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お風呂8
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外傷があれば近くの街の宿に行くこともできただろうが、プレイヤーの中でも最も強いと言われているマスターとその弟子であるカレンが、そうそう怪我など負うわけがなく。彼女もお風呂に入るのが相当久しぶりなのだろう。まるで小学生の男子の様に輝いた瞳で湯船を見据え、そして……。
「ひゃっほ~い!」
カレンは奇声を上げたかと思うと、浴槽の中へと勢い良く飛び込んだ。
その直後、浴槽からは盛大に水柱が上がり。辺りに盛大に水しぶきが舞い上がった。近くに彼か居れば、間違いなく盛大にお湯をかぶって激昂していたことだろう……。
星とエミルはその光景を見て、驚いたように目を丸くさせる。そしてその直後、エミルは星に目線を移すと真剣な表情で言い聞かせるように告げた。
「いーい? 星ちゃん。カレンさんの真似は『絶対に!』しちゃダメよ? 浴槽に入る前には、必ず体を洗うのがマナーになってるの。あと、タオルはお風呂のお湯の中に絶対に入れちゃダメ。分かった?」
「……は、はい」
(はぁ……いいな~、カレンさん。私もあれやりたかったなぁ~)
小さなプラスチック製の椅子に腰掛けながら湯船の方を見つめていた星は、内心ではなにも考えずに湯船に飛び込むことのできたカレンのことを少し羨ましく思っていた。
その時、星の背中にぬるっとした何かが触れ、星は「ひゃっ!」と驚いて悲鳴を上げる。
「あ、ごめんね。びっくりした?」
「はい、ちょっとだけ……」
星は後ろで小首を傾げているエミルの顔を見て告げる。
「あ、あの……エミルさん。さっきシャワーを浴びたので、体を洗わなくても大丈夫ですよ?」
エミルは少し考える仕草を見せた後、にこっと微笑んだ。
「そうね――でも、2回洗えばもっと綺麗になるんじゃないかしら?」
「んんっ……あっ……洗った。ちゃんと洗いましたから!」
エミルは手にボディーソープを泡立てると、それをべったりと星の背中に塗り付け体を洗い始める。
普通はタオルなど専用の道具を使うのだが、エミルはそのどちらでもなく大胆にも、素手で体を洗い始めたことに星は驚きを隠せない。
星が家にいる時は、タオルにボディーソープを付けて洗っていた。そうしないと、背中に手が届かない為、それ以外の手段は考えられなかった。
にもかかわらず。エミルはなんの躊躇もなく、ボディーソープを体に塗りたくったのだから無理もないだろう。
細くて長い指にボディーソープが絡み付き、星の肌を滑らかに通過する。
「あはっ、あははっ! エミルさん。タオルとかで……」
星はくすぐったくて仕方がないのか、そう必死に訴えるとエミルの手が止まった。
呼吸を整えて、ほっと一息ついた星の耳元でエミルのがささやく。
「……タオルは肌へのダメージが大きいから素手で洗うのが一番なの」
すると、言葉を続けるように、再び耳元でエミルが言葉を続ける。
「それに星ちゃん……ちゃんと体を洗わないとね。色々な場所からきのこが生えてくるのよ?」
星はそれを聞いてビクッと体を震わせると、怯えたような瞳でエミルに聞き返す。
「……きのこ……ですか?」
「ええ、そうよ。そして大きくなったきのこに――」
そこまで口にしたエミルは口を閉ざすと、星の顔を覗き込み耳元で「その後どうなったか知りたい?」とにっこりと笑む。
星はガクガクと体を震わせながら瞳に涙を浮かべ、無言のまま首を左右に激しく振った。
「なら、きのこが生えてこないようにしっかり洗わないとねぇ~」
「……はい。分かりました」
その話を聞いた星は観念したのか急に大人しくなった。
エミルは上機嫌でそんな星の体を手で隅々まで洗っていく。
星はその間全身からくるくすぐったさに必死で耐えていた。すると、今まで無言で体を洗っていたエミルが徐に口を開く。
「――でも、星ちゃんは肌すべすべよね~。私は乾燥肌だから羨ましいわ~」
「そんなの……ゲームで関係あるんですか?」
星のその疑問は最もだ、この世界はリアルには作られていても所詮はゲームの中。体を構築しているのはプログラムであり忠実に再現するのにも限度がある。
あまり個々のポリゴンを作り込み過ぎると、ゲーム自体が重くなってしまい処理速度を落とす。だが、エミルの次の言葉は意外なものだった。
「ゲームなんだけど、そういう細かいところもリアルに忠実に再現されてるのが、フリーダムがここまでヒットした理由なのよ。売り出した時のキャッチコピーは『現実よりも現実らしく……』仮想現実だけどアバターは性別、声質、容姿全てが現実のまま。移動してきたみたいなの。だから星ちゃんのこの肌のすべすべ感も現実とおんなじってわけ」
「そんな……は、はずかしいです……」
お腹の辺りに手を回して撫でる様に動かしているエミルに、星は頬を赤く染めて身をよじる。
しばらくじゃれ合っていた2人だったが、最後にシャワーで体に付いた泡を洗い流し、やっと体を洗い終わると星はほっと息を吐いた。
(やっと終わった……)
そう思った星が浴槽へと歩き出そうとしたその時、手を掴まれ後ろから声が聞こえた。
「ひゃっほ~い!」
カレンは奇声を上げたかと思うと、浴槽の中へと勢い良く飛び込んだ。
その直後、浴槽からは盛大に水柱が上がり。辺りに盛大に水しぶきが舞い上がった。近くに彼か居れば、間違いなく盛大にお湯をかぶって激昂していたことだろう……。
星とエミルはその光景を見て、驚いたように目を丸くさせる。そしてその直後、エミルは星に目線を移すと真剣な表情で言い聞かせるように告げた。
「いーい? 星ちゃん。カレンさんの真似は『絶対に!』しちゃダメよ? 浴槽に入る前には、必ず体を洗うのがマナーになってるの。あと、タオルはお風呂のお湯の中に絶対に入れちゃダメ。分かった?」
「……は、はい」
(はぁ……いいな~、カレンさん。私もあれやりたかったなぁ~)
小さなプラスチック製の椅子に腰掛けながら湯船の方を見つめていた星は、内心ではなにも考えずに湯船に飛び込むことのできたカレンのことを少し羨ましく思っていた。
その時、星の背中にぬるっとした何かが触れ、星は「ひゃっ!」と驚いて悲鳴を上げる。
「あ、ごめんね。びっくりした?」
「はい、ちょっとだけ……」
星は後ろで小首を傾げているエミルの顔を見て告げる。
「あ、あの……エミルさん。さっきシャワーを浴びたので、体を洗わなくても大丈夫ですよ?」
エミルは少し考える仕草を見せた後、にこっと微笑んだ。
「そうね――でも、2回洗えばもっと綺麗になるんじゃないかしら?」
「んんっ……あっ……洗った。ちゃんと洗いましたから!」
エミルは手にボディーソープを泡立てると、それをべったりと星の背中に塗り付け体を洗い始める。
普通はタオルなど専用の道具を使うのだが、エミルはそのどちらでもなく大胆にも、素手で体を洗い始めたことに星は驚きを隠せない。
星が家にいる時は、タオルにボディーソープを付けて洗っていた。そうしないと、背中に手が届かない為、それ以外の手段は考えられなかった。
にもかかわらず。エミルはなんの躊躇もなく、ボディーソープを体に塗りたくったのだから無理もないだろう。
細くて長い指にボディーソープが絡み付き、星の肌を滑らかに通過する。
「あはっ、あははっ! エミルさん。タオルとかで……」
星はくすぐったくて仕方がないのか、そう必死に訴えるとエミルの手が止まった。
呼吸を整えて、ほっと一息ついた星の耳元でエミルのがささやく。
「……タオルは肌へのダメージが大きいから素手で洗うのが一番なの」
すると、言葉を続けるように、再び耳元でエミルが言葉を続ける。
「それに星ちゃん……ちゃんと体を洗わないとね。色々な場所からきのこが生えてくるのよ?」
星はそれを聞いてビクッと体を震わせると、怯えたような瞳でエミルに聞き返す。
「……きのこ……ですか?」
「ええ、そうよ。そして大きくなったきのこに――」
そこまで口にしたエミルは口を閉ざすと、星の顔を覗き込み耳元で「その後どうなったか知りたい?」とにっこりと笑む。
星はガクガクと体を震わせながら瞳に涙を浮かべ、無言のまま首を左右に激しく振った。
「なら、きのこが生えてこないようにしっかり洗わないとねぇ~」
「……はい。分かりました」
その話を聞いた星は観念したのか急に大人しくなった。
エミルは上機嫌でそんな星の体を手で隅々まで洗っていく。
星はその間全身からくるくすぐったさに必死で耐えていた。すると、今まで無言で体を洗っていたエミルが徐に口を開く。
「――でも、星ちゃんは肌すべすべよね~。私は乾燥肌だから羨ましいわ~」
「そんなの……ゲームで関係あるんですか?」
星のその疑問は最もだ、この世界はリアルには作られていても所詮はゲームの中。体を構築しているのはプログラムであり忠実に再現するのにも限度がある。
あまり個々のポリゴンを作り込み過ぎると、ゲーム自体が重くなってしまい処理速度を落とす。だが、エミルの次の言葉は意外なものだった。
「ゲームなんだけど、そういう細かいところもリアルに忠実に再現されてるのが、フリーダムがここまでヒットした理由なのよ。売り出した時のキャッチコピーは『現実よりも現実らしく……』仮想現実だけどアバターは性別、声質、容姿全てが現実のまま。移動してきたみたいなの。だから星ちゃんのこの肌のすべすべ感も現実とおんなじってわけ」
「そんな……は、はずかしいです……」
お腹の辺りに手を回して撫でる様に動かしているエミルに、星は頬を赤く染めて身をよじる。
しばらくじゃれ合っていた2人だったが、最後にシャワーで体に付いた泡を洗い流し、やっと体を洗い終わると星はほっと息を吐いた。
(やっと終わった……)
そう思った星が浴槽へと歩き出そうとしたその時、手を掴まれ後ろから声が聞こえた。
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