94 / 586
決戦10
しおりを挟む
「ほら、終わったわよ。もう気をつけなさいよね!」
「ああ……あ、ありがとう。でも、エリエがこんなに素直だって事は……これは外は大雨だな!」
「……ッ!?」
冗談交じりにそう言ったデイビッドにエリエはむっとしたのか、笑いながら頭を掻いているデイビッドの尻を思いっきり蹴飛ばした。
それに驚きデイビッドの体は飛び上がる。
「……いっ! なっ、何すんだよ!?」
「気合を入れてあげたのよ! 男のあんたが頑張らないとダメでしょ! バ~カ!」
エリエは怒りながら、サラザの方へと足早に戻っていった。
「男って、前衛はエミル以外。全員男じゃないか……」
そう聞こえないように小さな声で呟くと、サラザがデイビッドの方を見て含みを持たせた笑顔で、にっこりと微笑んだ。
それを見たデイビッドは背筋に悪寒を感じ、体をブルッと震わせると苦笑いを浮かべている。
後ろでそんなことを言っているなど露知らず、エミル達は前線で奮戦していた。その甲斐あってか、がしゃどくろのHPを残り数回の攻撃で0にできるほどまでに減らしていた。
「マスター。後はお願いします!」
「――任せておけッ!」
マスターは勢い良く跳び上がると、がしゃどくろの顔面に数発打ち込んだ。
――グギヤアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
がしゃどくろの体が大きく揺らいで断末魔の叫びを上げると、カタカタと歯を震わせている。
苦しむがしゃどくろに背を向け、地面に着地して直ぐ様振り返った。
「どうだ!?」
っとがしゃどくろの方を振り返るとその直後。マスターの目に飛び込んできた光景に言葉を失う。そこには、減らし切ったはずのHPが全回復した状態で存在していたのだ。
確かにHPをゲージギリギリに追い込んで全てを奪い去ったはずだった……だが、現に存在し続けるがしゃどくろに困惑せざるを得ない。
「――まさか……そんな……」
「――そ、そんなバカな!」
悠々と自分達を見下ろす巨大な骸骨に、その場にいた全員が計り知れない恐怖を感じていた。
『まさか、前の部屋に出たスケルトンの様に頭部か、それに見合う何かを破壊しなければ終わらないのではないのか?』
だが、そんなことなど事実上不可能に近い。頭部を破壊するにしても、その頭部は低級のスケルトンとは比べ物にならないほど巨大だし、もしそうだとしても。激しく動き回る腕をかわしながら、厚さだけでもコンクリートの壁ほどもある骨を砕くには、的確に頭蓋の一点を攻撃し続けなければならない。
エミルとマスターはそれを見て、唖然とした様子で立ち尽くす。
っと、その時――。
「なにをぼーっと突っ立ってんだ2人共! まだ戦闘は終わってないぞ!!」
後ろから見ていたデイビッドが戦意を喪失している2人に向かって檄を飛ばした。
その声に2人がはっと我に返るとがしゃどくを鋭く睨む、その瞳はまだ諦めてはいない……。
「ふっ……儂とした事がどうかしていた様だな!」
「本当ですね……デイビッドの言う通り私達はまだ戦闘中でした。リベンジです! 行きますよ。マスター」
「おう! エミルよ。遅れるでないぞ!」
「はい!」
エミルとマスターはお互いに決意に満ちた表情で頷くと攻撃を再開した。しかし、先程よりも敵の動きは素早くなり、なかなか攻撃をする隙を与えさせてくれない。
それに伴って、前衛メンバーの疲労も溜まり、動きが鈍くなってくいる。それとは対照的に向こうの攻撃が徐々に精度を増してきていた。
次第にローテーションと回復の回数も自然と増え、厳しい状況であることは言うまでもない。
更に追い打ちをかけるように、今までは回避できていた重い攻撃が前衛メンバーに当たり始めてきていたのだ。
そんな中、デイビッドとサラザのペアが前衛で攻撃をしていた時に事件は起こった……。
「くっそ! 早くくたばりやがれ!!」
「デイビッドちゃん! 奴の口が光ってるわよ!!」
「――なっ!? ぐわあああああああああッ!!」
率先して胸のウィークポイントを攻撃していたデイビッドは、突如とて噴射されたその炎をまともに受けてしまった。
デイビッドも警戒はしていたのだが、どうやら最初にエミルに放った時よりも噴射までの時間が短縮されているみたいだった。その為、意識に微かなズレが生じていたのだ――。
叫び声を上げ火だるまと化し、地面をのたうち回るデイビッドをマスターが急いで回収すると、後衛の3人のところへ戻ってきた。
エミルは素早くデイビッドの抜けた穴を埋める為に攻撃に加わり、現状維持に努めている。
「ぐっ……ぐああああぁぁぁぁッ!!」
先程エミルの受けたものとは違い。デイビッドの体を包むこの炎はなかなか消えない。
「ああ……あ、ありがとう。でも、エリエがこんなに素直だって事は……これは外は大雨だな!」
「……ッ!?」
冗談交じりにそう言ったデイビッドにエリエはむっとしたのか、笑いながら頭を掻いているデイビッドの尻を思いっきり蹴飛ばした。
それに驚きデイビッドの体は飛び上がる。
「……いっ! なっ、何すんだよ!?」
「気合を入れてあげたのよ! 男のあんたが頑張らないとダメでしょ! バ~カ!」
エリエは怒りながら、サラザの方へと足早に戻っていった。
「男って、前衛はエミル以外。全員男じゃないか……」
そう聞こえないように小さな声で呟くと、サラザがデイビッドの方を見て含みを持たせた笑顔で、にっこりと微笑んだ。
それを見たデイビッドは背筋に悪寒を感じ、体をブルッと震わせると苦笑いを浮かべている。
後ろでそんなことを言っているなど露知らず、エミル達は前線で奮戦していた。その甲斐あってか、がしゃどくろのHPを残り数回の攻撃で0にできるほどまでに減らしていた。
「マスター。後はお願いします!」
「――任せておけッ!」
マスターは勢い良く跳び上がると、がしゃどくろの顔面に数発打ち込んだ。
――グギヤアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
がしゃどくろの体が大きく揺らいで断末魔の叫びを上げると、カタカタと歯を震わせている。
苦しむがしゃどくろに背を向け、地面に着地して直ぐ様振り返った。
「どうだ!?」
っとがしゃどくろの方を振り返るとその直後。マスターの目に飛び込んできた光景に言葉を失う。そこには、減らし切ったはずのHPが全回復した状態で存在していたのだ。
確かにHPをゲージギリギリに追い込んで全てを奪い去ったはずだった……だが、現に存在し続けるがしゃどくろに困惑せざるを得ない。
「――まさか……そんな……」
「――そ、そんなバカな!」
悠々と自分達を見下ろす巨大な骸骨に、その場にいた全員が計り知れない恐怖を感じていた。
『まさか、前の部屋に出たスケルトンの様に頭部か、それに見合う何かを破壊しなければ終わらないのではないのか?』
だが、そんなことなど事実上不可能に近い。頭部を破壊するにしても、その頭部は低級のスケルトンとは比べ物にならないほど巨大だし、もしそうだとしても。激しく動き回る腕をかわしながら、厚さだけでもコンクリートの壁ほどもある骨を砕くには、的確に頭蓋の一点を攻撃し続けなければならない。
エミルとマスターはそれを見て、唖然とした様子で立ち尽くす。
っと、その時――。
「なにをぼーっと突っ立ってんだ2人共! まだ戦闘は終わってないぞ!!」
後ろから見ていたデイビッドが戦意を喪失している2人に向かって檄を飛ばした。
その声に2人がはっと我に返るとがしゃどくを鋭く睨む、その瞳はまだ諦めてはいない……。
「ふっ……儂とした事がどうかしていた様だな!」
「本当ですね……デイビッドの言う通り私達はまだ戦闘中でした。リベンジです! 行きますよ。マスター」
「おう! エミルよ。遅れるでないぞ!」
「はい!」
エミルとマスターはお互いに決意に満ちた表情で頷くと攻撃を再開した。しかし、先程よりも敵の動きは素早くなり、なかなか攻撃をする隙を与えさせてくれない。
それに伴って、前衛メンバーの疲労も溜まり、動きが鈍くなってくいる。それとは対照的に向こうの攻撃が徐々に精度を増してきていた。
次第にローテーションと回復の回数も自然と増え、厳しい状況であることは言うまでもない。
更に追い打ちをかけるように、今までは回避できていた重い攻撃が前衛メンバーに当たり始めてきていたのだ。
そんな中、デイビッドとサラザのペアが前衛で攻撃をしていた時に事件は起こった……。
「くっそ! 早くくたばりやがれ!!」
「デイビッドちゃん! 奴の口が光ってるわよ!!」
「――なっ!? ぐわあああああああああッ!!」
率先して胸のウィークポイントを攻撃していたデイビッドは、突如とて噴射されたその炎をまともに受けてしまった。
デイビッドも警戒はしていたのだが、どうやら最初にエミルに放った時よりも噴射までの時間が短縮されているみたいだった。その為、意識に微かなズレが生じていたのだ――。
叫び声を上げ火だるまと化し、地面をのたうち回るデイビッドをマスターが急いで回収すると、後衛の3人のところへ戻ってきた。
エミルは素早くデイビッドの抜けた穴を埋める為に攻撃に加わり、現状維持に努めている。
「ぐっ……ぐああああぁぁぁぁッ!!」
先程エミルの受けたものとは違い。デイビッドの体を包むこの炎はなかなか消えない。
10
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる