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お風呂7
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「ほな、エミル。うちらは先に行こか~」
「えっ? でも……」
「ええから、ええから」
イシェルは戸惑っているエミルの手を引いて、先に浴室に向かって歩いていってしまう。
星はその突然の出来事に、慌ててレイニールの元へと駆け寄っていく。
「ふ……ふぎゅ~」
「レイ! 大丈夫!? しっかりして!!」
倒れていたレイニールの体は激しく光を放ち、元の小さいドラゴンの姿に戻ってしまった。
星がぬいぐるみの様な小さな体を抱き上げると、レイニールは気を失っているのかぐったりしている。
「なんだ? 星ちゃん。その竜は……」
カレンはそう尋ねると、星の膝の上に乗っているレイニールを覗き込んだ。
そういえば、彼女はがしゃどくろとの戦闘後。ずっと気を失っていたからレイニールのことを知るはずがない。
「あ、カレンさん。この子はですね――」
星はカレンの方に目を向けたその時、星の目はカレンの胸元にぶら下がっている2つの膨らみに釘付けになった。
カレンのそれは意外と大きく、服を着ている時とは比べ物にならないほど大きい。
それもそのはずだ。彼女は普段胸にさらしを巻いているので、胸の大きさは半分以下にまで押し潰されているのだ。
もちろん。変な意味ではなく、純粋に自分にないその2つの大きな膨らみが羨ましかっただけだった。だが、残念なことにその大きさはエミル、イシェルに続いて3番目と言ったところだろうか――。
「おっきい……」
カレンはそう呟いている星の目線の先にある自分の胸に目を落とすと、その様子から全てを理解したのか笑みを浮かべた。
自分の胸を両脇から手で押し上げると、瞳を輝かせている星の方へと向ける。
「星ちゃんもそのうち俺くらいになるさ。でも、大きければ大きいで不便な事も多いから、あいつくらいが丁度いいよ」
カレンはそう言ってエリエの方にチラッと目をやると、ニヤリと勝ち誇った様な笑みを浮かべた。
エリエはその言葉が聞こえていたのか、不機嫌そうにカレンのことを物凄い形相で睨み付けている。
そんなエリエを無視して、カレンが星の姿を見ると首を傾げた。
「そんな事より。星ちゃんは早く服を脱がないのかい? お姉さん方は先に行ったみたいだけど……」
「……えっと、その……私は皆さんが入った後で……」
急に俯き加減になり小さな声でそう呟いた星に、カレンが再び不思議そうな顔をして首を傾げた。
「どうしてだい? 俺達と一緒は嫌か? それとも恥ずかしいのかな?」
「そ、それは……」
優しい口調で星の顔を覗き込んでいるカレンに星は思わず口を閉ざした。
星が皆とお風呂に入ることに抵抗があるのには理由があった。
それは去年。星がまだ3年生だった時のことだった――。
2泊3日の夏の林間学校での事だった。昼間に山登りをしたこともあり、汗をたくさん掻いていた星が、皆と一緒に大浴場に向かおうとした時のことだ。
タオルと着替えを手にした星の横を通った生徒達から「あの子と同じお湯に入りたくない」「星が入るとお風呂のお湯が汚れる」など小声で、しかし星の耳に聞こえるようにささやく声が聞こえてきた。
それを聞いた星は、なにも言わずに部屋へと戻ってしまったのだ。まあ、同級生にそう言われてはさすがに帰るしかないというのが正直なところだろう。
体は皆が居ない間にタオルを水で濡らして拭いた。それ以外にも色々なことがあり、星にとっては林間学校の思い出の殆どが辛いものでしかないかった。
そのこともあってか、星は自宅のお風呂以外でゆっくりとお湯に浸かることができなくなった。だが、そのことをカレンに言えるわけもなく――。
「まあ、恥ずかしくてもすぐに慣れる! ほら、脱いで脱いで」
「あっ! カレンさん。待って、待って下さい!!」
突然服を脱がしに掛かったカレンに星も抵抗する。
しかし、星の力でカレンに抗えるわけもなく、必死の抵抗虚しく星は裸にされてしまう。
地面に座り込み、俯きながら瞳には涙を浮かべている星。
「――うぅ……ひ、ひどい……」
カレンはそんな星をお姫様抱っこして持ち上げると、そのまま浴室の中へと連れていった。
浴室の中は浴槽の隣が全面ガラス張りになっており、そこから森が見える。また、天井にも丸く大きなガラスが張っていて空に輝く月と星々を眺めることができたりと、とても開放的な造りになっていた。
浴槽からは泡がブクブクと立ち昇っていて、ジャクジーのおかげで疲労回復効果と負傷の回復速度が増し。また、浴槽内でまじまじと裸を見られる心配もない。
そして星も、人生初めてのジャグジーに胸を高鳴らせていた。
「うわ~。こんなの初めて……」
「どうだ? 恥ずかしいのなんて、どこかに飛んでいっただろう?」
「いえ、飛んでいったかどうかは分かりませんけど……でもすごいです!」
瞳をキラキラと輝かせながら、オレンジ色の柔らかい光りに照らし出されている浴室内を見渡していると、横から星を呼ぶエミルの声が聞こえてきた。
「星ちゃん。こっちにいらっしゃ~い。体と髪を洗ってあげるから」
「おっ! エミルさんが呼んでる。さて行こうか!」
「……えっ?」
星を抱きかかえたままのカレンがエミルの近く星を下ろすと、自分は真っ先に浴槽に向かって走っていった。
確かマスターの話によると、このゲームがデスゲームへと変わったあの日から、マスターとカレンはダンジョンの攻略に出突っ張りだったらしい。
ならば、穴蔵にずっと篭っているようなもの。もちろん、お風呂などに入れはしなかっただろうし、水浴びですら数日に一度くらいの割合だっただろう。
「えっ? でも……」
「ええから、ええから」
イシェルは戸惑っているエミルの手を引いて、先に浴室に向かって歩いていってしまう。
星はその突然の出来事に、慌ててレイニールの元へと駆け寄っていく。
「ふ……ふぎゅ~」
「レイ! 大丈夫!? しっかりして!!」
倒れていたレイニールの体は激しく光を放ち、元の小さいドラゴンの姿に戻ってしまった。
星がぬいぐるみの様な小さな体を抱き上げると、レイニールは気を失っているのかぐったりしている。
「なんだ? 星ちゃん。その竜は……」
カレンはそう尋ねると、星の膝の上に乗っているレイニールを覗き込んだ。
そういえば、彼女はがしゃどくろとの戦闘後。ずっと気を失っていたからレイニールのことを知るはずがない。
「あ、カレンさん。この子はですね――」
星はカレンの方に目を向けたその時、星の目はカレンの胸元にぶら下がっている2つの膨らみに釘付けになった。
カレンのそれは意外と大きく、服を着ている時とは比べ物にならないほど大きい。
それもそのはずだ。彼女は普段胸にさらしを巻いているので、胸の大きさは半分以下にまで押し潰されているのだ。
もちろん。変な意味ではなく、純粋に自分にないその2つの大きな膨らみが羨ましかっただけだった。だが、残念なことにその大きさはエミル、イシェルに続いて3番目と言ったところだろうか――。
「おっきい……」
カレンはそう呟いている星の目線の先にある自分の胸に目を落とすと、その様子から全てを理解したのか笑みを浮かべた。
自分の胸を両脇から手で押し上げると、瞳を輝かせている星の方へと向ける。
「星ちゃんもそのうち俺くらいになるさ。でも、大きければ大きいで不便な事も多いから、あいつくらいが丁度いいよ」
カレンはそう言ってエリエの方にチラッと目をやると、ニヤリと勝ち誇った様な笑みを浮かべた。
エリエはその言葉が聞こえていたのか、不機嫌そうにカレンのことを物凄い形相で睨み付けている。
そんなエリエを無視して、カレンが星の姿を見ると首を傾げた。
「そんな事より。星ちゃんは早く服を脱がないのかい? お姉さん方は先に行ったみたいだけど……」
「……えっと、その……私は皆さんが入った後で……」
急に俯き加減になり小さな声でそう呟いた星に、カレンが再び不思議そうな顔をして首を傾げた。
「どうしてだい? 俺達と一緒は嫌か? それとも恥ずかしいのかな?」
「そ、それは……」
優しい口調で星の顔を覗き込んでいるカレンに星は思わず口を閉ざした。
星が皆とお風呂に入ることに抵抗があるのには理由があった。
それは去年。星がまだ3年生だった時のことだった――。
2泊3日の夏の林間学校での事だった。昼間に山登りをしたこともあり、汗をたくさん掻いていた星が、皆と一緒に大浴場に向かおうとした時のことだ。
タオルと着替えを手にした星の横を通った生徒達から「あの子と同じお湯に入りたくない」「星が入るとお風呂のお湯が汚れる」など小声で、しかし星の耳に聞こえるようにささやく声が聞こえてきた。
それを聞いた星は、なにも言わずに部屋へと戻ってしまったのだ。まあ、同級生にそう言われてはさすがに帰るしかないというのが正直なところだろう。
体は皆が居ない間にタオルを水で濡らして拭いた。それ以外にも色々なことがあり、星にとっては林間学校の思い出の殆どが辛いものでしかないかった。
そのこともあってか、星は自宅のお風呂以外でゆっくりとお湯に浸かることができなくなった。だが、そのことをカレンに言えるわけもなく――。
「まあ、恥ずかしくてもすぐに慣れる! ほら、脱いで脱いで」
「あっ! カレンさん。待って、待って下さい!!」
突然服を脱がしに掛かったカレンに星も抵抗する。
しかし、星の力でカレンに抗えるわけもなく、必死の抵抗虚しく星は裸にされてしまう。
地面に座り込み、俯きながら瞳には涙を浮かべている星。
「――うぅ……ひ、ひどい……」
カレンはそんな星をお姫様抱っこして持ち上げると、そのまま浴室の中へと連れていった。
浴室の中は浴槽の隣が全面ガラス張りになっており、そこから森が見える。また、天井にも丸く大きなガラスが張っていて空に輝く月と星々を眺めることができたりと、とても開放的な造りになっていた。
浴槽からは泡がブクブクと立ち昇っていて、ジャクジーのおかげで疲労回復効果と負傷の回復速度が増し。また、浴槽内でまじまじと裸を見られる心配もない。
そして星も、人生初めてのジャグジーに胸を高鳴らせていた。
「うわ~。こんなの初めて……」
「どうだ? 恥ずかしいのなんて、どこかに飛んでいっただろう?」
「いえ、飛んでいったかどうかは分かりませんけど……でもすごいです!」
瞳をキラキラと輝かせながら、オレンジ色の柔らかい光りに照らし出されている浴室内を見渡していると、横から星を呼ぶエミルの声が聞こえてきた。
「星ちゃん。こっちにいらっしゃ~い。体と髪を洗ってあげるから」
「おっ! エミルさんが呼んでる。さて行こうか!」
「……えっ?」
星を抱きかかえたままのカレンがエミルの近く星を下ろすと、自分は真っ先に浴槽に向かって走っていった。
確かマスターの話によると、このゲームがデスゲームへと変わったあの日から、マスターとカレンはダンジョンの攻略に出突っ張りだったらしい。
ならば、穴蔵にずっと篭っているようなもの。もちろん、お風呂などに入れはしなかっただろうし、水浴びですら数日に一度くらいの割合だっただろう。
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