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再会5

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「まあ、見た目は良くないが。これが今エミルが装備している最大防御力の防具と同じ重量なんだ。これを着てみて、動けるかどうかで、これからの君の装備の方向性を決めたいと思う。どうだろうエミル」
「そうね。それが私もいいと思う。でもね、デイビッド……私達はヒントを教えるだけ――決めるのはあくまでも星ちゃん自身よ?」

 エミルにそう言われデイビッドは、苦笑いしながら頭を掻いた。

 場の雰囲気が悪くなったのを察したのか、星がデイビッドの出した重そうな鎧を装備してみる。

「うっ……お、重い……」

 思った通り。星は鎧を装備するとあまりの重さに、足元がおぼつかないほどだった。

 だが、装備してもすぐに倒れることがないのはおそらく、筋力補正が掛かっているおかげだろう。

 星はふらふらと体を左右に揺らしながらも、なんとかバランスを保っていた。その様子を見たエミルは、心配した様子で星に声を掛ける。

「星ちゃん。大丈夫? やっぱり。かなり重いかな……」
「い、いえ。頑張ればなんとかなると思います!」

 心配そうな表情で星を見つめているエミルに、星は両手をブンブン振って平気だと最大限アピールした。

 その時、星の体が鎧の重みで勢い良く後ろに倒れた。

「うぅ……痛い」

 床に尻もちをついた星は、心配させまいと「あはは……失敗しちゃいました」と笑って見せる。しかし、その様子を見たエミルは慌てて星の体を起こすと、険しい表情で「これじゃとても戦闘は無理ね」と呟く。

 始めから無理なのは分かっていたが、筋力補正が入ればもしかしたら……っという期待はあったのも事実。

 だが、やはり圧倒的にレベルが低すぎて、筋力補正の数値もそれほど高くないのが最大の難点と言える。

 デイビッドとエリエもさすがに転んだ星を見て、これはまずいと思ったのだろう。一瞬で表情を曇らせると、再び考え込んだ。

「戦闘も攻撃より回避重視でしょ? なら、鎧より服を使った方が良いかな?」

 エリエは少し考えた後にそう呟く。

 だが、その言葉を聞いたエミルとデイビッドの表情は更に険しい表情に変わる。

 それには理由がある。ここフリーダムでは防具を装備すると、防御力ではなく最大HP量が増加する。防御力はキャラクターがレベルアップするに従って徐々に上昇していく仕様になっている。

 基本的に、全てのプレイヤーは上限のLv100でステータスが一定になるよう設定されている。

 それでも足りない部分がある場合はHP、攻撃力、防御力、スピード、攻撃速度の5つをそれぞれに装備などでバランスを取って自分のベストの装備を見つけていくのだ。防御力が欲しいなら盾を装備すればいい。だが、代わりにスピードのパラメーターが落ちる。

 他にも装備によって様々なステータスに違いが出ることから、初心者はまず武器よりも自分に合った防具から揃えるのがフリーダムでは常識になっていた。

 更にフリーダムでは、鎧の他に日常装備できるようにと服も装備できる。VRMMOではゲームとはいえ『視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚』といった五感が現実世界とあまり変わらない状態で再現されている。その為、寝る時やくつろぐ時に重たい鎧のままでは何かと不便で仕方がない。

 だから、多くのプレイヤーは戦闘以外では、日常で服を装備することが多い。ゲーム内では服専用に店があり、衣類も豊富に揃えられている。また、一般のプレイヤーが経営している店も数多くある。

 しかし、あくまで日常で着る為の物で、戦闘で服を装備するということは裸でいるのも同然。
 何故なら、服には装備した時にHP上昇や防御力上昇などの付属効果がないからだ――つまりは、裸同然で戦闘に及ぶことになる。

 たまに速度特化のプレイヤーが防具の重さと煩わしさを嫌って、服を装備している場合もあるが、それは高レベルになって自身の防御力が上がり、HPよりも俊敏性を上げて攻撃を確実にかわせるという自信からくるものだ。

 なので始めて数日しか経っていない星に、そんな強者の真似ができるはずもない。

 エミル達は困り果て、深刻な顔で考え込んでいる。

 その時、エリエが何かを思い出したように、手の平をポンッと叩き声を上げた。

「あっ! あった。いい解決法が!」
「どんな方法だ!? 教えてくれ! エリエ」

 デイビッドは驚いた様子でエリエの肩を掴む。

 エリエはその行動に不機嫌そうに眉をひそめると、冷たい口調で小さく呟く。

「ちょっと、デビッド先輩。馴れ馴れしいんですけど……」
「あっ、ああ。すまん……って、俺の名前はデイビッドだ! いやだから何度言えば分かるんだ……ここでの俺の名前はガイアなんだ!!」

 顔を真っ赤にさせながら怒鳴っているデイビッドを見て、エリエはくすくすと悪戯な笑みを浮かべる。
 おそらく。エリエはデイビッドが白人ということもあって、彼の白い顔がはっきりと赤く染まるのを見るのが楽しいのだろう。
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