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ダークブレット6
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エミルは男との距離を素早く詰めると、男との戦闘の中で彼の右足を軽く傷つけ、素早く距離を取った。
彼女としては、星の右足を傷付けたことへの軽い仕返し……っと言ったところなのだろう。
男は一瞬体勢を崩したが、すぐに立て直し悔しそうに歯を噛み締めエミルを睨む。
「――くっ! やりやがったな。このくそ女!」
そう叫んだ男を余所に、エミルは巻物を手に持つと次のドラゴンを召喚する。
「特別に私のとっておきを見せてあげる! いらっしゃい。リントヴルム!!」
エミルがそう言って笛を吹くと煙と共にとても巨大なドラゴンが現れた。
その体長は軽く40m以上あり、太陽をも覆い隠すほどの大きさで、体全体を白くキラキラと光り輝く鱗に覆われていた。
ドラゴンの全身から漂わせる威風堂々たる姿には、どこか神々しいものを感じ取れるほどだ――。
天に向かってリントヴルムが咆哮を上げると、辺りの廃墟と化した建物と大気を大きく震わせた。
「そ、そんな……バカな……嘘だろ!?」
その姿に恐れ慄き、剣を持っている男の顔から血の気が引いていき、完全に戦意を失った男は剣を投げ捨てた。
そんな相棒の姿に、エルフの男が「どうした?」と不思議そうに尋ねた。
男は震える体を必死に抑え、困惑した表情を浮かべる仲間にその重い口を開く。
「あの女は……ドラゴン使いのエミルだ!」
「ドラゴン使いのエミル?」
恐れ慄いている男とは対照的に、エルフの男はなぜ相方が怯えているのかが分からないのか、不思議そうに首を傾げている。
「お前は知らないかもしれないが、あいつは――いや、あいつらは……フリーダムの中のダンジョンでもクリア不可能と言われた。【悪魔の山――デーモンズマウンテン】をクリアした伝説のギルドのメンバーの1人。しかも、大会連続優勝記録を更新し続けている。その通り名は『白い閃光』だ!!」
「なに!? 『白い閃光』だと!!」
それを聞いたエルフの男は慌てて、その場を立ち去ろうと走り出す。
直ぐ様その後を追い掛けて走り出す男、無防備にも背中を見せつつ彼等は全力疾走する。
しかし、そんな2人をエミルが逃すわけもなく――。
「――リントヴルム!」
エミルの指示によって、白いドラゴンが男達の行く手を阻む。
そうエミルが『白い閃光』と呼ばれている理由は、白いドラゴンを使っているからだけではない。
「逃げようたってそうはいかないわよ! PVPの利点――あなた達は嫌というほど知ってるわよね?」
竜の背中に乗ったエミルがそう言って悪意に満ちた表情でにっこりと微笑むのを見て、男達はガクガクと震え出した。
そう。その理由は彼女がリントヴルムを出して戦う時は、決まって出す技があるのだ――。
「――放て! リントヴルム全てを灰に変えよ! ノヴァフレア!!」
エミルの掛け声と共に、白いドラゴンが大きな口を開けた次の瞬間、白い炎が勢い良く逃げる2人に容赦なく噴射された。
――ぎゃあああああああああああああああッ!!
炎に包まれた2人の男はけたたましい叫び声を上げたかと思うと、男達は真っ黒に焦げてその場に崩れ落ちた。
彼女が『白い閃光』と呼ばれる由縁は、この技の要因が大きいと言えるだろう。
エミルは慌てて竜の背中から飛び降りると、星の元へ駆け寄って行く。
「星ちゃん。大丈夫――そうじゃないわね……」
エミルは星を抱き起こしたが、星は苦しそうに肩で息をしていて顔色も悪く、ぐったりしている。
エミルが矢の刺さっている右足を見ると、傷口からの出血などはないものの。星の表情がその苦痛の強烈さを物語っていた。
(とりあえず。この矢を抜かないと……)
エミルはちらっと刺さっている矢に目をやり。星の体を自分に凭れ掛からせる様に抱くと、徐ろに手を伸ばし刺さっている矢を手で握る。
次に何をするかを感じ取ったのか、星は不安そうな瞳でエミルの顔を見た。
「星ちゃん。凄く痛いと思うけど、ちょっとだけ我慢してね……」
「はぁ……はぁ……はぁ……はい」
エミルが星の耳元で小さな声で告げると、星は返事をして無理に笑って見せた。強がってはいるが、星の表情からはその矢が起こす激痛が垣間見えている。
剣で鏃を素早く切り落とすと、星の足から矢をゆっくりと抜きにかかった。
「――うぅッ!! あああああああああああああああッ!!」
その瞬間、激痛のあまりに星が大声で悲鳴を上げた。悲鳴を聞いたエミルは、慌てて矢から手を放す。
そして、眉をひそめながら星の顔を見つめる。
「ご、ごめんなさい! ……痛かった?」
「はぁ……はぁ……いえ……ひと思いに……ぬいて……ください……」
「で、でも……」
額に大粒の汗を掻き、顔を青白くしながら告げた星の申し出に、エミルが困惑した様子で渋い顔をする。
星は「大丈夫ですから」と微笑むと覚悟を決めたようにエミルの体にしっかりとしがみつく。
自分の体にしっかりとしがみついて、強く瞼を閉じている星の姿にエミルも覚悟を決めたのか、星の太股に刺さっている矢を掴んだ。
その瞬間、星の顔が苦痛に歪む。
「うあッ! あうぅぅぅ……」
歯を食いしばり、必死に痛みに耐えている星。
エミルが辛そうにな星に声を掛けようと口を開くと「大丈夫ですから……」と呟き、星はにこっとぎこちなく笑う。
しかし、その言葉とは裏腹に、星の体は小刻みに震え、エミルの体を痛いくらい締め付けてくる。
その様子からは、とても大丈夫そうには見えないのだが、おそらくエミルを心配させないようにという彼女なりの配慮なのだろうが、それが余計に痛々しく感じる。
彼女としては、星の右足を傷付けたことへの軽い仕返し……っと言ったところなのだろう。
男は一瞬体勢を崩したが、すぐに立て直し悔しそうに歯を噛み締めエミルを睨む。
「――くっ! やりやがったな。このくそ女!」
そう叫んだ男を余所に、エミルは巻物を手に持つと次のドラゴンを召喚する。
「特別に私のとっておきを見せてあげる! いらっしゃい。リントヴルム!!」
エミルがそう言って笛を吹くと煙と共にとても巨大なドラゴンが現れた。
その体長は軽く40m以上あり、太陽をも覆い隠すほどの大きさで、体全体を白くキラキラと光り輝く鱗に覆われていた。
ドラゴンの全身から漂わせる威風堂々たる姿には、どこか神々しいものを感じ取れるほどだ――。
天に向かってリントヴルムが咆哮を上げると、辺りの廃墟と化した建物と大気を大きく震わせた。
「そ、そんな……バカな……嘘だろ!?」
その姿に恐れ慄き、剣を持っている男の顔から血の気が引いていき、完全に戦意を失った男は剣を投げ捨てた。
そんな相棒の姿に、エルフの男が「どうした?」と不思議そうに尋ねた。
男は震える体を必死に抑え、困惑した表情を浮かべる仲間にその重い口を開く。
「あの女は……ドラゴン使いのエミルだ!」
「ドラゴン使いのエミル?」
恐れ慄いている男とは対照的に、エルフの男はなぜ相方が怯えているのかが分からないのか、不思議そうに首を傾げている。
「お前は知らないかもしれないが、あいつは――いや、あいつらは……フリーダムの中のダンジョンでもクリア不可能と言われた。【悪魔の山――デーモンズマウンテン】をクリアした伝説のギルドのメンバーの1人。しかも、大会連続優勝記録を更新し続けている。その通り名は『白い閃光』だ!!」
「なに!? 『白い閃光』だと!!」
それを聞いたエルフの男は慌てて、その場を立ち去ろうと走り出す。
直ぐ様その後を追い掛けて走り出す男、無防備にも背中を見せつつ彼等は全力疾走する。
しかし、そんな2人をエミルが逃すわけもなく――。
「――リントヴルム!」
エミルの指示によって、白いドラゴンが男達の行く手を阻む。
そうエミルが『白い閃光』と呼ばれている理由は、白いドラゴンを使っているからだけではない。
「逃げようたってそうはいかないわよ! PVPの利点――あなた達は嫌というほど知ってるわよね?」
竜の背中に乗ったエミルがそう言って悪意に満ちた表情でにっこりと微笑むのを見て、男達はガクガクと震え出した。
そう。その理由は彼女がリントヴルムを出して戦う時は、決まって出す技があるのだ――。
「――放て! リントヴルム全てを灰に変えよ! ノヴァフレア!!」
エミルの掛け声と共に、白いドラゴンが大きな口を開けた次の瞬間、白い炎が勢い良く逃げる2人に容赦なく噴射された。
――ぎゃあああああああああああああああッ!!
炎に包まれた2人の男はけたたましい叫び声を上げたかと思うと、男達は真っ黒に焦げてその場に崩れ落ちた。
彼女が『白い閃光』と呼ばれる由縁は、この技の要因が大きいと言えるだろう。
エミルは慌てて竜の背中から飛び降りると、星の元へ駆け寄って行く。
「星ちゃん。大丈夫――そうじゃないわね……」
エミルは星を抱き起こしたが、星は苦しそうに肩で息をしていて顔色も悪く、ぐったりしている。
エミルが矢の刺さっている右足を見ると、傷口からの出血などはないものの。星の表情がその苦痛の強烈さを物語っていた。
(とりあえず。この矢を抜かないと……)
エミルはちらっと刺さっている矢に目をやり。星の体を自分に凭れ掛からせる様に抱くと、徐ろに手を伸ばし刺さっている矢を手で握る。
次に何をするかを感じ取ったのか、星は不安そうな瞳でエミルの顔を見た。
「星ちゃん。凄く痛いと思うけど、ちょっとだけ我慢してね……」
「はぁ……はぁ……はぁ……はい」
エミルが星の耳元で小さな声で告げると、星は返事をして無理に笑って見せた。強がってはいるが、星の表情からはその矢が起こす激痛が垣間見えている。
剣で鏃を素早く切り落とすと、星の足から矢をゆっくりと抜きにかかった。
「――うぅッ!! あああああああああああああああッ!!」
その瞬間、激痛のあまりに星が大声で悲鳴を上げた。悲鳴を聞いたエミルは、慌てて矢から手を放す。
そして、眉をひそめながら星の顔を見つめる。
「ご、ごめんなさい! ……痛かった?」
「はぁ……はぁ……いえ……ひと思いに……ぬいて……ください……」
「で、でも……」
額に大粒の汗を掻き、顔を青白くしながら告げた星の申し出に、エミルが困惑した様子で渋い顔をする。
星は「大丈夫ですから」と微笑むと覚悟を決めたようにエミルの体にしっかりとしがみつく。
自分の体にしっかりとしがみついて、強く瞼を閉じている星の姿にエミルも覚悟を決めたのか、星の太股に刺さっている矢を掴んだ。
その瞬間、星の顔が苦痛に歪む。
「うあッ! あうぅぅぅ……」
歯を食いしばり、必死に痛みに耐えている星。
エミルが辛そうにな星に声を掛けようと口を開くと「大丈夫ですから……」と呟き、星はにこっとぎこちなく笑う。
しかし、その言葉とは裏腹に、星の体は小刻みに震え、エミルの体を痛いくらい締め付けてくる。
その様子からは、とても大丈夫そうには見えないのだが、おそらくエミルを心配させないようにという彼女なりの配慮なのだろうが、それが余計に痛々しく感じる。
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