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血路を開け!4
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それを見たカレンも「師匠がそうするなら」とマスターの隣に腰を下ろした。
「そうね……これだけ連戦だと、次もどうなるか分からないし。ヒールストーンは温存した方がいいから無難ね。今回のダメージは自然回復に頼った方がいいわね」
エミルはそういうと松明を差したままのストーンドラゴンだけ残し。背中に剣を纏っているドラゴンの方は召喚を解除する。
その様子を見ていた星は、どことなくドラゴンのことをエミルに尋ねた。
「あの、エミルさん。さっきのドラゴンさんは、なんていう名前なんですか?」
「――えっ? ああ、あの子はソードアーマードラゴンよ。昔、少しだけイベントであったダンジョンにしか出現しないドラゴンで、武器を無限に装備できるのが利点ね! アイテムで持ちきれない物はあの子に装備してもらって持ち歩いてるのよ。武器はバッグの中を圧迫するから、必要な装備以外はあの子に持ってもらってるわ」
「なるほどー」
エミルはストーンドラゴンの頭を撫でながら微笑んでいる。
星は納得したように相槌を打つと、その会話を聞いていたエリエがにこにこしながら話しかけてきた。
「ふふっ、星。あのドラゴンはね。エミル姉のとっておきなんだよ?」
「とっておき……ですか?」
星は首を傾げると「そうなの!」とエリエは自慢げに人差し指を立ててた。
「私が最後にあのドラゴンを使ってるエミル姉を見たのは、リントヴルムをゲットする時かな? リントを捕まえる時は壮絶だったもんね~。いろんな意味で……」
「……いろんな?」
含みを持たせた彼女の口振りに、話を聞いていた星が不思議そうに首を傾げた。すると、エリエは悪戯な笑みを浮かべ。
「そうなの! エミル姉なんて、リントの気を逸らすために自分の鎧を岩に着せてね。なんと――」
「――ちょっと! エリー。それ以上はだめぇー!!」
エリエが何かを口にしようとした直後、エミルは顔を真っ赤に染めて慌ててその口を手で塞ぐ。
星は話を途中で切られ、少し気持ちがもやもやしながらもそれ以上は聞き返そうとはしなかった。
7人は地べたに座って雑談などをして休息を取り体力とHPを回復させると、スケルトンを倒したことで開いた扉を進み始めた。
扉の向こうは、最初に降りてきたような狭く薄暗い階段がどこまでも地下へと続いている。
星はまた階段を進むのかと、小さくため息を漏らしながらも歩み始めた。
それからしばらく階段を進んで行くと、また広い空間の部屋に辿り着く。その時、エリエが大きなため息を漏らす。
「はぁ~。またなの? もう嫌なんだけど……次はなに? 骸骨の次はゾンビでも出るの?」
「さすがにそれはないとは思うけど――って、エリー? あまり文句ばかり言わないの。星ちゃんだって文句1つ言わないで付いてきてるのよ?」
エミルは星を引き合いに出してエリエをたしなめると、エリエは不機嫌そうに目を細めながら星の顔を見つめた。
星はその企みげなエリエの表情に、嫌な予感を感じながらそっと視線を逸らす。
「……星だって本当は嫌がってるよね?」
「……えっ? いえ、そんなことは――」
「――嫌がってる。よね!」
エリエは星が話すのを途中で遮るように、さっきより強めに尋ねた。
星はその威圧感に押され、小さく頷くと愛想笑いを浮かべる。
満足そうににやっと笑うとエリエが「ほら、星だってうんざりだって」と言うと、その一部始終を見ていたエミルは少し呆れた様子で「はいはい」と軽く流した。
3人がそんなやりとりをしていると、前を行くマスターが声を上げた。
「ボスの部屋の門が見えたぞ。皆、心せい!」
それを聞いた途端。エリエとエミルの表情がさっきまでとは違い緊張感を持った面持ちへと変わっていた。
(やっぱり。この人達は凄いなー)
そんな2人の表情を見て、星は素直に感心する。
星が部屋の奥へと進んで行くと、マスターの言葉通り大きな錆びた鉄製の門が目の前に現れた。
両端には大きな骸骨の石像が2体。門を支えるような格好でそびえ立っている。
門の中心にも更に巨大な金色の骸骨の装飾があしらわれ、巨大な顎を大きく開いていた。
星にはそれがまるで自分達を食べようとしているように見え、何とも言えない恐怖と胸騒ぎを感じる。
(ここ……なんか、凄く嫌な感じがする……この事を、エミルさんに伝えないと……)
星は心の中がざわめく感覚に襲われた、こういう時はいつも必ずと言っていいほど何か良くないことが起こる前触れである。
前のヤマタノオロチの部屋でも感じたが、今はそれを遥かに凌ぐほどに胸がざわついてしかたがない。
このことを伝えようと、横に居るエミルの手を引っ張る。
エミルが浮かない顔で手を引く星に気が付く。
「そうね……これだけ連戦だと、次もどうなるか分からないし。ヒールストーンは温存した方がいいから無難ね。今回のダメージは自然回復に頼った方がいいわね」
エミルはそういうと松明を差したままのストーンドラゴンだけ残し。背中に剣を纏っているドラゴンの方は召喚を解除する。
その様子を見ていた星は、どことなくドラゴンのことをエミルに尋ねた。
「あの、エミルさん。さっきのドラゴンさんは、なんていう名前なんですか?」
「――えっ? ああ、あの子はソードアーマードラゴンよ。昔、少しだけイベントであったダンジョンにしか出現しないドラゴンで、武器を無限に装備できるのが利点ね! アイテムで持ちきれない物はあの子に装備してもらって持ち歩いてるのよ。武器はバッグの中を圧迫するから、必要な装備以外はあの子に持ってもらってるわ」
「なるほどー」
エミルはストーンドラゴンの頭を撫でながら微笑んでいる。
星は納得したように相槌を打つと、その会話を聞いていたエリエがにこにこしながら話しかけてきた。
「ふふっ、星。あのドラゴンはね。エミル姉のとっておきなんだよ?」
「とっておき……ですか?」
星は首を傾げると「そうなの!」とエリエは自慢げに人差し指を立ててた。
「私が最後にあのドラゴンを使ってるエミル姉を見たのは、リントヴルムをゲットする時かな? リントを捕まえる時は壮絶だったもんね~。いろんな意味で……」
「……いろんな?」
含みを持たせた彼女の口振りに、話を聞いていた星が不思議そうに首を傾げた。すると、エリエは悪戯な笑みを浮かべ。
「そうなの! エミル姉なんて、リントの気を逸らすために自分の鎧を岩に着せてね。なんと――」
「――ちょっと! エリー。それ以上はだめぇー!!」
エリエが何かを口にしようとした直後、エミルは顔を真っ赤に染めて慌ててその口を手で塞ぐ。
星は話を途中で切られ、少し気持ちがもやもやしながらもそれ以上は聞き返そうとはしなかった。
7人は地べたに座って雑談などをして休息を取り体力とHPを回復させると、スケルトンを倒したことで開いた扉を進み始めた。
扉の向こうは、最初に降りてきたような狭く薄暗い階段がどこまでも地下へと続いている。
星はまた階段を進むのかと、小さくため息を漏らしながらも歩み始めた。
それからしばらく階段を進んで行くと、また広い空間の部屋に辿り着く。その時、エリエが大きなため息を漏らす。
「はぁ~。またなの? もう嫌なんだけど……次はなに? 骸骨の次はゾンビでも出るの?」
「さすがにそれはないとは思うけど――って、エリー? あまり文句ばかり言わないの。星ちゃんだって文句1つ言わないで付いてきてるのよ?」
エミルは星を引き合いに出してエリエをたしなめると、エリエは不機嫌そうに目を細めながら星の顔を見つめた。
星はその企みげなエリエの表情に、嫌な予感を感じながらそっと視線を逸らす。
「……星だって本当は嫌がってるよね?」
「……えっ? いえ、そんなことは――」
「――嫌がってる。よね!」
エリエは星が話すのを途中で遮るように、さっきより強めに尋ねた。
星はその威圧感に押され、小さく頷くと愛想笑いを浮かべる。
満足そうににやっと笑うとエリエが「ほら、星だってうんざりだって」と言うと、その一部始終を見ていたエミルは少し呆れた様子で「はいはい」と軽く流した。
3人がそんなやりとりをしていると、前を行くマスターが声を上げた。
「ボスの部屋の門が見えたぞ。皆、心せい!」
それを聞いた途端。エリエとエミルの表情がさっきまでとは違い緊張感を持った面持ちへと変わっていた。
(やっぱり。この人達は凄いなー)
そんな2人の表情を見て、星は素直に感心する。
星が部屋の奥へと進んで行くと、マスターの言葉通り大きな錆びた鉄製の門が目の前に現れた。
両端には大きな骸骨の石像が2体。門を支えるような格好でそびえ立っている。
門の中心にも更に巨大な金色の骸骨の装飾があしらわれ、巨大な顎を大きく開いていた。
星にはそれがまるで自分達を食べようとしているように見え、何とも言えない恐怖と胸騒ぎを感じる。
(ここ……なんか、凄く嫌な感じがする……この事を、エミルさんに伝えないと……)
星は心の中がざわめく感覚に襲われた、こういう時はいつも必ずと言っていいほど何か良くないことが起こる前触れである。
前のヤマタノオロチの部屋でも感じたが、今はそれを遥かに凌ぐほどに胸がざわついてしかたがない。
このことを伝えようと、横に居るエミルの手を引っ張る。
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