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初めてのVRMMO7
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横を見ていたラットはピョンと一跳ねして向きを変えると、微動だにせずに低い姿勢を保って近付いてきた星を食い入るように見つめている。
(うぅ……急に戦えって言われても……)
星はそう思いながら、ちらっとエミルの顔を見ると、彼女は満面の笑みで親指を立てていた。
『この人を頼ったら駄目だ。自分でなんとかしないと……』そう考え、星は大きく息を吸うとゆっくりと吐き出した。
星は剣をラットに向かって構えた。だが、戦闘経験のない星にとって、目の前のラットとどう戦えばいいのか分からずに、お互いに睨み合った状態で止まっている。
っと、ラットの方から星目掛けて飛びかかってきた。
ゲーム内のモンスターにはそれぞれ独自のAIが組み込まれており、プレイヤーの動きに合わせるように設定されている。
今、目の前にいるラットも例外ではなく、そのAIで判断し行動しているのだ。
おそらく。相手プレイヤーが動きを止めると様子を見るように設定されていて、一定時間が経つとラット側からアクションを起こすようにプログラムされているのだろう。
まあ、そんな事をゲーム初心者の星が知る由もなく――。
「きゃああああああッ!」
急に襲いかかってきたラットに驚き叫び声を上げると、震える手で剣を構えたまま、恐怖から星は思わず目を瞑ってしまった。
その瞬間、星の前にエミルが割って入り、素早く抜いた剣でラットの体を真っ二つに切り裂く。
エミルは剣を再び鞘に戻し、星の方を振り返る。
「ふぅ~。最初からうまくいくとは思ってなかったけど……びっくりしても目を瞑っちゃダメでしょ?」
「ご、ごめんなさい……」
怒られたと感じた星は、がっくりと肩を落として謝ると、体を小さくしてしょげ返ってうつむいてしまう。
エミルはそれを見てため息をつくと、星の目線に合わせるように膝を折って優しい声で話す。
「まあ、剣を持ったのも初めての子に、急に戦えって言った私が悪かったわね。ごめんなさい星ちゃん」
「エミルさん……」
そう言ってにっこりと微笑むエミルに、ほっとしたのも束の間。次の彼女の一言に星は言葉を失った。
「とりあえず。今日は一匹倒せるようになるまで頑張ってみましょうか!」
「……えっ?」
彼女のまさかの発言に天国から地獄とはまさにこのことだと星は思った――。
いくら相手がLv1のラットと言えども、攻撃してきた瞬間のその勢いは初心者の星にはまるで猪のように感じるほどだ。
これはゲームだが、画面の中だけを動き回っているようなそんな生易しいものじゃない。
例え最弱モンスターのラットといえども、大きなウサギほどの大きさの生き物が、突然自分に襲い掛かってくるのだ。まだ小学生の女の子からしてみれば、ただただ恐怖でしかないだろう。
か弱い少女に向かって、目の前で微笑んでいる高校生くらいの青い髪の少女は、とりあえず一匹は倒そうと言うのだ――。
だが、星には目の前を闊歩しているラットを倒せる気が微塵も起きてこない。
「――無理……絶対に無理です!」
星は両手をぶんぶん振りながらその提案を拒否すると、その場にうずくまってしまう。
「無理って言われても……これは、そういうゲームだし……」
エミルもまた、地面に小さくうずくまってしまっている星の様子に困り果てている。
そんな状況がしばらく続き――。
考え込んだ末に、エミルが何かを思いついたように手を叩く。
「そうだ! あの方法があったじゃない!!」
「……えっ?」
そういうとエミルは星の顔を覗き込んでにっこりと微笑んだ。
星はそんな彼女の顔を見て、不安そうに眉をひそめた。
会話の後、2人は草原から少し離れた場所に移動した。
上機嫌で先を歩くエミルとは対照的に、後ろを歩く星の表情は暗い。
それもそうだろう。さっきから行き先を聞いても、全く教えてもらえないまま着いた場所は……。
(私、どうなるんだろう……)
星はそんなことを思いながら周りの風景から目を背けるように俯いていた。
彼女がそう思うのも無理はない。何の説明もなく連れて来られたその場所には、あちらこちらに十字に象られた石が所狭しと並べられていて、カラスの様な不気味な鳴き声も頻繁に聞こえてくる。
(ここってまさか……お墓じゃないよね?)
そんなことを考えながら、星はできるだけ周りは見ないように心掛けていた。すると、前を歩いていたエミルの足が止まり突如その場に立ち止まる。
先程までとはまるで別人のような不気味な笑みを浮かべ、エミルがボソボソ呟くように言った。
「――さあ、ここなら邪魔は入らないわね……」
「あの……邪魔って……なにの?」
星は震えた声で恐る恐るその言葉の意味を聞き返す。
不気味な笑みを浮かべる彼女の背中からは、危険な香りが漂い。本能的な勘が星の危機感知センサーにビリビリと信号を送ってくる。
「それは、このレベル差で戦ってるのを誰かに見られたらまずいからに決まってるでしょ? レベルは分からなくても、付けている装備であなたが初心者だって分かってしまうものね……」
小さな声でそう呟いたエミルは、振り返り徐ろに腰に差した剣を抜いて、ニヤリと不気味な笑みを浮かべている。
(うぅ……急に戦えって言われても……)
星はそう思いながら、ちらっとエミルの顔を見ると、彼女は満面の笑みで親指を立てていた。
『この人を頼ったら駄目だ。自分でなんとかしないと……』そう考え、星は大きく息を吸うとゆっくりと吐き出した。
星は剣をラットに向かって構えた。だが、戦闘経験のない星にとって、目の前のラットとどう戦えばいいのか分からずに、お互いに睨み合った状態で止まっている。
っと、ラットの方から星目掛けて飛びかかってきた。
ゲーム内のモンスターにはそれぞれ独自のAIが組み込まれており、プレイヤーの動きに合わせるように設定されている。
今、目の前にいるラットも例外ではなく、そのAIで判断し行動しているのだ。
おそらく。相手プレイヤーが動きを止めると様子を見るように設定されていて、一定時間が経つとラット側からアクションを起こすようにプログラムされているのだろう。
まあ、そんな事をゲーム初心者の星が知る由もなく――。
「きゃああああああッ!」
急に襲いかかってきたラットに驚き叫び声を上げると、震える手で剣を構えたまま、恐怖から星は思わず目を瞑ってしまった。
その瞬間、星の前にエミルが割って入り、素早く抜いた剣でラットの体を真っ二つに切り裂く。
エミルは剣を再び鞘に戻し、星の方を振り返る。
「ふぅ~。最初からうまくいくとは思ってなかったけど……びっくりしても目を瞑っちゃダメでしょ?」
「ご、ごめんなさい……」
怒られたと感じた星は、がっくりと肩を落として謝ると、体を小さくしてしょげ返ってうつむいてしまう。
エミルはそれを見てため息をつくと、星の目線に合わせるように膝を折って優しい声で話す。
「まあ、剣を持ったのも初めての子に、急に戦えって言った私が悪かったわね。ごめんなさい星ちゃん」
「エミルさん……」
そう言ってにっこりと微笑むエミルに、ほっとしたのも束の間。次の彼女の一言に星は言葉を失った。
「とりあえず。今日は一匹倒せるようになるまで頑張ってみましょうか!」
「……えっ?」
彼女のまさかの発言に天国から地獄とはまさにこのことだと星は思った――。
いくら相手がLv1のラットと言えども、攻撃してきた瞬間のその勢いは初心者の星にはまるで猪のように感じるほどだ。
これはゲームだが、画面の中だけを動き回っているようなそんな生易しいものじゃない。
例え最弱モンスターのラットといえども、大きなウサギほどの大きさの生き物が、突然自分に襲い掛かってくるのだ。まだ小学生の女の子からしてみれば、ただただ恐怖でしかないだろう。
か弱い少女に向かって、目の前で微笑んでいる高校生くらいの青い髪の少女は、とりあえず一匹は倒そうと言うのだ――。
だが、星には目の前を闊歩しているラットを倒せる気が微塵も起きてこない。
「――無理……絶対に無理です!」
星は両手をぶんぶん振りながらその提案を拒否すると、その場にうずくまってしまう。
「無理って言われても……これは、そういうゲームだし……」
エミルもまた、地面に小さくうずくまってしまっている星の様子に困り果てている。
そんな状況がしばらく続き――。
考え込んだ末に、エミルが何かを思いついたように手を叩く。
「そうだ! あの方法があったじゃない!!」
「……えっ?」
そういうとエミルは星の顔を覗き込んでにっこりと微笑んだ。
星はそんな彼女の顔を見て、不安そうに眉をひそめた。
会話の後、2人は草原から少し離れた場所に移動した。
上機嫌で先を歩くエミルとは対照的に、後ろを歩く星の表情は暗い。
それもそうだろう。さっきから行き先を聞いても、全く教えてもらえないまま着いた場所は……。
(私、どうなるんだろう……)
星はそんなことを思いながら周りの風景から目を背けるように俯いていた。
彼女がそう思うのも無理はない。何の説明もなく連れて来られたその場所には、あちらこちらに十字に象られた石が所狭しと並べられていて、カラスの様な不気味な鳴き声も頻繁に聞こえてくる。
(ここってまさか……お墓じゃないよね?)
そんなことを考えながら、星はできるだけ周りは見ないように心掛けていた。すると、前を歩いていたエミルの足が止まり突如その場に立ち止まる。
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「――さあ、ここなら邪魔は入らないわね……」
「あの……邪魔って……なにの?」
星は震えた声で恐る恐るその言葉の意味を聞き返す。
不気味な笑みを浮かべる彼女の背中からは、危険な香りが漂い。本能的な勘が星の危機感知センサーにビリビリと信号を送ってくる。
「それは、このレベル差で戦ってるのを誰かに見られたらまずいからに決まってるでしょ? レベルは分からなくても、付けている装備であなたが初心者だって分かってしまうものね……」
小さな声でそう呟いたエミルは、振り返り徐ろに腰に差した剣を抜いて、ニヤリと不気味な笑みを浮かべている。
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