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家出9
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朝から甘い物を食べて気持ちが悪くなったのか、顔色が非常に悪い。
そんな星を心配してか、エリエが水を持ってテントの中へ入ってきた。
「大丈夫? 凄く顔色が悪いけど……」
「ありがとうございます。ちょっと、気分が優れなくて……でも、少し休めばよくなると思うんですけど……」
星はそういうと体を起こしてエリエが持ってきた水を飲んで、また横になる。
「気持悪いって言っても。私、回復系のアイテムとか持ってないし……あ、そうだ!」
そういうと、エリエはコマンドの中から茶色い紙袋を取り出す。それを見た星は、またお菓子でも取り出すのではないかと心配になる。
エリエは「ちょっと待ってて」と言い残し、その紙袋を持って鍋の方へと駆けていく。数分後。エリエが水筒を持って戻ってきた。
「効くかは分からないけど、これを飲んでみて」
手に持っていた水筒の中から、エミルは茶色いお茶のようなものをティーカップに注ぎ入れて星に手渡した。
星はカップに鼻を近づけ匂いを嗅いでみると、カップの中の液体からはほのかにレモンのような香りが漂う。
「……これは?」
「レモンティーだよ。気持ちが悪い時には、こういうのが効果あるってある人から聞いた事があるんだ~。まあ、ゲームだからどうかは分からないけど、気休め程度にはなるんじゃないかな?」
「へぇ~」
星はそれを聞いて、安心した様にカップに口を付けて飲んでみる。
レモンの香りと酸味で口の中がさっぱりする。心なしか胃のむかつきも抑えられた気がする。
「エリエさん。ありがとうございます。少し気分が楽になった気がします……」
少し顔色が良くなった星の様子に、エリエもにっこりと微笑みを浮かべ。
「そう。なら良かった! でも、あまり飲み過ぎると逆効果だからね。ゲームの中で食べた物は先に入った物から遅い順で3種類の味が大中小って変化するの。お水を飲めばリセットするんだけどね! まあ、一度気持ち悪くなると水を飲んだくらいじゃ効果はないけど……今は効果があったくらいで止めておいた方がいいよ?」
「はい!」
星は返事をすると「もう少し横になっていた方がいいよ」というエリエの言葉に甘え少し横になった。
このゲームでは味覚は敏感に調整されている。それは様々な物をゲーム内で楽しめるという観光要素も強めに押しているからだ。
その中でも【ゲーム内の味覚再現システム】と呼ばれる味覚を再現するシステムは、精巧に作り込まれていることでも有名だ。
人は本来。情報の殆どを視覚に頼っている為、見た目と味が少しでも異なると違和感を感じてしまう。
例えるならば、見た目はステーキなのに味が明らかに豆腐だった場合。最初からステーキを食べようと思っていた者は必ず不満を感じるだろう。
しかし、何の情報もなく目隠しをしてそれ食べさせられれば、全く不満を感じることはない。
それが、視覚情報と味覚の関係性だ――その誤認識を少しでも少なくしようと、開発当初から試行錯誤を進め。やっとの思いで【FREEDOM】の運営はこの味覚再現システムを構築させた。
だが、勿論。人が作り出したシステムである以上、自然に生み出された人と同様とまではいかない。
その結果が今の星の症状とも言っていい。
再現されたシステムは個々を忠実に再現したことで、複数の食べ物を一緒に摂取することを想定していなかった。
それが食べ合わせというかたちで、皮肉にも互いの味を主張しすぎて違和感を増幅させてしまうのだ。
慣れれば、水でリセットして次の食べ物を食べるということが習慣化するが、星はまとめていっぺんに様々な食べ物を口にしたため、脳が不快感を露わにしたということだ――。
そんな星を心配してか、エリエが水を持ってテントの中へ入ってきた。
「大丈夫? 凄く顔色が悪いけど……」
「ありがとうございます。ちょっと、気分が優れなくて……でも、少し休めばよくなると思うんですけど……」
星はそういうと体を起こしてエリエが持ってきた水を飲んで、また横になる。
「気持悪いって言っても。私、回復系のアイテムとか持ってないし……あ、そうだ!」
そういうと、エリエはコマンドの中から茶色い紙袋を取り出す。それを見た星は、またお菓子でも取り出すのではないかと心配になる。
エリエは「ちょっと待ってて」と言い残し、その紙袋を持って鍋の方へと駆けていく。数分後。エリエが水筒を持って戻ってきた。
「効くかは分からないけど、これを飲んでみて」
手に持っていた水筒の中から、エミルは茶色いお茶のようなものをティーカップに注ぎ入れて星に手渡した。
星はカップに鼻を近づけ匂いを嗅いでみると、カップの中の液体からはほのかにレモンのような香りが漂う。
「……これは?」
「レモンティーだよ。気持ちが悪い時には、こういうのが効果あるってある人から聞いた事があるんだ~。まあ、ゲームだからどうかは分からないけど、気休め程度にはなるんじゃないかな?」
「へぇ~」
星はそれを聞いて、安心した様にカップに口を付けて飲んでみる。
レモンの香りと酸味で口の中がさっぱりする。心なしか胃のむかつきも抑えられた気がする。
「エリエさん。ありがとうございます。少し気分が楽になった気がします……」
少し顔色が良くなった星の様子に、エリエもにっこりと微笑みを浮かべ。
「そう。なら良かった! でも、あまり飲み過ぎると逆効果だからね。ゲームの中で食べた物は先に入った物から遅い順で3種類の味が大中小って変化するの。お水を飲めばリセットするんだけどね! まあ、一度気持ち悪くなると水を飲んだくらいじゃ効果はないけど……今は効果があったくらいで止めておいた方がいいよ?」
「はい!」
星は返事をすると「もう少し横になっていた方がいいよ」というエリエの言葉に甘え少し横になった。
このゲームでは味覚は敏感に調整されている。それは様々な物をゲーム内で楽しめるという観光要素も強めに押しているからだ。
その中でも【ゲーム内の味覚再現システム】と呼ばれる味覚を再現するシステムは、精巧に作り込まれていることでも有名だ。
人は本来。情報の殆どを視覚に頼っている為、見た目と味が少しでも異なると違和感を感じてしまう。
例えるならば、見た目はステーキなのに味が明らかに豆腐だった場合。最初からステーキを食べようと思っていた者は必ず不満を感じるだろう。
しかし、何の情報もなく目隠しをしてそれ食べさせられれば、全く不満を感じることはない。
それが、視覚情報と味覚の関係性だ――その誤認識を少しでも少なくしようと、開発当初から試行錯誤を進め。やっとの思いで【FREEDOM】の運営はこの味覚再現システムを構築させた。
だが、勿論。人が作り出したシステムである以上、自然に生み出された人と同様とまではいかない。
その結果が今の星の症状とも言っていい。
再現されたシステムは個々を忠実に再現したことで、複数の食べ物を一緒に摂取することを想定していなかった。
それが食べ合わせというかたちで、皮肉にも互いの味を主張しすぎて違和感を増幅させてしまうのだ。
慣れれば、水でリセットして次の食べ物を食べるということが習慣化するが、星はまとめていっぺんに様々な食べ物を口にしたため、脳が不快感を露わにしたということだ――。
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