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魔王襲来4

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 少年は剣を振り払うと、トライデントを弾いてレヴィの顔を掴む。

「ほう? 顔も体も良い……惜しいな。魔族なら我が飼って可愛がってやったものを」
「……もし、うちが魔族でも遠慮します」

 レヴィは少年の腕を掴んで不敵に笑うと背後から弾かれたトライデントが戻って来た。

 飛んで来たトライデントが背後から攻撃するが、振り返りざまに少年は簡単に剣で弾く。

 レヴィは悔しそうに歯を噛み締めた。

「ふっ……殺されると分かっていながら、槍で貫き自分諸共に相討ち覚悟か……いい女だ。だが、不愉快だな」

 少年はレヴィの首をがっしりと掴むとじわじわと締め上げる。

 レヴィは苦しそうな表情を浮かべながら、少年の腕に爪を突き立てるがびくともしない。

「……かひゅ……あっ……あぁぁ……」
「どうした……もう抵抗しないのか?」

 少年は徐々に抵抗が弱まるレヴィの首を締め上げたままニヤリと不気味に笑う。

 俺は立ち上がろうとするが、ダメージの蓄積で体が動かない。

 このままレヴィが殺されるのを黙って見ているしかないのか? くそっ! 動け……動いてくれ俺の体!! 

 俺は歯を噛み締め動かない膝に手を当て力を込める。

 レヴィの意識が途切れ手足が力無く垂れ下がる。

「……身の程知らずの愚かな半端者は死ね」

 少年が気を失ったレヴィの首を更に締めようとした時、背後から殺気を感じてレヴィを放した。

 振り向いて少年は向かって来る槍を剣で受け止める。

 そこにはドラゴンの翼を生やしたスピルの姿があった。

「お父様とお母様の仇!!」
「……父上だと?」

 少年は首を傾げるとスピルは槍を強く握り締めて更にぐいぐいと押し込む。

 少年はスピルは振り払うと剣を構えてスピルを睨む。

 スピルは槍を回転させて構えると、地面を蹴って少年に突っ込むが少年が剣を振り下ろすと槍で受け止める。しかし、受け止められたのは一瞬ですぐに弾かれると地面に転がる。

「私の父上だ! 魔王軍のドラゴン族の長だ!」
「ああ、お前はあれ娘か……」
「思い出したか!」

 少年は数秒間、見上げその後に小さく呟く。

「……知らん。だいぶ殺したからな。覚えてない」

 それを聞いたスピルは激昂して槍を握り締めながら突撃する。

 しかし、少年は剣で槍を弾くとスピルの脇腹を蹴り飛ばす。

 スピルの体は地面を転がり近くのレンガ造りの民家を倒壊させる。
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