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ログアウト不可4

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「……ここは?」

 辺りをキョロキョロと見渡したが、漆黒の闇と森の木々に阻まれて遠くまでは見ることができない。

 エミルは辺りを興味津々で見ている星を尻目に、すたすたと歩き始めた。

(はぁ~。また歩くのか……)

 星は心の中で愚痴をこぼしながらも、エミルの後を追って歩く。

 森の中をただひたすら歩き続けていると、星は疲れからか強い睡魔に襲われる。
 それもそのはずだ。この頃には現実時間で深夜3時を回っていた。いつもの星ならとっくに夢の中に落ちている時間だ――。

 しかし、現実世界に戻れないこの状況では、そう贅沢も言ってられるわけもない。

 星はところどころ飛びそうな意識の中、ふらふらと体を揺らしながらも懸命に歩みを進めた。すると、ふと前を歩いていたエミルが足を止めて徐に振り返り。

「――星ちゃん。もう眠いんでしょ? ごめんなさいね。もう少しだから……」

 エミルの申し訳そうな表情からみて、彼女はだいぶ前から星の様子に気が付いていたのだろう。

「あっ! ちょっと待っててね」

 何かを思い出した様に彼女はコマンドを操作しながら、アイテム欄にある何かを探し始める。
 エミルが「あっ、あった!」と嬉しそうな声を上げたかと思うと、今度はエミルの目の前に古い巻物の様な物が現れた。

 星は眠い目を擦りながら、不思議そうにエミルの手に握られたその古びた巻物を見つめている。

「ちょっと危ないから離れててね?」
「は、はい……」

 エミルはそういうと、地面にその巻物を開いて置きその場を離れた。

「さあ、いらっしゃい。デザートドラゴン!」

 エミルがそう叫ぶと、巻物を巻いていた紐の先に付いていた笛を吹いた。
 すると、巻物から煙がもくもくと立ち昇り。次の瞬間、1匹の地竜が2人の目の前に現れた。

 その体は赤く背中にはごつごつとした角が4本生えていて、赤く分厚い表皮はとても硬く分厚い鉄版の様だ。

「星ちゃん。この子に乗って移動しましょう。見た目はあれだけど、乗り心地は意外といいわよ?」
「えっ? これに乗るんですか?」

 星は不思議そうに口から白い息を吐く赤い竜を見た。強がってはいるものの、その鋭い瞳をしたドラゴンに星の足は小刻みに震えている。

 エミルは「ええ、そうよ」と言うと、星の体を持ち上げ地竜の背に乗せた。星はおっかなびっくりしながらも、覚束ない足取りで地竜の背中をよじ登る。

 その地竜には下からは見えなかったが背中の中央には少し窪みがあり、そこに白いもこもこのクッションが置かれていた。

 おそらく。硬い表皮の上で乗り心地を良くする為にエミルが置いたものなのだろう。

「どう? 意外といい感じでしょ?」
「えっ? は、はい」

 エミルはまだ少し体を強張らせている星の隣に座ると、緊張を解そうとしてくれたのかにっこりと微笑む。

「さあ、レッツゴー!!」

 手綱を持ったエミルがバシンッ!と勢い良く手綱をしならせると、地竜は猛スピードで走り出した。

 それからしばらく地竜の背中に揺られていると、星はまた何とも言えない不安に襲われた。

「あ、あの……これから、どうなるんでしょう……?」

 星はその不安を率直にエミルにぶつけてみる。

 その質問に、難しい顔で唸るように考え込むエミル。
 
「――う~ん。私にも分からないけど、とりあえず。あの覆面男の言っていた現世の扉っていうのを探しにいかないとかな? あいつの話を全て鵜呑みにするわけじゃないけど……でも、このまま閉じ込められてるのに、何もしないわけにもいかないしね~」
「そうですね……なら、私はお留守番……ですね」

 それを聞いた星は少し残念そうに俯き加減に小さく呟く。

 だが、それも仕方ないと言えるだろう。エミルは最高のLv100。星とのレベル差は99――Lv1の星が一緒に行けないということは分かりきっていた。そしてあの覆面の男の話が本当に事実なら、この世界での死は現実世界での死にも繋がる。

 星としてもせっかく仲良くなったエミルと本当は一緒に行きたい。だが、HP15の星がエミルに付いていけばすぐに敵にやられてしまうだろう。足手まといになるのは、火を見るより明らかだった……。

「星ちゃん……」

 唇を噛み締め、悲しそうな顔で俯いている星に向かってエミルが優しく話し掛けた。

「星ちゃんは、早く帰りたくないの?」
「帰りたいです。でも、あの人の話だと、帰れるのは同じパーティーの人だけで、私は邪魔になるから……仕方ないですよね……」

 それを聞いて、エミルは呆れたように大きなため息をついた。

「はぁ~。星ちゃんってさ……今までわがままとか言った事ないでしょ?」
「……えっ?」

 エミルのその真に迫る発言に、星は困惑しながらも少し考え込んだ。

 確かに今までの人生の中で、わがままといえるわがままを言った記憶がない。それどころか、いつも人の顔色だけを窺って生きてきた気もする。だが、星にはそれが日常的になり過ぎて、しない方が不自然に感じるほどだ――。
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