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ファンタジー5
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エミルは2人から事の事情を聞いて、どうしてこうなったのか理解すると、ゆっくりと頷いた。
その間、星とレイニールは隣り合わせに座り。2人とも反省した様子で、向かい側で腕を組んだまま険しい表情を浮かべているエミルの様子を窺っていた。
「――なるほどね。星ちゃんはレイニールちゃんが卵を食べたら共食いになると思ってて……。レイニールちゃんは星ちゃんが卵焼きを独り占めしようと思った……っと」
「「……はい」」
何故かレイニールは人間状態になっていて、俯きながら自分の手を見つめている。
星も同様に俯きながら膝の上に置いた自分の手に視線を向けていた。
その時、イシェルがカップを持って歩いてきた。
「まあまあ、ええやん。2人共ココアでも飲んで仲ようしいや~。エミルは紅茶でええか?」
「ええ、ありがとう頂くわ。事情は把握したけど、それにしても……どうして、星ちゃんは卵焼きを作ろうと思ったの? 共食いになると分かっていたなら。この問題が起こる以前に、ここに卵焼きがあるのはおかしいと思うのだけど……」
「「それは……」」
エミルにそう尋ねられ、2人は同時にイシェルを見た。
上機嫌で紅茶を入れているイシェルを見つめ、大きく息を吐いた。
「――ああ、なるほどね。イシェが作ってそれが原因で2人が……って。元凶はお前かッ!!」
エミルがそう叫ぶと、首謀者であるイシェル本人は「えっ? なんのこと?」と素知らぬ顔で微笑んだ。
頭を押さえてエミルは大きなため息をつくと、星とレイニールの方を向いて頭を下げた。
「ごめんね。この子ちょっと抜けてて、でも悪気があった訳じゃないと思うから、2人とも許してあげて」
けろっとしているイシェルの代わりに謝罪するエミルに、2人はバツが悪そうにお互いに顔を見合わせると謝った。
その後、互いに微笑み合う2人を見てから、エミルは徐ろに席に立つと「エリー達を起こしてくるわ」と言い残して部屋を出て行った。
「それじゃ~。皆が来ないうちに卵焼きとやらを頂くのじゃ!!」
レイニールがテーブルに置かれた卵焼きに手を伸ばすと、今度はイシェルが「こらっ!」と伸ばしていたレイニールの手を叩いた。
眉を吊り上げたイシェルが指を立てて。
「お手てでなんてはしたないわよ? めっ!」
「ならスプーンで!」
レイニールは嬉しそうにスプーンを手に握り締めると、卵焼きへと一目散に飛びついた。
その直後、イシェルが卵焼きを取り返す。
「エミルも来たことやし、皆が来るまでおあずけや。後で皆が来てから食べようなぁ~」
「あっ……あう~」
瞳を潤ませながら悔しそうに唇を噛んでいるレイニールをよそに、イシェルは卵焼きを持っていってしまった。
レイニールは悲しそうに潤んだ瞳で手を伸ばすと、徐々に遠ざかっていくその後姿を見つめている。
そんなレイニールに星が心配して声を掛けた。
「ごめんね。私のせいで食べれなくなって……後で私の分も食べていいから……」
「うぅ……うわ~ん。あるじ~」
レイニールは泣きながら星に抱きついてくる。そんなレイニールの頭を星は優しく撫でていると、カレンが大あくびをして部屋の中に入ってきた。
カレンは笑みを浮かべながら星に近付いてくる。
「あっ、カレンさん。おはようございます」
「おぉ~、星ちゃん。朝からお姉さんぶりを発揮してるね!」
「えっ!? いや、そんなんじゃないです」
その言葉を聞いて、星は顔を真っ赤にして両手をブンブンと振って否定しながら答えた。
カレンはにやにやしながら「またまたー」と言って茶化すと、その時、レイニールがニヤリと不敵な笑みを浮かべると、カレンの方を向いて叫んだ。
「ふふふっ……おぬしの卵焼きも我輩の物じゃ!」
カレンはその言葉に驚き「なんで!?」と仰け反っている。
そんなカレンに向かって、レイニールがビシッと人差し指を差しながら「主の事をばかにしたバツなのじゃ!」と偉そうに言い放つ。
「だいたい、君は昨日お風呂に居た子だろ。どうして親しくもない子にそんな事を――」
見慣れないツインテール姿のレイニールの言葉に反論しようとしたカレンの元に、星が慌てて駆けていくと耳元でささやいた。
「――ごめんなさい。今日は私のせいでレイ機嫌悪いんです今度必ずお返ししますから、今日はあの子に譲ってあげて下さい」
「まあ……星ちゃんがそういうなら仕方ない。俺も女だ我慢するさ」
星はカレンに本当に申し訳なさそうに頭を下げると、それを見たカレンは渋々レイニールの方に向かって頷く。
「分かった。俺の卵焼きは君の物だ、好きにすればいい」
「やった~!」
「良かったね。レイ」
嬉しそうに飛び跳ねているレイニールに、星は優しい声でそう言って微笑んだ。すると、キッチンからイシェルが大皿いっぱいに卵焼きを作って持ってきた。
その間、星とレイニールは隣り合わせに座り。2人とも反省した様子で、向かい側で腕を組んだまま険しい表情を浮かべているエミルの様子を窺っていた。
「――なるほどね。星ちゃんはレイニールちゃんが卵を食べたら共食いになると思ってて……。レイニールちゃんは星ちゃんが卵焼きを独り占めしようと思った……っと」
「「……はい」」
何故かレイニールは人間状態になっていて、俯きながら自分の手を見つめている。
星も同様に俯きながら膝の上に置いた自分の手に視線を向けていた。
その時、イシェルがカップを持って歩いてきた。
「まあまあ、ええやん。2人共ココアでも飲んで仲ようしいや~。エミルは紅茶でええか?」
「ええ、ありがとう頂くわ。事情は把握したけど、それにしても……どうして、星ちゃんは卵焼きを作ろうと思ったの? 共食いになると分かっていたなら。この問題が起こる以前に、ここに卵焼きがあるのはおかしいと思うのだけど……」
「「それは……」」
エミルにそう尋ねられ、2人は同時にイシェルを見た。
上機嫌で紅茶を入れているイシェルを見つめ、大きく息を吐いた。
「――ああ、なるほどね。イシェが作ってそれが原因で2人が……って。元凶はお前かッ!!」
エミルがそう叫ぶと、首謀者であるイシェル本人は「えっ? なんのこと?」と素知らぬ顔で微笑んだ。
頭を押さえてエミルは大きなため息をつくと、星とレイニールの方を向いて頭を下げた。
「ごめんね。この子ちょっと抜けてて、でも悪気があった訳じゃないと思うから、2人とも許してあげて」
けろっとしているイシェルの代わりに謝罪するエミルに、2人はバツが悪そうにお互いに顔を見合わせると謝った。
その後、互いに微笑み合う2人を見てから、エミルは徐ろに席に立つと「エリー達を起こしてくるわ」と言い残して部屋を出て行った。
「それじゃ~。皆が来ないうちに卵焼きとやらを頂くのじゃ!!」
レイニールがテーブルに置かれた卵焼きに手を伸ばすと、今度はイシェルが「こらっ!」と伸ばしていたレイニールの手を叩いた。
眉を吊り上げたイシェルが指を立てて。
「お手てでなんてはしたないわよ? めっ!」
「ならスプーンで!」
レイニールは嬉しそうにスプーンを手に握り締めると、卵焼きへと一目散に飛びついた。
その直後、イシェルが卵焼きを取り返す。
「エミルも来たことやし、皆が来るまでおあずけや。後で皆が来てから食べようなぁ~」
「あっ……あう~」
瞳を潤ませながら悔しそうに唇を噛んでいるレイニールをよそに、イシェルは卵焼きを持っていってしまった。
レイニールは悲しそうに潤んだ瞳で手を伸ばすと、徐々に遠ざかっていくその後姿を見つめている。
そんなレイニールに星が心配して声を掛けた。
「ごめんね。私のせいで食べれなくなって……後で私の分も食べていいから……」
「うぅ……うわ~ん。あるじ~」
レイニールは泣きながら星に抱きついてくる。そんなレイニールの頭を星は優しく撫でていると、カレンが大あくびをして部屋の中に入ってきた。
カレンは笑みを浮かべながら星に近付いてくる。
「あっ、カレンさん。おはようございます」
「おぉ~、星ちゃん。朝からお姉さんぶりを発揮してるね!」
「えっ!? いや、そんなんじゃないです」
その言葉を聞いて、星は顔を真っ赤にして両手をブンブンと振って否定しながら答えた。
カレンはにやにやしながら「またまたー」と言って茶化すと、その時、レイニールがニヤリと不敵な笑みを浮かべると、カレンの方を向いて叫んだ。
「ふふふっ……おぬしの卵焼きも我輩の物じゃ!」
カレンはその言葉に驚き「なんで!?」と仰け反っている。
そんなカレンに向かって、レイニールがビシッと人差し指を差しながら「主の事をばかにしたバツなのじゃ!」と偉そうに言い放つ。
「だいたい、君は昨日お風呂に居た子だろ。どうして親しくもない子にそんな事を――」
見慣れないツインテール姿のレイニールの言葉に反論しようとしたカレンの元に、星が慌てて駆けていくと耳元でささやいた。
「――ごめんなさい。今日は私のせいでレイ機嫌悪いんです今度必ずお返ししますから、今日はあの子に譲ってあげて下さい」
「まあ……星ちゃんがそういうなら仕方ない。俺も女だ我慢するさ」
星はカレンに本当に申し訳なさそうに頭を下げると、それを見たカレンは渋々レイニールの方に向かって頷く。
「分かった。俺の卵焼きは君の物だ、好きにすればいい」
「やった~!」
「良かったね。レイ」
嬉しそうに飛び跳ねているレイニールに、星は優しい声でそう言って微笑んだ。すると、キッチンからイシェルが大皿いっぱいに卵焼きを作って持ってきた。
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