200 / 620
疑惑のディーノ4
しおりを挟む
エミルもその隣に腰を下ろすと、ディーノの顔を見つめ徐ろに口を開いた。
「それじゃー。さっそくだけど、あなたにいくつか質問したいのだけどいいかしら?」
「よく言うね……ダメでも話さないと開放しないでしょ? いいよ。答えられるものは素直に答えるさ」
縄で椅子に拘束され、まさにまな板の上の鯉といった状況のディーノは、諦めたように大きなため息混じりにそう答えた。
エミルは神妙な面持ちで、ディーノに質問を開始する。
「まず、あなたはどうしてあの森にいたのか聞かせてもらえるかしら?」
「どうしてって、ただ朝散歩をしていて道に迷っていただけだけど……?」
なに食わぬ顔でそう答えるディーノに、デイビッドが声を荒らげてテーブルを叩いた。
「バカか!? 俺達の攻撃をかわしたあの身のこなし。見る奴が見れば、素人じゃないのは分かる! お前は俺達をバカにしてるのかッ!?」
「なるほど……確かに僕はこのゲームをやっている歴は長い。だが、だからと言って道を熟知しているとは限らないだろう? 僕は筋金入りの方向音痴なんでね」
ディーノは小首を傾げあっけらかんとした様子で、激怒しているデイビッドに向かって吐き捨てるように言った。
だが、そんな言い訳を今のデイビッドが聞き入れるわけもなく、逆にこの発言は挑発とも取れるものだ。
「……くっ! マップが視界に表示されてて、どうやったら道に迷うって言うんだよ!」
デイビッドが目を細めてディーノを鋭く睨んでいると、横からエミルが口を挟んできた。
「あなたの言う事も一理あるわ。なら、質問を変えましょう。あなたは、どうして星ちゃんに接近したのかしら? いや、なにが目的でって言った方がいいかしらね……」
エミルは質問すると、怪訝そうに目を細めてディーノの顔色を窺っている。おそらく、それが彼女にとって一番知りたい質問なのだろう。
何を目的に星に近付いたのか――いや、もしかしたら星意外のメンバーの誰かかもしれない。
再び襲われる可能性を捨てきれない以上。住居を提供しているエミルの立場からして、仲間達の身の安全が最優先ということだろう。
エミルがその質問をした直後、部屋の中に流れる空気が一瞬で張り詰めたものへと変わった。
その質問に、ディーノは口元に微かな笑みを浮かべながら答えた。
「――そうだね。あえて言うなら、あの子に興味があるから……かな?」
エミルはその言葉を聞いた直後。烈火の如く怒り出し、テーブルを叩いて椅子から立ち上がる。
「なっ、なんですって!! 星ちゃんはまだ子供なのよ!? それなのにあの子と関係を持ちたいだなんて、絶対に許せるわけないでしょ!?」
「「……えっ?」」
顔を真っ赤に染めながらそう叫んだエミルを、2人はぽかんと口を開けながら彼女の顔を見上げている。
エミルはすぐに我に返ると、頬を真っ赤に染めながら叫んだ。
「ち、違うの!? そういう意味じゃなくて! そうだったら困るから先に言っておいたというかなんというか……とにかく、今のは違うのよ!」
エミルが耳まで真っ赤にしながらそう叫ぶと、恥ずかしさから両手で顔を覆っている。
羞恥心に顔から火が出る勢いの彼女を放っておいて、今度はデイビッドが質問した。
「なら、お前は星ちゃんの何に興味があるんだ? あの子は戦闘はできないし。装備も、それほどいい物を持っているとは言えない。そんな子のどこに興味があるんだ?」
デイビッドはディーノの瞳をじっと見つめながら問い掛けた。
すると、ディーノは少し上を向いて考える素振りを見せ、しばらくしてからその問に答える。
「それは僕の固有スキルが、周囲の相手のスキルを把握し吸収するスキルだからだよ。君のスキルはおそらく『背水の陣』じゃない?」
「なっ……なるほどな。そのスキルで星ちゃんのスキルも見たということか……」
デイビッドは一瞬うろたえたものの。すぐに平静を取り戻し、ほくそ笑んでいるディーノの顔を見据えた。
直後、そんなディーノの口から思いもよらない言葉が返ってくる。
「いや、普通は僕に見えないスキルはないんだ。だが、あの子のスキルは『?』が表示されるだけで、その特性どころか名前すら見ることができなかったよ……」
そう呟いたディーノの話を聞いて、羞恥心から回復したエミルが声を掛けてきた。
「そんなはずはないわ! 星ちゃんの固有スキルのランクはそこまで高くないはずよ? あの子は言ってたわ『ソードマスター』は剣の能力を引き出すだけのスキルだって!」
「――剣の力を引き出す……」
驚きながら大きな声を出したエミルとは対照的に、隣に座っていたデイビッドは難しい顔で顎の下に手を当てている。
だが、本来は剣の能力を発揮させるということは、どれほど熟練した剣士であっても難しい。
それはただ使用しているからだ。トレジャーアイテムの武器にはそれぞれ特殊能力があり、武器の熟練度をMAXにして初めて使用可能になる能力を持ったものも存在する。メルディウスの使う『ベルセルク』なんかが良い例だろう――。
しかし、それをスキルの力で容易に引き出せるのであれば、使い手の実力は左程問題ではないのかもしれない。ベテランプレイヤーとまで言わないまでも、剣を普通に使えればそれだけで問題はないのだ。
実際にデイビッドは星が剣を金色の巨竜、レイニールの姿に変えたところを目撃している。
もしも。全ての武器に、その能力が適応できるのならば、トレジャーアイテムの武器でも剣であれば隠された能力を容易に引き出すことができるのかもしれない。
っとなれば、星の持つ固有スキルの能力は未知数だ――どんな剣でも、スキルによって変化できるとしたら……。
「それじゃー。さっそくだけど、あなたにいくつか質問したいのだけどいいかしら?」
「よく言うね……ダメでも話さないと開放しないでしょ? いいよ。答えられるものは素直に答えるさ」
縄で椅子に拘束され、まさにまな板の上の鯉といった状況のディーノは、諦めたように大きなため息混じりにそう答えた。
エミルは神妙な面持ちで、ディーノに質問を開始する。
「まず、あなたはどうしてあの森にいたのか聞かせてもらえるかしら?」
「どうしてって、ただ朝散歩をしていて道に迷っていただけだけど……?」
なに食わぬ顔でそう答えるディーノに、デイビッドが声を荒らげてテーブルを叩いた。
「バカか!? 俺達の攻撃をかわしたあの身のこなし。見る奴が見れば、素人じゃないのは分かる! お前は俺達をバカにしてるのかッ!?」
「なるほど……確かに僕はこのゲームをやっている歴は長い。だが、だからと言って道を熟知しているとは限らないだろう? 僕は筋金入りの方向音痴なんでね」
ディーノは小首を傾げあっけらかんとした様子で、激怒しているデイビッドに向かって吐き捨てるように言った。
だが、そんな言い訳を今のデイビッドが聞き入れるわけもなく、逆にこの発言は挑発とも取れるものだ。
「……くっ! マップが視界に表示されてて、どうやったら道に迷うって言うんだよ!」
デイビッドが目を細めてディーノを鋭く睨んでいると、横からエミルが口を挟んできた。
「あなたの言う事も一理あるわ。なら、質問を変えましょう。あなたは、どうして星ちゃんに接近したのかしら? いや、なにが目的でって言った方がいいかしらね……」
エミルは質問すると、怪訝そうに目を細めてディーノの顔色を窺っている。おそらく、それが彼女にとって一番知りたい質問なのだろう。
何を目的に星に近付いたのか――いや、もしかしたら星意外のメンバーの誰かかもしれない。
再び襲われる可能性を捨てきれない以上。住居を提供しているエミルの立場からして、仲間達の身の安全が最優先ということだろう。
エミルがその質問をした直後、部屋の中に流れる空気が一瞬で張り詰めたものへと変わった。
その質問に、ディーノは口元に微かな笑みを浮かべながら答えた。
「――そうだね。あえて言うなら、あの子に興味があるから……かな?」
エミルはその言葉を聞いた直後。烈火の如く怒り出し、テーブルを叩いて椅子から立ち上がる。
「なっ、なんですって!! 星ちゃんはまだ子供なのよ!? それなのにあの子と関係を持ちたいだなんて、絶対に許せるわけないでしょ!?」
「「……えっ?」」
顔を真っ赤に染めながらそう叫んだエミルを、2人はぽかんと口を開けながら彼女の顔を見上げている。
エミルはすぐに我に返ると、頬を真っ赤に染めながら叫んだ。
「ち、違うの!? そういう意味じゃなくて! そうだったら困るから先に言っておいたというかなんというか……とにかく、今のは違うのよ!」
エミルが耳まで真っ赤にしながらそう叫ぶと、恥ずかしさから両手で顔を覆っている。
羞恥心に顔から火が出る勢いの彼女を放っておいて、今度はデイビッドが質問した。
「なら、お前は星ちゃんの何に興味があるんだ? あの子は戦闘はできないし。装備も、それほどいい物を持っているとは言えない。そんな子のどこに興味があるんだ?」
デイビッドはディーノの瞳をじっと見つめながら問い掛けた。
すると、ディーノは少し上を向いて考える素振りを見せ、しばらくしてからその問に答える。
「それは僕の固有スキルが、周囲の相手のスキルを把握し吸収するスキルだからだよ。君のスキルはおそらく『背水の陣』じゃない?」
「なっ……なるほどな。そのスキルで星ちゃんのスキルも見たということか……」
デイビッドは一瞬うろたえたものの。すぐに平静を取り戻し、ほくそ笑んでいるディーノの顔を見据えた。
直後、そんなディーノの口から思いもよらない言葉が返ってくる。
「いや、普通は僕に見えないスキルはないんだ。だが、あの子のスキルは『?』が表示されるだけで、その特性どころか名前すら見ることができなかったよ……」
そう呟いたディーノの話を聞いて、羞恥心から回復したエミルが声を掛けてきた。
「そんなはずはないわ! 星ちゃんの固有スキルのランクはそこまで高くないはずよ? あの子は言ってたわ『ソードマスター』は剣の能力を引き出すだけのスキルだって!」
「――剣の力を引き出す……」
驚きながら大きな声を出したエミルとは対照的に、隣に座っていたデイビッドは難しい顔で顎の下に手を当てている。
だが、本来は剣の能力を発揮させるということは、どれほど熟練した剣士であっても難しい。
それはただ使用しているからだ。トレジャーアイテムの武器にはそれぞれ特殊能力があり、武器の熟練度をMAXにして初めて使用可能になる能力を持ったものも存在する。メルディウスの使う『ベルセルク』なんかが良い例だろう――。
しかし、それをスキルの力で容易に引き出せるのであれば、使い手の実力は左程問題ではないのかもしれない。ベテランプレイヤーとまで言わないまでも、剣を普通に使えればそれだけで問題はないのだ。
実際にデイビッドは星が剣を金色の巨竜、レイニールの姿に変えたところを目撃している。
もしも。全ての武器に、その能力が適応できるのならば、トレジャーアイテムの武器でも剣であれば隠された能力を容易に引き出すことができるのかもしれない。
っとなれば、星の持つ固有スキルの能力は未知数だ――どんな剣でも、スキルによって変化できるとしたら……。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。




Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる