り、左手には大福帳、右手には徳利を持ち、大きな目を見開いて不思議そうに首を傾げている姿はなんとも愛らしい。
他の店の軒先には置いていないこの置物と、汚らしい外見がなんとも周りと違って浮いて見える
目立つと言う点では利があるが、綺麗な店ならまだしも見劣りして目立つというのも考えものだ――。
立ち止まった紅蓮の視線の先には『刃物一鉄』と書かれた看板の掛かった古びた店が建っていた。
「ここは……聞いたことがあります。名御屋には凄腕の鍛冶屋が居て、その名前も同じ『一徹』確か日本一の刀鍛冶のお店だったはず」
(ここなら、あの武器も直せるかもしれない……)
紅蓮はそう考えながら、大切に懐にしまったていた美しい装飾が施された黒の柄には不釣り合いな折れた短刀を見下ろす。
神妙な表情で店の引き戸を開けると、至る場所にホコリを被った店内には年老いた屈強な男が煙管を咥えて座っていた。
老人はその鋭い目を更に細めると、店の入り口に立ち尽くしている紅蓮を睨んだ。
その気迫に一瞬は気圧された紅蓮だったが、すぐに冷静になって声を掛ける。
「――修理を頼みたい武器があるのですが、お願いできますか……?」
「…………ほう。どれ、見せてみぃ」
「はい」
紅蓮は頷き、懐からゆっくりと折れた短刀を取り出すと、それを老人に手渡す。
老人はしばらくその短刀を様々な角度から見た後に首を横に振った――。
「これは直せんな……いや、直す直さぬという話の前の問題じゃな……」
「……そう、ですか……」
紅蓮は今までで一番悲しそうな表情をして、老人が差し出した短刀を受け取った。
普段あまり表情を変えない彼女のその悲しそうな表情から、彼女の手に握られた短刀が如何に思い入れのある物かが窺い知れる。
老人もその悲しそうな表情に気が付き、尋ね返して来た。
「――それほど大事な得物なのか? ならば、方法がないわけではない」
「……本当ですか!?」
紅蓮はそれを聞いて、一度は曇らせた表情をパァーっと明るくさせる。
老人は咥えていた煙管を逆さにして灰を落とすと、再び煙管に煙草を入れ、火をつけ再びゆっくりと話始めた。
「壊れているも何も、その得物はまだ完成しておらん。それを完成させるには特殊な素材が必要になる」
「必要な素材ですか?」
「そうじゃ。竜神の髭と大熊の大牙が必要なのじゃが、持っておるかの?」
「……竜神の髭と大熊の大牙」
紅蓮は急いでコマンド画面からアイテムを選んで中身を確認すると、そこから白い紐のような物を取り出し、それを老人に差し出した。
老人は鋭く釣り上がった目を大きく開くと、紅蓮の手の中にあるそれを受け取った――。
「ふむ。これは紛れもなく竜神の髭じゃな……なるほどのう。これを持っておるということは、戦闘の実力は十分過ぎるほどあるようじゃな……」
「ですが、大熊の大牙は持ってないですね。すぐに取りに行ってきます。……それで、お代の方はおいくらでしょうか?」
「代金は良い。こんな代物に触れる機会はめったにないからのう、この頃手応えのある武器を打てずに鬱々としておったからなぁ」
「ですが……」
それを聞いた紅蓮は少し申し訳なさそうな表情になる。
「そういえば。お姉さんはここで誰かと会うんじゃなかったの?」
「えっ? う~ん。でも、どこに居るか分からないし。まだフレンドにも登録してないから、メッセージとか飛ばせないんだ。だから、どうしよっか……」
少女は困り果て、思わず口をつぐんでしまう。
まあ、事件当時。友達に誘われて始めたのはいいものの、他の街に居てどうしようもなくなる……なんてことは、彼女に限った話ではなくよくある話だった。
システム上。フレンドまたは同じギルドのメンバー意外とはボイスチャットもメッセージも送れない仕様になっている。
これは嫌がらせを防止する目的で設けられているシステムでもあり、ゲーム運営が初期設定している仕様なので、プレイヤーがどう足掻いても変更できない。だが唯一、フレンドでもなくギルドメンバーでもない人物とやり取りできる方法がある。
それは銀行か商品売買の取引ページからのメッセージだ――これを利用すれば、フレンド登録していないプレイヤーとやり取りをすることが可能だ。
小虎も立ち止まって一緒になって困り顔で考えていると、紅蓮が尋ねてきた。
「その方の名前は? 名前さえ分かれば、街のギルドホールで探せますよ? 街の中に居なければダメですけどね」
「――う~ん。名前も聞いてなくて……」
それを聞いた小虎が「ならだめじゃん」と匙を投げると再び歩き始める。
先に述べたシステムは匿名での取引も可能であり、少女が取引したのもこの例外ではない様だ――。
「あはは……面目ないです……」
苦笑いして謝る少女に紅蓮は小さなため息をついて、小虎を追いかけるように歩き出すと、その後ろをしょんぼりしながら少女も続く。
それからしばらく、あてもなく繁華街を歩いていると、ふとある店が紅蓮の目に止まった。
店先には信楽焼のたぬきの置物が置かれている。頭には笠を被り、左手には大福帳、右手には徳利を持ち、大きな目を見開いて不思議そうに首を傾げている姿はなんとも愛らしい。
他の店の軒先には置いていないこの置物と、汚らしい外見がなんとも周りと違って浮いて見える
目立つと言う点では利があるが、綺麗な店ならまだしも見劣りして目立つというのも考えものだ――。
立ち止まった紅蓮の視線の先には『刃物一鉄』と書かれた看板の掛かった古びた店が建っていた。
「ここは……聞いたことがあります。名御屋には凄腕の鍛冶屋が居て、その名前も同じ『一徹』確か日本一の刀鍛冶のお店だったはず」
(ここなら、あの武器も直せるかもしれない……)
紅蓮はそう考えながら、大切に懐にしまったていた美しい装飾が施された黒の柄には不釣り合いな折れた短刀を見下ろす。
神妙な表情で店の引き戸を開けると、至る場所にホコリを被った店内には年老いた屈強な男が煙管を咥えて座っていた。
老人はその鋭い目を更に細めると、店の入り口に立ち尽くしている紅蓮を睨んだ。
その気迫に一瞬は気圧された紅蓮だったが、すぐに冷静になって声を掛ける。
「――修理を頼みたい武器があるのですが、お願いできますか……?」
「…………ほう。どれ、見せてみぃ」
「はい」
紅蓮は頷き、懐からゆっくりと折れた短刀を取り出すと、それを老人に手渡す。
老人はしばらくその短刀を様々な角度から見た後に首を横に振った――。
「これは直せんな……いや、直す直さぬという話の前の問題じゃな……」
「……そう、ですか……」
紅蓮は今までで一番悲しそうな表情をして、老人が差し出した短刀を受け取った。
普段あまり表情を変えない彼女のその悲しそうな表情から、彼女の手に握られた短刀が如何に思い入れのある物かが窺い知れる。
老人もその悲しそうな表情に気が付き、尋ね返して来た。
「――それほど大事な得物なのか? ならば、方法がないわけではない」
「……本当ですか!?」
紅蓮はそれを聞いて、一度は曇らせた表情をパァーっと明るくさせる。
老人は咥えていた煙管を逆さにして灰を落とすと、再び煙管に煙草を入れ、火をつけ再びゆっくりと話始めた。
「壊れているも何も、その得物はまだ完成しておらん。それを完成させるには特殊な素材が必要になる」
「必要な素材ですか?」
「そうじゃ。竜神の髭と大熊の大牙が必要なのじゃが、持っておるかの?」
「……竜神の髭と大熊の大牙」
紅蓮は急いでコマンド画面からアイテムを選んで中身を確認すると、そこから白い紐のような物を取り出し、それを老人に差し出した。
老人は鋭く釣り上がった目を大きく開くと、紅蓮の手の中にあるそれを受け取った――。
「ふむ。これは紛れもなく竜神の髭じゃな……なるほどのう。これを持っておるということは、戦闘の実力は十分過ぎるほどあるようじゃな……」
「ですが、大熊の大牙は持ってないですね。すぐに取りに行ってきます。……それで、お代の方はおいくらでしょうか?」
「代金は良い。こんな代物に触れる機会はめったにないからのう、この頃手応えのある武器を打てずに鬱々としておったからなぁ」
「ですが……」
それを聞いた紅蓮は少し申し訳なさそうな表情になる。
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