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疑惑のディーノ14
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睨んでいたエミルが、今度は呆れ返った様子で息を漏らす。
「……要するに、最初から最後まで聞いていたのね。はぁ~。そうやって気にすると思ったから言いたくなかったのに……でもまあ、考え方を変えると、もう話さなくて言い分。良しとしましょう!」
エミルはそう頷くと、表情を曇らせていた3人もパァーっと表情を明るくする。
その表情を見て笑みを浮かべたエミルだったが、すぐに険しい表情でディーノの方を向き直す。
「……それで、どうするつもり? ダークブレットはブラックギルドの中でも、最もきな臭い噂が絶えないギルド――噂では、この短期間に多くのギルドから被害者が出ているって話だし。しかも、その全てで例外なくキルされてるって話よ……」
「さすがは『白い閃光』と名高いエミルさんだね。情報もそれなりに調べているようだ」
「――ッ!? なるほど。あなたもそれなりに古参のプレイヤーさんなのは確かのようね」
ディーノが彼女の通名を口にしすると、一瞬は驚いた顔をしたエミルだったが、すぐに冷静にそう言葉を返した。
そんな2人のやり取りを聞いていた星の表情が曇った。
いくら星でも話の内容から、自分を襲ってきた者達がダークブレットという組織の人間なのは察しがつく。
そしてこのゲーム内での死は、現実世界での死に繋がる可能性があるという事実。
おそらく。あの者達の狙いは元々『竜王の剣』という名の剣だったレイニールだろう……。
しかし、今のレイニールは小さなドラゴンの姿で星の側を、片時も離れず飛び回っている。どう考えても、レイニールをダークブレットに渡すことはできない
星は頭の上にちょこんと乗っているレイニールを見上げた。
主の不安そうな表情にレイニールは首を傾げながら、星の顔を見下ろしている。
それを見て、星が険しい表情で顔を伏せた。
(レイを相手に渡せない。きっと今日襲ってきた人達は、まだ私が剣を持っていると思っている。このままだと皆に迷惑をかける。やっぱり、私はここに居ない方が……)
星がそう心の中で思っていると、エリエの訝しげな顔が飛び込んできた。
エリエの青い瞳が星の紫色の瞳を見据え、彼女の顔が更に接近する。
「――わっ! あっ、危ないです!」
驚いた様に身を仰け反らせる星の心を、エリエは見透かす様に目を細めながら呟く。
「……星。また良からぬことを考えてるでしょ?」
「えっ!? べ、別に何も……」
核心をつく様な彼女の質問に、星は思わず視線を逸らす。だが、そんなことはエリエにはお見通しなようで……。
あからさまに慌てる星を見てエリエが「やっぱりね」とため息を漏らし、言葉を続ける。
「どうせ、自分のせいで大変な事になったから、何かが起こる前に、また私達の前から姿を消そう……なんて考えてるんでしょ?」
「あの……それは……ち、ちがいます……」
また核心に迫る言葉に星はドキッとしながら、小さく掻き消えそうな声で言った。
エリエは悪戯な笑みを浮かべると、俯いている星に尋ねた。
「星は自分が皆の迷惑になってると思ってる?」
「……はい」
少し間を開けて小さく頷いた星に、エミルはもう一度尋ねる。
「ならさっ、星はどうしたら迷惑にならないと思うの?」
「……そ、それは……」
その質問の答えに、黙って2人のやり取りを見守っていたエミルも聞き耳を立てている。
エリエが星の口元を固唾を呑んで見守っていると、星はしばらく考えた末に重い口を開く。
「……それは、やっぱり私が居なくなるのが一番だと思います」
星はそう呟くと、まるで全てを悟ったかのような表情で再び口を閉じた。
それを聞いて「エリエはやっぱり」と大きなため息をつく。その直後に口を開こうとしたエリエよりも先に、エミルが話し始める。
「全く。星ちゃんの逃走癖にも困ったものね……あなた自身は私達に迷惑をかけないようにと思っての事だとは思うけど、それからあなたはどうするつもり。もちろん行くあてはあるのよね?」
「……それは、他の街に――」
星がそう口にする前に、エミルの言葉がそれを遮った。
「――他の街? なら、他の街の人達に迷惑をかけてもいいのね?」
「……それは……ダメです」
しょんぼりとした様子で、星は自分の足元を見つめながら呟いた。
危険な状況に自分が置かれているのは、星にも理解できている。だからと言って、このまま周りを巻き込むことはできない。しかし、今の星には逃げる意外には何も解決策が浮かばなかった。
エミルはそんな星を追い込むように言葉を続ける。
「確かにあなたの命だもの。あなたがダークブレッドにやられようが、モンスターにやられようが、私達には関係ない。でもこれだけは覚えておきなさい? 子供がどんなに大人の真似事をしても結局は何もできないの。大人になりたいなら、少しは今の自分の立場と今居る状況を考えなさい」
「うぅぅ……」
普段の彼女からは想像もできないような、その冷たい声音にショックを受けたのか、星は紫色の瞳を涙でいっぱいにして、長い黒髪をなびかせながら寝室に走り去ってしまう。
「……要するに、最初から最後まで聞いていたのね。はぁ~。そうやって気にすると思ったから言いたくなかったのに……でもまあ、考え方を変えると、もう話さなくて言い分。良しとしましょう!」
エミルはそう頷くと、表情を曇らせていた3人もパァーっと表情を明るくする。
その表情を見て笑みを浮かべたエミルだったが、すぐに険しい表情でディーノの方を向き直す。
「……それで、どうするつもり? ダークブレットはブラックギルドの中でも、最もきな臭い噂が絶えないギルド――噂では、この短期間に多くのギルドから被害者が出ているって話だし。しかも、その全てで例外なくキルされてるって話よ……」
「さすがは『白い閃光』と名高いエミルさんだね。情報もそれなりに調べているようだ」
「――ッ!? なるほど。あなたもそれなりに古参のプレイヤーさんなのは確かのようね」
ディーノが彼女の通名を口にしすると、一瞬は驚いた顔をしたエミルだったが、すぐに冷静にそう言葉を返した。
そんな2人のやり取りを聞いていた星の表情が曇った。
いくら星でも話の内容から、自分を襲ってきた者達がダークブレットという組織の人間なのは察しがつく。
そしてこのゲーム内での死は、現実世界での死に繋がる可能性があるという事実。
おそらく。あの者達の狙いは元々『竜王の剣』という名の剣だったレイニールだろう……。
しかし、今のレイニールは小さなドラゴンの姿で星の側を、片時も離れず飛び回っている。どう考えても、レイニールをダークブレットに渡すことはできない
星は頭の上にちょこんと乗っているレイニールを見上げた。
主の不安そうな表情にレイニールは首を傾げながら、星の顔を見下ろしている。
それを見て、星が険しい表情で顔を伏せた。
(レイを相手に渡せない。きっと今日襲ってきた人達は、まだ私が剣を持っていると思っている。このままだと皆に迷惑をかける。やっぱり、私はここに居ない方が……)
星がそう心の中で思っていると、エリエの訝しげな顔が飛び込んできた。
エリエの青い瞳が星の紫色の瞳を見据え、彼女の顔が更に接近する。
「――わっ! あっ、危ないです!」
驚いた様に身を仰け反らせる星の心を、エリエは見透かす様に目を細めながら呟く。
「……星。また良からぬことを考えてるでしょ?」
「えっ!? べ、別に何も……」
核心をつく様な彼女の質問に、星は思わず視線を逸らす。だが、そんなことはエリエにはお見通しなようで……。
あからさまに慌てる星を見てエリエが「やっぱりね」とため息を漏らし、言葉を続ける。
「どうせ、自分のせいで大変な事になったから、何かが起こる前に、また私達の前から姿を消そう……なんて考えてるんでしょ?」
「あの……それは……ち、ちがいます……」
また核心に迫る言葉に星はドキッとしながら、小さく掻き消えそうな声で言った。
エリエは悪戯な笑みを浮かべると、俯いている星に尋ねた。
「星は自分が皆の迷惑になってると思ってる?」
「……はい」
少し間を開けて小さく頷いた星に、エミルはもう一度尋ねる。
「ならさっ、星はどうしたら迷惑にならないと思うの?」
「……そ、それは……」
その質問の答えに、黙って2人のやり取りを見守っていたエミルも聞き耳を立てている。
エリエが星の口元を固唾を呑んで見守っていると、星はしばらく考えた末に重い口を開く。
「……それは、やっぱり私が居なくなるのが一番だと思います」
星はそう呟くと、まるで全てを悟ったかのような表情で再び口を閉じた。
それを聞いて「エリエはやっぱり」と大きなため息をつく。その直後に口を開こうとしたエリエよりも先に、エミルが話し始める。
「全く。星ちゃんの逃走癖にも困ったものね……あなた自身は私達に迷惑をかけないようにと思っての事だとは思うけど、それからあなたはどうするつもり。もちろん行くあてはあるのよね?」
「……それは、他の街に――」
星がそう口にする前に、エミルの言葉がそれを遮った。
「――他の街? なら、他の街の人達に迷惑をかけてもいいのね?」
「……それは……ダメです」
しょんぼりとした様子で、星は自分の足元を見つめながら呟いた。
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エミルはそんな星を追い込むように言葉を続ける。
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「うぅぅ……」
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