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ファンタジー11

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 それを見たレイニールが警戒するように星の前に出て妖精を睨みつけた。

 妖精は踊るように星の上空を飛び回ると光の粒子が星に降り注ぐ。

「うわぁ~。綺麗……」

 その光を見上げると、まるで夜空に煌めく星のように見えた。

 エミルは嬉しそうに妖精を見上げている星を優しい眼差しで見つめている。

「はぁ~。そんな事だろうと思った」

 エリエは分かっていたように「ふぅ~」と息を吐いてそう呟いた。

「確かに……エミルの頭の中は星ちゃんの事でいっぱいだからな」
「当然ですよ。星ちゃんは素直でいい子ですからね。俺もあの子の為なら、なんでもしてあげますよ」

 デイビッドとカレンが並んでそんな会話をしていると、その背後からサラザの腕が2人の首をがっしりと絡ませて涙を流している。

「うわ~ん。友情って本当にいいわねぇ~」
「「………」」

 号泣しているサラザを見て、2人は無言のまま顔を引きつらせている。

「――妖精さん。とても綺麗でした。ありがとうございました!」

 星がそういうと妖精はにっこりと笑い星の周りを数回飛び回って、森の中へと消えていった。

 星は手を振って妖精に別れを告げると、エミルの元へと駆けてきてにっこりと微笑んだ。

「ありがとうございます。エミルさん」
「ええ、いいのよ。楽しんでもらえてるなら……でも、内緒にしててごめんなさいね。最初に言えばよかったわね」
「いいえ、私こういうの始めてで……でも、今とっても嬉しいです!」

 申し訳無さそうにそう言ったエミルに、星は微笑んで見せると「それなら良かった」とエミルも微笑み返した。

(とりあえず、作戦の第一段階は成功やね。良かったな~。エミル)

 そんな2人の姿を見ていたイシェルはそう心の中で呟き、優しい眼差しで微笑んだ。

 星達は森の中を、そこに生息するモンスターなどを観察しながら更に奥へと進んでいく。
 しかし、森の中は予想以上に入り組んでいてどこまで行っても同じ景色に思えてしまう。その理由はドリームフォレストの至る場所に生息し、縦横無尽に動き回る木が原因だ――。

 ドリームフォレストには、指定された時間でフィールド内を動き回る固有の地形型のモンスターがいる。
 それはいかなる攻撃でも撃破できず。意図的に移動させることもできない為、別名『迷いの森』とも呼ばれていた。

 辺りを根で歩くように動く巨大な木に囲まれ、星は不安そうにエミルを見上げて震える声で尋ねた。

「エミルさん。さっきから迷っているように見えるんですけど……」

 星の言う通り。エミル達は広大な森の中で、今まさに道に迷っていた。いや、迷っていた……っというよりも、迷わされているという方が正しいかもしれない。

 本来、ドリームフォレストの木々は、決められた一本の正規のルートには入ることはできない。
 それは、ランダムで動かれたらマップに木がある場所とそうでない場所でムラが出てしまうということと、本当に迷ってしまう危険性があるからだ。

 ゲームである以上は、楽しくプレイしてもらわなければ意味がない。木が動き回るのも、ゲーム演出の一部ということだ――。

 もし、富士の樹海の様に一度入ったら出られないマップがあるとして、そこを本当に楽しめるか?という疑問は拭いきれないだろう。

 エミルは不安気な星に笑みを見せた。

「ええ、そうね……」
(ここの植物は時間でしか移動しないはず。これはちょっと変ね……まるで私達をどこかに誘導しているような……でも、これは星ちゃんには感付かれないようにしないと)

 だが、エミルは頭の中では混乱を隠しきれなかった。悟られないように、微笑みながら星の頭を優しく撫でた。

 星は安心したのか、ほっとしたように大きく息を吐いて、微笑み返している。その時、デイビッドの声が聞こえてきた。

「おい、エミル。何かおかしいぞ? 前来た時は、ここら辺にも妖精達の姿があったはずなのだが、妖精どころか他の幻想種の姿も見えない」

 デイビッドの言う幻想種とは、童話に出てくるような特殊な動物や妖精、小人のことである。
 道中にも妖精や動物、小さいおじさんなど、様々な幻想種と遭遇していたのだが、奥に進むにつれて、今までは出会っていた彼らの姿も全く見えなくなっていたのだ。

 その異変には他のメンバー達も気が付いていたらしく、小さな声で近くの者同士で話をしている。

「さっきから、俺も嫌な感じがするんですよね。なんだか、誰かに見られてるような感じが……」
「あら奇遇ね~。私の筋肉達もさっきからピクピクして仕方ないのよ~」
「いや、それはちがう思うんやけど……」

 カレンとサラザが話している内容を聞いて、イシェルは顔を引きつらせていた。その直後、エリエが鞘からレイピアを抜くと、森の一点を見つめて険しい表情になる。
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