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お風呂9
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「――ちょっと待った! まだ髪を洗ってないでしょ?」
すると、星はエミルから目を逸らしてそう小声で呟く。
「えっ? いえ、髪は別に洗わなくても……私の髪長いから洗うの面倒ですし……それに、これゲームの中ですし……」
「ゲームだからって肉体があるんだから汚れる所は汚れるのよ。ほら文句言わないで座る!」
あからさまに視線を逸らして言い訳を続けている星を、エミルは両肩を掴んで強引に椅子に座らせた。
誰が聞いても『ただ髪を洗いたくない』としか取られなかっただろう。まあ、実際にそれ以外の理由などなかったが。
「あっ! 待って、待ってください! 私、水が苦手なので洗ってもいいから優しくしてください!」
その必死の訴えに、エミルは「なるほどねー」と納得したように頷いた。
星はその言葉の意味が分からず、不思議そうな顔で振り返るとエミルに尋ねた。
「なるほどって、なにがなるほどなんですか?」
「――あれ? 気付いてないの? シャワーの音を聞いただけで星ちゃんビクッて体を震わせてるのよ?」
それを聞いて星は顔を真っ赤に染めると、恥ずかしくなり肩をすぼめて小さくなった。
エミルはシャワーを手に持ち、星の髪の毛の先から徐々に濡らしていく。
星は水が肌に触れる度に体を小刻みに震わせながら、しっかりと目を瞑っている。
星がエミルに髪を洗われていたその頃――。
「――ぷはっ! ひっろ~い。きっもちぃ~」
生き生きとした表情でカレンは広い浴槽の中を、見事なクロールで我が物顔に泳ぎ回っていた。
少し離れた場所で肩までお湯に浸かりながら、その光景を見ていたエリエが不機嫌そうに眉をひそめて呟く。
「あんた。お風呂の中でなにやってるのよ……」
行儀としては最悪なカレンだが、エリエが怒っているのはそれだけの理由ではない。先程から出たり沈んだりして左右に揺れているカレンの豊満な胸に、エリエの視線はどうしてもそこにいってしまうのだろう。
それがエリエからしてみれば、この上ないほどに目障りなのだ。
「ふんっ、なんだよ。俺は久しぶり風呂に入れたんだからしょうがないだろ!」
「だからって泳ぐなんて――あんたもまだまだ子供よねぇ~」
エリエにそう言われ、むっとしたカレンは不機嫌そうに浴槽の中で立ち上がると、そっぽを向きながら声を上げる。
「あーあー、そうだな。だが、少なくとも、俺よりも胸のないやつの言えるセリフではないよな!」qq
自慢げな笑みを浮かべ腰に手を当て胸を張ると、エリエの目の前に大きく豊満な胸を曝け出した。そして嫌味としか聞こえないそのカレンの言葉に、今まで必死で耐えていたエリエがブチ切れる。
「くうぅぅぅ~。私より少し大きいからって……この男女!!」
「何だと! このちっぱい!!」
「ちっぱ――ってそ、そんなに小さくないわよこのバカ!」
「フッ。少なくても俺よりも小さいだろうが……この平胸。違うって言うなら比べてみるか? ほれほれ」
「ぐぬぬぬ……」
エリエは顔を真っ赤にしながら、胸を突き出すカレンを睨みつけている。
カレンは勝ち誇った様子でさらに胸を張ると、エリエのことを鼻で笑いながら見下したような笑みを浮かべている。
そんな2人を見兼ねて、イシェルがいがみ合う2人の間に割って入る。
「――なるほどな~。胸の大きさは人それぞれやし……それに呼び方も人それぞれ……なあ~、2人とも。喧嘩両成敗って言葉は知っとる?」
ゆっくりとした口調とは裏腹に、殺意を帯びた様なそのイシェルの声に2人は思わず凍りつく。
エリエとカレンは慌てて、ビシッとイシェルの方を向いて背筋を伸ばす。
「ほな、仲直り。……ごめんなさいは?」
「「はい! ごめんなさい!!」」
2人は息ピッタリに声を合わせて、お互い同時に謝罪した。だが、その声はまるで軍隊の様な返事だった。
それを見たイシェルは「もうケンカしたらあかんよ~」とにっこりと微笑んでいる。 すると、そこに星の髪を洗い終わったエミルが、レイニールを抱きかかえた星と一緒に歩いてきた。
「あら? イシェ。もうサウナはいいの?」
「ああ、エミル――ちょっと休憩や。でも、やっぱりサウナはええな~。身も心もぽかぽかや~」
「そう。それは良かったわ」
エミルとイシェルはそう言って微笑み合っている。
それを聞いていた星が首を傾げながら、エミルの顔を見上げ尋ねた。
「あの、エミルさん……サウナって何ですか?」
星のその言葉に、エミルがぽかんとした顔で、不思議そうに小首を傾げている星を見つめている。
(あ……あれ? 私、なにか変な事聞いちゃったのかな?)
だが、そのエミルの反応を見て星は少し不安になったのか、心の中でそう呟くと眉をひそめてエミルの顔を注意深く窺っている。
すると、星はエミルから目を逸らしてそう小声で呟く。
「えっ? いえ、髪は別に洗わなくても……私の髪長いから洗うの面倒ですし……それに、これゲームの中ですし……」
「ゲームだからって肉体があるんだから汚れる所は汚れるのよ。ほら文句言わないで座る!」
あからさまに視線を逸らして言い訳を続けている星を、エミルは両肩を掴んで強引に椅子に座らせた。
誰が聞いても『ただ髪を洗いたくない』としか取られなかっただろう。まあ、実際にそれ以外の理由などなかったが。
「あっ! 待って、待ってください! 私、水が苦手なので洗ってもいいから優しくしてください!」
その必死の訴えに、エミルは「なるほどねー」と納得したように頷いた。
星はその言葉の意味が分からず、不思議そうな顔で振り返るとエミルに尋ねた。
「なるほどって、なにがなるほどなんですか?」
「――あれ? 気付いてないの? シャワーの音を聞いただけで星ちゃんビクッて体を震わせてるのよ?」
それを聞いて星は顔を真っ赤に染めると、恥ずかしくなり肩をすぼめて小さくなった。
エミルはシャワーを手に持ち、星の髪の毛の先から徐々に濡らしていく。
星は水が肌に触れる度に体を小刻みに震わせながら、しっかりと目を瞑っている。
星がエミルに髪を洗われていたその頃――。
「――ぷはっ! ひっろ~い。きっもちぃ~」
生き生きとした表情でカレンは広い浴槽の中を、見事なクロールで我が物顔に泳ぎ回っていた。
少し離れた場所で肩までお湯に浸かりながら、その光景を見ていたエリエが不機嫌そうに眉をひそめて呟く。
「あんた。お風呂の中でなにやってるのよ……」
行儀としては最悪なカレンだが、エリエが怒っているのはそれだけの理由ではない。先程から出たり沈んだりして左右に揺れているカレンの豊満な胸に、エリエの視線はどうしてもそこにいってしまうのだろう。
それがエリエからしてみれば、この上ないほどに目障りなのだ。
「ふんっ、なんだよ。俺は久しぶり風呂に入れたんだからしょうがないだろ!」
「だからって泳ぐなんて――あんたもまだまだ子供よねぇ~」
エリエにそう言われ、むっとしたカレンは不機嫌そうに浴槽の中で立ち上がると、そっぽを向きながら声を上げる。
「あーあー、そうだな。だが、少なくとも、俺よりも胸のないやつの言えるセリフではないよな!」qq
自慢げな笑みを浮かべ腰に手を当て胸を張ると、エリエの目の前に大きく豊満な胸を曝け出した。そして嫌味としか聞こえないそのカレンの言葉に、今まで必死で耐えていたエリエがブチ切れる。
「くうぅぅぅ~。私より少し大きいからって……この男女!!」
「何だと! このちっぱい!!」
「ちっぱ――ってそ、そんなに小さくないわよこのバカ!」
「フッ。少なくても俺よりも小さいだろうが……この平胸。違うって言うなら比べてみるか? ほれほれ」
「ぐぬぬぬ……」
エリエは顔を真っ赤にしながら、胸を突き出すカレンを睨みつけている。
カレンは勝ち誇った様子でさらに胸を張ると、エリエのことを鼻で笑いながら見下したような笑みを浮かべている。
そんな2人を見兼ねて、イシェルがいがみ合う2人の間に割って入る。
「――なるほどな~。胸の大きさは人それぞれやし……それに呼び方も人それぞれ……なあ~、2人とも。喧嘩両成敗って言葉は知っとる?」
ゆっくりとした口調とは裏腹に、殺意を帯びた様なそのイシェルの声に2人は思わず凍りつく。
エリエとカレンは慌てて、ビシッとイシェルの方を向いて背筋を伸ばす。
「ほな、仲直り。……ごめんなさいは?」
「「はい! ごめんなさい!!」」
2人は息ピッタリに声を合わせて、お互い同時に謝罪した。だが、その声はまるで軍隊の様な返事だった。
それを見たイシェルは「もうケンカしたらあかんよ~」とにっこりと微笑んでいる。 すると、そこに星の髪を洗い終わったエミルが、レイニールを抱きかかえた星と一緒に歩いてきた。
「あら? イシェ。もうサウナはいいの?」
「ああ、エミル――ちょっと休憩や。でも、やっぱりサウナはええな~。身も心もぽかぽかや~」
「そう。それは良かったわ」
エミルとイシェルはそう言って微笑み合っている。
それを聞いていた星が首を傾げながら、エミルの顔を見上げ尋ねた。
「あの、エミルさん……サウナって何ですか?」
星のその言葉に、エミルがぽかんとした顔で、不思議そうに小首を傾げている星を見つめている。
(あ……あれ? 私、なにか変な事聞いちゃったのかな?)
だが、そのエミルの反応を見て星は少し不安になったのか、心の中でそう呟くと眉をひそめてエミルの顔を注意深く窺っている。
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