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家出3
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「な、なに!?」
星が驚いて矢の飛んできた方を見ると、鎧を身にまとったエルフの男が立っていた。
それを見て『きっと近くに居たから誤って矢が当たったんだろう……』とそう思った星はその場を離れ、別の場所でまたラビットと戦闘を始める。
先程の戦いでコツを掴んだのか、今度はラビットのHPを早く削れた。そして、最後の一撃を打ち込もうと地面を蹴ったその時。再び矢が飛んできて、交戦していた目の前の敵に的確に直撃した。
「うぅぅ……また……」
弓の飛んできた方向を向くと、やはり先程と同じ男が弓を構えた状態で立っていた。
少し不服だったが、ぐっと堪えた星は再び獲物を探し始める。
だが、それから2回戦いその両方の【Finish】が鎧を着た男に取られ、さすがに頭にきた星が抗議する。
「どうして私の狙ってるのを攻撃するんですか!? 他にもたくさんいるじゃないですか!!」
すると、男の口から飛び出したのは星が求めていたものとは程遠いものだった。
男は悪びれる様子もなく、小馬鹿にしたようなしゃべり方で言った。
「おいおい。言い掛かりはやめろよ。なら、このフィールドにいるモンスター全てに、お前の名前でも書いてあるって言うのか?」
「そ、それは……」
男にそう言われ、星は思わず口をつぐんだ。
その男の言葉は理不尽極まりないものだが、ゲームを運営している場所に報告しようにも、内部の機関は使えず、ログアウトできなければ通報するという手段は取れない。
仕方なく狩りを諦め、星はぼとぼと狩場を後にするしかなかった。
ログアウトができなくなって2日。レベルの低い狩場はどこもこんな状態だ――。
だが、それも無理はないだろう。HPバーが『0』になれば現実世界での死に繋がると噂が流れ、プレイヤーの殆どがそれを事実と考えていたのだから仕方がない。
だが、ここまで治安の悪化が進んでいるのは、外部との交信が途絶えたのが最も大きい要因と言えるだろう。
本来ならルールというものの中、管理された自由の範囲内で楽しむのが当然なのだが、ルールも法もなくなれば、人は自由という名目で自分の思い通りに動物的な欲求を満たす為に動くということなのだろう。
フリーダムの中ではある程度のお金があれば、当面は安全な街の中で生活はできる。
街には宿屋もあるし、食べ物専門の屋台も数多くある。また、ゲーム初心者でもマイハウスがあるのだから元より家には困らない。
後は、食料を買うだけのお金があれば生活することができる。あくまで『この世界で生活することだけ』だが……。
しかし、マイハウスではHPと疲労は回復できるが傷が癒せないのが欠点だ――宿屋に泊まれば、負傷した傷やHPも回復できる。狩りをするなら、お金を払ってでも宿屋に泊まるのが『リスク回避』という点では正しい選択と言えるだろう。
負傷があっても日常生活には支障はない。少し体に傷ができる程度だし、それが歴戦の勇者の様でかっこいいとまで思える。
だが、負傷した状態だと受けた戦闘ダメージが大きくなってしまうのだ――ゲームの状態ならまだしも。今の現状では、とてもリスクの大きい行為なのである。
星は近くに立っていた木にも凭れ掛かるように座ると、コマンドで所持金を確認する。
「はぁ~」
所持金を確認した星は大きなため息をついた。
それもそのはずだ。星の現在の所持金は『0』だ。ゲーム開始時には500ユールのお金が財布に入っていたのだが、今朝エミルに貰ったお金と一緒になって城を出てくる時にその全て置いてきてしまっていた。
戦闘をしたせいか所持金を見て落胆したせいか、星のお腹が『ぐぅぅぅ~』と音を立てて鳴った。
星が空を見ると、さっきまで天高く昇っていたはずの太陽も、すでに沈みかけてきている。
考えてみれば、この世界に来てまだトーストとホットミルクしか口にしていない。
「お腹すいたなぁ……」
星はぼそっと呟くと、暗い表情のまま膝を抱えた。今更ながらに、自分の無力さを痛感する。
普段なら冷蔵庫に母親の作ってくれた料理が入っていて、それを温めれば良かった。だが、ここではモンスターを倒し少量のお金を稼ぐか、食材を採集するかしか食料を手に入れる方法はない。
そう。自立しなければ、この世界では生きていけない。例えそれが子供であっても初心者で基礎能力が同じであれば、それは大人のプレイヤーとなんら変わらない存在なのだ。
加えてこの情況下では、手を差し伸べてくれるのは物好きか、利用しようとしてくる者しかいない。
プレイした時点で何が起きても自己責任、それが子供であっても例外ではない。基礎能力が一緒で境遇が同じなら人は皆、保身的な意見を持っている者ばかりだ――昼間にあった男達の様に星に利用価値かあれが近付いてくることもあるが、彼等の狙っていた『竜王の剣』はすでにエミルに返している。
星が驚いて矢の飛んできた方を見ると、鎧を身にまとったエルフの男が立っていた。
それを見て『きっと近くに居たから誤って矢が当たったんだろう……』とそう思った星はその場を離れ、別の場所でまたラビットと戦闘を始める。
先程の戦いでコツを掴んだのか、今度はラビットのHPを早く削れた。そして、最後の一撃を打ち込もうと地面を蹴ったその時。再び矢が飛んできて、交戦していた目の前の敵に的確に直撃した。
「うぅぅ……また……」
弓の飛んできた方向を向くと、やはり先程と同じ男が弓を構えた状態で立っていた。
少し不服だったが、ぐっと堪えた星は再び獲物を探し始める。
だが、それから2回戦いその両方の【Finish】が鎧を着た男に取られ、さすがに頭にきた星が抗議する。
「どうして私の狙ってるのを攻撃するんですか!? 他にもたくさんいるじゃないですか!!」
すると、男の口から飛び出したのは星が求めていたものとは程遠いものだった。
男は悪びれる様子もなく、小馬鹿にしたようなしゃべり方で言った。
「おいおい。言い掛かりはやめろよ。なら、このフィールドにいるモンスター全てに、お前の名前でも書いてあるって言うのか?」
「そ、それは……」
男にそう言われ、星は思わず口をつぐんだ。
その男の言葉は理不尽極まりないものだが、ゲームを運営している場所に報告しようにも、内部の機関は使えず、ログアウトできなければ通報するという手段は取れない。
仕方なく狩りを諦め、星はぼとぼと狩場を後にするしかなかった。
ログアウトができなくなって2日。レベルの低い狩場はどこもこんな状態だ――。
だが、それも無理はないだろう。HPバーが『0』になれば現実世界での死に繋がると噂が流れ、プレイヤーの殆どがそれを事実と考えていたのだから仕方がない。
だが、ここまで治安の悪化が進んでいるのは、外部との交信が途絶えたのが最も大きい要因と言えるだろう。
本来ならルールというものの中、管理された自由の範囲内で楽しむのが当然なのだが、ルールも法もなくなれば、人は自由という名目で自分の思い通りに動物的な欲求を満たす為に動くということなのだろう。
フリーダムの中ではある程度のお金があれば、当面は安全な街の中で生活はできる。
街には宿屋もあるし、食べ物専門の屋台も数多くある。また、ゲーム初心者でもマイハウスがあるのだから元より家には困らない。
後は、食料を買うだけのお金があれば生活することができる。あくまで『この世界で生活することだけ』だが……。
しかし、マイハウスではHPと疲労は回復できるが傷が癒せないのが欠点だ――宿屋に泊まれば、負傷した傷やHPも回復できる。狩りをするなら、お金を払ってでも宿屋に泊まるのが『リスク回避』という点では正しい選択と言えるだろう。
負傷があっても日常生活には支障はない。少し体に傷ができる程度だし、それが歴戦の勇者の様でかっこいいとまで思える。
だが、負傷した状態だと受けた戦闘ダメージが大きくなってしまうのだ――ゲームの状態ならまだしも。今の現状では、とてもリスクの大きい行為なのである。
星は近くに立っていた木にも凭れ掛かるように座ると、コマンドで所持金を確認する。
「はぁ~」
所持金を確認した星は大きなため息をついた。
それもそのはずだ。星の現在の所持金は『0』だ。ゲーム開始時には500ユールのお金が財布に入っていたのだが、今朝エミルに貰ったお金と一緒になって城を出てくる時にその全て置いてきてしまっていた。
戦闘をしたせいか所持金を見て落胆したせいか、星のお腹が『ぐぅぅぅ~』と音を立てて鳴った。
星が空を見ると、さっきまで天高く昇っていたはずの太陽も、すでに沈みかけてきている。
考えてみれば、この世界に来てまだトーストとホットミルクしか口にしていない。
「お腹すいたなぁ……」
星はぼそっと呟くと、暗い表情のまま膝を抱えた。今更ながらに、自分の無力さを痛感する。
普段なら冷蔵庫に母親の作ってくれた料理が入っていて、それを温めれば良かった。だが、ここではモンスターを倒し少量のお金を稼ぐか、食材を採集するかしか食料を手に入れる方法はない。
そう。自立しなければ、この世界では生きていけない。例えそれが子供であっても初心者で基礎能力が同じであれば、それは大人のプレイヤーとなんら変わらない存在なのだ。
加えてこの情況下では、手を差し伸べてくれるのは物好きか、利用しようとしてくる者しかいない。
プレイした時点で何が起きても自己責任、それが子供であっても例外ではない。基礎能力が一緒で境遇が同じなら人は皆、保身的な意見を持っている者ばかりだ――昼間にあった男達の様に星に利用価値かあれが近付いてくることもあるが、彼等の狙っていた『竜王の剣』はすでにエミルに返している。
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