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理想と現実5
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星は透かさず剣を構え直す。その瞬間、向かっていたはずのカレンの姿が消えた。
「――えっ? どこに……」
次の瞬間。カレンは星の目の前に現れた時には拳を構えていた。
「――なっ!?」
「遅いな……はああああああッ!!」
その咆哮と共に拳が星に襲い掛かる。
星は慌てて、持っていた剣を突き出してガードの体勢に入り『防げる!!』そう確信した直後、星の体は吹き飛ばされていた。
「きゃあああああああああッ!!」
吹き飛ばされた星の体は遠くの壁に、勢い良く叩きつけられ地面に倒れ込む。
「うっ……」
(ど、どうして……? 確実に剣で防いだはずなのに……)
星は混乱した頭で、必死に何が起きたのかを考えていた。その時、星の視界に自分のHPバーが見る見るうちに減っていくのが見えた。
その減少は著しく青かったゲージは黄色になり、遂には赤になってしまった。
(あっ……ダメ。まだ、謝ってもらってないの……このままじゃ、負けちゃう! 負けたくない……止まって!!)
しかし、星の思いは虚しくHPは残り1という表示だけ残して、星の視界には【LOSE】という敗北を告げる文字が表示された。
表示を確認した星は、がっくりと肩を落とす。
(――勝てなかった。ごめんなさい……エリエさん)
星はそれを倒れたまま、虚ろな瞳でその表示を見つめている。
「ふん。口ほどにもなさ過ぎて、罵る言葉もないな」
星は無言のままその声の方を見上げると、カレンが腕を組みながら仁王立ちしているのが目に入った。
「お前は弱い――いや、それを通り越して無様だな。一度も剣を振るわずに負けるとは……そういえば、エミルだったか? あの女もオロチとの戦闘で真っ先に倒されてたなぁ……師匠はあの女を気にかけていたが……どうせ、あの女が師匠に色目を使っていたんだろうな。そういえば、体付きも顔もそれっぽいしなー」
「――くっ……ゆるさない……もう、絶対に許しません!!」
その言葉を聞いて徐ろに立ち上がると、星は烈火の如く怒りだしカレンを鋭く睨みつけた。
「もう一度勝負です!!」
「いいだろう。どうやら……まだ痛めつけられたいようだな!!」
星の闘志に眉をひそめ、拳を構え直すカレン。
「はああああああああああッ!!」
星は剣を構えると、カレンに向かっていった。
カレンはそれを不敵な笑みを浮かべながら、向かってくる星を待ち構えている。
星は剣をがむしゃらに振り回しながらカレンを攻撃するも、その攻撃はカレンに掠りもしない。
だが、当たらないと分かっていても。心の中から湧き上がってくる怒りをぶつけずにはいられない。
「はっ! このっ! このぉ~!!」
「どうした? 攻撃に正確性が無いぞ? そんなじゃ俺に一撃食らわせるなんて夢のまた夢だなッ!!」
星の必死の攻撃をカレンは涼しい顔で攻撃をかわしている。
それもそのはずだ。ゲームではどれだけやり込んだかでプレイヤーの力量が決まる。
攻撃スキルのないフリーダムでは良い装備と実戦経験で得た体の使い方が勝敗を決めると言っていい。
フリーダムの中で剣士はバランス。代わって武闘家がスピードに優れている。
更に前回のアップデートで装備の重量によって俊敏性のステータスが上昇する仕様に変更されていた。このことは、一部の人間しかまだ知らないことだ――。
実はカレンが最初にガントレットを外したのは、この効果を最大に活かす為の彼女の作戦だったのだ。そうとは知らず。星は剣に鞘を付けてしまった為、重量が追加され攻撃速度とスピードを落としてしまっていたのだった。
ただでさえ剣を持たない分、重量の関係で武闘家はスピードと攻撃速度が圧倒的に高い。それが近接戦闘で、スピードという圧倒的なアドバンテージを生み出している。
カレンは必死になって剣を振るう星を、あざ笑うかのように口元に笑みを浮かべる。
(この戦いは最初から俺に有利なんだよ。お前がどんなに努力しても足の遅い剣士では……)
地面を強く踏み締め。
「俺には絶対勝てないんだよ!!」
カレンは星の瞬時に懐に飛び込むと、数発の打撃を打ち込んだ。
星は地面を派手に転がりそして止まる。
「いっ……うぅぅ……」
星は腹部を押さえながら、苦しそうにうずくまっている。
まあ、一瞬とはいえ即座に数発の打撃を加えられれば無理もない。HPゲージも1になり、星も立ち上がる様子もない――。
カレンは「ふんっ」と息を漏らすと、倒れている星に冷たい視線を送り。その場を去ろうとしたその時、星の声が響く……。
「……ま、まだです。まだ……負けて……ません!」
「なっ、なんなんだよ。お前は! どうしてそこまで立ち上がるんだ! 元々お前には関係ない事だろう!?」
カレンは体を左右にフラフラさせながらも、必死で立ち上がってくる星に向かって叫ぶ。
(普通ならもう立ち上がるどころか息をするだけでも苦しいはずなんだぞ!? なぜだ……なぜあいつは立っていられる!!)
カレンはそう思うと、倒れても倒れても何度も立ち上がってくる星に、恐怖にも似た感情を覚えた。
「――えっ? どこに……」
次の瞬間。カレンは星の目の前に現れた時には拳を構えていた。
「――なっ!?」
「遅いな……はああああああッ!!」
その咆哮と共に拳が星に襲い掛かる。
星は慌てて、持っていた剣を突き出してガードの体勢に入り『防げる!!』そう確信した直後、星の体は吹き飛ばされていた。
「きゃあああああああああッ!!」
吹き飛ばされた星の体は遠くの壁に、勢い良く叩きつけられ地面に倒れ込む。
「うっ……」
(ど、どうして……? 確実に剣で防いだはずなのに……)
星は混乱した頭で、必死に何が起きたのかを考えていた。その時、星の視界に自分のHPバーが見る見るうちに減っていくのが見えた。
その減少は著しく青かったゲージは黄色になり、遂には赤になってしまった。
(あっ……ダメ。まだ、謝ってもらってないの……このままじゃ、負けちゃう! 負けたくない……止まって!!)
しかし、星の思いは虚しくHPは残り1という表示だけ残して、星の視界には【LOSE】という敗北を告げる文字が表示された。
表示を確認した星は、がっくりと肩を落とす。
(――勝てなかった。ごめんなさい……エリエさん)
星はそれを倒れたまま、虚ろな瞳でその表示を見つめている。
「ふん。口ほどにもなさ過ぎて、罵る言葉もないな」
星は無言のままその声の方を見上げると、カレンが腕を組みながら仁王立ちしているのが目に入った。
「お前は弱い――いや、それを通り越して無様だな。一度も剣を振るわずに負けるとは……そういえば、エミルだったか? あの女もオロチとの戦闘で真っ先に倒されてたなぁ……師匠はあの女を気にかけていたが……どうせ、あの女が師匠に色目を使っていたんだろうな。そういえば、体付きも顔もそれっぽいしなー」
「――くっ……ゆるさない……もう、絶対に許しません!!」
その言葉を聞いて徐ろに立ち上がると、星は烈火の如く怒りだしカレンを鋭く睨みつけた。
「もう一度勝負です!!」
「いいだろう。どうやら……まだ痛めつけられたいようだな!!」
星の闘志に眉をひそめ、拳を構え直すカレン。
「はああああああああああッ!!」
星は剣を構えると、カレンに向かっていった。
カレンはそれを不敵な笑みを浮かべながら、向かってくる星を待ち構えている。
星は剣をがむしゃらに振り回しながらカレンを攻撃するも、その攻撃はカレンに掠りもしない。
だが、当たらないと分かっていても。心の中から湧き上がってくる怒りをぶつけずにはいられない。
「はっ! このっ! このぉ~!!」
「どうした? 攻撃に正確性が無いぞ? そんなじゃ俺に一撃食らわせるなんて夢のまた夢だなッ!!」
星の必死の攻撃をカレンは涼しい顔で攻撃をかわしている。
それもそのはずだ。ゲームではどれだけやり込んだかでプレイヤーの力量が決まる。
攻撃スキルのないフリーダムでは良い装備と実戦経験で得た体の使い方が勝敗を決めると言っていい。
フリーダムの中で剣士はバランス。代わって武闘家がスピードに優れている。
更に前回のアップデートで装備の重量によって俊敏性のステータスが上昇する仕様に変更されていた。このことは、一部の人間しかまだ知らないことだ――。
実はカレンが最初にガントレットを外したのは、この効果を最大に活かす為の彼女の作戦だったのだ。そうとは知らず。星は剣に鞘を付けてしまった為、重量が追加され攻撃速度とスピードを落としてしまっていたのだった。
ただでさえ剣を持たない分、重量の関係で武闘家はスピードと攻撃速度が圧倒的に高い。それが近接戦闘で、スピードという圧倒的なアドバンテージを生み出している。
カレンは必死になって剣を振るう星を、あざ笑うかのように口元に笑みを浮かべる。
(この戦いは最初から俺に有利なんだよ。お前がどんなに努力しても足の遅い剣士では……)
地面を強く踏み締め。
「俺には絶対勝てないんだよ!!」
カレンは星の瞬時に懐に飛び込むと、数発の打撃を打ち込んだ。
星は地面を派手に転がりそして止まる。
「いっ……うぅぅ……」
星は腹部を押さえながら、苦しそうにうずくまっている。
まあ、一瞬とはいえ即座に数発の打撃を加えられれば無理もない。HPゲージも1になり、星も立ち上がる様子もない――。
カレンは「ふんっ」と息を漏らすと、倒れている星に冷たい視線を送り。その場を去ろうとしたその時、星の声が響く……。
「……ま、まだです。まだ……負けて……ません!」
「なっ、なんなんだよ。お前は! どうしてそこまで立ち上がるんだ! 元々お前には関係ない事だろう!?」
カレンは体を左右にフラフラさせながらも、必死で立ち上がってくる星に向かって叫ぶ。
(普通ならもう立ち上がるどころか息をするだけでも苦しいはずなんだぞ!? なぜだ……なぜあいつは立っていられる!!)
カレンはそう思うと、倒れても倒れても何度も立ち上がってくる星に、恐怖にも似た感情を覚えた。
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