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再会7
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しかし、この状況下で、それほどの人数を集めるのは至難の業だろう。エミルの連絡の付く知り合いはエリエやデイビッドくらいのものだ。
もちろん。エミルがぼっちなわけではなく、そうならざるを得ないのだ。エミルは大会で、何度も優勝を繰り返しているトッププレイヤー中のトッププレイヤーだ――さすがに名の知れたプレイヤーになると、大会の優勝者に与えられる景品なんかを高値で売ってくれという者や、それ狙いで付き合ってくる者も必然的に多くなる。
それを嫌った結果。昔馴染みだけでフレンド登録をした為、フレンドの数が極めて少ないのだ。
こんなことになるなら、もう少し多くのフレンドを作っておけば良かったと、今のエミルは本気で後悔していた。
まあ、欲に塗れた者達が役に立つのか……っという思いもあるが、欲に塗れているからこそ、高額なアイテムには目がなく。大会の優勝者に与えられる景品は一点物で、とても高値で取引されることを知っている。
そういう者達の方が意外と私欲で動きやすいのだ。死ぬかもしれない恐怖よりも、一点物のアイテムを仲間達に自慢したいという願望が強いのは、さすがネットゲーマーと言ったところだろう。
その言葉を聞いてエリエが口を開く。
「なら、マスターにお願いしてみる?」
「――マスターに? 私、あの人苦手なのよねぇ~。なんか独特の威圧感があって……」
エリエの提案を聞いた、エミルはそう言って顔をしかめている。
2人の会話を黙ったまま、ただ眺めていたデイビッドが徐に口を開く。
「――なら、とりあえずこのメンバーで行ってみて、ダメだったら考える事にしないか? 慎重に進めば、俺達なら4人でも大丈夫だろ。もし、それでダメなら帰還すればいいんだし」
「そうね。でも……」
そう言ったエミルは不安そうな表情で星に視線を向ける。星もそれに気付いたが、大体の理由を察して無言のまま俯いた。
エミルは口には出さなかったものの、彼女が自分のことを気にしているということは何となくだが分かっていた。この場にいるメンバーの中で、戦力に成り得ない存在であることは間違いない。
デイビッドは気を利かせて4人と言ったが、それが星にはプレッシャーになった。自分が足を引っ張るのではないかという不安も相まってか、エミルと顔をまともに合わせることができない。
「エミル姉。人数が不安なら、私のフレンドから呼んでもいい?」
「えっ? あてもないし。なら、お願いしようかしら……」
「うんっ!」
エリエは力強く頷くと、チャット機能で誰かと会話を始めた。星はそれを不安そうに見つめている。
この時、星の心の中ではどうやってダンジョンに行くのをやめてもらえるか、頭の中で必死に考えを巡らせていたのだ。
星は話をしたことのある人なら気兼ねなく――とはいかないものの。上手く説得できる可能性もあると考えていたのだが、ここにさらに知らない人物が入ってくるとなると、さすがに断り難くなってきてしまう。
できる限りいいタイミングで話を切り出す為には、新たな人物の介入は避けたい。
何故なら、さっきもエミルが言っていた通り。圧倒的な戦力不足であることが分かっていたし、メンバーが集まらなければこの危険なダンジョン攻略を中止せざるを得ないだろう。
星は祈るような気持ちで目を閉じ『どうか、断られますように』と心の中で何度も念じた。しかし、その思いは通じず。会話を終わらせたエリエは、にこにこしながら「OKだって」と親指を立てた。
それを見て星はがっかりしたように肩の力を抜く。4人はその人物との合流の為、城を出て街へと向かう。
街に着くと、エリエが会話の人物と落ち合う約束をしたという店へと急いだ。
街には相変わらず活気がなく。人がいたとしても建物の中にまるで、何かに怯えるように集まっているだけだ。
その時、星の横を歩いていたエミルが、それを見てぼそっと呟く。
「皆、ブラックギルドを恐れて、できる限り外出を控えているようね……」
「……仕方ないだろう。HPを1だけ残して、フィールドのモンスターの前に放り出されれば、どんなモンスターでも一撃もらえば死んでしまう。おそらく、PVPの承認をスキップさせることで、そういう連中を野放しにさせ、少しでもダンジョン攻略をしようとする者達を減らす。それが、この事件を引き起こした犯人の狙いなんだろうな……悔しいが、なかなか頭が切れてる奴だとは思うよ」
真面目な話をしている2人に先頭を歩くエリエが「デビッド先輩は頭固いもんね~」と話に水を差すように横槍を入れる。
デイビッドは顔を真っ赤にしながら「コラァー」と声を荒げると、エリエは小走りで逃げながら「そうやって、すぐ怒るから頭固いんだよ~」と、なおもデイビッドを挑発している。
もちろん。エミルがぼっちなわけではなく、そうならざるを得ないのだ。エミルは大会で、何度も優勝を繰り返しているトッププレイヤー中のトッププレイヤーだ――さすがに名の知れたプレイヤーになると、大会の優勝者に与えられる景品なんかを高値で売ってくれという者や、それ狙いで付き合ってくる者も必然的に多くなる。
それを嫌った結果。昔馴染みだけでフレンド登録をした為、フレンドの数が極めて少ないのだ。
こんなことになるなら、もう少し多くのフレンドを作っておけば良かったと、今のエミルは本気で後悔していた。
まあ、欲に塗れた者達が役に立つのか……っという思いもあるが、欲に塗れているからこそ、高額なアイテムには目がなく。大会の優勝者に与えられる景品は一点物で、とても高値で取引されることを知っている。
そういう者達の方が意外と私欲で動きやすいのだ。死ぬかもしれない恐怖よりも、一点物のアイテムを仲間達に自慢したいという願望が強いのは、さすがネットゲーマーと言ったところだろう。
その言葉を聞いてエリエが口を開く。
「なら、マスターにお願いしてみる?」
「――マスターに? 私、あの人苦手なのよねぇ~。なんか独特の威圧感があって……」
エリエの提案を聞いた、エミルはそう言って顔をしかめている。
2人の会話を黙ったまま、ただ眺めていたデイビッドが徐に口を開く。
「――なら、とりあえずこのメンバーで行ってみて、ダメだったら考える事にしないか? 慎重に進めば、俺達なら4人でも大丈夫だろ。もし、それでダメなら帰還すればいいんだし」
「そうね。でも……」
そう言ったエミルは不安そうな表情で星に視線を向ける。星もそれに気付いたが、大体の理由を察して無言のまま俯いた。
エミルは口には出さなかったものの、彼女が自分のことを気にしているということは何となくだが分かっていた。この場にいるメンバーの中で、戦力に成り得ない存在であることは間違いない。
デイビッドは気を利かせて4人と言ったが、それが星にはプレッシャーになった。自分が足を引っ張るのではないかという不安も相まってか、エミルと顔をまともに合わせることができない。
「エミル姉。人数が不安なら、私のフレンドから呼んでもいい?」
「えっ? あてもないし。なら、お願いしようかしら……」
「うんっ!」
エリエは力強く頷くと、チャット機能で誰かと会話を始めた。星はそれを不安そうに見つめている。
この時、星の心の中ではどうやってダンジョンに行くのをやめてもらえるか、頭の中で必死に考えを巡らせていたのだ。
星は話をしたことのある人なら気兼ねなく――とはいかないものの。上手く説得できる可能性もあると考えていたのだが、ここにさらに知らない人物が入ってくるとなると、さすがに断り難くなってきてしまう。
できる限りいいタイミングで話を切り出す為には、新たな人物の介入は避けたい。
何故なら、さっきもエミルが言っていた通り。圧倒的な戦力不足であることが分かっていたし、メンバーが集まらなければこの危険なダンジョン攻略を中止せざるを得ないだろう。
星は祈るような気持ちで目を閉じ『どうか、断られますように』と心の中で何度も念じた。しかし、その思いは通じず。会話を終わらせたエリエは、にこにこしながら「OKだって」と親指を立てた。
それを見て星はがっかりしたように肩の力を抜く。4人はその人物との合流の為、城を出て街へと向かう。
街に着くと、エリエが会話の人物と落ち合う約束をしたという店へと急いだ。
街には相変わらず活気がなく。人がいたとしても建物の中にまるで、何かに怯えるように集まっているだけだ。
その時、星の横を歩いていたエミルが、それを見てぼそっと呟く。
「皆、ブラックギルドを恐れて、できる限り外出を控えているようね……」
「……仕方ないだろう。HPを1だけ残して、フィールドのモンスターの前に放り出されれば、どんなモンスターでも一撃もらえば死んでしまう。おそらく、PVPの承認をスキップさせることで、そういう連中を野放しにさせ、少しでもダンジョン攻略をしようとする者達を減らす。それが、この事件を引き起こした犯人の狙いなんだろうな……悔しいが、なかなか頭が切れてる奴だとは思うよ」
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デイビッドは顔を真っ赤にしながら「コラァー」と声を荒げると、エリエは小走りで逃げながら「そうやって、すぐ怒るから頭固いんだよ~」と、なおもデイビッドを挑発している。
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