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名御屋へ・・・9
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それから数分して、メルディウスとマスターの注文した料理をメイド服を着た2人のNPCが運んできた。
そのメイド達は銀色の丸い蓋の着いた皿を手に一礼して部屋に入ると、テーブルの上にそれを置いた。
「食べ終わりましたら、もう一度お呼びください。食器を下げに参ります」
形式的にそう言った彼女達は頭を下げ、そそくさと部屋を出ていった2人を見送りながら小虎と少女が口を開く。
「へぇ~。まるで普通の人間みたいだよね~」
「そうだね~。ここがゲームじゃなかったら」
2人のその言葉はもっともだろう。NPCの動作は全てAIで設定され、それ以外のことはできないのだが、見た目は小虎などと同じく意思を持ったプレイヤーにしか見えない。
まあ、この世界はゲームの世界で、その体を構成しているデータは同じなので、同じと言えば同じなのだろうが……。
「なにぼさっとしてんだ? 小虎。おめぇーも早く飯頼めよ。今日は俺達は居ねぇーんだ……あいつと紅蓮の護衛はお前に任せるからな!」
「――メルディウスよ。ホテルの中ならば何も問題はなかろう。それより、お前は朝から本当にそれを食べるのか……?」
困惑しながらメルディウスの目の前に置かれた大皿を指差して言った。
だが、マスターが驚くのも無理はない。何故なら、そこには大皿からはみ出しそうなほど大きなステーキがもくもくと湯気を上げていたのだ。
正直。朝食にステーキとは、随分と豪勢な料理と言わざるを得ないだろう。
「男なら朝からこれくらい当然だろ? それより……なんだ? じじい。その年寄りみたいな朝食は――」
不満そうにメルディウスは眉をひそめながら、今度はマスターの目の前に置かれた皿を指差した。
そこには焼き魚に汁物、そしてご飯というシンプル過ぎるくらいの食事が並んでいた。
「ふふふっ。一汁一菜……これ武人の心得なり。腹が減っては戦はできぬが、食べ過ぎてもいかん……動けなくなるからな。食事とは、腹八分に留めるのが最も良いのだ」
マスターがほくそ笑みながらそう告げると、メルディウスは「くだらねぇー」と吐き捨て、フォークを手に目の前のステーキにかぶりついた。
獣の様に肉にかぶりついてはご飯をかき込むメルディウスとは対照的に、手を合わせ「いただきます」と背筋を伸ばし、礼儀正しく食事を取り始めるマスター。
まさに正反対の2人が、お互いに向い合って食事を取る姿を見て、昔を思い出しているのか紅蓮はくすっと微笑みを浮かべ、ベッドの上でトランプをして遊んでいる小虎と少女に声を掛けた。
「私達も朝食を頼みましょう。2人もお腹すいたでしょうし」
「やったー! やっとご飯だー!」
「そうですね! 何を食べようかな~♪」
走ってきた2人は紅蓮の持っているメニュー表を食い入るように見つめている。
それを優しい眼差しで見つめていた紅蓮の耳に、メルディウスの声が飛び込んできた。
彼は大きく膨れた腹を叩きながら、満足そうに叫ぶ。
「よーし! 飯も食ったし。いっちょ行ってくるわっ!」
「……ご馳走様でした――では儂も出る! メルディウス。日が暮れる前にはここで落ち合おう!」
「おう!」
食事を終えた2人は徐に席を立つと拳と拳をぶつけ合って、ニヤリと笑みを浮かべ部屋を出ていった。
そんな2人を見て紅蓮はふと、表情を曇らせながら思った。
(私は本当に行かなくて良いのでしょうか……)
部屋の一点を見つめ、小さくため息をつく。
白雪、メルディウス、マスターだけに、バロンの捜索を任せるのが心苦しかった。
ここ数日。野営続きで昼にも殆ど休息すら取らずに、この名御屋まで走ってきた――皆、相当疲労は蓄積しているはずであり。その条件は紅蓮もマスター達も変わりはない。
にも関わらず。自分達だけ、ホテルでゆっくりとくつろぐのはどうしても気が引けてしまう。
その様子に気付いた少女が、首を傾げながら尋ねてきた。
「紅蓮ちゃん大丈夫だよ。あの2人は強いから、何の心配もいらないと思うよ?」
「……それは分かっています。ただ、私達だけゆっくりしていていいのかと思ったので……」
その紅蓮の言葉に、少女は少し考える素振りをすると、突然。紅蓮の顔の前で微笑みながら言った。
「ただ待ってるだけも退屈だし。一緒に街を見て回ろっか! もしかしたら、探している人がひょっこり現れるかもだし。そしたら、サボってるわけじゃないよね?」
「――そ、そうですね。それは良い考えかもしれません」
少女の思わぬ提案に紅蓮は頷くと、ぎこちなく微笑み返した。
正直。このままホテルの部屋で待っていたら、心苦しくて休んでいても休んだ気にならないところだったので、彼女の提案はまさにうってつけだった。
それから3人は注文した食事――小虎はカレー。紅蓮と少女はサンドイッチを食べ終えると、軽く身支度を整え名御屋の市街地へと向かった。
そのメイド達は銀色の丸い蓋の着いた皿を手に一礼して部屋に入ると、テーブルの上にそれを置いた。
「食べ終わりましたら、もう一度お呼びください。食器を下げに参ります」
形式的にそう言った彼女達は頭を下げ、そそくさと部屋を出ていった2人を見送りながら小虎と少女が口を開く。
「へぇ~。まるで普通の人間みたいだよね~」
「そうだね~。ここがゲームじゃなかったら」
2人のその言葉はもっともだろう。NPCの動作は全てAIで設定され、それ以外のことはできないのだが、見た目は小虎などと同じく意思を持ったプレイヤーにしか見えない。
まあ、この世界はゲームの世界で、その体を構成しているデータは同じなので、同じと言えば同じなのだろうが……。
「なにぼさっとしてんだ? 小虎。おめぇーも早く飯頼めよ。今日は俺達は居ねぇーんだ……あいつと紅蓮の護衛はお前に任せるからな!」
「――メルディウスよ。ホテルの中ならば何も問題はなかろう。それより、お前は朝から本当にそれを食べるのか……?」
困惑しながらメルディウスの目の前に置かれた大皿を指差して言った。
だが、マスターが驚くのも無理はない。何故なら、そこには大皿からはみ出しそうなほど大きなステーキがもくもくと湯気を上げていたのだ。
正直。朝食にステーキとは、随分と豪勢な料理と言わざるを得ないだろう。
「男なら朝からこれくらい当然だろ? それより……なんだ? じじい。その年寄りみたいな朝食は――」
不満そうにメルディウスは眉をひそめながら、今度はマスターの目の前に置かれた皿を指差した。
そこには焼き魚に汁物、そしてご飯というシンプル過ぎるくらいの食事が並んでいた。
「ふふふっ。一汁一菜……これ武人の心得なり。腹が減っては戦はできぬが、食べ過ぎてもいかん……動けなくなるからな。食事とは、腹八分に留めるのが最も良いのだ」
マスターがほくそ笑みながらそう告げると、メルディウスは「くだらねぇー」と吐き捨て、フォークを手に目の前のステーキにかぶりついた。
獣の様に肉にかぶりついてはご飯をかき込むメルディウスとは対照的に、手を合わせ「いただきます」と背筋を伸ばし、礼儀正しく食事を取り始めるマスター。
まさに正反対の2人が、お互いに向い合って食事を取る姿を見て、昔を思い出しているのか紅蓮はくすっと微笑みを浮かべ、ベッドの上でトランプをして遊んでいる小虎と少女に声を掛けた。
「私達も朝食を頼みましょう。2人もお腹すいたでしょうし」
「やったー! やっとご飯だー!」
「そうですね! 何を食べようかな~♪」
走ってきた2人は紅蓮の持っているメニュー表を食い入るように見つめている。
それを優しい眼差しで見つめていた紅蓮の耳に、メルディウスの声が飛び込んできた。
彼は大きく膨れた腹を叩きながら、満足そうに叫ぶ。
「よーし! 飯も食ったし。いっちょ行ってくるわっ!」
「……ご馳走様でした――では儂も出る! メルディウス。日が暮れる前にはここで落ち合おう!」
「おう!」
食事を終えた2人は徐に席を立つと拳と拳をぶつけ合って、ニヤリと笑みを浮かべ部屋を出ていった。
そんな2人を見て紅蓮はふと、表情を曇らせながら思った。
(私は本当に行かなくて良いのでしょうか……)
部屋の一点を見つめ、小さくため息をつく。
白雪、メルディウス、マスターだけに、バロンの捜索を任せるのが心苦しかった。
ここ数日。野営続きで昼にも殆ど休息すら取らずに、この名御屋まで走ってきた――皆、相当疲労は蓄積しているはずであり。その条件は紅蓮もマスター達も変わりはない。
にも関わらず。自分達だけ、ホテルでゆっくりとくつろぐのはどうしても気が引けてしまう。
その様子に気付いた少女が、首を傾げながら尋ねてきた。
「紅蓮ちゃん大丈夫だよ。あの2人は強いから、何の心配もいらないと思うよ?」
「……それは分かっています。ただ、私達だけゆっくりしていていいのかと思ったので……」
その紅蓮の言葉に、少女は少し考える素振りをすると、突然。紅蓮の顔の前で微笑みながら言った。
「ただ待ってるだけも退屈だし。一緒に街を見て回ろっか! もしかしたら、探している人がひょっこり現れるかもだし。そしたら、サボってるわけじゃないよね?」
「――そ、そうですね。それは良い考えかもしれません」
少女の思わぬ提案に紅蓮は頷くと、ぎこちなく微笑み返した。
正直。このままホテルの部屋で待っていたら、心苦しくて休んでいても休んだ気にならないところだったので、彼女の提案はまさにうってつけだった。
それから3人は注文した食事――小虎はカレー。紅蓮と少女はサンドイッチを食べ終えると、軽く身支度を整え名御屋の市街地へと向かった。
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