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ファンタジー8
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その場にいた全員が、その次の言葉を固唾を呑んで見守っていると、エミルは言葉を続けた。
「まずどうしてフィールド攻略なのかだけど、その理由は大きく分けて2つ。1つは全員の連携の確認と複数の敵との戦闘の対応を練習する事。そしてもう1つがモンスターの生態調査かしらね」
「……生態調査?」
それを聞いたエリエが不思議そうに首を傾げた。
それもそのはずだ。生態調査と言ってもモンスターは所詮、データの集合体でしかなく。設定されたAI以外の行動は絶対に取らない。
「それに戦闘の対応する練習って言っても、もう嫌というほど戦ったじゃん。私はお留守番でいいよ~」
エリエが面倒そうに投げやりな態度でそう告げると、カレンが口を挟んできた。
「なら、お前はここに残ってろよ。臆病者がいると迷惑だからな。星ちゃんは俺に任せて部屋で震えてればいいさ」
「な、なんですって!? そこまで言われたら、黙っていられないでしょ! エミル姉、やっぱり私も行く!!」
エリエとカレンはお互いに睨み合っている。星はドギマギしながら、そんな2人の様子を見守っていた。
そんな2人を放っておいて、歩み寄ってきたエミルは星の耳元で小さな声で告げる。
「……これは星ちゃんの為に用意したんだから、色々楽しみにしててね?」
「えっ? それってどういう……」
星がそう言い終わる前に、イシェルがエミルに声を掛けてきた。
彼女の意味深な言葉に、意味が分からずただただ星は首を傾げていた。
エミルの言葉の意味が星にはさっぱりと言っていいほど分からない。
それもそうだろう。突然、何の前触れもなくフィールド攻略という専門用語を使われれば無理もない。
その上、それが自分の為と言われて即座に理解できる者などいないだろう。
「ほなエミル。出掛けるんなら準備せなあかんやろ? 買い物に行こか~」
「あ、ちょっと、イシェ!?」
「ええから、ええから~」
その真意を聞く前に、星の前からイシェルがエミルの手を引いて、強引に連れていってしまった。
皆と一緒に部屋に取り残された星は、その言葉の意味をもう一度考える。
(私のためって、いったいどういう意味なんだろう……)
だが、その言葉の真相を知っているのは、言い出したエミルだけなのだ。
その時、エリエが何かを思い出した様に手を叩くと。
「あっ! サラザも呼ぼ~」
エリエはうきうきしながら、嬉しそうにサラザにメッセージを送信する。
それを見たデイビッドが少し嫌そうな顔をしている。
「俺。あのオカマ苦手だな……」
その話を聞いて、カレンとエリエがそんなデイビッドに向かって言った。
「デイビッドさん。女性にそんな事言ったら失礼ですよ?」
「そうよ。サラザは女の子なのよデイビッド。いつから頭だけじゃなくて、目までおかしくなったの?」
さすがにその意見には賛同できないのか、信じられないと言った表情でデイビッドが大声で叫ぶ。
「だいたい俺の頭はおかしくないし! それに、何をどうしたらお前達はあれが女だと認識できるんだ!? そっちの方がよっぽど不思議だ!」
それを聞いた2人は不思議そうに首を傾げると「心が?」と声を合わせて答える。
デイビッドはその言葉に、眉をひそめると「心より体の方が問題だろう」と呆れながら呟く。
エミル達を待っている間。星達は思い思いに時間を過ごしていた。彼女達が出ていってから30分が経ち、ようやく部屋のドアが音を立てて開いた。
そこに入ってきたのは――。
「エリー、ごめんなさ~い。オカマイスターの会合が長引いちゃって~」
退屈そうに各々時間を潰していた部屋に、胸に○の中に釜とプリントされたタンクトップを着たサラザが入ってきた。
それを見たエリエ以外の全員が口を開けたまま、サラザのことを呆然と見つめている。
(なんだ!? あのダサイプリントの入ったタンクトップは!!)
そう心の中でその場にいた全員が例外なく思っていた……。
デイビッドの目はサラザの着ているタンクトップに集中する。
(おっ……オカマイスターってなんだ!?)
カレンはそんなことを考えながらサラザを見つめている。
(……オカマイスターの会合って昨日からずっとしてたのかな?)
星はそう思いながらもサラザから、そっと目を逸らす。まあ、皆のそんな心の声が、サラザに聞こえるはずもない。
エリエはサラザに向かって駆けて行くと、そのままサラザの胸に飛び込んだ。
「サラザ! もう。急に会合に行くって言うんだもん!」
「ごめんなさいね~。ちょっと誰が今年一番美しく筋肉を鍛えたかを競う。美筋大会も重なったのよ~」
「それで順位はどうだったの?」
瞳を輝かせてそう尋ねたエリエに、サラザは人差し指を立てて誇らしげに微笑む。
「もちろん1位よ!」
「さっすが~。やっぱり1位よね! 2位は敗者でしかないもんね!」
「ええ、出るからには1番以外はありえないわよ~。この日に向けて体を絞ったんですもの~」
意味の分からない意気投合した2人は熱く手を握り合うと、お互いの顔を見て微笑み合っている。
自分達の世界に完全に入ってしまっている2人を、皆が生温かい目で見守っている。だが、カレンは理解しているのか、頻りに頷いていた。まあ、カレンは『1位以外は敗者でしかない』というところに共感したのだろう。
「まずどうしてフィールド攻略なのかだけど、その理由は大きく分けて2つ。1つは全員の連携の確認と複数の敵との戦闘の対応を練習する事。そしてもう1つがモンスターの生態調査かしらね」
「……生態調査?」
それを聞いたエリエが不思議そうに首を傾げた。
それもそのはずだ。生態調査と言ってもモンスターは所詮、データの集合体でしかなく。設定されたAI以外の行動は絶対に取らない。
「それに戦闘の対応する練習って言っても、もう嫌というほど戦ったじゃん。私はお留守番でいいよ~」
エリエが面倒そうに投げやりな態度でそう告げると、カレンが口を挟んできた。
「なら、お前はここに残ってろよ。臆病者がいると迷惑だからな。星ちゃんは俺に任せて部屋で震えてればいいさ」
「な、なんですって!? そこまで言われたら、黙っていられないでしょ! エミル姉、やっぱり私も行く!!」
エリエとカレンはお互いに睨み合っている。星はドギマギしながら、そんな2人の様子を見守っていた。
そんな2人を放っておいて、歩み寄ってきたエミルは星の耳元で小さな声で告げる。
「……これは星ちゃんの為に用意したんだから、色々楽しみにしててね?」
「えっ? それってどういう……」
星がそう言い終わる前に、イシェルがエミルに声を掛けてきた。
彼女の意味深な言葉に、意味が分からずただただ星は首を傾げていた。
エミルの言葉の意味が星にはさっぱりと言っていいほど分からない。
それもそうだろう。突然、何の前触れもなくフィールド攻略という専門用語を使われれば無理もない。
その上、それが自分の為と言われて即座に理解できる者などいないだろう。
「ほなエミル。出掛けるんなら準備せなあかんやろ? 買い物に行こか~」
「あ、ちょっと、イシェ!?」
「ええから、ええから~」
その真意を聞く前に、星の前からイシェルがエミルの手を引いて、強引に連れていってしまった。
皆と一緒に部屋に取り残された星は、その言葉の意味をもう一度考える。
(私のためって、いったいどういう意味なんだろう……)
だが、その言葉の真相を知っているのは、言い出したエミルだけなのだ。
その時、エリエが何かを思い出した様に手を叩くと。
「あっ! サラザも呼ぼ~」
エリエはうきうきしながら、嬉しそうにサラザにメッセージを送信する。
それを見たデイビッドが少し嫌そうな顔をしている。
「俺。あのオカマ苦手だな……」
その話を聞いて、カレンとエリエがそんなデイビッドに向かって言った。
「デイビッドさん。女性にそんな事言ったら失礼ですよ?」
「そうよ。サラザは女の子なのよデイビッド。いつから頭だけじゃなくて、目までおかしくなったの?」
さすがにその意見には賛同できないのか、信じられないと言った表情でデイビッドが大声で叫ぶ。
「だいたい俺の頭はおかしくないし! それに、何をどうしたらお前達はあれが女だと認識できるんだ!? そっちの方がよっぽど不思議だ!」
それを聞いた2人は不思議そうに首を傾げると「心が?」と声を合わせて答える。
デイビッドはその言葉に、眉をひそめると「心より体の方が問題だろう」と呆れながら呟く。
エミル達を待っている間。星達は思い思いに時間を過ごしていた。彼女達が出ていってから30分が経ち、ようやく部屋のドアが音を立てて開いた。
そこに入ってきたのは――。
「エリー、ごめんなさ~い。オカマイスターの会合が長引いちゃって~」
退屈そうに各々時間を潰していた部屋に、胸に○の中に釜とプリントされたタンクトップを着たサラザが入ってきた。
それを見たエリエ以外の全員が口を開けたまま、サラザのことを呆然と見つめている。
(なんだ!? あのダサイプリントの入ったタンクトップは!!)
そう心の中でその場にいた全員が例外なく思っていた……。
デイビッドの目はサラザの着ているタンクトップに集中する。
(おっ……オカマイスターってなんだ!?)
カレンはそんなことを考えながらサラザを見つめている。
(……オカマイスターの会合って昨日からずっとしてたのかな?)
星はそう思いながらもサラザから、そっと目を逸らす。まあ、皆のそんな心の声が、サラザに聞こえるはずもない。
エリエはサラザに向かって駆けて行くと、そのままサラザの胸に飛び込んだ。
「サラザ! もう。急に会合に行くって言うんだもん!」
「ごめんなさいね~。ちょっと誰が今年一番美しく筋肉を鍛えたかを競う。美筋大会も重なったのよ~」
「それで順位はどうだったの?」
瞳を輝かせてそう尋ねたエリエに、サラザは人差し指を立てて誇らしげに微笑む。
「もちろん1位よ!」
「さっすが~。やっぱり1位よね! 2位は敗者でしかないもんね!」
「ええ、出るからには1番以外はありえないわよ~。この日に向けて体を絞ったんですもの~」
意味の分からない意気投合した2人は熱く手を握り合うと、お互いの顔を見て微笑み合っている。
自分達の世界に完全に入ってしまっている2人を、皆が生温かい目で見守っている。だが、カレンは理解しているのか、頻りに頷いていた。まあ、カレンは『1位以外は敗者でしかない』というところに共感したのだろう。
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