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再会2

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 エミルは星に向かってにっこりと微笑んで、優しい声音で告げた。

「……星ちゃん。これはもうあなたの武器よ? 襲われた時。凄く辛くても……あなたはこの剣を手放さなかったでしょ?」
「でも、それは――」

 困惑した表情で星が口を開いた直後、エミルが割り込むよう口を開いた。
 
「――いいの……私ならきっとあの状況でこの剣を手放してでも逃げたと思う。でも、星ちゃんは最後まで逃げなかったでしょ? だから、この剣はあなたに感謝してると思うの」
「感謝……ですか?」

 エミルはきょとんとした顔で首を傾げている星に優しく微笑んでゆっくと頷く。

 だが、星は複雑な気持ちだった。物が感謝しているなんて、今までに誰にも言われたことがない。
 それに星は剣を守ったのではなく。エミルとの関係が壊れるのが嫌だったから、襲われた時も必死に手放さなかっただけなのだ。
 
 エミルは星の手に剣をしっかりと握らせると、にっこりと微笑んで星の頭を撫でた。

 星は自分の手に握られたその剣をじっと見つめていた。

「そういえば。エリーが星ちゃんと一緒に居てくれたのね。ありがとう。助かったわ!」
「うん! 会うのも久しぶりだよね! エミル姉と会うのは、ギルド解散して以来だよ~」

 エミルがエリエにお礼を言うと、エリエは待ってましたと言わんばかりにエミルに抱き付く。

 嬉しそうにエミルの胸に頬ずりしているエリエに、エミルも慣れた様子で微笑みを浮かべ、彼女の頭を撫でている。
 その時、頭を掻きながらバツが悪そうに、デイビッドが2人に声を掛ける。

「いや、お取り込み中悪いんだけど……こうして昔の仲間が3人揃ったんだし、どうだろう。今後の事をじっくりと話し合わないか?」

 デイビッドのその提案に、2人は真剣な面持ちで首を縦に振った。

 4人はエミルの部屋に集まり、神妙な面持ちでテーブルを囲んでいる。もちろん。星もその中に混じって話を聞くことになったのだが……。

「まず。俺が集めた情報によると、死亡したら復活できないというのは、結構確かな情報らしい……俺も聞いた話だから実際に目で見たわけじゃない。だから、断言はできないが、ログアウトできなくなった直後、パーティーを編成しての戦闘中に、死亡したプレイヤーがいた。その仲間の話によると、不思議な事に死亡したプレイヤーの名前が、パーティーのメンバー内から消えていたという話だ……おそらくは死亡したと同時に、ゲーム内からもそのプレイヤー情報も【Delete】されたと考えるのが普通だろうな……」

 重苦しい雰囲気の中、深刻そうな表情で話をするデイビッド。
 
「ちょっと待って! それは少し性急過ぎる解釈だと思うわ。そのプレイヤーがただ死んでしまったのを申し訳ないと思って、パーティーから抜けただけという可能性も捨てきれなくないかしら?」

 デイビッドの話を聞いてたエミルが透かさず、言葉を返した。

 2人は真剣な面持ちで互いの目を見合うとしばらくして、きちんと椅子に座っていたデイビッドが脱力する。
 その言葉に反論するわけでもなくデイビッドは「そうなんだよなぁー」と顎の下に手を当て一瞬考え込んだが。

「まあ、結局のところ。全て憶測でしかない。実際に目の前で誰かが死亡したわけじゃないし。俺も正しい事は分からないわけだしな。でも、だからといって事実を確認する方法がない以上はどうしようも――」

 デイビッドが話をしている最中に、今まで黙っていたエリエが口を挟んだ。

「――だから、デビッド先輩が体を張ればいいってさっきから言ってるのに~」

 笑いながら今の状況を楽観視しているエリエを、むっとした様子のエミルがたしなめる。

「こら! エリーもそんな簡単に判断していい事じゃないのくらい分かってるでしょ? そういう事は言うものじゃありません!」

 エミルに叱られ、エリエはしょんぼりしながら「はーい」と返事をしてつまらなそうに口を尖らせている。

 3人のやり取りを見ていた星が突然手を上げ、掻き消えそうな声で言った。

「あの……それじゃー、私が試しましょうか?」

 その場にいた全員が同時に星の顔を見た。

 星は何か間違った事を言ったのではないかと、きょろきょろと3人の顔色を窺う。すると、エミルは呆れた様子で大きくため息をつくと。

「……あのね、星ちゃん。そんなのダメに決まってるでしょ? 本当に死ぬかもしれないのに……誰が試すかとかじゃないのよ?」
「で、でも……試してみないと、本当かどうか分からないですし……」

 エミルに怒られても納得できない星は、小さな声でそう反論して静かに俯いてしまう。
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