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勇者パーティー

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 俺はその人物を見た瞬間に驚愕した。王の隣に立つ少女が息を飲んだ……

 王の横に立っていたのはさっき世話役として来たメイドのハーフの少女だった。

 俺達が少女を見ると彼女はにっこりと微笑んだ。

「君達が最強の冒険者か……話は聞いている。魔王の軍勢を退けたらしいな。聞いているとは思うが、我が国は今、魔物に手を焼いている。最初は森に住み着いただけと思っていたのだが、どうやら近くの魔物も活性化しているようなのだ」
「なるほど、それはティラノかもしれませんな」

 王様の話を聞いていたニールが口を開く。

「ティラノ! それはティラノサウルスの事か?」

 俺がニールに尋ねると、彼は不思議そうな顔で俺を見る。

「ティラノサウルス? は知りませんが。古代の魔道士が生み出したと伝わる魔獣です。ワニの様な見た目をしていると聞いています。その咆哮には周囲の魔物を凶暴化させる力があるとか……」

 どうやら、この世界にはティラノサウルスはいないらしい……まあ、ティラノは現実の世界でも絶滅してたしな。

 俺がそんな事を考えていると、王様が話を続けた。

「実は勇者は北の砦にいる。だが、10日経つのに一向に退治する気配すらない。君達には勇者を討伐に駆り立て援護してほしい」
「はい」

 俺は頷くと王様は笑顔で笑った。

 その隣で少女も微笑んでいた。

 謁見の間を後にして俺達は勇者が滞在しているという宿屋に向かった。

 そこはこの街で一番の高級な宿屋だった。

 部屋はとても広く豪華な装飾と家具などが備え付けられている。

 そこには勇者がいた。前に会った金髪の少年と吊り目の紫色の髪の魔女の少女。ヒーラーの金髪の少女だ。

 少年は俺を見て鋭く睨む。

「なに? なに勝手に部屋に入ってきてんの?」

 不機嫌さが伝わってくる。

「王様からの依頼で俺達は派遣された冒険者だ。お前達の援軍できた」

 俺がそう言うと勇者は眉をひそめて言う。

「国王の親書だ。読めば分かる」

 俺はそういうと、王様から預かった書簡を強引に突き出した。すると、勇者が受け取って読み始める。

 そして、鼻で笑う。

「おいおい、王様は俺達に死んでこいって言ってるのか? お前達みたいな足手纏いの雑魚が援軍? ガキの遠足じゃないんだぞ?」

 俺は少しイラッとしたが、こっちは大人だ。声を荒げるより冷静に対処する。
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