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決戦8
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そこにカレンが馬鹿にするかのようにエリエのことを鼻で笑うと、2人の会話に口を挟んできた。
「ふん。お前の言葉には、少々訂正箇所があるな」
「――なによ。私の話が間違ってるって言いたいの?」
急に割り込んできたカレンに、エリエは目を細めながら不機嫌そうに尋ねる。
膨れっ面をするエリエを余所に、カレンは先程のエリエと同様に人差し指を立てて自慢げに話し始めた。
「正確にはフリーダムで年2回開催される大会では、師匠が殆ど勝ちを収めている。それに比べてエミルさんは、師匠が出場しなかった期間勝っていただけだろ? それを一緒みたいな言い方をされるのは困るな!」
「――なによ。優勝したのは一緒じゃない。この…………」
「んっ? なんだってー?」
カレンの話を聞いていたエリエが聞き取れない程小さな声で呟くと、カレンがあからさまに挑発するように聞き返してきた。
そのカレンの態度が頭に来たのか、エリエがむっとしながらカレンを睨みつけると。
「――ふん……中年趣味してきもいって言ったのよ! この少数派民族!!」
「なっ、なんだって!? マスターのどこがいけないって言うんだ!」
「マスターじゃなくてあんたの事よ……あ・ん・たの!」
お互いに睨み合い火花を散らすエリエとカレン。
星は「止めて下さい」とそんな2人の間に慌てて割って入ったが焼け石に水だ。
「何だと!? 俺のどこがきもいって言うんだよ!!」
「全てよ。全て! 言動も行動も全てがきもいのよ! この絶滅危惧種!!」
「――くっ! 言わせておけば……イリオモテヤマネコに失礼だ。イリオモテヤマネコに謝れ!!」
声を大にして叫んだカレンに、負けないほどの声でエリエも叫ぶ。
「どうしてよ!」
「なんでもだ! なら、サーベルタイガーに謝れ!!」
「それはもう絶滅してんでしょうがッ!!」
互いにいがみ合う2人のくだらないやりとりを見ていて、星は心から思った。
『もう。いい加減にしてほしい』と――。
後衛がそうこうしている間に、前衛1のエミルとマスターの方にも動きがあった。
最初は圧倒していたものの。徐々に攻撃パターンに慣れてきたのか、マスターを捕らえようとする手の精度が上がってきていた。
このままでは捕まるのも時間の問題だ……。
「……くっ! コンピューターの分際で図に乗るでない! この儂を捕らえられると思うてか!!」
襲い来る手をかわしながら声を荒げるマスターだったが、誰が見ても彼の攻撃の手数が減って回避に専念する場面も多くなり、苦しくなってきているのは明らかだった。
だが、まだ戦闘が始まってそれほど時間が経ったわけではない。今のこの状況も、マスターの動きが悪くなったのではなく。単に敵の動きが良くなってきているだけなのだ――。
フリーダムのモンスターは個々に備わったAIに、自立型の学習機能が備わっていて、それが戦闘のデータを収集しモーションを変える。しかし、それは種族、系統に属するモンスター全てに適応されるものではなくその個体が消滅したと同時に、そのデータも消滅する仕組みになっていた。
もちろん。今まさにマスターと戦っているボスも、マスターの動きに順応する為、物凄い速さで学習しているのだ。
「マスター! 一旦。距離を取った方が――」
エミルがそう叫ぼうとしたその時、エミルに向かって骸骨が口を大きく開けているのに気が付く。
っと同時に口の中が青く光り輝き、群青の炎に包まれる。
(……ッ!? まさかッ!!)
攻撃のモーションに入ったと悟ったエミルが攻撃を止め、咄嗟に飛んで距離を取ろうとした彼女目掛けて、がしゃどくろの口から青い炎が噴射されエミルを直撃した。
「きゃあああああああああッ!!」
ゴーッという大きな音が悲鳴とともに彼女の体も凄まじい炎の中に飲み込んだ。
顔面蒼白でマスターがエミルのいた場所に目をやっている。
「エミル!! ……なにッ!?」
その光景に一瞬気を取られたマスターの隙きを突いて、ボスの手にがっしりと空中にいたマスターを捕まえた。
(――しまった!)
そう思ったのも束の間。マスターを捕まえたがしゃどくろはカタカタと笑うとマスターを投げた。
「なにいいいいいいいいいい!!」
飛ばされたマスターはそのまま勢い良く地面に叩きつけられ、辺りに土煙が上がった。
「大変! 私達の出番よ~。タフネス&ビルドアップ! 行くわよ~。デイビッドちゃん!」
「ああ、タフネス&背水の陣! って、ちゃんはやめろ。ちゃんは!」
それを見たデイビッドとサラザの2人が固有スキルを発動させ、がしゃどくろにに向かって走り出す。
っと、先程まで言い争っていたエリエとカレンが声を上げた。
「エミル姉!」
「師匠!」
2人は言い争いを止め、2人の元に駆け寄っていく。
幸い2人は無事な様で、エミルは少し鎧の布の部分が焦げてはいるがそれほど大きなダメージは受けていない様子だ――マスターの方も少し擦り傷ができた程度だった。しかし、2人とも体の傷は大したことがないにも関わらず、険しい表情をしている。
「ふん。お前の言葉には、少々訂正箇所があるな」
「――なによ。私の話が間違ってるって言いたいの?」
急に割り込んできたカレンに、エリエは目を細めながら不機嫌そうに尋ねる。
膨れっ面をするエリエを余所に、カレンは先程のエリエと同様に人差し指を立てて自慢げに話し始めた。
「正確にはフリーダムで年2回開催される大会では、師匠が殆ど勝ちを収めている。それに比べてエミルさんは、師匠が出場しなかった期間勝っていただけだろ? それを一緒みたいな言い方をされるのは困るな!」
「――なによ。優勝したのは一緒じゃない。この…………」
「んっ? なんだってー?」
カレンの話を聞いていたエリエが聞き取れない程小さな声で呟くと、カレンがあからさまに挑発するように聞き返してきた。
そのカレンの態度が頭に来たのか、エリエがむっとしながらカレンを睨みつけると。
「――ふん……中年趣味してきもいって言ったのよ! この少数派民族!!」
「なっ、なんだって!? マスターのどこがいけないって言うんだ!」
「マスターじゃなくてあんたの事よ……あ・ん・たの!」
お互いに睨み合い火花を散らすエリエとカレン。
星は「止めて下さい」とそんな2人の間に慌てて割って入ったが焼け石に水だ。
「何だと!? 俺のどこがきもいって言うんだよ!!」
「全てよ。全て! 言動も行動も全てがきもいのよ! この絶滅危惧種!!」
「――くっ! 言わせておけば……イリオモテヤマネコに失礼だ。イリオモテヤマネコに謝れ!!」
声を大にして叫んだカレンに、負けないほどの声でエリエも叫ぶ。
「どうしてよ!」
「なんでもだ! なら、サーベルタイガーに謝れ!!」
「それはもう絶滅してんでしょうがッ!!」
互いにいがみ合う2人のくだらないやりとりを見ていて、星は心から思った。
『もう。いい加減にしてほしい』と――。
後衛がそうこうしている間に、前衛1のエミルとマスターの方にも動きがあった。
最初は圧倒していたものの。徐々に攻撃パターンに慣れてきたのか、マスターを捕らえようとする手の精度が上がってきていた。
このままでは捕まるのも時間の問題だ……。
「……くっ! コンピューターの分際で図に乗るでない! この儂を捕らえられると思うてか!!」
襲い来る手をかわしながら声を荒げるマスターだったが、誰が見ても彼の攻撃の手数が減って回避に専念する場面も多くなり、苦しくなってきているのは明らかだった。
だが、まだ戦闘が始まってそれほど時間が経ったわけではない。今のこの状況も、マスターの動きが悪くなったのではなく。単に敵の動きが良くなってきているだけなのだ――。
フリーダムのモンスターは個々に備わったAIに、自立型の学習機能が備わっていて、それが戦闘のデータを収集しモーションを変える。しかし、それは種族、系統に属するモンスター全てに適応されるものではなくその個体が消滅したと同時に、そのデータも消滅する仕組みになっていた。
もちろん。今まさにマスターと戦っているボスも、マスターの動きに順応する為、物凄い速さで学習しているのだ。
「マスター! 一旦。距離を取った方が――」
エミルがそう叫ぼうとしたその時、エミルに向かって骸骨が口を大きく開けているのに気が付く。
っと同時に口の中が青く光り輝き、群青の炎に包まれる。
(……ッ!? まさかッ!!)
攻撃のモーションに入ったと悟ったエミルが攻撃を止め、咄嗟に飛んで距離を取ろうとした彼女目掛けて、がしゃどくろの口から青い炎が噴射されエミルを直撃した。
「きゃあああああああああッ!!」
ゴーッという大きな音が悲鳴とともに彼女の体も凄まじい炎の中に飲み込んだ。
顔面蒼白でマスターがエミルのいた場所に目をやっている。
「エミル!! ……なにッ!?」
その光景に一瞬気を取られたマスターの隙きを突いて、ボスの手にがっしりと空中にいたマスターを捕まえた。
(――しまった!)
そう思ったのも束の間。マスターを捕まえたがしゃどくろはカタカタと笑うとマスターを投げた。
「なにいいいいいいいいいい!!」
飛ばされたマスターはそのまま勢い良く地面に叩きつけられ、辺りに土煙が上がった。
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