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ログアウト不可7
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そのコップの中の白い液体はしっかりとミルクの味がする。だが、湯気がもくもくと上がっている割にはそれほど熱くはない。
そこでふと、ある疑問が彼女の頭の中に浮かんだ――。
「あの、エミルさん。これってゲームですよね?」
「うん。そうよ」
「料理って作れるんですか?」
不思議そうに首を傾げながら、自分の手の中にあるカップを見つめている。すると、エミルは得意げに人差し指を立てて言葉を続けた。
「もちろん! 道具と具材があれば、何でも作れるわよ? 見ててね」
自信満々に言い放ったエミルがキッチンへと向う。
星はキッチンでガチャガチャと音を立て、忙しなく動いているエミルの姿を興味深く見守っていた。
準備を終えたのか、キッチンに立つエミルがオーブンの前でコマンドを操作し始めた。
(エミルさんは料理が得意なんだろうなぁ~)
そう思いながら、再びコップに口を付けてホットミルクを飲み始めようとしたその時……。
――ドッカーン!!
突如としてエミルが使っていたオーブンが大爆発し、部屋の中が黒い煙に包まれた。
星がモクモクと黒い煙を上げているキッチンの方を見つめ、不安そうな表情をしていると、薄れる煙の中に人影が……。
「ゴホッゴホッ……」
「もう、どうしてクッキー焼こうとして爆発するのよ! きっとこのオーブンが悪いのね!」
煙の中からエミルが激昂しながら姿を現す。しかし、彼女の体には火傷の痕もなく、被害は服が少し焦げているくらいだった。
エミルのレベルはこの世界の上限の100。それが爆発でも無傷という驚異的な形で表れているのだろう。
「…………」
椅子に座っていた星は目の前に真っ黒く焦げたクッキーを置かれ、星はそれを見つめ、どうしたらいいのか分からずに眉をひそめてエミルの顔を見上げた。
困った様子で自分を見上げている星に、エミルは苦笑いしながら頭を掻いて誤魔化す。
「……さすがにこれは食べれないわよね」
「――えっ? あ、そうですね……」
星はそう言って苦笑いしてると、急に眠気が襲ってきて無意識に大きなあくびが出た。
大きく開けた口を両手で覆うと、少し恥ずかしそうに「すみません」と小声で星が謝る。
そんな星にエミルは微笑みを浮かべ、首を横に振る。そして、思い出した様に言った。
「そういえば、星ちゃん。もう眠いんでしょ? 早く寝た方がいいわね」
エミルはそう言って指で窓を差した。
星が眠そうに擦った目を窓に向けると、もう遠くの方から朝日が差し始めている。
だが、見ただけで星は一向に席を立とうとしない。
見兼ねたエミルがそんな星の体を軽々と持ち上げると、エミルは隣の部屋のベッドに向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっと。エミルさん!?」
星はその突然の行動に驚き、下ろして欲しいと言わんばかりに身をよじっている。
エミルは落ちそうになる星の体を抱え直すと。
「ん? だって、もう自分の足でベッドまでいくの大変でしょ?」
自分の腕の中でもがいている星に視線を落としたエミルが、首を傾げながら尋ねた。
星は少し口を尖らせながら反論する。
「そ、そんなことないですけど……」
だが、正直。もう椅子の上で夢の中に落ちそうだったので、内心は少しほっとしている自分もいた。
エミルに抱えられた星は、隣の部屋のベッドの上に腰を下ろした。
「ふかふかだぁ……」
星はうつ伏せになり小さな声で呟くと、思わず布団に顔を埋める。
すると、急に安堵感からか星の瞼は重くなりそのまま意識を失ってしまった。
そんな星を見てエミルが「ふふっ」と笑みを溢す。
「もう、結構前から限界だったくせに……無理しちゃって……おやすみなさい」
エミルはそう耳元でささやくと、星の黒くて長い髪を撫でながら優しく微笑んだ。
そこでふと、ある疑問が彼女の頭の中に浮かんだ――。
「あの、エミルさん。これってゲームですよね?」
「うん。そうよ」
「料理って作れるんですか?」
不思議そうに首を傾げながら、自分の手の中にあるカップを見つめている。すると、エミルは得意げに人差し指を立てて言葉を続けた。
「もちろん! 道具と具材があれば、何でも作れるわよ? 見ててね」
自信満々に言い放ったエミルがキッチンへと向う。
星はキッチンでガチャガチャと音を立て、忙しなく動いているエミルの姿を興味深く見守っていた。
準備を終えたのか、キッチンに立つエミルがオーブンの前でコマンドを操作し始めた。
(エミルさんは料理が得意なんだろうなぁ~)
そう思いながら、再びコップに口を付けてホットミルクを飲み始めようとしたその時……。
――ドッカーン!!
突如としてエミルが使っていたオーブンが大爆発し、部屋の中が黒い煙に包まれた。
星がモクモクと黒い煙を上げているキッチンの方を見つめ、不安そうな表情をしていると、薄れる煙の中に人影が……。
「ゴホッゴホッ……」
「もう、どうしてクッキー焼こうとして爆発するのよ! きっとこのオーブンが悪いのね!」
煙の中からエミルが激昂しながら姿を現す。しかし、彼女の体には火傷の痕もなく、被害は服が少し焦げているくらいだった。
エミルのレベルはこの世界の上限の100。それが爆発でも無傷という驚異的な形で表れているのだろう。
「…………」
椅子に座っていた星は目の前に真っ黒く焦げたクッキーを置かれ、星はそれを見つめ、どうしたらいいのか分からずに眉をひそめてエミルの顔を見上げた。
困った様子で自分を見上げている星に、エミルは苦笑いしながら頭を掻いて誤魔化す。
「……さすがにこれは食べれないわよね」
「――えっ? あ、そうですね……」
星はそう言って苦笑いしてると、急に眠気が襲ってきて無意識に大きなあくびが出た。
大きく開けた口を両手で覆うと、少し恥ずかしそうに「すみません」と小声で星が謝る。
そんな星にエミルは微笑みを浮かべ、首を横に振る。そして、思い出した様に言った。
「そういえば、星ちゃん。もう眠いんでしょ? 早く寝た方がいいわね」
エミルはそう言って指で窓を差した。
星が眠そうに擦った目を窓に向けると、もう遠くの方から朝日が差し始めている。
だが、見ただけで星は一向に席を立とうとしない。
見兼ねたエミルがそんな星の体を軽々と持ち上げると、エミルは隣の部屋のベッドに向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっと。エミルさん!?」
星はその突然の行動に驚き、下ろして欲しいと言わんばかりに身をよじっている。
エミルは落ちそうになる星の体を抱え直すと。
「ん? だって、もう自分の足でベッドまでいくの大変でしょ?」
自分の腕の中でもがいている星に視線を落としたエミルが、首を傾げながら尋ねた。
星は少し口を尖らせながら反論する。
「そ、そんなことないですけど……」
だが、正直。もう椅子の上で夢の中に落ちそうだったので、内心は少しほっとしている自分もいた。
エミルに抱えられた星は、隣の部屋のベッドの上に腰を下ろした。
「ふかふかだぁ……」
星はうつ伏せになり小さな声で呟くと、思わず布団に顔を埋める。
すると、急に安堵感からか星の瞼は重くなりそのまま意識を失ってしまった。
そんな星を見てエミルが「ふふっ」と笑みを溢す。
「もう、結構前から限界だったくせに……無理しちゃって……おやすみなさい」
エミルはそう耳元でささやくと、星の黒くて長い髪を撫でながら優しく微笑んだ。
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