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記念すべき初授業を始めよう
「目にもの見せてやりましょうぞ」
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D組の体育の授業は、校庭でターゲットくんとの追いかけっこが通常となっていた。
各生徒がターゲットくんを追いかけ、得意の魔法を放っている。
「ぜえぜえ。全然当てられねえです……!」
レイが一度息を整えようと木陰にやってきた。
そこには、魔力切れで先に休んでいたマジョアンヌがいた。
マジョアンヌは最近、ようやく魔法を使えるようになった。
今の課題は、魔力量の底上げである。
「ターゲットくん、いくら走っても追いつけねえです!」
「初日に校庭の隅っこでやったときと、広さが段違いですものねぇ」
「うう、もっと射程があればあたしにも当てられるのに……! 自分の射程のなさが悔やまれますよ……」
「レイさんは魔法の威力が凄いではありませんかぁ」
「威力があっても、当てられなきゃシャルル先生に笑われます」
「確かにそうですわねぇ……」
マジョアンヌは困ったように笑った。
「あかん。わしもちょっと休憩……」
へろへろになったエイダンが体を休めようと木陰に足を踏み入れた。
レイが彼に笑顔で声をかけた。
「お疲れ様です、エイダンくん! 結構ターゲットくんに当ててましたね──」
バタン、と音を立てて、エイダンが顔から倒れる。
「え、エイダンくん!? 大丈夫ですか!?」
レイが慌ててエイダンを仰向けにする。
すると、彼はスースーと寝息を立てていた。
「……紛らわしい!」
レイはエイダンの額をペシっと魔法の杖で叩いた。
杖で叩かれても、エイダンは起きる素振りを見せなかった。
「……ん?」
レイがふとシャルルルカの方を見る。
彼の元に、ぞろぞろと大勢の生徒達が近づいてきていた。
彼らの先頭にはピエーロ・ボンボンがいる。
「あれは一体……」
「ピエーロ先生がいらっしゃるってことはC組の子達かしらぁ?」
学園の校庭は、一クラスで使うには十分過ぎる広さだった。
そのため、一時限中は複数のクラスが校庭を区切って授業することになっている。
わざわざD組の方に来たのは、D組の誰かに用事があるということだろう。
──またシャルル先生が何かやらかしたのかな。
レイはハラハラしながら彼らを見守った。
「やあやあ、シャルルルカ先生。ご機嫌いかがかな?」
ピエーロがシャルルルカに笑顔で話しかけた。
「どうも、ピエーロ先生」
シャルルルカは特に驚いた様子もなく、軽く挨拶をする。
「どうしたんです? 生徒達を引き連れて。この授業時限は、私のクラスがこの区画の校庭を使うことになっていますが。ボケたんですか?」
「ボケてなどおらんわ!」
ピエーロは眉を吊り上げて怒鳴る。
ピエーロは「こほん」と大きく咳払いし、一度荒げた声を落ち着かせた。
「単刀直入に言います。この授業時限、校庭を明け渡して頂きたい」
「えっ!?」
聞き耳を立てていたレイは驚いて声を上げる。
ターゲットくんを追いかけていたD組の生徒達が、その声で異変に気づいたようだ。
なんだなんだ、というようにシャルルルカとピエーロ達の近くに集まる。
ピエーロはそんな彼らを一瞥した。
「動く的と追いかけっこですかな? 楽しそうで何より」
ピエーロは馬鹿にするように笑った。
「しかし、我々なら限りある校庭での授業を有効的に使えます」
そう言って、後ろに控えているキョーマ達──C組の生徒に目をやった。
「我がクラスの生徒達もやる気に満ちていますし」
キョーマ達はうんうんと頷く。
「どうですかな? C組の生徒達の更なる成長のため、校庭の使用権を譲って頂けませんかな?」
ピエーロはニコニコと笑いながらそう提案した。
「ふむ」
シャルルルカは顎に指を当てた。
「これがただ遊んでいるだけに見えますか。貴方の目の節穴は治ってないようだ」
「何ですと?」
ピエーロは眉をぴくりと動かした。
「では、こうしましょうか。貴方の生徒がターゲットくんに一発でも当てられたら、校庭を明け渡しましょう」
シャルルルカは口元に弧を描く。
「ただの遊びというのなら、余裕ですね?」
「ええ! 余裕ですとも!」
ピエーロは上がった口角をぴくぴくと震えさせながら頷いた。
ピエーロはC組の生徒達の方へ目を向ける。
「皆さん、話は聞いていましたね? 目にもの見せてやりましょうぞ!」
キョーマ達は余裕そうな表情で、魔法の杖を構える。
しかし、その瞬間、ターゲットくんは車輪を回し、キョーマ達に背を向けて走り出した。
「あ!? 逃げた!?」
──ターゲットくんの機能その一、逃げる。
「皆の者、追うのです!」
ピエーロが叫び、キョーマ達は駆け出した。
一番最初にターゲットくんへ追いついたのは、キョーマであった。
「追い詰めたぞ……的の癖に逃げやがって!《大火炎》!」
キョーマの杖の先から放たれた大きな火球は、ターゲットくんに向かっていく。
しかし、ターゲットくんは的を少しずらして、それを避けた。
「はあ!?」
──ターゲットくんの機能その二、避ける。
『アホー』
──ターゲットくんの機能その三、外したら馬鹿にする。
キョーマは最初、何を言われたのかわかっていないようだった。
しかし、理解が追いつくと、キョーマはみるみるうちに顔を真っ赤にした。
「俺を馬鹿にすんじゃねえ!」
キョーマは躍起になって、ターゲットくんを追いかけ続けた。
各生徒がターゲットくんを追いかけ、得意の魔法を放っている。
「ぜえぜえ。全然当てられねえです……!」
レイが一度息を整えようと木陰にやってきた。
そこには、魔力切れで先に休んでいたマジョアンヌがいた。
マジョアンヌは最近、ようやく魔法を使えるようになった。
今の課題は、魔力量の底上げである。
「ターゲットくん、いくら走っても追いつけねえです!」
「初日に校庭の隅っこでやったときと、広さが段違いですものねぇ」
「うう、もっと射程があればあたしにも当てられるのに……! 自分の射程のなさが悔やまれますよ……」
「レイさんは魔法の威力が凄いではありませんかぁ」
「威力があっても、当てられなきゃシャルル先生に笑われます」
「確かにそうですわねぇ……」
マジョアンヌは困ったように笑った。
「あかん。わしもちょっと休憩……」
へろへろになったエイダンが体を休めようと木陰に足を踏み入れた。
レイが彼に笑顔で声をかけた。
「お疲れ様です、エイダンくん! 結構ターゲットくんに当ててましたね──」
バタン、と音を立てて、エイダンが顔から倒れる。
「え、エイダンくん!? 大丈夫ですか!?」
レイが慌ててエイダンを仰向けにする。
すると、彼はスースーと寝息を立てていた。
「……紛らわしい!」
レイはエイダンの額をペシっと魔法の杖で叩いた。
杖で叩かれても、エイダンは起きる素振りを見せなかった。
「……ん?」
レイがふとシャルルルカの方を見る。
彼の元に、ぞろぞろと大勢の生徒達が近づいてきていた。
彼らの先頭にはピエーロ・ボンボンがいる。
「あれは一体……」
「ピエーロ先生がいらっしゃるってことはC組の子達かしらぁ?」
学園の校庭は、一クラスで使うには十分過ぎる広さだった。
そのため、一時限中は複数のクラスが校庭を区切って授業することになっている。
わざわざD組の方に来たのは、D組の誰かに用事があるということだろう。
──またシャルル先生が何かやらかしたのかな。
レイはハラハラしながら彼らを見守った。
「やあやあ、シャルルルカ先生。ご機嫌いかがかな?」
ピエーロがシャルルルカに笑顔で話しかけた。
「どうも、ピエーロ先生」
シャルルルカは特に驚いた様子もなく、軽く挨拶をする。
「どうしたんです? 生徒達を引き連れて。この授業時限は、私のクラスがこの区画の校庭を使うことになっていますが。ボケたんですか?」
「ボケてなどおらんわ!」
ピエーロは眉を吊り上げて怒鳴る。
ピエーロは「こほん」と大きく咳払いし、一度荒げた声を落ち着かせた。
「単刀直入に言います。この授業時限、校庭を明け渡して頂きたい」
「えっ!?」
聞き耳を立てていたレイは驚いて声を上げる。
ターゲットくんを追いかけていたD組の生徒達が、その声で異変に気づいたようだ。
なんだなんだ、というようにシャルルルカとピエーロ達の近くに集まる。
ピエーロはそんな彼らを一瞥した。
「動く的と追いかけっこですかな? 楽しそうで何より」
ピエーロは馬鹿にするように笑った。
「しかし、我々なら限りある校庭での授業を有効的に使えます」
そう言って、後ろに控えているキョーマ達──C組の生徒に目をやった。
「我がクラスの生徒達もやる気に満ちていますし」
キョーマ達はうんうんと頷く。
「どうですかな? C組の生徒達の更なる成長のため、校庭の使用権を譲って頂けませんかな?」
ピエーロはニコニコと笑いながらそう提案した。
「ふむ」
シャルルルカは顎に指を当てた。
「これがただ遊んでいるだけに見えますか。貴方の目の節穴は治ってないようだ」
「何ですと?」
ピエーロは眉をぴくりと動かした。
「では、こうしましょうか。貴方の生徒がターゲットくんに一発でも当てられたら、校庭を明け渡しましょう」
シャルルルカは口元に弧を描く。
「ただの遊びというのなら、余裕ですね?」
「ええ! 余裕ですとも!」
ピエーロは上がった口角をぴくぴくと震えさせながら頷いた。
ピエーロはC組の生徒達の方へ目を向ける。
「皆さん、話は聞いていましたね? 目にもの見せてやりましょうぞ!」
キョーマ達は余裕そうな表情で、魔法の杖を構える。
しかし、その瞬間、ターゲットくんは車輪を回し、キョーマ達に背を向けて走り出した。
「あ!? 逃げた!?」
──ターゲットくんの機能その一、逃げる。
「皆の者、追うのです!」
ピエーロが叫び、キョーマ達は駆け出した。
一番最初にターゲットくんへ追いついたのは、キョーマであった。
「追い詰めたぞ……的の癖に逃げやがって!《大火炎》!」
キョーマの杖の先から放たれた大きな火球は、ターゲットくんに向かっていく。
しかし、ターゲットくんは的を少しずらして、それを避けた。
「はあ!?」
──ターゲットくんの機能その二、避ける。
『アホー』
──ターゲットくんの機能その三、外したら馬鹿にする。
キョーマは最初、何を言われたのかわかっていないようだった。
しかし、理解が追いつくと、キョーマはみるみるうちに顔を真っ赤にした。
「俺を馬鹿にすんじゃねえ!」
キョーマは躍起になって、ターゲットくんを追いかけ続けた。
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