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決戦13

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 星の働きのおかげでメンバー全員は、苦しみからでたらめに動くがしゃどくろから距離を取り、がしゃどくろのHPが『0』になるまで見守っているだけで良かった。
 その後もがしゃどくろのHPは徐々に減り、残りは最後の青いゲージまでなくなった次の瞬間。がしゃどくろの全身から突如として赤黒い炎が立ち上がる。

 星の決死の思いで胸の炎に刺した剣は吹き飛ばされ、胸に輝いていた炎も消える。一度は『0』になったはずのHPゲージが復活し、そのゲージの色は赤黒く周りに炎のようなエフェクトが付いている。

「な、なに……あれ……」

 突然の出来事に、エリエの顔が絶望の色に染まった。

 ――グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 咆哮を上げたがしゃどくろが地面に手を掛け断崖絶壁の下に隠されていた足をゆっくりと引き抜く。
 その叫び声に地面は揺れ、上半身だけだったがしゃどくろの巨大な下半身が姿を現し、ゆっくりと立ち上がる。

 天を突き抜けるほどに伸びた手足は、もはやその全長は図り切れない程。
 唯一のウィークポイントだった胸の炎も消えてしまった今、自分達の数十倍の相手に勝機を全く感じられない。

 頭はエミル達から見て、やっと顎が確認できるというほどに巨大なそれはすでに倒すとかという次元のものではなかった……。

 エミルはもう一度周りを見渡す。前衛の要のマスターも手傷を負っている上に、デイビッドはとてもじゃないが戦える状態ではない。状況は最悪だった。

(デイビッドもマスターもこれ以上の戦闘は無理……しかもこの状況で敵が動き回るとしたら……)
「まずいわ……サラザさん!」

 エミルは次に起こりうる可能性を察知し、顔を青ざめながらサラザに向かって叫んだ。その直後、サラザの体はすでに動いていた。

 ベテランプレイヤーの一人であるサラザは、頭が命令するよりも早く体が先に動いたというところだろう。

「分かってるわ! 私が時間を稼ぐんでしょ~?」

 サラザは即座にがしゃどくろの前に陣取り、その巨大な骨の塊と化したがしゃどくろを睨んだ。
 確かにこの場で最も攻撃力の高い種族『ボディービルダー』のサラザが、蘇った新生がしゃどくろのヘイトを稼ぐのには適任だった。

 頭上を見上げ咆哮を上げ続けるがしゃどくろは、まだこちらに攻撃してくる意思はなさそうだ。

 っということは、今しか先制攻撃のチャンスはない。後手に回ればそれこそ勝ち目はないのだから……。
 
「行くわよ~。できるだけ時間は稼ぐけど手早く頼むわね~!」

 サラザはそういうとバーベルを振り回し、がしゃどくろに向かって突っ込んでいく。

 エミルは「お願いします!」と言うと、素早くコマンドを操作してアイテムの中からドラゴンを呼び出す巻物を数個取り出した。

「……出てきて! ソードアーマードラゴン! ストーンドラゴン! ライトアーマードラゴン!」

 エミルが同時に3つの笛を吹くと、3体のドラゴン達が現れた。その中の2体は見たことがある為分かるが、もう1体は初めて見るドラゴンだ。

 その姿は大きな翼を持った青いドラゴンで、銀色の鎧を身にまとったその姿は武器になるようなものなど、無駄な物が一切付いておらず、手綱と鞍が装着されているだけだ。
 また、他のドラゴンよりも小さく引き締まったその体は、速度と旋回性に特化していることが窺い知れる。

「エリエは皆をストーンドラゴンの後ろに!」
「うん。分かった! エミル姉も気をつけてね!」

 エミルはソードアーマードラゴンの背中から剣を受け取ると、エリエにそう指示してライトアーマードラゴンの背に跨った。

(この戦いだけは私の全てを使って必ず勝つ! このままじゃ、せっかくあなたの作ってくれたこの好機――無駄になってしまうものね……でも、安心して星ちゃん。このチャンスは絶対にものにしてみせる! そしたらあなたをいっぱい褒めてあげられるから!)

 エミルはそう心の中で呟き、気を失っている星に視線を向けると優しく微笑む。

 先の見えない真っ暗な天井を見上げ、エミルは手綱を握り締めると、未だにただ咆え続けるがしゃどくろを見据えた。

「――敵の直上まで上昇!!」

 エミルが命令すると、ライトアーマードラゴンは翼を広げ、一気に上空に飛び上がった。

 サラザが地面でがしゃどくろのヘイトを稼いでいるおかげで、ライトアーマードラゴンに乗ったエミルには攻撃してこない。
 その状況を利用して、空からがしゃどくろをじっくりと観察するエミル。

(動きは上半身だけの時に比べると若干鈍い……それは【AI】がまだ体の大きさに慣れていない事によるものだろうけど。それより、問題なのはサラザさんの攻撃が全く効いてない……?) 

 エミルはサラザの戦いを見て首を傾げる。

 がしゃどくろには間違いなくサラザの攻撃が当たっている――にも拘わらず。がしゃどくろのHPゲージは全く減少してないのだ。
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