オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~

北条氏成

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2人で外出6

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 今度は首も両手と一緒にブンブンと振って、エリエが全力で今の発言を否定する。

「ああ、もしももないから、大丈夫だよ星。私はいつまでもずっと星と一緒にいるから!」
「……はぁ~。良かったです」
「あはは……星は心配性なんだから……」

 彼女の言葉を聞いた星はほっとした様子でにっこりと微笑みを浮かべた。そんな星の顔を見て、エリエは思わず苦笑いを浮かべた。

 その時、星はふと何者かの気配を感じて辺りに気を配る。
 繁華街に出て来た時に道の両端にある建物の屋根から、何者かの視線を感じた。

(……なに? 誰かに見られている気がする……)

 不安そうにきょろきょろと辺りを見渡していると、星のその様子を不思議に思ったエリエが話し掛けてきた。

「星どうしたの? 何かあった?」
「えっ? いえ、なんでもないです」
(……気のせいだよね)

 星はそう心の中で自分に言い聞かせると、エリエに向かって笑みを浮かべた。

 っと次の瞬間。エリエは星の手を引くと、いきなり走り出した。
 驚いたように目を丸くさせた星が、エリエに向かって叫ぶ。

「ど、どうしたんですか!?」
「ああ、急に甘い物が食べたくなってさ!」
「……ああ、なるほどー」

 突然走り出すエリエの行動に、もしかしたら彼女も自分と同じ様に何かを感じたのかと期待したのだが、ただの星はちょっと残念そうな顔をしていた。

 その後、2人は近くの甘味処にの前にきた。
 気がつくと空高く飛んでいったはずのレイニールも、ちょこんと星の頭の上に乗っている。しかし、未だに不機嫌なのは変わらないようで、そっぽを向いたままなのだが……。

 星達は街の表通りに面した場所にある茶色い瓦屋根のお店の前にいた。
 そこに掲げられている古そうな木の看板には『甘味処 白タマ庵』と筆で書かれている。

 星がその看板を見上げていると、エリエがのれんの掛かった引き戸を開いて店内に入っていった。それに気付いた星も、慌てて彼女のその後を追いかける。

 店内には向い合って座る横に広いソファーの様な座椅子の背もたれ部分で、各座席を区切られており。木材独特のおうとつを活かした古そうな木のテーブルの頭上には、和紙で作られたランプが柔らかい光を放っていた。

 また店内のあちこちには観葉植物が置かれている。その落ち着いた大人の雰囲気の中で、店の中央に置かれた巨大な2体の招き猫のぬいぐるみがとてもミスマッチだ。

 そのぬいぐるみを見て、エリエがぬいぐるみを抱いていた姿を思い出し、思わず星がくすっと笑みを浮かべる。

 そんな星に、エリエが満面の笑みで話し掛けてきた。

「ここはね。宇治抹茶金時あんみつが絶品なんだよ~」
「……エリエさんは本当にお菓子を食べるのが好きなんですね」
「うん! まあ、リアルじゃなかなか食べれないしね。今日は私のおごりだから遠慮しないでいいよ~」

 そう呟くと、エリエは手を上げて店主を呼んだ。

 フリーダムの中ではサラザのように、プレイヤーが自ら店舗を経営していることも少なくない。
 それは一定のレベルを超えると、プレイヤーは装備アイテムなどの収集以外はやることがなくなる為だ。

 ゲームをプレイしていて、最も大変なのはキャラクターのレベル上げだろう。これはレベル制MMORPGをプレイした者なら誰しもが経験していることだ――。

 武器の入手は資金でプレイヤーが店売りしている物を購入すればいいが、レベルに必要な経験値だけはそうはいかない。
 毎日レベルに似合った経験値のいい狩場に缶詰になってレベルを上げるなんていうのは廃人と呼ばれるトッププレイヤーならば、日常的に行っている行為だろう。

 レベルアップに必要な膨大な経験値を入手するには、これまた膨大な時間モンスターを狩り続けるしかない。
 正直。選り好みさえしなければ、その中で得た資金で必要な装備はあらかた揃えることができる。

 しかし、日々モンスターを狩り続けるという苦行も、無事にレベルをカンストしてしまえば、今度は日々やることがなくなったという喪失感と退屈という苦行に変わる。この苦行の時期が、一番ゲームを止めてしまうプレイヤーが続出する時期と言ってもいい。

 それを避ける為に、プレイヤーはそれぞれにダンジョン攻略に資金を調達しながら、運営がイベントを開催するの待つのだ。
 効率は悪いが狩りとは違い、待ってるだけで資金を調達できる分、このような暇つぶしを兼ねた資金調達をしている者も少なくないのだ。

 まあ、結局はこっちの副業の方が忙しく。本命だったはずのダンジョン攻略が疎かになるケースが多い。
 凄いプレイヤーはゲーム内はNPCの従業員に殆どの業務を任せて、自分はリアルで実際にゲーム内でオープンしていたショップを経営する者までいるくらいだ――。

「それじゃー。いつものを3つで!」
「はい。かしこまりました!」

 店主の少女は大きな猫のプリントが入ったエプロンを身に着け笑顔で返事をすると、店の奥へと消えていった。
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