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名御屋へ・・・6
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庶民的な感性の持ち主だった少女にとって、そのことが相当シックだったのか、唖然とした表情をしている。
「……この人達っていったい……」
廊下で立ち尽くして少女が苦笑いを浮かべていると、そこに紅蓮が話し掛けてきた。
「どうしました? 何か気になることでもありましたか?」
少女は自分の身長とり小さい紅蓮に視線を移し『ゲームと言っても、子供のうちからこんな贅沢教えていいの?』と思い。だが、それを言葉にできずに口をパクパクさせながら、困惑した表情を浮かべていたのだがすぐに切り替える。
(ううん。こんな状況なんだから少しくらいの贅沢いいよね! ……まあ。少しじゃないか……)
首を横に振って自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、彼女の返答を待ちながら不思議そうに小首を傾げ、自分の方をじっと見ている紅蓮に向かってぎこちなく笑みを浮かべ。
「い、いえ。皆さんはこのクラスのホテル始めてじゃないんだな~って思って……」
その少女の言葉に、紅蓮は当然の様に淡々と答えた。
「ああ、私達はホテルに住んでるようなものですし当然です。そうですよね白雪」
「はい、紅蓮様。それにしてもここは狭いですね~。まあ、私達のギルドホールは特別広いですからね。ですが、この部屋しか借りれなかったのであれば、この部屋を男女で分けなければ……」
紅蓮はゆっくりと部屋の中を見渡している中、白雪が深刻そうな面持ちで考え込んでいる。
部屋中を見渡していた紅蓮が、徐に動き出したかと思うと、部屋に備え付けられている高級そうな革製のソファーに腰を降ろして、手招きしながら白雪と少女を呼んだ。
紅蓮は癖なのか、目の前のテーブルにお湯を沸かすケトルの様な道具を取り出し。手際良くお湯を沸かすと、その後にアイテム内から取り出したきゅうすで同じく取り出した湯のみの中にお茶を注ぎ込む。
その隣に座る白雪。その横に緊張した様子で腰を下ろすと、少女は何故か緊張した様子で肩をすぼめている。
紅蓮はそんな少女の前にお茶を置くと、肩を強張らせている彼女に話し掛けた。
「どうかしました?」
「い、いえ。こんな高そうな場所に初めて来て……き、緊張しちゃって……」
「ああ、なるほど」
納得したように頷くと、紅蓮は湯呑みに手を掛け、落ち着いた様子で口に運ぶ。
っと、同じくお茶を飲んでいた白雪が一息付いて湯呑をテーブルに置くと、落ち着いた口調で言った。
「――そんな事では、千代にある私達のギルドホールに行ったら大変ですね」
「は、はあ……」
(ここより凄いところにこの人達は住んでるんだ。私、本当にこの人達の仲間になっていいのかな……)
少女は苦笑いを浮かべながら、今更ながらに自分の選択に疑問を感じていた。
その時、部屋の扉が開いてマスター達が戻ってきた。
「なかなか悪くない風呂だったな」
「そうか? 俺はあのタオルを持ったライオンの像が気に食わなかったな。風呂の中央にあんなもん置きやがってよー」
「兄貴違うよ。あれはマーライオンって言うんだぜ! 前に本で見たから知ってるんだ~」
腕を曲げて上腕二頭筋を強調させた格好にタオルを担いだ謎のライオンの像を、マーライオンだと言い張り。得意げに胸を張っている小虎に、メルディウスの眉間がピクピクと脈打つ。
「うるせぇー! 自慢か小虎! お前はいつも一言多いんだよ!」
「僕は何も悪いことしてないのに~」
メルディウスが拳を振り上げると、小虎は慌てて紅蓮のソファーの後ろに隠れた。
紅蓮はちらっと一瞬だけ小虎の方に視線を向け、すぐにマスターの方を向き直し、徐ろに立ち上がった。
「さあ、もうこんな時間ですし。私達もお風呂に入ってきましょう。起きたらすぐに情報収集に街に出ないといけません」
「はい。紅蓮様」
「あっ、はい! 私も……」
紅蓮の突然の行動に、持っていた湯呑みを急いでソファーの前のテーブルに置くと少女は慌てた様子で、ゆっくりと扉の方へと歩いて行く彼女達の後を追った。
歩いていた紅蓮とマスターが交差する際、紅蓮が小声でそっとマスターに呟く。
「マスター。皆が寝た後にお話があります……」
マスターは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに険しい表情へと変わり「うむ」と頷いた。
通り過ぎた紅蓮の決意を秘めた背中を見つめ、マスターはこの後、彼女に言われるであろう言葉の真意を読み取れた気がした。
紅蓮達がお風呂から上がると、皆相当疲れていたのかすぐに寝入ってしまった。まあ、休憩なく何時間も馬に揺られていれば当然かもしれないが……。
紅蓮は横で寝ている白雪と少女が寝たのを見計らうと、1人ベッドから抜け出した。
部屋に置かれた天蓋付きのキングサイズのベッドには、白雪がプライバシー保護の役割で掛けたカーテンで仕切られている。
紅蓮はベッドに合わさるようにして寝ている2人の寝顔を見て顔をほころばせると、2人を起こさないようにそっとカーテンを開けて外に出た。
外のバルコニーには、後ろ手を組みながら窓から外の風景を見ているマスターの姿があった。
バルコニーからの景色は名御屋の街が一望できるようになっていて、まるで迷路の様に張り巡らされた路地は来た時と同じく、多くの店が軒先の明かりで道しるべのように数多くの道を浮かび上がらせている。
「……この人達っていったい……」
廊下で立ち尽くして少女が苦笑いを浮かべていると、そこに紅蓮が話し掛けてきた。
「どうしました? 何か気になることでもありましたか?」
少女は自分の身長とり小さい紅蓮に視線を移し『ゲームと言っても、子供のうちからこんな贅沢教えていいの?』と思い。だが、それを言葉にできずに口をパクパクさせながら、困惑した表情を浮かべていたのだがすぐに切り替える。
(ううん。こんな状況なんだから少しくらいの贅沢いいよね! ……まあ。少しじゃないか……)
首を横に振って自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、彼女の返答を待ちながら不思議そうに小首を傾げ、自分の方をじっと見ている紅蓮に向かってぎこちなく笑みを浮かべ。
「い、いえ。皆さんはこのクラスのホテル始めてじゃないんだな~って思って……」
その少女の言葉に、紅蓮は当然の様に淡々と答えた。
「ああ、私達はホテルに住んでるようなものですし当然です。そうですよね白雪」
「はい、紅蓮様。それにしてもここは狭いですね~。まあ、私達のギルドホールは特別広いですからね。ですが、この部屋しか借りれなかったのであれば、この部屋を男女で分けなければ……」
紅蓮はゆっくりと部屋の中を見渡している中、白雪が深刻そうな面持ちで考え込んでいる。
部屋中を見渡していた紅蓮が、徐に動き出したかと思うと、部屋に備え付けられている高級そうな革製のソファーに腰を降ろして、手招きしながら白雪と少女を呼んだ。
紅蓮は癖なのか、目の前のテーブルにお湯を沸かすケトルの様な道具を取り出し。手際良くお湯を沸かすと、その後にアイテム内から取り出したきゅうすで同じく取り出した湯のみの中にお茶を注ぎ込む。
その隣に座る白雪。その横に緊張した様子で腰を下ろすと、少女は何故か緊張した様子で肩をすぼめている。
紅蓮はそんな少女の前にお茶を置くと、肩を強張らせている彼女に話し掛けた。
「どうかしました?」
「い、いえ。こんな高そうな場所に初めて来て……き、緊張しちゃって……」
「ああ、なるほど」
納得したように頷くと、紅蓮は湯呑みに手を掛け、落ち着いた様子で口に運ぶ。
っと、同じくお茶を飲んでいた白雪が一息付いて湯呑をテーブルに置くと、落ち着いた口調で言った。
「――そんな事では、千代にある私達のギルドホールに行ったら大変ですね」
「は、はあ……」
(ここより凄いところにこの人達は住んでるんだ。私、本当にこの人達の仲間になっていいのかな……)
少女は苦笑いを浮かべながら、今更ながらに自分の選択に疑問を感じていた。
その時、部屋の扉が開いてマスター達が戻ってきた。
「なかなか悪くない風呂だったな」
「そうか? 俺はあのタオルを持ったライオンの像が気に食わなかったな。風呂の中央にあんなもん置きやがってよー」
「兄貴違うよ。あれはマーライオンって言うんだぜ! 前に本で見たから知ってるんだ~」
腕を曲げて上腕二頭筋を強調させた格好にタオルを担いだ謎のライオンの像を、マーライオンだと言い張り。得意げに胸を張っている小虎に、メルディウスの眉間がピクピクと脈打つ。
「うるせぇー! 自慢か小虎! お前はいつも一言多いんだよ!」
「僕は何も悪いことしてないのに~」
メルディウスが拳を振り上げると、小虎は慌てて紅蓮のソファーの後ろに隠れた。
紅蓮はちらっと一瞬だけ小虎の方に視線を向け、すぐにマスターの方を向き直し、徐ろに立ち上がった。
「さあ、もうこんな時間ですし。私達もお風呂に入ってきましょう。起きたらすぐに情報収集に街に出ないといけません」
「はい。紅蓮様」
「あっ、はい! 私も……」
紅蓮の突然の行動に、持っていた湯呑みを急いでソファーの前のテーブルに置くと少女は慌てた様子で、ゆっくりと扉の方へと歩いて行く彼女達の後を追った。
歩いていた紅蓮とマスターが交差する際、紅蓮が小声でそっとマスターに呟く。
「マスター。皆が寝た後にお話があります……」
マスターは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに険しい表情へと変わり「うむ」と頷いた。
通り過ぎた紅蓮の決意を秘めた背中を見つめ、マスターはこの後、彼女に言われるであろう言葉の真意を読み取れた気がした。
紅蓮達がお風呂から上がると、皆相当疲れていたのかすぐに寝入ってしまった。まあ、休憩なく何時間も馬に揺られていれば当然かもしれないが……。
紅蓮は横で寝ている白雪と少女が寝たのを見計らうと、1人ベッドから抜け出した。
部屋に置かれた天蓋付きのキングサイズのベッドには、白雪がプライバシー保護の役割で掛けたカーテンで仕切られている。
紅蓮はベッドに合わさるようにして寝ている2人の寝顔を見て顔をほころばせると、2人を起こさないようにそっとカーテンを開けて外に出た。
外のバルコニーには、後ろ手を組みながら窓から外の風景を見ているマスターの姿があった。
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