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2人で外出3
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エミル達もそういった情報を仕入れにいく為に、街に用事がある時はギルドホールに立ち寄っている。
今のところ確証のある情報は少ないものの。ゲームの中に閉じ込められた時より、確実にその数は減っているのも事実。
エリエのこの宿屋の者達を軽蔑する言動も、思い通りにいかない状況への苛立ちの現れでもあるのかもしれない。
「もう行こう! 星」
「……えっ? は、はい」
エリエに手を引かれ、強引にその場を離れる。憤っているエリエに、星はそれ以上は何も言えなかった。
2人が街の裏の方に入って行くと、そこにはピンクと紫色のネオンの看板が掲げられている怪しげなお店が一軒だけぽつんと佇んでいた。
「――エ、エリエさん……ここ怖いですよ。早く戻りましょう……」
星はエリエの後ろに隠れるようにしながら、不安そうな声で言った。
「大丈夫だよ。私は何回もここに来てるんだから」
「……えっ?」
(……何回もってどういうこと?)
微笑みながら自分を見るエリエを見上げ、星はそう思いながら首を傾げた。
エリエは一瞬の迷いもなく扉を開く、星は透かさずエリエの体の後ろに隠れた――。
「あら~。いらっしゃ~い」
エリエの後ろに隠れた星の耳元に飛び込んできたその独特の声に、星は聴き覚えがある。その声の主を確認すべく、星が恐る恐るエリエの後ろから顔を覗かせた。
星の姿を見つけると、その声の主は歓喜の声を上げる。
「あら~。星ちゃんじゃない。来てくれてうれしいわ~」
「――サラザ。急に近付いちゃダメだよ。星が怯えてるから!」
星の顔を見つめ、両手を前に突き出して今にも飛びついてきそうな体制でにっこりと微笑んでいるサラザに向かってエリエが言った。
星は急に目の前に現れたサラザに、体を小刻みに震わせ、まるで怯えた子犬のような瞳を向けている。
まあ、目の前に筋肉で武装したオカマがいれば、大の大人の男であっても恐怖を覚える。体格差のある星には、人を通り越してデーモンに見えているに違いない。
「もう。いい加減に私にも懐いてほしいわ~」
「――星だってそのうち慣れるよ。それより、ちょっと話があるんだけどさ」
「ああ、分かってるわ~。さっきメッセージで言ってたやつね!」
サラザは微笑むと、エリエは険しい表情で頷く。
星はそんな2人の会話している様子を見て、首を傾げている。その場の状況を理解できてない星に、エリエが優しく話し掛けた。
「星。悪いんだけど、少しサラザと大事な話をしないとダメだから、ちょっとだけそこのテーブルでレイニールと待っててもらっていい?」
店の入り口に立っていたエリエが星の肩を指で優しくトントンと突くと、店のテーブルを指差した。
店内にはバーカウンターとテーブル席が用意されていて、カウンターの後ろの棚にはライトによって照らし出された数多くのボトルが宝石の様に様々な色に輝いていた。
視線をテーブルの方に移すと、足元に埋め込まれ店内の至る場所に設置されたピンクや紫のライトが薄暗い店内全体を照らしている。
店の奥には紫色の薄いカーテンがかかったステージが設けてあり、その上のミラーボールが怪しいく光を反射している。
何というか、まるでバブル期のダンスホールの様だ――。
(ここって何をする場所なんだろう……)
そんなことを考えながら、ミラーボールをじっと見つめていた星はの耳に飛び込んできた自分とレイニールを呼ぶエリエの声に慌てて返事をする。
「は、はい!」
「どうして我輩の名を呼び捨てにしてるのじゃ! 我輩を呼び捨てにして良いのは主だけじゃ!」
星は空中で激昂して両手を振っているレイニールを抱きかかえると、お店の隅の大きなテーブルに腰を下ろした。
怒りを抑えられない様子のレイニールはブツブツと文句を言っていると、サラザが両手にジュースの入ったジョッキグラスを2人の前に置いた。
「ごめんなさいね~。すぐに終わるから、ちょっとこれでも飲んで待ってて~」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「うむ。頂くのじゃ!」
星とレイニールは目の前のグラスを手に取ると、サラザは微笑んで小さく手を振ると、バーカウンターに座っているエリエの方へと戻っていく。
目の前に置かれたジョッキグラスを両手で持ってジュースを飲んで「おいしいね」と、微笑み合っている2人を遠目で見ていたエリエが微笑みを浮かべている。そんな彼女に、サラザが神妙な面持ちで尋ねる。
「それで、エミルは本気でダークブレットを攻めるつもりなの?」
「……うん。今朝、星があそこの連中に襲われたらしくて……それが原因だと思う。でも、話では2回目らしいんだよね。星が襲われるのが」
エリエは表情を曇らせて小さく呟く。
それを聞いたサラザは星をちらっと見ると、エリエに顔を近付けて徐ろに口を開いた。
「――でも、あそこの規模は世界でも5本の指に入る組織よ? それを本気で潰せると思ってるのかしら……」
「そうなんだよね~」
エリエはその言葉を聞いて一瞬は難しい顔をしたものの、すぐに脱力しテーブルに両手を投げ出すようにべたーっと倒れ込む。
お手上げと言わんばかりに両手を放り出している彼女の前にサラザがミルクの入ったグラスを置く。
今のところ確証のある情報は少ないものの。ゲームの中に閉じ込められた時より、確実にその数は減っているのも事実。
エリエのこの宿屋の者達を軽蔑する言動も、思い通りにいかない状況への苛立ちの現れでもあるのかもしれない。
「もう行こう! 星」
「……えっ? は、はい」
エリエに手を引かれ、強引にその場を離れる。憤っているエリエに、星はそれ以上は何も言えなかった。
2人が街の裏の方に入って行くと、そこにはピンクと紫色のネオンの看板が掲げられている怪しげなお店が一軒だけぽつんと佇んでいた。
「――エ、エリエさん……ここ怖いですよ。早く戻りましょう……」
星はエリエの後ろに隠れるようにしながら、不安そうな声で言った。
「大丈夫だよ。私は何回もここに来てるんだから」
「……えっ?」
(……何回もってどういうこと?)
微笑みながら自分を見るエリエを見上げ、星はそう思いながら首を傾げた。
エリエは一瞬の迷いもなく扉を開く、星は透かさずエリエの体の後ろに隠れた――。
「あら~。いらっしゃ~い」
エリエの後ろに隠れた星の耳元に飛び込んできたその独特の声に、星は聴き覚えがある。その声の主を確認すべく、星が恐る恐るエリエの後ろから顔を覗かせた。
星の姿を見つけると、その声の主は歓喜の声を上げる。
「あら~。星ちゃんじゃない。来てくれてうれしいわ~」
「――サラザ。急に近付いちゃダメだよ。星が怯えてるから!」
星の顔を見つめ、両手を前に突き出して今にも飛びついてきそうな体制でにっこりと微笑んでいるサラザに向かってエリエが言った。
星は急に目の前に現れたサラザに、体を小刻みに震わせ、まるで怯えた子犬のような瞳を向けている。
まあ、目の前に筋肉で武装したオカマがいれば、大の大人の男であっても恐怖を覚える。体格差のある星には、人を通り越してデーモンに見えているに違いない。
「もう。いい加減に私にも懐いてほしいわ~」
「――星だってそのうち慣れるよ。それより、ちょっと話があるんだけどさ」
「ああ、分かってるわ~。さっきメッセージで言ってたやつね!」
サラザは微笑むと、エリエは険しい表情で頷く。
星はそんな2人の会話している様子を見て、首を傾げている。その場の状況を理解できてない星に、エリエが優しく話し掛けた。
「星。悪いんだけど、少しサラザと大事な話をしないとダメだから、ちょっとだけそこのテーブルでレイニールと待っててもらっていい?」
店の入り口に立っていたエリエが星の肩を指で優しくトントンと突くと、店のテーブルを指差した。
店内にはバーカウンターとテーブル席が用意されていて、カウンターの後ろの棚にはライトによって照らし出された数多くのボトルが宝石の様に様々な色に輝いていた。
視線をテーブルの方に移すと、足元に埋め込まれ店内の至る場所に設置されたピンクや紫のライトが薄暗い店内全体を照らしている。
店の奥には紫色の薄いカーテンがかかったステージが設けてあり、その上のミラーボールが怪しいく光を反射している。
何というか、まるでバブル期のダンスホールの様だ――。
(ここって何をする場所なんだろう……)
そんなことを考えながら、ミラーボールをじっと見つめていた星はの耳に飛び込んできた自分とレイニールを呼ぶエリエの声に慌てて返事をする。
「は、はい!」
「どうして我輩の名を呼び捨てにしてるのじゃ! 我輩を呼び捨てにして良いのは主だけじゃ!」
星は空中で激昂して両手を振っているレイニールを抱きかかえると、お店の隅の大きなテーブルに腰を下ろした。
怒りを抑えられない様子のレイニールはブツブツと文句を言っていると、サラザが両手にジュースの入ったジョッキグラスを2人の前に置いた。
「ごめんなさいね~。すぐに終わるから、ちょっとこれでも飲んで待ってて~」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「うむ。頂くのじゃ!」
星とレイニールは目の前のグラスを手に取ると、サラザは微笑んで小さく手を振ると、バーカウンターに座っているエリエの方へと戻っていく。
目の前に置かれたジョッキグラスを両手で持ってジュースを飲んで「おいしいね」と、微笑み合っている2人を遠目で見ていたエリエが微笑みを浮かべている。そんな彼女に、サラザが神妙な面持ちで尋ねる。
「それで、エミルは本気でダークブレットを攻めるつもりなの?」
「……うん。今朝、星があそこの連中に襲われたらしくて……それが原因だと思う。でも、話では2回目らしいんだよね。星が襲われるのが」
エリエは表情を曇らせて小さく呟く。
それを聞いたサラザは星をちらっと見ると、エリエに顔を近付けて徐ろに口を開いた。
「――でも、あそこの規模は世界でも5本の指に入る組織よ? それを本気で潰せると思ってるのかしら……」
「そうなんだよね~」
エリエはその言葉を聞いて一瞬は難しい顔をしたものの、すぐに脱力しテーブルに両手を投げ出すようにべたーっと倒れ込む。
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