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一難去ってまた一難3
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(だめだ。今話しかけたら絶対に怒られる……)
星はそう思い伸ばそうとした手を引っ込めると、NPCに話し掛けた。すると、目の前に選択肢が表示される。
そこにはハンバーガーの画像で様々な種類の物の横に値。そしてその下に、個数を選択する仕様になっていた。
星は目の前に表示されたメニューを見て、思わず固まった。
何故なら、その選択肢の中に飾られている置物と同じ物がなかったのだ。
(――ない……あれと同じ物がどこにもない!? ど、どうしよう……)
星は少し考え込んだ末に、小さいハンバーガーを重ねていけば目の前の置物の様になると思い付き、個数の横の【+】を押して個数を追加した。
しかし、その手も3回押したところで止まる。
(1個850ユールを3つで――いくらだろう……3桁の掛け算を暗算なんて……)
星は混乱した頭を抱えると、困り果て助けを求めるようにエミルの方に目をやった。だが、その頼りのエミルはデイビッドに説教するのに集中していて、星には全く気付いてくれそうにない。
デイビッドもエミルに的確に痛いところをつかれているのか、なんの反論も出来ずに小さくなっている。その状況では、とても星には割り込める状態じゃなく。
(まあ。3つくらいなら大丈夫かな……)
星は仕方なく3個だけ注文した。
注文を受けた直後、目の前に注文してしばらくして星の前にハンバーガーの乗った皿が3つ現れる。
星はそれを頭の部分だけを外し、次々に重ねていく。
その作業を終えると、小さく「よし」と呟きレイニールを見上げ。
「はい、レイニール。ちょっと小さいけど、同じのだよ?」
星はレイニールを頭から下ろすと、テーブルの上にそっと置いた。
レイニールはゆっくりとハンバーガの方に近寄って行くと、そのハンバーガーと置物のハンバーガーを見比べて不機嫌そうに星の顔を見た。
「――主……こっちの方があきらかに小さいぞ……ケチったな?」
「うぅっ……ごめんなさい」
星は謝ると深く俯く。
レイニールはそんな星の様子を見て「まあ、よい」と言いながら、目の前のハンバーガーを崩れないように両手で持って口に運ぶ。
その直後、レイニールの動きが止まる。星はレイニールが喉に詰まらせたのかと思い。目の前に置かれた水の入ったコップを手に持った。すると、レイニールが星の方を向く。
「おぉ~。うまい! これは美味じゃな。主よ!」
「……そう。それは良かった」
嬉しそうに微笑んでハンバーガーを食べ進めているレイニールを見て、星は少しほっとした表情で残った上の部分のパンを口に運ぶ。
レイニールが美味しそうにハンバーガーを食べているその横では、エミルとデイビッドの話も佳境を迎えていた。
「だから、エリーはああ見えて意地っ張りなんだからデイビッドから謝らないとダメ! 分かった?」
「……はい。善処します」
「よろしい! そんなデイビッドに策を授けてあげるわ。ちょっと耳貸して……」
不敵な笑みを浮かべているエミルは、デイビッドの耳元で何やらささやいている。デイビッドはふむふむと頷くと「なるほど」と腕を組んだ。
星は不思議そうに首を傾げると、エミルがくるっと向き返って星の顔を見た。それを見た星はビクッと身構えると、エミルがにっこりと微笑んでいる。
そんな彼女の表情を見て嫌な予感しかしない星は、ぎこちなく笑みを浮かべてみる。
「さて、星ちゃん。行きましょうか!」
「……えっ?」
何も分からぬまま、エミルはそう言って星の手を握ると、立ち上がった。
星は何が起きたのか、状況が全く読み込めずにあたふたしている。
「それじゃ、デイビッド。また後でメッセージ入れるわね!」
「ああ、よろしく頼む」
強引にエミルに手を引かれ、星はハンバーガーショップを後にした。
「あっ! 主、我輩を置いてどこへ行くのだ!!」
レイニールは残りのハンバーガーを慌てて口の中に頬張ると、頬をリスのようにパンパンに膨らまして2人を追って急いで店を飛び出していった。
わけも分からずエミルに手を引かれながら、星は前を歩く彼女の背中を見つめ。
「あ、あの……エミルさん? どこへ行くんですか……?」
星は不安そうにエミルの顔を見上げて尋ねる。
「ああ、今からエリーのところに行くのよ」
「……なんでですか?」
エミルの話を聞いて首を傾げる。
その時、突然頭の上にどしりと衝撃が走った。驚いた星が頭の上を見上げると、半泣き状態のレイニールが見えた。
「主のバカ! 我輩を置いて行くなんて~!!」
レイニールは震えた声で、ぽかぽかと頭を何度も叩いている。
星はそんなレイニールに謝ったが完全にご機嫌斜めになり、プイッとそっぽを向いたまま。
「主のケチ。バカ。薄情者!」
っと、散々頭の上で理不尽な言葉を投げつけられた。
(はぁ……別に私が悪いわけじゃないのに……)
星は心の中で呟きながら、がっくりと肩を落とす。
星はそう思い伸ばそうとした手を引っ込めると、NPCに話し掛けた。すると、目の前に選択肢が表示される。
そこにはハンバーガーの画像で様々な種類の物の横に値。そしてその下に、個数を選択する仕様になっていた。
星は目の前に表示されたメニューを見て、思わず固まった。
何故なら、その選択肢の中に飾られている置物と同じ物がなかったのだ。
(――ない……あれと同じ物がどこにもない!? ど、どうしよう……)
星は少し考え込んだ末に、小さいハンバーガーを重ねていけば目の前の置物の様になると思い付き、個数の横の【+】を押して個数を追加した。
しかし、その手も3回押したところで止まる。
(1個850ユールを3つで――いくらだろう……3桁の掛け算を暗算なんて……)
星は混乱した頭を抱えると、困り果て助けを求めるようにエミルの方に目をやった。だが、その頼りのエミルはデイビッドに説教するのに集中していて、星には全く気付いてくれそうにない。
デイビッドもエミルに的確に痛いところをつかれているのか、なんの反論も出来ずに小さくなっている。その状況では、とても星には割り込める状態じゃなく。
(まあ。3つくらいなら大丈夫かな……)
星は仕方なく3個だけ注文した。
注文を受けた直後、目の前に注文してしばらくして星の前にハンバーガーの乗った皿が3つ現れる。
星はそれを頭の部分だけを外し、次々に重ねていく。
その作業を終えると、小さく「よし」と呟きレイニールを見上げ。
「はい、レイニール。ちょっと小さいけど、同じのだよ?」
星はレイニールを頭から下ろすと、テーブルの上にそっと置いた。
レイニールはゆっくりとハンバーガの方に近寄って行くと、そのハンバーガーと置物のハンバーガーを見比べて不機嫌そうに星の顔を見た。
「――主……こっちの方があきらかに小さいぞ……ケチったな?」
「うぅっ……ごめんなさい」
星は謝ると深く俯く。
レイニールはそんな星の様子を見て「まあ、よい」と言いながら、目の前のハンバーガーを崩れないように両手で持って口に運ぶ。
その直後、レイニールの動きが止まる。星はレイニールが喉に詰まらせたのかと思い。目の前に置かれた水の入ったコップを手に持った。すると、レイニールが星の方を向く。
「おぉ~。うまい! これは美味じゃな。主よ!」
「……そう。それは良かった」
嬉しそうに微笑んでハンバーガーを食べ進めているレイニールを見て、星は少しほっとした表情で残った上の部分のパンを口に運ぶ。
レイニールが美味しそうにハンバーガーを食べているその横では、エミルとデイビッドの話も佳境を迎えていた。
「だから、エリーはああ見えて意地っ張りなんだからデイビッドから謝らないとダメ! 分かった?」
「……はい。善処します」
「よろしい! そんなデイビッドに策を授けてあげるわ。ちょっと耳貸して……」
不敵な笑みを浮かべているエミルは、デイビッドの耳元で何やらささやいている。デイビッドはふむふむと頷くと「なるほど」と腕を組んだ。
星は不思議そうに首を傾げると、エミルがくるっと向き返って星の顔を見た。それを見た星はビクッと身構えると、エミルがにっこりと微笑んでいる。
そんな彼女の表情を見て嫌な予感しかしない星は、ぎこちなく笑みを浮かべてみる。
「さて、星ちゃん。行きましょうか!」
「……えっ?」
何も分からぬまま、エミルはそう言って星の手を握ると、立ち上がった。
星は何が起きたのか、状況が全く読み込めずにあたふたしている。
「それじゃ、デイビッド。また後でメッセージ入れるわね!」
「ああ、よろしく頼む」
強引にエミルに手を引かれ、星はハンバーガーショップを後にした。
「あっ! 主、我輩を置いてどこへ行くのだ!!」
レイニールは残りのハンバーガーを慌てて口の中に頬張ると、頬をリスのようにパンパンに膨らまして2人を追って急いで店を飛び出していった。
わけも分からずエミルに手を引かれながら、星は前を歩く彼女の背中を見つめ。
「あ、あの……エミルさん? どこへ行くんですか……?」
星は不安そうにエミルの顔を見上げて尋ねる。
「ああ、今からエリーのところに行くのよ」
「……なんでですか?」
エミルの話を聞いて首を傾げる。
その時、突然頭の上にどしりと衝撃が走った。驚いた星が頭の上を見上げると、半泣き状態のレイニールが見えた。
「主のバカ! 我輩を置いて行くなんて~!!」
レイニールは震えた声で、ぽかぽかと頭を何度も叩いている。
星はそんなレイニールに謝ったが完全にご機嫌斜めになり、プイッとそっぽを向いたまま。
「主のケチ。バカ。薄情者!」
っと、散々頭の上で理不尽な言葉を投げつけられた。
(はぁ……別に私が悪いわけじゃないのに……)
星は心の中で呟きながら、がっくりと肩を落とす。
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