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決戦10

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「ほら、終わったわよ。もう気をつけなさいよね!」
「ああ……あ、ありがとう。でも、エリエがこんなに素直だって事は……これは外は大雨だな!」
「……ッ!?」

 冗談交じりにそう言ったデイビッドにエリエはむっとしたのか、笑いながら頭を掻いているデイビッドの尻を思いっきり蹴飛ばした。

 それに驚きデイビッドの体は飛び上がる。

「……いっ! なっ、何すんだよ!?」
「気合を入れてあげたのよ! 男のあんたが頑張らないとダメでしょ! バ~カ!」

 エリエは怒りながら、サラザの方へと足早に戻っていった。

「男って、前衛はエミル以外。全員男じゃないか……」

 そう聞こえないように小さな声で呟くと、サラザがデイビッドの方を見て含みを持たせた笑顔で、にっこりと微笑んだ。

 それを見たデイビッドは背筋に悪寒を感じ、体をブルッと震わせると苦笑いを浮かべている。

 後ろでそんなことを言っているなど露知らず、エミル達は前線で奮戦していた。その甲斐あってか、がしゃどくろのHPを残り数回の攻撃で0にできるほどまでに減らしていた。

「マスター。後はお願いします!」
「――任せておけッ!」

 マスターは勢い良く跳び上がると、がしゃどくろの顔面に数発打ち込んだ。

 ――グギヤアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 がしゃどくろの体が大きく揺らいで断末魔の叫びを上げると、カタカタと歯を震わせている。

 苦しむがしゃどくろに背を向け、地面に着地して直ぐ様振り返った。

「どうだ!?」

 っとがしゃどくろの方を振り返るとその直後。マスターの目に飛び込んできた光景に言葉を失う。そこには、減らし切ったはずのHPが全回復した状態で存在していたのだ。

 確かにHPをゲージギリギリに追い込んで全てを奪い去ったはずだった……だが、現に存在し続けるがしゃどくろに困惑せざるを得ない。

「――まさか……そんな……」
「――そ、そんなバカな!」

 悠々と自分達を見下ろす巨大な骸骨に、その場にいた全員が計り知れない恐怖を感じていた。

『まさか、前の部屋に出たスケルトンの様に頭部か、それに見合う何かを破壊しなければ終わらないのではないのか?』

 だが、そんなことなど事実上不可能に近い。頭部を破壊するにしても、その頭部は低級のスケルトンとは比べ物にならないほど巨大だし、もしそうだとしても。激しく動き回る腕をかわしながら、厚さだけでもコンクリートの壁ほどもある骨を砕くには、的確に頭蓋の一点を攻撃し続けなければならない。

 エミルとマスターはそれを見て、唖然とした様子で立ち尽くす。

 っと、その時――。

「なにをぼーっと突っ立ってんだ2人共! まだ戦闘は終わってないぞ!!」

 後ろから見ていたデイビッドが戦意を喪失している2人に向かって檄を飛ばした。

 その声に2人がはっと我に返るとがしゃどくを鋭く睨む、その瞳はまだ諦めてはいない……。

「ふっ……儂とした事がどうかしていた様だな!」 
「本当ですね……デイビッドの言う通り私達はまだ戦闘中でした。リベンジです! 行きますよ。マスター」
「おう! エミルよ。遅れるでないぞ!」
「はい!」

 エミルとマスターはお互いに決意に満ちた表情で頷くと攻撃を再開した。しかし、先程よりも敵の動きは素早くなり、なかなか攻撃をする隙を与えさせてくれない。
 それに伴って、前衛メンバーの疲労も溜まり、動きが鈍くなってくいる。それとは対照的に向こうの攻撃が徐々に精度を増してきていた。

 次第にローテーションと回復の回数も自然と増え、厳しい状況であることは言うまでもない。
 更に追い打ちをかけるように、今までは回避できていた重い攻撃が前衛メンバーに当たり始めてきていたのだ。

 そんな中、デイビッドとサラザのペアが前衛で攻撃をしていた時に事件は起こった……。

「くっそ! 早くくたばりやがれ!!」
「デイビッドちゃん! 奴の口が光ってるわよ!!」
「――なっ!? ぐわあああああああああッ!!」

 率先して胸のウィークポイントを攻撃していたデイビッドは、突如とて噴射されたその炎をまともに受けてしまった。
 デイビッドも警戒はしていたのだが、どうやら最初にエミルに放った時よりも噴射までの時間が短縮されているみたいだった。その為、意識に微かなズレが生じていたのだ――。

 叫び声を上げ火だるまと化し、地面をのたうち回るデイビッドをマスターが急いで回収すると、後衛の3人のところへ戻ってきた。

 エミルは素早くデイビッドの抜けた穴を埋める為に攻撃に加わり、現状維持に努めている。

「ぐっ……ぐああああぁぁぁぁッ!!」

 先程エミルの受けたものとは違い。デイビッドの体を包むこの炎はなかなか消えない。
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