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再会9
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エミルは抱き寄せた星の耳元で小さな声でささやく様に告げる。
「――もう。あまり無理しないの!」
「で、でも……」
「でもじゃないわ。あなたが何かされたらどうするつもりだったの? だけど……守ってもらって嬉しかったわ。ありがとうね」
エミルの口から出たその言葉に、星の顔からは思わず笑みがこぼれる。
今までお礼を言われても。心のどこかで当たり前のことをしているという認識があったからか、嬉しいと思ったことが殆どなかった。
しかし、エミルに「ありがとう」と言われた時、星の心の中は今までには感じたことのないほどに『嬉しい』という感情でいっぱいになった。
「そういえば、エミル姉とサラザは初対面だったね。サラザ、紹介するね! この人が、私のお姉さん的な存在のエミルさん。そして、さっきサラザが抱きついたのが星。ついでにこっちの変な格好してるのが、前に話したバカデビッドだよ」
「デイビッドだ! いや、デイビッドでもないんだが……それにバカとはなんだ、バカとは! それと変な格好じゃなくこれはサムライと言って誇り高い日本の戦士の……」
エリエはサラザにメンバーの紹介を終えると、怒っているデイビッドを無視してぷいっと顔を背ける。
サラザはエリエの話を聞くと、エミルにそっと手を差し伸べた。
エミルは驚いた表情でサラザを見上げている。
「あなたがエミルの姉なら、私からしたら妹も同じだもの。悪かったわね、許してもらえるかしら?」
「ええ、こちらこそ、失礼な事を言ってしまってすみませんでした」
エミルはサラザの手を掴んで立ち上がる。
2人はお互いの顔を見合わせ、にっこりと微笑み合っている。それを見た星も、ほっと胸を撫で下ろしていた。
エミルが突然呼ばれ、情況をまったく把握できていないサラザに、今回のダンジョン攻略の説明をする。
サラザはその話に真剣に耳を傾けると、内容を全て把握したと言わんばかりに大きく頷く。
「なるほどね~。なら、今回のダンジョン攻略は、その子の防具を作る為にそのアイテムが必要ってわけね~」
サラザはエミルの背中に隠れている星を見て、柔らかい表情でにこっと微笑んだ。
星はそれを見て、さっとエミルの背中に完全に体を隠した。
それもそのはずだ。星は今までテレビなどでは『オカマ』を見たことはあっても実物を見るのは今日が初めて――しかも、それが筋肉隆々のガチムチとなれば尚の事だ。
おそらく。そんなサラザが星の目には、まるで凶暴なモンスターの様に目に映っていることだろう。
「あら、嫌われちゃったのかしら……その子。小動物みたいでかわいいんだけど、残念だわ~」
サラザは残念そうに指を咥えながら、星を見つめている。
自分を見つめるサラザに身の危険を感じだのかエミルの背中に隠れたまま、星がエミルの服を強く握った。
「それでサラザ。私達と一緒に行ってもらえないかな?」
そう言ったエリエは不安そうな表情でサラザを見た。
すると、サラザはにこっと微笑み自分の鍛えあげられた大胸筋を叩く。
「なにを水臭いこと言ってるのよ~。私達友達じゃない。友達の友達はマブ達と同じよ~」
サラザがなにを言っているのかはさておき、どうやら協力してくれるようだ。
「なら、一緒に行ってもらえるの?」
「もちろんよ! 前衛は私に任せて頂戴。うふふっ。私の筋肉が疼いているわ~」
念を押して再び尋ねるエミルにサラザはそう言って不気味な笑みを浮かべると、全身の筋肉をピクピクと動かした。
5人は身支度を整えるとエリエの言っていた富士の遺産ダンジョンへと向かう為、街の外れにある大きな花畑にいた。
「さて、この辺りでいいわね」
「なんでこんな所に来たの? 富士の遺産ダンジョンって確か、ここからエルアーディン平原を越えた向こう側のはずでしょ?」
「まあ、いいからいいから、始めてエミル姉!」
エミルはその声に頷くと、皆の前にいってコマンドを操作する。
すると、次の瞬間にはエミルの手にドラゴン召喚用の巻物が握られていた。
「皆、少し下がっててね。危ないわよ?」
エミルはそういうと巻物を広げ笛を鳴らす。その直後、辺りが巻物から出た白い煙で覆い尽くされる。
驚いた様子で目を丸くさせたサラザが「なにが起きたの!?」と声を上げた。
煙が消え視界が戻ると、サラザの目の前に大きな白いドラゴンが現れる。それを見たサラザは思わず叫んだ。
「こ、これは……まさか、あなたが噂の白い閃光なの!?」
「――そう、この人が『白い閃光』だよ。うちのギルドの中でも、実力はトップクラスなんだから!」
エリエは自慢げにえっへんと胸を張って答えた。
エミルはそれを聞いて、少し恥ずかしそうに頬を赤く染めると「いいから早く乗って」と皆を急かすように言った。
褒められるのに慣れてないのか、それとも『白い閃光』という通り名が嫌いなのか、エミルは頬を赤く染めてそっぽを向いている。
5人全員がリントヴルムの背中に乗ったのを確認し、エミルはパシッと手綱を鳴らした。すると、大きな翼を広げリントヴルムは勢い良く大空へと舞い上がる。
「さて、皆しっかり掴まっててね。飛ばすわよ~。リントお願い!」
その凛とした声に答えるように、リントヴルムが大きな鳴き声を上げ大きな巨体を前へと進めた。
「――もう。あまり無理しないの!」
「で、でも……」
「でもじゃないわ。あなたが何かされたらどうするつもりだったの? だけど……守ってもらって嬉しかったわ。ありがとうね」
エミルの口から出たその言葉に、星の顔からは思わず笑みがこぼれる。
今までお礼を言われても。心のどこかで当たり前のことをしているという認識があったからか、嬉しいと思ったことが殆どなかった。
しかし、エミルに「ありがとう」と言われた時、星の心の中は今までには感じたことのないほどに『嬉しい』という感情でいっぱいになった。
「そういえば、エミル姉とサラザは初対面だったね。サラザ、紹介するね! この人が、私のお姉さん的な存在のエミルさん。そして、さっきサラザが抱きついたのが星。ついでにこっちの変な格好してるのが、前に話したバカデビッドだよ」
「デイビッドだ! いや、デイビッドでもないんだが……それにバカとはなんだ、バカとは! それと変な格好じゃなくこれはサムライと言って誇り高い日本の戦士の……」
エリエはサラザにメンバーの紹介を終えると、怒っているデイビッドを無視してぷいっと顔を背ける。
サラザはエリエの話を聞くと、エミルにそっと手を差し伸べた。
エミルは驚いた表情でサラザを見上げている。
「あなたがエミルの姉なら、私からしたら妹も同じだもの。悪かったわね、許してもらえるかしら?」
「ええ、こちらこそ、失礼な事を言ってしまってすみませんでした」
エミルはサラザの手を掴んで立ち上がる。
2人はお互いの顔を見合わせ、にっこりと微笑み合っている。それを見た星も、ほっと胸を撫で下ろしていた。
エミルが突然呼ばれ、情況をまったく把握できていないサラザに、今回のダンジョン攻略の説明をする。
サラザはその話に真剣に耳を傾けると、内容を全て把握したと言わんばかりに大きく頷く。
「なるほどね~。なら、今回のダンジョン攻略は、その子の防具を作る為にそのアイテムが必要ってわけね~」
サラザはエミルの背中に隠れている星を見て、柔らかい表情でにこっと微笑んだ。
星はそれを見て、さっとエミルの背中に完全に体を隠した。
それもそのはずだ。星は今までテレビなどでは『オカマ』を見たことはあっても実物を見るのは今日が初めて――しかも、それが筋肉隆々のガチムチとなれば尚の事だ。
おそらく。そんなサラザが星の目には、まるで凶暴なモンスターの様に目に映っていることだろう。
「あら、嫌われちゃったのかしら……その子。小動物みたいでかわいいんだけど、残念だわ~」
サラザは残念そうに指を咥えながら、星を見つめている。
自分を見つめるサラザに身の危険を感じだのかエミルの背中に隠れたまま、星がエミルの服を強く握った。
「それでサラザ。私達と一緒に行ってもらえないかな?」
そう言ったエリエは不安そうな表情でサラザを見た。
すると、サラザはにこっと微笑み自分の鍛えあげられた大胸筋を叩く。
「なにを水臭いこと言ってるのよ~。私達友達じゃない。友達の友達はマブ達と同じよ~」
サラザがなにを言っているのかはさておき、どうやら協力してくれるようだ。
「なら、一緒に行ってもらえるの?」
「もちろんよ! 前衛は私に任せて頂戴。うふふっ。私の筋肉が疼いているわ~」
念を押して再び尋ねるエミルにサラザはそう言って不気味な笑みを浮かべると、全身の筋肉をピクピクと動かした。
5人は身支度を整えるとエリエの言っていた富士の遺産ダンジョンへと向かう為、街の外れにある大きな花畑にいた。
「さて、この辺りでいいわね」
「なんでこんな所に来たの? 富士の遺産ダンジョンって確か、ここからエルアーディン平原を越えた向こう側のはずでしょ?」
「まあ、いいからいいから、始めてエミル姉!」
エミルはその声に頷くと、皆の前にいってコマンドを操作する。
すると、次の瞬間にはエミルの手にドラゴン召喚用の巻物が握られていた。
「皆、少し下がっててね。危ないわよ?」
エミルはそういうと巻物を広げ笛を鳴らす。その直後、辺りが巻物から出た白い煙で覆い尽くされる。
驚いた様子で目を丸くさせたサラザが「なにが起きたの!?」と声を上げた。
煙が消え視界が戻ると、サラザの目の前に大きな白いドラゴンが現れる。それを見たサラザは思わず叫んだ。
「こ、これは……まさか、あなたが噂の白い閃光なの!?」
「――そう、この人が『白い閃光』だよ。うちのギルドの中でも、実力はトップクラスなんだから!」
エリエは自慢げにえっへんと胸を張って答えた。
エミルはそれを聞いて、少し恥ずかしそうに頬を赤く染めると「いいから早く乗って」と皆を急かすように言った。
褒められるのに慣れてないのか、それとも『白い閃光』という通り名が嫌いなのか、エミルは頬を赤く染めてそっぽを向いている。
5人全員がリントヴルムの背中に乗ったのを確認し、エミルはパシッと手綱を鳴らした。すると、大きな翼を広げリントヴルムは勢い良く大空へと舞い上がる。
「さて、皆しっかり掴まっててね。飛ばすわよ~。リントお願い!」
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