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激昂した刃9
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それは2人が、ゲーム内の再生プログラムを超えるほどの戦闘をしているからに他ならない。
「このくそじじい! 吹き飛んだ破片も全てを叩き落としやがって! ダメージ与えられないだろうが! さっさと歳相応にくたばりやがれっ!!」
「ふん! お前の爆発など。そよ風程度にも感じぬわ!!」
マスターは爆発音の後に爆発で飛び散った破片までも器用に全て手で叩き落とすと、不敵な笑みを浮かべている。
「この野郎! なら、直接このベルセルクで真っ二つに叩き斬るだけだ!!」
メルディウスがそう叫ぶと、武器の形状が大剣の状態に戻った。
「うおおおおおおおおおおおッ!!」
咆哮を上げてマスターに大剣で斬り掛かるメルディウス。
マスターはそれを擦れ擦れでかわすと、メルディウスがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
(なんだ? 何がおかしい……まさか!?)
はっとしたマスターがメルディウスの顔から剣に目を向けた。
すると、大剣が斧の姿へと変わっていた。
(――剣が斧に……しまった!)
その直後。今度はメルディウスのベルセルクが輝き、次の瞬間には大斧の姿へ変わっているのがマスターの視界に映る。
大斧へと変化したベルセルクを頭上に大きく振り上げ、メルディウスの顔からにやりと不敵な笑みがこぼれていた。
「言っただろ? お前を真っ二つにするってなッ!!」
「……くっ!」
(この間合ではかわせん!!)
大斧の直撃を受けたマスターが爆発した。
その凄まじい爆風でメルディウス自身も大きく吹き飛ばされる。
そうなることを彼は想定していたのだろう。メルディウスは素早く体制を立て直し、マスターの居た場所に目をやった。そこには、爆発によって起こった煙が漂っている。
さっきの攻撃は確実に直撃させた。爆風に寄って周囲の砂塵が舞い上がったが、直撃を受けた時に発生した煙をメルディウスもしっかりと確認した。
浮遊する土煙によって視界は遮られている。だが、そう簡単にマスターを仕留められるわけがない……。
「――手応えはあった…………やったか?」
メルディウスがそう呟くと、じっとその煙の中を窺っていた。
確実に仕留めたという手応えは感じている。だが、拳帝とまで言われた男だ――いくら直撃したとは言え、そう簡単にやられてくれるとは思えない。
立ち上った砂塵が次第に晴れていく中にマスターの姿はない。
それを確認したメルディウスは思わず笑みを浮かべると、握った拳を空に突き上げ叫ぶ。
「よっしゃあああああああああッ!!」
確実に仕留めたと確信した直後、メルディウスの背後から悪魔の声が聞こえてくる。
「――どこを見ておる!」
「な……に……?」
メルディウスがその声の方を慌てて振り向くと、そこにはぼろぼろの黒い道着を身につけたマスターの姿があった。
彼が先程まで全身に纏っていたはずの黄金のオーラは消えていて、代りに両手には黒いオーラが、今までのそれとは比べ物にならないほどに火柱の様に空に向かって伸びていた。
おそらく。直撃した瞬間に腕のオーラを最大まで放出して、爆発の威力を闇属性のオーラで大幅に減少させたのだろう。
元々戦闘スキルの存在しないフリーダムでは、『固有スキル』『武器スキル』(トレジャーアイテムに限る)これの組み合わせで他者との間にアドバンテージを作る。そして珍しいのは属性系のスキルである。
これは火、水、風、土、光、闇の6種類あり。通常攻撃のダメージと共に、属性ダメージも追加するとても珍しいこのスキルを有している者は少ない。
エミルや星の様にドラゴンなどのモンスターを連れている者は自分が使えなくてもモンスターの攻撃に属性ダメージが含まれている為問題はないが、この様なスキルを持っている者は属性スキル持ちよりも少数である。
「――勝負は最後まで手を抜いてはならん! だが、儂も危なかった……」
「俺のベルセルクの一撃を受けて立っているだと!? いったい何をしやがった。じじい!!」
「ふん。知れた事……防いだに決まっておろう?」
「爆発を防いだだと……?」
メルディウスはそんなことはありえないと言わんばかりの顔で、マスターを見ていた。
しかし、その反応も無理はない。あの一撃――あの攻撃でメルディウスは確かにベルセルクがマスターを捉えた手応えはあった。
だが目の前に、その仕留めたはずのマスターが立っている。
もはや闘争本能というものか、メルディウスは思考をストップさせ、すぐに我に返り大斧を構えてマスターに向かって再び突進した。
「メルディウス――儂をここまで追い込んだお前に敬意を表し。儂の禁じた技を見せてやろう……」
マスターがそう小さく呟いた直後。両手のオーラがいっそう強まった。
「うおおおおおおおおおおおッ!!」
メルディウスはそんなことを気にしている余裕がないのか、それとも迷いを振り払う為か、大きく咆哮を上げながらマスター目掛けて一直線に突っ込んでくる。
「……これが儂の禁じ手――沈め、永遠の闇へと……ダークネスファング!!」
マスターが両手を地面に突き刺すと、メルディウスの周りに黒い炎の様なオーラが円を描くように発生して一気に立ち上がり、彼の行く手を完全に遮る。
「……なにッ!?」
メルディウスが気付き、空に跳び上がった直後。地面から更に強く噴き出した漆黒のオーラのドラゴンの頭が、跳び上がったメルディウスの体を呑み込んだ。
突如現れた漆黒のオーラで形作られたドラゴンの口の中に捕らわれたメルディウスが咆哮を上げ、大斧を構えると同時に振り抜く。
「こんなもん。俺のベルセルクで吹き飛ばしてやるぜ!!」
すると、口の中で大きな爆発が起こり。その衝撃で攻撃を受けたはずのドラゴンの頭ではなく、攻撃を放ったメルディウス本人のHPが大幅に減少する。
そのダメージでメルディウスの体が大きくよろめく。膝に手を突き、何とか体制を立て直す。
「――くっ……ダメージは受けたがこれであいつの胸くそ悪いドラゴンの頭も跡形もなく――なんだと!?」
メルディウスはそう呟くと、自分の目を疑った。
何故なら、マスターの創り出したそのドラゴンの頭は、メルディウスのベルセルクの攻撃を受けても、何事もなかったかのようにメルディウスを捕らえていたからである。
本人としては、ダメージ分くらいは破損させられたと思っていたのだろう。その後も諦めず何度も攻撃を繰り返すメルディウス。
そんな彼の様子を哀れむように見つめながら。
「無駄だ……一度取り込まれたら二度と光りを拝むことはない……それがこの技の力だ――呑み込まれたが最後だ……メルディウス」
マスターがそう呟いた直後。ドラゴンの口の中で途轍もない爆発発生した。その後、闇属性の稲妻が襲い掛かり、中に閉じ込められたメルディウスが断末魔の叫び声を上げる。
「このくそじじい! 吹き飛んだ破片も全てを叩き落としやがって! ダメージ与えられないだろうが! さっさと歳相応にくたばりやがれっ!!」
「ふん! お前の爆発など。そよ風程度にも感じぬわ!!」
マスターは爆発音の後に爆発で飛び散った破片までも器用に全て手で叩き落とすと、不敵な笑みを浮かべている。
「この野郎! なら、直接このベルセルクで真っ二つに叩き斬るだけだ!!」
メルディウスがそう叫ぶと、武器の形状が大剣の状態に戻った。
「うおおおおおおおおおおおッ!!」
咆哮を上げてマスターに大剣で斬り掛かるメルディウス。
マスターはそれを擦れ擦れでかわすと、メルディウスがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
(なんだ? 何がおかしい……まさか!?)
はっとしたマスターがメルディウスの顔から剣に目を向けた。
すると、大剣が斧の姿へと変わっていた。
(――剣が斧に……しまった!)
その直後。今度はメルディウスのベルセルクが輝き、次の瞬間には大斧の姿へ変わっているのがマスターの視界に映る。
大斧へと変化したベルセルクを頭上に大きく振り上げ、メルディウスの顔からにやりと不敵な笑みがこぼれていた。
「言っただろ? お前を真っ二つにするってなッ!!」
「……くっ!」
(この間合ではかわせん!!)
大斧の直撃を受けたマスターが爆発した。
その凄まじい爆風でメルディウス自身も大きく吹き飛ばされる。
そうなることを彼は想定していたのだろう。メルディウスは素早く体制を立て直し、マスターの居た場所に目をやった。そこには、爆発によって起こった煙が漂っている。
さっきの攻撃は確実に直撃させた。爆風に寄って周囲の砂塵が舞い上がったが、直撃を受けた時に発生した煙をメルディウスもしっかりと確認した。
浮遊する土煙によって視界は遮られている。だが、そう簡単にマスターを仕留められるわけがない……。
「――手応えはあった…………やったか?」
メルディウスがそう呟くと、じっとその煙の中を窺っていた。
確実に仕留めたという手応えは感じている。だが、拳帝とまで言われた男だ――いくら直撃したとは言え、そう簡単にやられてくれるとは思えない。
立ち上った砂塵が次第に晴れていく中にマスターの姿はない。
それを確認したメルディウスは思わず笑みを浮かべると、握った拳を空に突き上げ叫ぶ。
「よっしゃあああああああああッ!!」
確実に仕留めたと確信した直後、メルディウスの背後から悪魔の声が聞こえてくる。
「――どこを見ておる!」
「な……に……?」
メルディウスがその声の方を慌てて振り向くと、そこにはぼろぼろの黒い道着を身につけたマスターの姿があった。
彼が先程まで全身に纏っていたはずの黄金のオーラは消えていて、代りに両手には黒いオーラが、今までのそれとは比べ物にならないほどに火柱の様に空に向かって伸びていた。
おそらく。直撃した瞬間に腕のオーラを最大まで放出して、爆発の威力を闇属性のオーラで大幅に減少させたのだろう。
元々戦闘スキルの存在しないフリーダムでは、『固有スキル』『武器スキル』(トレジャーアイテムに限る)これの組み合わせで他者との間にアドバンテージを作る。そして珍しいのは属性系のスキルである。
これは火、水、風、土、光、闇の6種類あり。通常攻撃のダメージと共に、属性ダメージも追加するとても珍しいこのスキルを有している者は少ない。
エミルや星の様にドラゴンなどのモンスターを連れている者は自分が使えなくてもモンスターの攻撃に属性ダメージが含まれている為問題はないが、この様なスキルを持っている者は属性スキル持ちよりも少数である。
「――勝負は最後まで手を抜いてはならん! だが、儂も危なかった……」
「俺のベルセルクの一撃を受けて立っているだと!? いったい何をしやがった。じじい!!」
「ふん。知れた事……防いだに決まっておろう?」
「爆発を防いだだと……?」
メルディウスはそんなことはありえないと言わんばかりの顔で、マスターを見ていた。
しかし、その反応も無理はない。あの一撃――あの攻撃でメルディウスは確かにベルセルクがマスターを捉えた手応えはあった。
だが目の前に、その仕留めたはずのマスターが立っている。
もはや闘争本能というものか、メルディウスは思考をストップさせ、すぐに我に返り大斧を構えてマスターに向かって再び突進した。
「メルディウス――儂をここまで追い込んだお前に敬意を表し。儂の禁じた技を見せてやろう……」
マスターがそう小さく呟いた直後。両手のオーラがいっそう強まった。
「うおおおおおおおおおおおッ!!」
メルディウスはそんなことを気にしている余裕がないのか、それとも迷いを振り払う為か、大きく咆哮を上げながらマスター目掛けて一直線に突っ込んでくる。
「……これが儂の禁じ手――沈め、永遠の闇へと……ダークネスファング!!」
マスターが両手を地面に突き刺すと、メルディウスの周りに黒い炎の様なオーラが円を描くように発生して一気に立ち上がり、彼の行く手を完全に遮る。
「……なにッ!?」
メルディウスが気付き、空に跳び上がった直後。地面から更に強く噴き出した漆黒のオーラのドラゴンの頭が、跳び上がったメルディウスの体を呑み込んだ。
突如現れた漆黒のオーラで形作られたドラゴンの口の中に捕らわれたメルディウスが咆哮を上げ、大斧を構えると同時に振り抜く。
「こんなもん。俺のベルセルクで吹き飛ばしてやるぜ!!」
すると、口の中で大きな爆発が起こり。その衝撃で攻撃を受けたはずのドラゴンの頭ではなく、攻撃を放ったメルディウス本人のHPが大幅に減少する。
そのダメージでメルディウスの体が大きくよろめく。膝に手を突き、何とか体制を立て直す。
「――くっ……ダメージは受けたがこれであいつの胸くそ悪いドラゴンの頭も跡形もなく――なんだと!?」
メルディウスはそう呟くと、自分の目を疑った。
何故なら、マスターの創り出したそのドラゴンの頭は、メルディウスのベルセルクの攻撃を受けても、何事もなかったかのようにメルディウスを捕らえていたからである。
本人としては、ダメージ分くらいは破損させられたと思っていたのだろう。その後も諦めず何度も攻撃を繰り返すメルディウス。
そんな彼の様子を哀れむように見つめながら。
「無駄だ……一度取り込まれたら二度と光りを拝むことはない……それがこの技の力だ――呑み込まれたが最後だ……メルディウス」
マスターがそう呟いた直後。ドラゴンの口の中で途轍もない爆発発生した。その後、闇属性の稲妻が襲い掛かり、中に閉じ込められたメルディウスが断末魔の叫び声を上げる。
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