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名御屋までの道中6
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彼等のこそこそとした様子が気になったのか、鍋の中をかき混ぜていた紅蓮が彼等に尋ねた。
「マスター。何をやっているのですか?」
「うむ。実はな、メルディウスが紅蓮達の為にと――」
「――あぁー。じじい余計なことは言うな! 紅蓮は気にせずに料理をしててくれ!」
口を開こうとしたマスターの肩に腕を回して言葉を遮ると、メルディウスがわざとらしく笑った。
それを不信感に満ちた瞳で紅蓮が見つめると「また何か企んでますね」と怪訝そうに呟く。
メルディウスは「いや、なにも」と大袈裟に両手を振って首を横に振ると、巨大な樽を担ぎ小虎の耳元でささやいた。
「小虎。お前は俺達が出てる間、しっかり紅蓮達が入らないように見張ってろよ?」
「OK! 任せてよ兄貴。ここは死守するぜ!」
「おう。頼んだぞ!」
小虎が自信満々に胸を張る姿を見てメルディウスは笑みを浮かべ、マスターと一緒に森の中へと消えていった。
紅蓮はそれを確認してから、おたまを隣の白雪に渡すとテントの前で仁王像の様に腕を組んで立っている小虎の元へと向かった。
「小虎。その中に何を隠してるんですか? 教えなさい」
「チッチッチッ……それは姉さんでも教えられないな。これは男と男の約束なんだ。男同士の約束は絶対なんだ!」
「…………」
無言のまま頑なに拒否する小虎の姿勢を見て、紅蓮は少し考える素振りを見せて徐ろに口を開く。
「――そうですか。今日は小虎の好きなカレーなのに残念ですね……サブギルドマスターの私に隠し事をするような子には、白いごはんだけにしましょう」
「――ッ!?」
小虎はそれを聞いて少し顔を引き攣らせ悩んだものの、すぐに首を振って大きな声で叫んだ。
「中に入られると、サンライズにならないからダメなんだ!」
「……サンライズ?」
(――日の出の事? あっ、サプライズの事でしょうか……相当動揺してるようですし、これ以上は可哀想ですね)
そう心の中で呟くと、紅蓮は大きなため息を漏らした。
「はぁ~、分かりました。秘密ならしかたないですね」
そう言ってくるっと身を翻し、呆気ないほどに素直に鍋の方へと戻っていった。
まあ、メルディウスが悪さをする気ではないと分かった時点で、紅蓮はそれ以上は追求する必要がないと考えたのだろう。
離れていく紅蓮の後姿を見て、ため息交じりに呟く。
「はぁ……緊張した~。でも僕、守り切ったよ兄貴!」
小虎はほっと胸を撫で下ろすと、夜空に向かって親指を立てた。
その頃、森の中へ入って来たメルディウスとマスターは川を見つけ、そこに担いでいた巨大な樽を沈める。
樽を川に沈めながら、同じ様に樽を川に沈めているメルディウスに向かってマスターが尋ねた。
「メルディウスよ。どうしてあの娘を連れてきたのだ?」
「あはははっ! なんだ? 部外者をパーティー入れるのに抵抗があるのかよ。じじいは女1人で何ができると思ってんだ?」
メルディウスはマスターの顔を見て、見下すようにほくそ笑む。
そんな彼の態度に表情一つ変えずに、マスターが言葉を返す。
「まだ奴等の仲間である疑いが晴れた訳ではない。初心者の装備なぞ珍しいものでもなければ、入手も困難ではないからな……それに今はこんな状況だ、容姿に関係なく警戒しておくに越したことはない」
「心配には及ばねぇーよ。俺は仮にも大手のギルドをまとめるギルマスだぞ? 人の見る目はある!」
メルディウスはそう言って力強く頷いた。
(こやつ。おそらく、それほど深くは考えておらんな……)
マスターは呆れ顔でニヤッと笑みを浮かべている彼を見て、大きいため息をついている。
水を汲み終えた2人がテントの方に戻ると、短剣を握り締めている紅蓮を白雪と小虎が両サイドから必死に押さえ込んでいる光景が飛び込んできた。
殺意に満ちた冷たい雰囲気を纏った紅蓮の、突き刺すような視線の先には慌てふためきながら地面に座り込んでいる少女の姿があった。
「姉さん落ち着いて! 別にそんな気にすることないって!」
「そうです、紅蓮様! この方も悪気があったわけではありませんから!!」
「……分かりましたから、2人共放して下さい。この人は私の事を侮辱しました……とりあえず。この人の息の根を止めてから落ち着きます……」
紅蓮は殺意に満ちた眼差しを向け、2人は「全く分かってない」と大声で叫ぶ。
無表情だが明らかに激昂している紅蓮の様子に、少女は怯えながら座り込んだままずるずると後退する。
「ひえぇぇぇぇぇー! ど、どうしたのっ!? 紅蓮ちゃん。そんな危ないものを! か、かわいいって言っただけなのにっ!!」
「「あなたはもう黙ってて下さい!!」
完全に腰が抜けて立てなくなっている少女に向かって2人が叫ぶ。
そこに溢れんばかりに水を入れた樽を担いで、2人が駆け足で戻ってくる。
彼等の目の前まで来ると、メルディウスは静かに怒り狂う紅蓮の様子を見て、めんどくさそうに頭を掻いている。
「ああ、紅蓮のNGワードに触れたか……お前達。もうちょっとだけ頑張ってろよ。――って事で頼むぜじじい」
「……なに?」
メルディウスは不思議そうに首を傾げているマスターに耳打ちすると。
「マスター。何をやっているのですか?」
「うむ。実はな、メルディウスが紅蓮達の為にと――」
「――あぁー。じじい余計なことは言うな! 紅蓮は気にせずに料理をしててくれ!」
口を開こうとしたマスターの肩に腕を回して言葉を遮ると、メルディウスがわざとらしく笑った。
それを不信感に満ちた瞳で紅蓮が見つめると「また何か企んでますね」と怪訝そうに呟く。
メルディウスは「いや、なにも」と大袈裟に両手を振って首を横に振ると、巨大な樽を担ぎ小虎の耳元でささやいた。
「小虎。お前は俺達が出てる間、しっかり紅蓮達が入らないように見張ってろよ?」
「OK! 任せてよ兄貴。ここは死守するぜ!」
「おう。頼んだぞ!」
小虎が自信満々に胸を張る姿を見てメルディウスは笑みを浮かべ、マスターと一緒に森の中へと消えていった。
紅蓮はそれを確認してから、おたまを隣の白雪に渡すとテントの前で仁王像の様に腕を組んで立っている小虎の元へと向かった。
「小虎。その中に何を隠してるんですか? 教えなさい」
「チッチッチッ……それは姉さんでも教えられないな。これは男と男の約束なんだ。男同士の約束は絶対なんだ!」
「…………」
無言のまま頑なに拒否する小虎の姿勢を見て、紅蓮は少し考える素振りを見せて徐ろに口を開く。
「――そうですか。今日は小虎の好きなカレーなのに残念ですね……サブギルドマスターの私に隠し事をするような子には、白いごはんだけにしましょう」
「――ッ!?」
小虎はそれを聞いて少し顔を引き攣らせ悩んだものの、すぐに首を振って大きな声で叫んだ。
「中に入られると、サンライズにならないからダメなんだ!」
「……サンライズ?」
(――日の出の事? あっ、サプライズの事でしょうか……相当動揺してるようですし、これ以上は可哀想ですね)
そう心の中で呟くと、紅蓮は大きなため息を漏らした。
「はぁ~、分かりました。秘密ならしかたないですね」
そう言ってくるっと身を翻し、呆気ないほどに素直に鍋の方へと戻っていった。
まあ、メルディウスが悪さをする気ではないと分かった時点で、紅蓮はそれ以上は追求する必要がないと考えたのだろう。
離れていく紅蓮の後姿を見て、ため息交じりに呟く。
「はぁ……緊張した~。でも僕、守り切ったよ兄貴!」
小虎はほっと胸を撫で下ろすと、夜空に向かって親指を立てた。
その頃、森の中へ入って来たメルディウスとマスターは川を見つけ、そこに担いでいた巨大な樽を沈める。
樽を川に沈めながら、同じ様に樽を川に沈めているメルディウスに向かってマスターが尋ねた。
「メルディウスよ。どうしてあの娘を連れてきたのだ?」
「あはははっ! なんだ? 部外者をパーティー入れるのに抵抗があるのかよ。じじいは女1人で何ができると思ってんだ?」
メルディウスはマスターの顔を見て、見下すようにほくそ笑む。
そんな彼の態度に表情一つ変えずに、マスターが言葉を返す。
「まだ奴等の仲間である疑いが晴れた訳ではない。初心者の装備なぞ珍しいものでもなければ、入手も困難ではないからな……それに今はこんな状況だ、容姿に関係なく警戒しておくに越したことはない」
「心配には及ばねぇーよ。俺は仮にも大手のギルドをまとめるギルマスだぞ? 人の見る目はある!」
メルディウスはそう言って力強く頷いた。
(こやつ。おそらく、それほど深くは考えておらんな……)
マスターは呆れ顔でニヤッと笑みを浮かべている彼を見て、大きいため息をついている。
水を汲み終えた2人がテントの方に戻ると、短剣を握り締めている紅蓮を白雪と小虎が両サイドから必死に押さえ込んでいる光景が飛び込んできた。
殺意に満ちた冷たい雰囲気を纏った紅蓮の、突き刺すような視線の先には慌てふためきながら地面に座り込んでいる少女の姿があった。
「姉さん落ち着いて! 別にそんな気にすることないって!」
「そうです、紅蓮様! この方も悪気があったわけではありませんから!!」
「……分かりましたから、2人共放して下さい。この人は私の事を侮辱しました……とりあえず。この人の息の根を止めてから落ち着きます……」
紅蓮は殺意に満ちた眼差しを向け、2人は「全く分かってない」と大声で叫ぶ。
無表情だが明らかに激昂している紅蓮の様子に、少女は怯えながら座り込んだままずるずると後退する。
「ひえぇぇぇぇぇー! ど、どうしたのっ!? 紅蓮ちゃん。そんな危ないものを! か、かわいいって言っただけなのにっ!!」
「「あなたはもう黙ってて下さい!!」
完全に腰が抜けて立てなくなっている少女に向かって2人が叫ぶ。
そこに溢れんばかりに水を入れた樽を担いで、2人が駆け足で戻ってくる。
彼等の目の前まで来ると、メルディウスは静かに怒り狂う紅蓮の様子を見て、めんどくさそうに頭を掻いている。
「ああ、紅蓮のNGワードに触れたか……お前達。もうちょっとだけ頑張ってろよ。――って事で頼むぜじじい」
「……なに?」
メルディウスは不思議そうに首を傾げているマスターに耳打ちすると。
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