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復讐編 あなたは絶世のファム・ファタール!
人生は続く
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【博愛の聖女】の嘘が暴かれ、アナスタシアの潔白が証明された。
レンコは激昂し、アナスタシオスに「死ね!」と叫びながら、階段の上から突き落とした。
殺人未遂の現行犯でレンコは取り押さえられ、キュリオシティにある牢獄へと連行された。
レンコに協力していたラヴィスマンは、現聖国王のクローンであったことが判明。
勾留されることとなり、レンコと同様、牢に入れられることになった。
しかし、ラヴィスマンはアナスタシアの死を受け入れられず、すっかり憔悴してしまっていた。
あの様子ではもう、表舞台に出て来ることはないだろう。
レンコとラヴィスマンが連れて行かれ、学園パーティーは再開された。
「大丈夫か、兄さん! 怪我は!?」
クロードはアナスタシオスに駆け寄った。
「平気。シュラルドが受け止めてくれたからな」
アナスタシオスはそう答える。
クロードはへなへなとその場にしゃがみ込む。
「兄さんがレンコに突き飛ばされたときは心臓が止まったよ……」
「止まってたらこうやって話せてねえだろ」
「比喩だ、比喩!」
アナスタシオスは眉を上げて、頭を掻いた。
「レンコに突き落とされたふりでもして、罪を押しつけるつもりだったんだけど。まさか、本当に突き落とされるとはなァ……」
「突き落とされるのは例えふりだとしても危ないからな!?」
「シュラルドが受け止めてくれただろ?」
「嘘だろ……。シュラルドが受け止めてくれるだろうと思って、そんな計画を立ててたのか!?」
「ちゃんと受け身は取るつもりだったぜ?」
「そういうことじゃない!」
クロードは叫ぶしかなかった。
「兄さんの死亡フラグ、回避出来たと思ったのに……。兄さんは結局死んじゃうんだって……。死の運命には逆らえないんだって……思った……」
クロードの目に涙が浮かぶ。
「ごめん、クロード。兄さんが悪かった。もう無茶はしねえ。だから、もう、泣くなよ……」
「泣いてない!」
クロードはぐずぐずと鼻を鳴らしながら泣く。
アナスタシオスはフッと笑い、クロードの頭を撫でた。
「復讐に付き合ってくれてありがとな」
クロードは涙を拭う。
「……うん」
クロードも笑う。
「お疲れ様でした、坊ちゃん方!」
ミステールが笑顔で駆け寄る。
「こうやって話すのは久しぶりな気がしますねえ」
「誰かさんがレンコに籠絡されてたからな」
「ナーシャ坊ちゃんの命に従っていただけです。何せ、坊ちゃんの専属執事ですから?」
「あんなに嫌がってた癖によく言うぜ」
アナスタシオスは呆れる。
「良い働きをしたでしょう? これは給金がたんまり頂けるんだろうなあ」
「現金な奴」
「商国の商魂が騒ぐもので」
ミステールはけらけらと笑う。
「ラヴィも引っ張り出せたのは御の字だったな。おかげで、同時に成敗出来た! きっかけをくれたレンコには少しだけ感謝してやろう。本当に少しだけな!」
「ラヴィスマン、どうなるんだろう……」
「さあな。あの様子じゃ、罪と向き合えるかどうか。……まさかラヴィがああなっちまうとはなあ」
「やるせないな」
「ああ」
アナスタシオスは頷く。
「【博愛の聖女】の処遇は各国の王子に任せましょう。【博愛の聖女】に対して、皆思うところがあるようですし」
ミステールが言うと、クロードとアナスタシオスは頷いた。
「全部……終わったんだな」
「終わってねえよ。これからだ」
アナスタシオスはあっけらかんと笑い、両手を広げてくるくると踊るように回る。
「これから何しようかな~? 俺はこれから何でも出来るし、何にでもなれる! 楽しみだなあ、クロード」
「おれは……ちょっと怖い。ゲームのシナリオが終わったら、この世界が終わってしまうんじゃないかって」
「終わんねえよ。ここはゲームじゃなくて現実だろ。自分が生きてる限り、人生は続く。何も怖くねえ」
「そうかも、だけど……」
「もし世界が終わったとしても、俺達は気づけねえさ。どう足掻いても」
「やっぱり怖い」
「そう思うこともなくなるって」
アナスタシオスは愉快そうに笑う。
「なんで楽しそうなんだよ……」
「幸せの絶頂で終わるなら、それはそれで良いだろ?」
アナスタシオスは歯を見せて笑う。
「ああ、気分が良い……。クロード、一曲踊らねえか?」
「えっ」
クロードは目を丸くした。
「良いですね。クロードくん、踊ったらどう? 祝勝会ってことで。最後の学園パーティーだし」
ミステールは笑う。
「何『自分は関係ありません』って顔してんだ。お前も踊るんだよ! 二人ともこっちに来い!」
アナスタシオスはクロードとミステールの手を引き、輪になってくるくると回り始めた。
アナスタシオスは演技も忘れて笑う。
ミステールは呆れつつ、嬉しさを隠しきれていなかった。
クロードは二人につられて笑う。
アナスタシオスは今が幸せの絶頂なのだろう。
そう感じて、クロードは複雑な気持ちになった。
──幸せの絶頂が復讐の完遂でたまるか。
クロードはこの先の人生を望んだ。
──どうか、この世界がこの先も続いて……兄にこれ以上の幸せが訪れますように。
そう願う。
三人の勝利のダンスは、ゼニファーに「別室で話をしたい」と呼び出されるまで続いた。
レンコは激昂し、アナスタシオスに「死ね!」と叫びながら、階段の上から突き落とした。
殺人未遂の現行犯でレンコは取り押さえられ、キュリオシティにある牢獄へと連行された。
レンコに協力していたラヴィスマンは、現聖国王のクローンであったことが判明。
勾留されることとなり、レンコと同様、牢に入れられることになった。
しかし、ラヴィスマンはアナスタシアの死を受け入れられず、すっかり憔悴してしまっていた。
あの様子ではもう、表舞台に出て来ることはないだろう。
レンコとラヴィスマンが連れて行かれ、学園パーティーは再開された。
「大丈夫か、兄さん! 怪我は!?」
クロードはアナスタシオスに駆け寄った。
「平気。シュラルドが受け止めてくれたからな」
アナスタシオスはそう答える。
クロードはへなへなとその場にしゃがみ込む。
「兄さんがレンコに突き飛ばされたときは心臓が止まったよ……」
「止まってたらこうやって話せてねえだろ」
「比喩だ、比喩!」
アナスタシオスは眉を上げて、頭を掻いた。
「レンコに突き落とされたふりでもして、罪を押しつけるつもりだったんだけど。まさか、本当に突き落とされるとはなァ……」
「突き落とされるのは例えふりだとしても危ないからな!?」
「シュラルドが受け止めてくれただろ?」
「嘘だろ……。シュラルドが受け止めてくれるだろうと思って、そんな計画を立ててたのか!?」
「ちゃんと受け身は取るつもりだったぜ?」
「そういうことじゃない!」
クロードは叫ぶしかなかった。
「兄さんの死亡フラグ、回避出来たと思ったのに……。兄さんは結局死んじゃうんだって……。死の運命には逆らえないんだって……思った……」
クロードの目に涙が浮かぶ。
「ごめん、クロード。兄さんが悪かった。もう無茶はしねえ。だから、もう、泣くなよ……」
「泣いてない!」
クロードはぐずぐずと鼻を鳴らしながら泣く。
アナスタシオスはフッと笑い、クロードの頭を撫でた。
「復讐に付き合ってくれてありがとな」
クロードは涙を拭う。
「……うん」
クロードも笑う。
「お疲れ様でした、坊ちゃん方!」
ミステールが笑顔で駆け寄る。
「こうやって話すのは久しぶりな気がしますねえ」
「誰かさんがレンコに籠絡されてたからな」
「ナーシャ坊ちゃんの命に従っていただけです。何せ、坊ちゃんの専属執事ですから?」
「あんなに嫌がってた癖によく言うぜ」
アナスタシオスは呆れる。
「良い働きをしたでしょう? これは給金がたんまり頂けるんだろうなあ」
「現金な奴」
「商国の商魂が騒ぐもので」
ミステールはけらけらと笑う。
「ラヴィも引っ張り出せたのは御の字だったな。おかげで、同時に成敗出来た! きっかけをくれたレンコには少しだけ感謝してやろう。本当に少しだけな!」
「ラヴィスマン、どうなるんだろう……」
「さあな。あの様子じゃ、罪と向き合えるかどうか。……まさかラヴィがああなっちまうとはなあ」
「やるせないな」
「ああ」
アナスタシオスは頷く。
「【博愛の聖女】の処遇は各国の王子に任せましょう。【博愛の聖女】に対して、皆思うところがあるようですし」
ミステールが言うと、クロードとアナスタシオスは頷いた。
「全部……終わったんだな」
「終わってねえよ。これからだ」
アナスタシオスはあっけらかんと笑い、両手を広げてくるくると踊るように回る。
「これから何しようかな~? 俺はこれから何でも出来るし、何にでもなれる! 楽しみだなあ、クロード」
「おれは……ちょっと怖い。ゲームのシナリオが終わったら、この世界が終わってしまうんじゃないかって」
「終わんねえよ。ここはゲームじゃなくて現実だろ。自分が生きてる限り、人生は続く。何も怖くねえ」
「そうかも、だけど……」
「もし世界が終わったとしても、俺達は気づけねえさ。どう足掻いても」
「やっぱり怖い」
「そう思うこともなくなるって」
アナスタシオスは愉快そうに笑う。
「なんで楽しそうなんだよ……」
「幸せの絶頂で終わるなら、それはそれで良いだろ?」
アナスタシオスは歯を見せて笑う。
「ああ、気分が良い……。クロード、一曲踊らねえか?」
「えっ」
クロードは目を丸くした。
「良いですね。クロードくん、踊ったらどう? 祝勝会ってことで。最後の学園パーティーだし」
ミステールは笑う。
「何『自分は関係ありません』って顔してんだ。お前も踊るんだよ! 二人ともこっちに来い!」
アナスタシオスはクロードとミステールの手を引き、輪になってくるくると回り始めた。
アナスタシオスは演技も忘れて笑う。
ミステールは呆れつつ、嬉しさを隠しきれていなかった。
クロードは二人につられて笑う。
アナスタシオスは今が幸せの絶頂なのだろう。
そう感じて、クロードは複雑な気持ちになった。
──幸せの絶頂が復讐の完遂でたまるか。
クロードはこの先の人生を望んだ。
──どうか、この世界がこの先も続いて……兄にこれ以上の幸せが訪れますように。
そう願う。
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