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ファンタジー12
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そんなエリエを見て、デイビッドも鞘に収められていた刀を勢い良く引き抜いた。
険しい表情で、森の一点を見ていたデイビッドが叫んだ。
「お前達も戦闘の準備をしろ……すぐにくるぞ?」
「了解です!」
デイビッドの言葉に答えるように、カレンはガントレットを装備した。
「……そうやね。うちも着替えとかなあかんな~」
イシェルもそう口にしてコマンドを操作すると、次の瞬間。イシェルの姿が巫女服へと変わった。
その手には剣などの装備はなく、代りに棒に小さな鈴がたくさん付いた道具を持っている。それは神社などで巫女さんが舞に使う道具――神楽鈴と呼ばれる道具だ。
(――なんだろう。あんな武器はじめて見た……)
星がイシェルのことを見ていると、エミルの声が響いた。
慌てて森の方を見るが、星の目には敵の姿は確認できない。
「敵にターゲットされた!」
「……えっ?」
星が状況の変化に対応できずにきょとんとしていると、その前にレイニールが立ちはだかった。
その直後、レイニールが大声で咆哮を上げる。
「我輩がいる間は、主はやらせんぞ!!」
「――だめよ! ここのモンスターは森に生息しないモンスターの気配に集まって来ちゃうの! レイニールちゃんが攻撃すると、敵を呼んじゃうから。星ちゃんと私の後ろに隠れてて!」
「は、はい! レイ。こっちに……」
掛かって来いと言わんばかりに息巻いて、空中で浮遊している目の前のレイニールを抱きかかえると言われた通り、星はエミルの後ろに隠れた。
エミルは素直に後ろに隠れた星の頭の上に手を置くと優しく微笑んだ。
「ふふっ、いい子ね……」
その後、エミルは辺りを注意深く観察する。
(おかしい。気配は感じるものの、敵の姿が一向に見えない……)
エミルは敵が見えないことに内心焦りながらも、自分の後ろで身を寄せ不安そうな表情のまま辺りをきょろきょろと見ている星を見て、深呼吸して冷静さを取り戻す。
それは、年下の星がいる前で動揺などできない。っというエミルのプライドの様なものなのかもしれない。
(私がしっかりしないとダメね。敵が見えないのなら……)
エミルは冷静に視界右上に表示されたマップに目をやった。
すると、マップ上で少し離れた場所に木の密集していない広い場所ができているのを確認した。その直後、エミルが仲間達に向かって大声で叫ぶ。
「皆! 敵を目視できない以上。こっちから打って出てはダメよ! 近くに木の間に広い場所がある。ここは、まとまってそこまで移動する方がいいわ!」
『了解!』
その声に全員が返すと、互いが互いの背中を守りつつ。エミルの言ったそのポイントまで移動を始めた。
しかし、目的のポイントに着いても。敵は時折ゴソゴソと音を立てるものの、物陰に隠れたまま一向に襲い掛かってくる気配はない。
さすがに業を煮やしたのか、エミルが驚きの声を上げる。
「どうして? まるで襲ってくる気配がないじゃない! これじゃまるで――」
「――うん。誰かに操られてるよう……やね!」
エミルが話し終わる前に、イシェルがそう言ってエミルを押し退けるようにして前に出た。
イシェルのその行動に、少し驚いた様子で目を丸くしていると、彼女はエミルに静かに言葉を続けた。
「――エミル……ここはうちに任せてもらってええ?」
「えっ? でも……」
「うちは、コケにされるんが一番嫌いなんよ……」
エミルは普段のおっとりした彼女とは違うその雰囲気に圧倒され、それ以上口を開くことができなかった。
イシェルは単身で木陰に向かってゆっくりと進んでいくと、しばらくして物陰から黒い塊が無数に彼女に襲い掛かってきた。それを見た瞬間、出てきたモンスターを指差してカレンが声を上げる。
「あの黒い体に赤い瞳――あれは間違いない。インプだ!」
子供の様な身長で茶色い肌に額には短い角、赤く光る瞳、背中には小さな羽の様な物が付いてる。
その数は多く、ざっと見積もっても30体以上はいるように見える。
インプは人と比べると大きさはそれほど大きくなく、背丈は腰くらいの高さしかないが、その分スピードは速く。集団で行動する上に、隠密行動にも長けている種でもある。しかし、イシェルは一斉に襲い掛かるインプに全く物怖じせず。
「――まあまあ、そないぎょうさん出てきはって……いらちなんはかまへん。けど……今のうちは加減できひんよ? 堪忍しとくれやす……」
イシェルが低い声でそう呟くように言うと、襲い掛かったインプ達の体が空中で止まった。
険しい表情で、森の一点を見ていたデイビッドが叫んだ。
「お前達も戦闘の準備をしろ……すぐにくるぞ?」
「了解です!」
デイビッドの言葉に答えるように、カレンはガントレットを装備した。
「……そうやね。うちも着替えとかなあかんな~」
イシェルもそう口にしてコマンドを操作すると、次の瞬間。イシェルの姿が巫女服へと変わった。
その手には剣などの装備はなく、代りに棒に小さな鈴がたくさん付いた道具を持っている。それは神社などで巫女さんが舞に使う道具――神楽鈴と呼ばれる道具だ。
(――なんだろう。あんな武器はじめて見た……)
星がイシェルのことを見ていると、エミルの声が響いた。
慌てて森の方を見るが、星の目には敵の姿は確認できない。
「敵にターゲットされた!」
「……えっ?」
星が状況の変化に対応できずにきょとんとしていると、その前にレイニールが立ちはだかった。
その直後、レイニールが大声で咆哮を上げる。
「我輩がいる間は、主はやらせんぞ!!」
「――だめよ! ここのモンスターは森に生息しないモンスターの気配に集まって来ちゃうの! レイニールちゃんが攻撃すると、敵を呼んじゃうから。星ちゃんと私の後ろに隠れてて!」
「は、はい! レイ。こっちに……」
掛かって来いと言わんばかりに息巻いて、空中で浮遊している目の前のレイニールを抱きかかえると言われた通り、星はエミルの後ろに隠れた。
エミルは素直に後ろに隠れた星の頭の上に手を置くと優しく微笑んだ。
「ふふっ、いい子ね……」
その後、エミルは辺りを注意深く観察する。
(おかしい。気配は感じるものの、敵の姿が一向に見えない……)
エミルは敵が見えないことに内心焦りながらも、自分の後ろで身を寄せ不安そうな表情のまま辺りをきょろきょろと見ている星を見て、深呼吸して冷静さを取り戻す。
それは、年下の星がいる前で動揺などできない。っというエミルのプライドの様なものなのかもしれない。
(私がしっかりしないとダメね。敵が見えないのなら……)
エミルは冷静に視界右上に表示されたマップに目をやった。
すると、マップ上で少し離れた場所に木の密集していない広い場所ができているのを確認した。その直後、エミルが仲間達に向かって大声で叫ぶ。
「皆! 敵を目視できない以上。こっちから打って出てはダメよ! 近くに木の間に広い場所がある。ここは、まとまってそこまで移動する方がいいわ!」
『了解!』
その声に全員が返すと、互いが互いの背中を守りつつ。エミルの言ったそのポイントまで移動を始めた。
しかし、目的のポイントに着いても。敵は時折ゴソゴソと音を立てるものの、物陰に隠れたまま一向に襲い掛かってくる気配はない。
さすがに業を煮やしたのか、エミルが驚きの声を上げる。
「どうして? まるで襲ってくる気配がないじゃない! これじゃまるで――」
「――うん。誰かに操られてるよう……やね!」
エミルが話し終わる前に、イシェルがそう言ってエミルを押し退けるようにして前に出た。
イシェルのその行動に、少し驚いた様子で目を丸くしていると、彼女はエミルに静かに言葉を続けた。
「――エミル……ここはうちに任せてもらってええ?」
「えっ? でも……」
「うちは、コケにされるんが一番嫌いなんよ……」
エミルは普段のおっとりした彼女とは違うその雰囲気に圧倒され、それ以上口を開くことができなかった。
イシェルは単身で木陰に向かってゆっくりと進んでいくと、しばらくして物陰から黒い塊が無数に彼女に襲い掛かってきた。それを見た瞬間、出てきたモンスターを指差してカレンが声を上げる。
「あの黒い体に赤い瞳――あれは間違いない。インプだ!」
子供の様な身長で茶色い肌に額には短い角、赤く光る瞳、背中には小さな羽の様な物が付いてる。
その数は多く、ざっと見積もっても30体以上はいるように見える。
インプは人と比べると大きさはそれほど大きくなく、背丈は腰くらいの高さしかないが、その分スピードは速く。集団で行動する上に、隠密行動にも長けている種でもある。しかし、イシェルは一斉に襲い掛かるインプに全く物怖じせず。
「――まあまあ、そないぎょうさん出てきはって……いらちなんはかまへん。けど……今のうちは加減できひんよ? 堪忍しとくれやす……」
イシェルが低い声でそう呟くように言うと、襲い掛かったインプ達の体が空中で止まった。
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