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富士の遺産3
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その顔を見るなり、エリエは驚いた表情で大きく口を開けてる。
「そんな……あなたがどうしてここにッ!?」
「……それは俺から説明しましょう」
その声の方に目をやると、そこにはエリエと同い年くらいの少女が立っていた。
髪の色は黒くショートヘアーで、その格好は年頃の女の子というにはあまりに質素だった。
上着は外見より動きやすさを重視し紺色の袖の胸元の開いた短めの服に、下も茶色いズボンを穿いている。
盛り上がった胸元からはさらしが見えていた。おそらく、戦闘で邪魔にならないように大きな胸を潰しているのだろう。だが、その喋り方と飾り気のない風貌から、男と間違われてもおかしくはない。
少女はその茶色い瞳でエリエの青い瞳をじっと見つめ、徐ろに口を開く。
「――師匠と俺はログアウトできないと知ってから、何とかこのゲームの世界から抜け出す方法を探って、あちこちを旅していまして……そこで、この富士の山に通常とは別のルートが存在しているという情報を聞きつけ。おそらく、そのどれかに【現世への扉】があると考え、来てみれば、敵が皆倒されていたので援護する為、急いでこのボス部屋まで来た――というわけです」
「なるほどな。なら、たまたま同じダンジョンに居たってことか」
少女の話を聞いて、納得したようにデイビッドが頷く。
「そうだ。だが、これほどまでに、お前達が腑抜けきっているとはな思ってなかったがな」
男性は少し呆れたようにそう呟き、担いていた星とエミルを地面に寝かせた。しかし、2人はまるで死んでいるかのように動かない。
そんな2人に向かって、エリエが駆け寄って行く。
「――良かったぁ……2人とも気を失っているだけみたい」
エリエは2人が息をしていることを確認すると、ほっと胸を撫で下ろす。
腕組をしてその様子を横目で見ていたマスターに、デイビッドが声を掛けた。
「マスター。今までどこで何をしていたんだ。俺達はあなたが忽然とギルドから抜けて消息を絶ってから、どれだけ俺達が大変だったか――」
「――ふんっ。積もる話があるのは儂もだが、ゆっくりと話をしている暇も無さそうだぞ? ……あれを見ろ!」
マスターが指を差した先を、その場に居た全員が一斉に見た。
視線の先には8つの頭を長く伸ばし、こちらの様子を窺っているヤマタノオロチの姿があった。
その超巨大な8つの頭の口からは、白く激しい息遣いとドロドロとした唾液が止めどなく溢れ出す。それはまるで、餌を目の前にお預けをくらっている獰猛な肉食獣のようだった。
「――蛇は獲物を締め上げ、弱ったところを捕食する。こちらがピンピンしておるうちには、それほど、激しく攻撃はしてこんだろう……しかし、だからと言って、こちらも無策で飛び込むわけにもいかん」
「作戦か……そういうのを考えるのは、俺はあまり得意じゃないんだよな……」
「私もあの大きさの敵を相手に、この人数じゃあまりに厳しいと思う……」
マスターの話を聞いて、弱気な発言をしているデイビッドとエリエを尻目に、サラザがヤマタノオロチの前に出て堪らず声を上げた。
「なによ! 皆、弱気じゃないの。所詮は8匹の蛇でしょ? 私が敵の注意を引くわ。その間に、皆でじゃんじゃん攻撃よ~」
サラザはそう言って敵を睨むと「ビルドアップ!」と大声で叫んだ。
その直後。サラザの体から金色のオーラが吹き出し、鍛え抜かれた全身の筋肉が更に盛り上がっていく。もはや、その姿は人というより獣に近いかもしれない。
マスターはその様子を食い入るように見ると。
「ほう。なかなかの技だな……その力、儂も使わせてもらおう。明鏡止水!」
っと叫ぶと、彼の体もまたサラザ同様に全身から金色のオーラが立ち昇る。
「――なんですって!! あなたもビルドアップを使えるの!?」
サラザは同じようなマスターの姿に、さすがに驚きを隠せない表情でマスターを見た。
マスターは「はははっ」と大きな笑い声を上げ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ。
「これは明鏡止水。儂の固有スキルの力だ……このスキルはな――」
マスターが自分の固有スキルについて説明しようと口を開いた直後、ヤマタノオロチの頭の一つが2人を目掛けて突っ込んできた。
それを跳んで素早くかわす。
固有スキルとは、プレイヤー作成時にランダムで選択されるスキルのことで、レア度によってそれぞれランク付けされている。
サラザの体から突如として金色のオーラが立ち上がったのも、エミルが使っていたドラゴンを召喚する能力もこの固有スキルによるものだ。
マスターの固有スキル『明鏡止水』は世界で何十万というプレイヤーが存在するフリーダムの中でも、5人しか持っていない。レア度はSランクと、とても珍しいスキルだ。
彼の固有スキル『明鏡止水』は肉体強化系のスキルを記憶し、自分の能力として何度でも再使用ができるというとんでもないチート的なスキルなのだ。
「そんな……あなたがどうしてここにッ!?」
「……それは俺から説明しましょう」
その声の方に目をやると、そこにはエリエと同い年くらいの少女が立っていた。
髪の色は黒くショートヘアーで、その格好は年頃の女の子というにはあまりに質素だった。
上着は外見より動きやすさを重視し紺色の袖の胸元の開いた短めの服に、下も茶色いズボンを穿いている。
盛り上がった胸元からはさらしが見えていた。おそらく、戦闘で邪魔にならないように大きな胸を潰しているのだろう。だが、その喋り方と飾り気のない風貌から、男と間違われてもおかしくはない。
少女はその茶色い瞳でエリエの青い瞳をじっと見つめ、徐ろに口を開く。
「――師匠と俺はログアウトできないと知ってから、何とかこのゲームの世界から抜け出す方法を探って、あちこちを旅していまして……そこで、この富士の山に通常とは別のルートが存在しているという情報を聞きつけ。おそらく、そのどれかに【現世への扉】があると考え、来てみれば、敵が皆倒されていたので援護する為、急いでこのボス部屋まで来た――というわけです」
「なるほどな。なら、たまたま同じダンジョンに居たってことか」
少女の話を聞いて、納得したようにデイビッドが頷く。
「そうだ。だが、これほどまでに、お前達が腑抜けきっているとはな思ってなかったがな」
男性は少し呆れたようにそう呟き、担いていた星とエミルを地面に寝かせた。しかし、2人はまるで死んでいるかのように動かない。
そんな2人に向かって、エリエが駆け寄って行く。
「――良かったぁ……2人とも気を失っているだけみたい」
エリエは2人が息をしていることを確認すると、ほっと胸を撫で下ろす。
腕組をしてその様子を横目で見ていたマスターに、デイビッドが声を掛けた。
「マスター。今までどこで何をしていたんだ。俺達はあなたが忽然とギルドから抜けて消息を絶ってから、どれだけ俺達が大変だったか――」
「――ふんっ。積もる話があるのは儂もだが、ゆっくりと話をしている暇も無さそうだぞ? ……あれを見ろ!」
マスターが指を差した先を、その場に居た全員が一斉に見た。
視線の先には8つの頭を長く伸ばし、こちらの様子を窺っているヤマタノオロチの姿があった。
その超巨大な8つの頭の口からは、白く激しい息遣いとドロドロとした唾液が止めどなく溢れ出す。それはまるで、餌を目の前にお預けをくらっている獰猛な肉食獣のようだった。
「――蛇は獲物を締め上げ、弱ったところを捕食する。こちらがピンピンしておるうちには、それほど、激しく攻撃はしてこんだろう……しかし、だからと言って、こちらも無策で飛び込むわけにもいかん」
「作戦か……そういうのを考えるのは、俺はあまり得意じゃないんだよな……」
「私もあの大きさの敵を相手に、この人数じゃあまりに厳しいと思う……」
マスターの話を聞いて、弱気な発言をしているデイビッドとエリエを尻目に、サラザがヤマタノオロチの前に出て堪らず声を上げた。
「なによ! 皆、弱気じゃないの。所詮は8匹の蛇でしょ? 私が敵の注意を引くわ。その間に、皆でじゃんじゃん攻撃よ~」
サラザはそう言って敵を睨むと「ビルドアップ!」と大声で叫んだ。
その直後。サラザの体から金色のオーラが吹き出し、鍛え抜かれた全身の筋肉が更に盛り上がっていく。もはや、その姿は人というより獣に近いかもしれない。
マスターはその様子を食い入るように見ると。
「ほう。なかなかの技だな……その力、儂も使わせてもらおう。明鏡止水!」
っと叫ぶと、彼の体もまたサラザ同様に全身から金色のオーラが立ち昇る。
「――なんですって!! あなたもビルドアップを使えるの!?」
サラザは同じようなマスターの姿に、さすがに驚きを隠せない表情でマスターを見た。
マスターは「はははっ」と大きな笑い声を上げ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ。
「これは明鏡止水。儂の固有スキルの力だ……このスキルはな――」
マスターが自分の固有スキルについて説明しようと口を開いた直後、ヤマタノオロチの頭の一つが2人を目掛けて突っ込んできた。
それを跳んで素早くかわす。
固有スキルとは、プレイヤー作成時にランダムで選択されるスキルのことで、レア度によってそれぞれランク付けされている。
サラザの体から突如として金色のオーラが立ち上がったのも、エミルが使っていたドラゴンを召喚する能力もこの固有スキルによるものだ。
マスターの固有スキル『明鏡止水』は世界で何十万というプレイヤーが存在するフリーダムの中でも、5人しか持っていない。レア度はSランクと、とても珍しいスキルだ。
彼の固有スキル『明鏡止水』は肉体強化系のスキルを記憶し、自分の能力として何度でも再使用ができるというとんでもないチート的なスキルなのだ。
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