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ダンジョン最深部へ
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次の日の朝。星が目覚めると、目の前にエミルが微笑んで星の顔を見つめていた。
星は恥ずかしくなり、顔を真っ赤に染めながら慌てて自分を見つめているエミルから顔を背ける。
「ごめんなさいね。星ちゃん。起きたら、あなたを抱きしめていたみたいで……寝苦しかったでしょ?」
「い、いえ。慣れてないですけど……でも、嫌じゃないです……」
星は更に顔を赤く染めて、小さく俯き加減に頷いた。
エミルはにっこりと微笑んで「ありがとう」と星の頭を優しく撫でた。その時、外から大きな声で言い争うのが聞こえてきた。
「うるさい、このバカデビッド!!」
「なんだと!? 本当の事を言っただけだろ!!」
エミルと星は急いでテントを出ると、そこには鍋を挟んで睨み合っているデイビットとエリエの姿があった。
その様子を見て、エミルは呆れたように大きなため息をつくと「今度は何でけんかしてるの?」と、2人の元に駆けていく。
(――良かった。いつも通りのエミルさんだ)
そんな普段通りのエミルの様子を見た星は、ほっと胸を撫で下ろして先に出ていったエミルを追いかけるように星もゆっくりと歩き出した。
言い争って睨み合っているエリエとデイビッドは、星達に気が付き話を振ってくる。
「エミル姉。聞いてよ! デビッド先輩がね。私の作った朝食を、こんなの不味くて食べれないって言うんだよ!?」
オタマを手に感情を爆発させているエリエ。
すると、デイビッドがすぐに言葉を返す。
「その言い方は語弊を招く。正確には朝食のスープが甘すぎてこれじゃジュースだと言ったんだ!」
「何が違うのよ! このバカデビッド!!」
「全然違うだろうが! それに朝からこんなもの食べたら胸焼け起こして動けなくなるだろうが!!」
そういうと、2人はまた睨み合っている。エミルはそんな二人を強引に引き離し、困り果てた様子で2人の顔を見た。
話を聞いた思い当たる節がある星が顔をしかめる。おそらく、昨日の朝の自分と重ね合わせているのだろう。まあ、星が第一被害者なのは間違いないだろう。
その時、星の背後からオカマ独特の声が聞こえてきた。
「――まったく、うるさいわねぇ~。レディーの朝は大変なのよ~?」
「……えっ?」
星がその方向に目を向けるとそこには、真っ白な顔パックを付けたサラザが立っていた。
その姿のサラザを見た瞬間。星の表情は見る見るうちに青ざめ、目が丸く大きく見開いていく――。
「――ひっ! ひゃあああああああああああッ!!」
星は突然現れた白い顔の大男に驚き、声を裏返らせながら悲鳴を上げた。
「星ちゃん!?」
その悲鳴を聞いてエミルが慌てて星の元に駆け寄ってくると、星の体に覆い被さるようにして叫ぶ。
「星ちゃんには手を出さないで!」
「……なによ、失礼ね~。別に取って喰おうなんて思って――って前にも同じこと言ったわよね?」
「……あっ」
まるで時間が停止したかのように数秒間。サラザとエミルが顔を見合わせた状態で止まる。
そんな2人に向かって、落ち着きを取り戻した星が呟いた。
「いえ、エミルさん。ちょっと驚いてしまっただけで……大丈夫です。驚いてしまってごめんなさい。サラザさん」
星はサラザに向かってペコリと丁寧に頭を下げる。
サラザは星に頭を下げられたことで、逆に申し訳そうな顔をして頭を掻いた。
その後、エミルがことの次第をサラザに説明すると、それを聞いたサラザは呆れた表情でエリエとデイビッドに目をやった。
「なるほどね~。そんな事でケンカしてたのね~。なら、私に任せて頂戴!」
「……どうするんですか?」
サラザは自信満々に張り出した大胸筋を叩くと、エミルと星は不思議そうに首を傾げている。
揉めているエリエとデイビッドの間にある鍋を移動させると、サラザは別の鍋を焚き火の上に置いて料理を始めた。
全身を筋肉で武装したその見た目からは想像も出来ないが、調理をする手付きは妙に手馴れている。
これは間違いなく普段から料理をしている人間のものだ。
それからしばらくして、鍋の中からいい匂いが漂ってきた。
「よし。できたわ~。ほら、味見してみて」
っと言うと、小皿に出来たての肉じゃがを乗せて、その場にいた全員に手渡していく。
最初に小皿を受け取ったエミルが匂いに釣られ、それを口へと運んだ。
「凄く美味しいわ。まるでお店で出るものみたい!」
「本当だ。これは旨い!」
「う~ん。ちょっと甘みが足りない……」
皆の反応を見て、警戒していた星も手渡された小皿の中のじゃがいもを箸で摘み上げ、徐に口に運ぶ。
「……おいしい」
星も驚いた様に目を丸くさせている。
その匂いに誘われて、マスターとカレンも休んでいたテントの中から出てきた。
「ほう。何やらうまそうな匂いがするな」
「本当ですね、師匠。俺もお腹が空いてきました」
起きてきた2人は、そう言って鍋の近くにきた。
サラザは「これで全員揃ったわね~」と言うと、皿の上に鍋から肉じゃがを盛っていく。
味見したこともあってか、全員に肉じゃがが行き渡ると、躊躇することなく、皆それを美味しそうに口に運んでいく。
星は恥ずかしくなり、顔を真っ赤に染めながら慌てて自分を見つめているエミルから顔を背ける。
「ごめんなさいね。星ちゃん。起きたら、あなたを抱きしめていたみたいで……寝苦しかったでしょ?」
「い、いえ。慣れてないですけど……でも、嫌じゃないです……」
星は更に顔を赤く染めて、小さく俯き加減に頷いた。
エミルはにっこりと微笑んで「ありがとう」と星の頭を優しく撫でた。その時、外から大きな声で言い争うのが聞こえてきた。
「うるさい、このバカデビッド!!」
「なんだと!? 本当の事を言っただけだろ!!」
エミルと星は急いでテントを出ると、そこには鍋を挟んで睨み合っているデイビットとエリエの姿があった。
その様子を見て、エミルは呆れたように大きなため息をつくと「今度は何でけんかしてるの?」と、2人の元に駆けていく。
(――良かった。いつも通りのエミルさんだ)
そんな普段通りのエミルの様子を見た星は、ほっと胸を撫で下ろして先に出ていったエミルを追いかけるように星もゆっくりと歩き出した。
言い争って睨み合っているエリエとデイビッドは、星達に気が付き話を振ってくる。
「エミル姉。聞いてよ! デビッド先輩がね。私の作った朝食を、こんなの不味くて食べれないって言うんだよ!?」
オタマを手に感情を爆発させているエリエ。
すると、デイビッドがすぐに言葉を返す。
「その言い方は語弊を招く。正確には朝食のスープが甘すぎてこれじゃジュースだと言ったんだ!」
「何が違うのよ! このバカデビッド!!」
「全然違うだろうが! それに朝からこんなもの食べたら胸焼け起こして動けなくなるだろうが!!」
そういうと、2人はまた睨み合っている。エミルはそんな二人を強引に引き離し、困り果てた様子で2人の顔を見た。
話を聞いた思い当たる節がある星が顔をしかめる。おそらく、昨日の朝の自分と重ね合わせているのだろう。まあ、星が第一被害者なのは間違いないだろう。
その時、星の背後からオカマ独特の声が聞こえてきた。
「――まったく、うるさいわねぇ~。レディーの朝は大変なのよ~?」
「……えっ?」
星がその方向に目を向けるとそこには、真っ白な顔パックを付けたサラザが立っていた。
その姿のサラザを見た瞬間。星の表情は見る見るうちに青ざめ、目が丸く大きく見開いていく――。
「――ひっ! ひゃあああああああああああッ!!」
星は突然現れた白い顔の大男に驚き、声を裏返らせながら悲鳴を上げた。
「星ちゃん!?」
その悲鳴を聞いてエミルが慌てて星の元に駆け寄ってくると、星の体に覆い被さるようにして叫ぶ。
「星ちゃんには手を出さないで!」
「……なによ、失礼ね~。別に取って喰おうなんて思って――って前にも同じこと言ったわよね?」
「……あっ」
まるで時間が停止したかのように数秒間。サラザとエミルが顔を見合わせた状態で止まる。
そんな2人に向かって、落ち着きを取り戻した星が呟いた。
「いえ、エミルさん。ちょっと驚いてしまっただけで……大丈夫です。驚いてしまってごめんなさい。サラザさん」
星はサラザに向かってペコリと丁寧に頭を下げる。
サラザは星に頭を下げられたことで、逆に申し訳そうな顔をして頭を掻いた。
その後、エミルがことの次第をサラザに説明すると、それを聞いたサラザは呆れた表情でエリエとデイビッドに目をやった。
「なるほどね~。そんな事でケンカしてたのね~。なら、私に任せて頂戴!」
「……どうするんですか?」
サラザは自信満々に張り出した大胸筋を叩くと、エミルと星は不思議そうに首を傾げている。
揉めているエリエとデイビッドの間にある鍋を移動させると、サラザは別の鍋を焚き火の上に置いて料理を始めた。
全身を筋肉で武装したその見た目からは想像も出来ないが、調理をする手付きは妙に手馴れている。
これは間違いなく普段から料理をしている人間のものだ。
それからしばらくして、鍋の中からいい匂いが漂ってきた。
「よし。できたわ~。ほら、味見してみて」
っと言うと、小皿に出来たての肉じゃがを乗せて、その場にいた全員に手渡していく。
最初に小皿を受け取ったエミルが匂いに釣られ、それを口へと運んだ。
「凄く美味しいわ。まるでお店で出るものみたい!」
「本当だ。これは旨い!」
「う~ん。ちょっと甘みが足りない……」
皆の反応を見て、警戒していた星も手渡された小皿の中のじゃがいもを箸で摘み上げ、徐に口に運ぶ。
「……おいしい」
星も驚いた様に目を丸くさせている。
その匂いに誘われて、マスターとカレンも休んでいたテントの中から出てきた。
「ほう。何やらうまそうな匂いがするな」
「本当ですね、師匠。俺もお腹が空いてきました」
起きてきた2人は、そう言って鍋の近くにきた。
サラザは「これで全員揃ったわね~」と言うと、皿の上に鍋から肉じゃがを盛っていく。
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