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その教師、クソ野郎につき
「見てる中で緊張してる?」
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シャルルルカが教室に入ってくる。
すると、ざわついていた教室内が一気に静まり返った。
シャルルルカは教卓に立ち、保護者の方を見てニヤリと笑った。
「保護者の皆さん、初めまして。担任のシャルルルカです。今日は是非、私の授業を体験して行って下さい」
彼は次に、生徒達を見て「はは」と笑った。
「家族が見てる中で緊張してる? いつもは元気いっぱいなのに、今日は大人しいね」
保護者から小さく笑い声が聞こえた。
──良かった。普通だ。……いや、まだ油断ならないけど!
レイはホッとしつつも、シャルルルカから目を離さないように心掛けた。
「さて。子供達諸君、植物図鑑は持ってきたかな」
「はい! 持ってます!」
レイが自身の植物図鑑を掲げて、元気良く返事をした。
「よろしい。忘れた者は隣の人に見せて貰うように。良いね」
「わかりました!」
そのとき、ちょいちょい、とキョーマがレイの肩を叩いた。
「か、格下……」
「ん? どうしたんですか、キョーマくん?」
キョーマの顔は真っ白にしながら言う。
「植物図鑑、忘れた……」
「あらら。じゃあ、半分こしましょう」
「悪ぃな……。助かった」
「……そういえば、編入初日も教科書を忘れてませんでした?」
「昔っから忘れもの酷くてな……」
それは、キョーマが前の学校でいじめられた理由の一つでもあった。
だから、編入当初C組にいたときは、その悪癖を隠したかったのだ。
格下のD組から奪い、自分は忘れ物をしてないと──忘れ物をするような格下ではないと、思わせたかった。
それが「忘れた」と言い出せるようになり、「悪いな。助かった」とも言えるになったのは成長だろう。
尊敬するシャルルルカが言ったからもあるが。
「よし。では、始めるぞ。《幻影》」
シャルルルカが自身の杖を振る。
すると、教室内が一瞬にして緑色に包まれた。
左右を見渡せば木々が生い茂り、下を見れば草花がそこに生えている。
ただ、学習机と椅子は残されていて、森の中に教室があるようだ。
「何これ! 転移魔法!?」
「否、これは幻影魔法です。教室内から一歩も移動していません」
「幻影……!?」
保護者達は目を疑った。
その開放感は現実そのものだ。
幻影とは到底思えなかった。
「これが、シャルルルカ様の魔法……」
保護者達は感心した。
「四角くロープが張ってあるのが見えるね?」
シャルルルカの言う通り、教室内にいる人達を囲うようにロープが張ってあった。
「そこから先は壁なので、飛び越えたりしないように。保護者の皆さんもお気をつけて」
生徒達は「はーい」と元気に返事をした。
保護者達は未だ口をポカンと開けたまま、首を縦に振った。
「さあ、子供達。立ち上がって? 森の中を歩いて、薬草を観察しよう。植物図鑑を忘れずに」
生徒達は椅子から立ち上がった。
「見てみて、ジュードくん! リリ、可愛いお花見つけちゃった!」
「え、何?」
「これよ!」
ブリリアントが桃色の花に触ろうと手を伸ばす。
「あ。リリちゃん、待って。その花……!」
ブリリアントの手が桃色の花に触れる。
しかし、触れた感触はなく、手は空を切った。
「……あれ?」
桃色の花は蕾になった。
次の瞬間、ドカン、と大きな音を立てた。
爆煙がブリリアントの顔を包み込む。
「きゃー! 何!? 爆発した!?」
ブリリアントは手をブンブンと振り回し、煙を払う。
「だから、言ったのに……」
ジュードは呆れた。
「その花はバクハバナって言って、人間の手に触れると爆発する。あと茹でると美味い」
シャルルルカがそう説明をする。
「でも、これって幻影なんでしょ!?」
「幻影だ。怪我一つしてないだろう?」
「え?」
ブリリアントは先程バクハバナの爆発に巻き込まれたはずの手を見る。
手は綺麗なままだった。
「あ、本当だ。何処も痛くないわ……」
「これらの草花は幻影だが、本物と同じような性質を見せる。触れるなら、植物図鑑を開いて、安全な採集方法を知ってから。薬草を扱うときの基本だ」
薬草には触れただけで死に至る、恐ろしいものも存在する。
無闇に触ってはいけない、という教えは魔法薬学の基本だ。
「なるほど。それを教えるために爆発の幻影を……」
「確かに、口頭で伝えるより、危険性が伝わるな」
保護者達は感心した。
レイはそれを聞いて、ホッとする。
──花が爆発したときは「やりやがったな!」と思いましたけど。悪印象を持たれてないようで良かった。
すると、ざわついていた教室内が一気に静まり返った。
シャルルルカは教卓に立ち、保護者の方を見てニヤリと笑った。
「保護者の皆さん、初めまして。担任のシャルルルカです。今日は是非、私の授業を体験して行って下さい」
彼は次に、生徒達を見て「はは」と笑った。
「家族が見てる中で緊張してる? いつもは元気いっぱいなのに、今日は大人しいね」
保護者から小さく笑い声が聞こえた。
──良かった。普通だ。……いや、まだ油断ならないけど!
レイはホッとしつつも、シャルルルカから目を離さないように心掛けた。
「さて。子供達諸君、植物図鑑は持ってきたかな」
「はい! 持ってます!」
レイが自身の植物図鑑を掲げて、元気良く返事をした。
「よろしい。忘れた者は隣の人に見せて貰うように。良いね」
「わかりました!」
そのとき、ちょいちょい、とキョーマがレイの肩を叩いた。
「か、格下……」
「ん? どうしたんですか、キョーマくん?」
キョーマの顔は真っ白にしながら言う。
「植物図鑑、忘れた……」
「あらら。じゃあ、半分こしましょう」
「悪ぃな……。助かった」
「……そういえば、編入初日も教科書を忘れてませんでした?」
「昔っから忘れもの酷くてな……」
それは、キョーマが前の学校でいじめられた理由の一つでもあった。
だから、編入当初C組にいたときは、その悪癖を隠したかったのだ。
格下のD組から奪い、自分は忘れ物をしてないと──忘れ物をするような格下ではないと、思わせたかった。
それが「忘れた」と言い出せるようになり、「悪いな。助かった」とも言えるになったのは成長だろう。
尊敬するシャルルルカが言ったからもあるが。
「よし。では、始めるぞ。《幻影》」
シャルルルカが自身の杖を振る。
すると、教室内が一瞬にして緑色に包まれた。
左右を見渡せば木々が生い茂り、下を見れば草花がそこに生えている。
ただ、学習机と椅子は残されていて、森の中に教室があるようだ。
「何これ! 転移魔法!?」
「否、これは幻影魔法です。教室内から一歩も移動していません」
「幻影……!?」
保護者達は目を疑った。
その開放感は現実そのものだ。
幻影とは到底思えなかった。
「これが、シャルルルカ様の魔法……」
保護者達は感心した。
「四角くロープが張ってあるのが見えるね?」
シャルルルカの言う通り、教室内にいる人達を囲うようにロープが張ってあった。
「そこから先は壁なので、飛び越えたりしないように。保護者の皆さんもお気をつけて」
生徒達は「はーい」と元気に返事をした。
保護者達は未だ口をポカンと開けたまま、首を縦に振った。
「さあ、子供達。立ち上がって? 森の中を歩いて、薬草を観察しよう。植物図鑑を忘れずに」
生徒達は椅子から立ち上がった。
「見てみて、ジュードくん! リリ、可愛いお花見つけちゃった!」
「え、何?」
「これよ!」
ブリリアントが桃色の花に触ろうと手を伸ばす。
「あ。リリちゃん、待って。その花……!」
ブリリアントの手が桃色の花に触れる。
しかし、触れた感触はなく、手は空を切った。
「……あれ?」
桃色の花は蕾になった。
次の瞬間、ドカン、と大きな音を立てた。
爆煙がブリリアントの顔を包み込む。
「きゃー! 何!? 爆発した!?」
ブリリアントは手をブンブンと振り回し、煙を払う。
「だから、言ったのに……」
ジュードは呆れた。
「その花はバクハバナって言って、人間の手に触れると爆発する。あと茹でると美味い」
シャルルルカがそう説明をする。
「でも、これって幻影なんでしょ!?」
「幻影だ。怪我一つしてないだろう?」
「え?」
ブリリアントは先程バクハバナの爆発に巻き込まれたはずの手を見る。
手は綺麗なままだった。
「あ、本当だ。何処も痛くないわ……」
「これらの草花は幻影だが、本物と同じような性質を見せる。触れるなら、植物図鑑を開いて、安全な採集方法を知ってから。薬草を扱うときの基本だ」
薬草には触れただけで死に至る、恐ろしいものも存在する。
無闇に触ってはいけない、という教えは魔法薬学の基本だ。
「なるほど。それを教えるために爆発の幻影を……」
「確かに、口頭で伝えるより、危険性が伝わるな」
保護者達は感心した。
レイはそれを聞いて、ホッとする。
──花が爆発したときは「やりやがったな!」と思いましたけど。悪印象を持たれてないようで良かった。
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