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復讐編 あなたは絶世のファム・ファタール!
とある代替品の成り代わり
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暫くして、アイコが亡くなった。
クローンの自分には特に感慨も湧かなかった。
悲しみも喪失感もなく、ただ事実を受け止めていた。
ただ、オリジナルのラヴィスマンは違った。
「アイコ……何故じゃ……。何故我を置いて行った……?」
オリジナルのラヴィスマンはアイコに遺体に情けなく追い縋った。
それから、オリジナルは徐々に衰弱していった。
クローンは歓喜した。
──このときを、どれほど待ち望んだことか……!
これを好機と思ったクローンはオリジナルを離れた塔に幽閉することにした。
「おい、何をする!」
勿論、オリジナルは抵抗した。
「最近、調子が悪そうじゃ。少し休まれた方が良いと思うての。安心せい……。国は我が守る」
「クローンが王の代わりなど、国民が許す訳なかろう!」
「我がクローンだとは、誰も気づかんよ。すっかり成長した我は、若々しかったそなたと瓜二つ……。そなたのクローンじゃから、当然じゃ」
クローンはオリジナルを嘲笑う。
「むしろ、そなたの方が偽物だと思われるのではないかのう?」
アイコを喪い、失意の底にいたラヴィスマンは美国の血による若々しさから一変。
肌はシワだらけになり、腰は折れ曲がっていき、年相応の姿となった。
「もう二度と会うことはないじゃろう。オリジナルよ。これからは我がオリジナルじゃ」
「待て──!」
クローンはオリジナルの声も聞かず、塔の重い扉を閉めた。
もうその扉を開けることはないのだろう。
□
クローンは聖国王に成り代わった。
記憶こそないが、オリジナルが毎日つけていた日記もある。
それを元に、聖国王の職務を熟した。
そして時折、キュリオ学園でアナスタシアと楽しい時間を過ごした。
──あとは、アナスタシアを妃に迎えるだけじゃ。それには……。
ラヴィスマンは遠くからアナスタシアを見つめる。
彼女の隣には仲睦まじく歩くアデヤがいた。
──美国の坊主が邪魔じゃな。
二人を婚約破棄させる。
いや、アデヤだけを遠ざけても意味がない。
他にもアナスタシアに気のある男が周りにいる。
軍国の王子シュラルドルフ。商国の王子ゼニファー。賢国の王子シルフィト。それに専属執事になった元商国の王子ミステールも。
婚約者がいる手前、誰も口にしてはいないが、アナスタシアに好意があることは明白だ。
──邪魔者がたくさんおるな……。
彼らもアナスタシアから遠ざける。
自分だけが唯一アナスタシアの味方をする。
そうすれば、アナスタシアは自分を選んでくれる。
「見ぃつけた! あんた、ラヴィスマンでしょお?」
そこに降って出てきたのが次の【博愛の聖女】レンコの存在だった。
「そなたは……」
「【博愛の聖女】、レンコでぇす! 知ってるでしょお? あんたの国で発表されたんだから!」
──オリジナルが欲しがっていた【博愛の聖女】……じゃが、我はいらん。
ラヴィスマンは冷めた目でレンコを見つめる。
「私ね、好きな人がいるの! その人と結ばれるには、アナスタシアが邪魔なのよ」
レンコはいやらしく笑う。
「協力してよ。あんたの好きな【博愛の聖女】の頼みよ?」
──忌々しい。
アナスタシアの何処が邪魔なのだ。
あんなにも魅力的で、愛されている人なのに。
──小娘の方が余程……。
思わず口に出そうになったが、すんでの所で止まる。
レンコはアナスタシアを毛嫌いしているらしい。
これを利用しない手はない。
「……良いじゃろう。そなたの力になろうではないか。しかし、我のことは一切口に出してくれるなよ」
レンコはそれはそれは嬉しそうにした。
レンコのその姿を見ても、ラヴィスマンは愛らしいとも思わなかった。
ただただ邪悪なその女を、利用するだけしてやろうと決めていた。
ラヴィスマンはキュリオシティに在住している聖国民に指示を出した。
アナスタシアの悪評を流すように。
レンコに有利な目撃証言をするように。
しかし、それだけでは足りない。
アナスタシアの行動を把握しなければ。
そこで、アナスタシアの専属執事ミステールに目をつけた。
彼の協力が得られれば、簡単にアナスタシアを失墜させられる。
どうやら、ミステールはレンコとの関わりを避けているようだ。
彼は昔から聡い子供だった。
主人アナスタシアに対するレンコの悪意に勘づいているのだろう。
──我も少し、危険な橋を渡る必要がありそうじゃな。
ラヴィスマンは重い腰を上げ、ミステールと接触した。
「お呼びですか、ラヴィスマンオウジサマ?」
ミステールは何の疑いもせず、呼び出しに応じた。
そして、あっさりとレンコの手の中に堕ちた。
……演技だったようだが。
それから、思惑通り、アナスタシアは孤立していった。
シュラルドルフからレンコに対する態度を嗜められた。
ゼニファーには嫌がらせの主犯だと疑われた。
シルフィトには監禁された。
専属執事のミステールには裏切られた。
最後に、アデヤには、学園パーティーという華々しい舞台で、婚約破棄を言い渡された。
──ついに、このときが来た。
絶望の最中、自分だけがアナスタシアに手を差し伸べる。
彼女を助け出す準備は当の昔に出来ている。
レンコに有利な証言をしたのは、聖国民であり、ラヴィスマンの手下だ。
彼らが一斉に証言を覆せば、アナスタシアの無実が証明される。
アナスタシアは自分のものになる。
──さあ、我を頼れ。
ラヴィスマンが手を差し伸べる前に、アナスタシアは亡くなった。
クローンの自分には特に感慨も湧かなかった。
悲しみも喪失感もなく、ただ事実を受け止めていた。
ただ、オリジナルのラヴィスマンは違った。
「アイコ……何故じゃ……。何故我を置いて行った……?」
オリジナルのラヴィスマンはアイコに遺体に情けなく追い縋った。
それから、オリジナルは徐々に衰弱していった。
クローンは歓喜した。
──このときを、どれほど待ち望んだことか……!
これを好機と思ったクローンはオリジナルを離れた塔に幽閉することにした。
「おい、何をする!」
勿論、オリジナルは抵抗した。
「最近、調子が悪そうじゃ。少し休まれた方が良いと思うての。安心せい……。国は我が守る」
「クローンが王の代わりなど、国民が許す訳なかろう!」
「我がクローンだとは、誰も気づかんよ。すっかり成長した我は、若々しかったそなたと瓜二つ……。そなたのクローンじゃから、当然じゃ」
クローンはオリジナルを嘲笑う。
「むしろ、そなたの方が偽物だと思われるのではないかのう?」
アイコを喪い、失意の底にいたラヴィスマンは美国の血による若々しさから一変。
肌はシワだらけになり、腰は折れ曲がっていき、年相応の姿となった。
「もう二度と会うことはないじゃろう。オリジナルよ。これからは我がオリジナルじゃ」
「待て──!」
クローンはオリジナルの声も聞かず、塔の重い扉を閉めた。
もうその扉を開けることはないのだろう。
□
クローンは聖国王に成り代わった。
記憶こそないが、オリジナルが毎日つけていた日記もある。
それを元に、聖国王の職務を熟した。
そして時折、キュリオ学園でアナスタシアと楽しい時間を過ごした。
──あとは、アナスタシアを妃に迎えるだけじゃ。それには……。
ラヴィスマンは遠くからアナスタシアを見つめる。
彼女の隣には仲睦まじく歩くアデヤがいた。
──美国の坊主が邪魔じゃな。
二人を婚約破棄させる。
いや、アデヤだけを遠ざけても意味がない。
他にもアナスタシアに気のある男が周りにいる。
軍国の王子シュラルドルフ。商国の王子ゼニファー。賢国の王子シルフィト。それに専属執事になった元商国の王子ミステールも。
婚約者がいる手前、誰も口にしてはいないが、アナスタシアに好意があることは明白だ。
──邪魔者がたくさんおるな……。
彼らもアナスタシアから遠ざける。
自分だけが唯一アナスタシアの味方をする。
そうすれば、アナスタシアは自分を選んでくれる。
「見ぃつけた! あんた、ラヴィスマンでしょお?」
そこに降って出てきたのが次の【博愛の聖女】レンコの存在だった。
「そなたは……」
「【博愛の聖女】、レンコでぇす! 知ってるでしょお? あんたの国で発表されたんだから!」
──オリジナルが欲しがっていた【博愛の聖女】……じゃが、我はいらん。
ラヴィスマンは冷めた目でレンコを見つめる。
「私ね、好きな人がいるの! その人と結ばれるには、アナスタシアが邪魔なのよ」
レンコはいやらしく笑う。
「協力してよ。あんたの好きな【博愛の聖女】の頼みよ?」
──忌々しい。
アナスタシアの何処が邪魔なのだ。
あんなにも魅力的で、愛されている人なのに。
──小娘の方が余程……。
思わず口に出そうになったが、すんでの所で止まる。
レンコはアナスタシアを毛嫌いしているらしい。
これを利用しない手はない。
「……良いじゃろう。そなたの力になろうではないか。しかし、我のことは一切口に出してくれるなよ」
レンコはそれはそれは嬉しそうにした。
レンコのその姿を見ても、ラヴィスマンは愛らしいとも思わなかった。
ただただ邪悪なその女を、利用するだけしてやろうと決めていた。
ラヴィスマンはキュリオシティに在住している聖国民に指示を出した。
アナスタシアの悪評を流すように。
レンコに有利な目撃証言をするように。
しかし、それだけでは足りない。
アナスタシアの行動を把握しなければ。
そこで、アナスタシアの専属執事ミステールに目をつけた。
彼の協力が得られれば、簡単にアナスタシアを失墜させられる。
どうやら、ミステールはレンコとの関わりを避けているようだ。
彼は昔から聡い子供だった。
主人アナスタシアに対するレンコの悪意に勘づいているのだろう。
──我も少し、危険な橋を渡る必要がありそうじゃな。
ラヴィスマンは重い腰を上げ、ミステールと接触した。
「お呼びですか、ラヴィスマンオウジサマ?」
ミステールは何の疑いもせず、呼び出しに応じた。
そして、あっさりとレンコの手の中に堕ちた。
……演技だったようだが。
それから、思惑通り、アナスタシアは孤立していった。
シュラルドルフからレンコに対する態度を嗜められた。
ゼニファーには嫌がらせの主犯だと疑われた。
シルフィトには監禁された。
専属執事のミステールには裏切られた。
最後に、アデヤには、学園パーティーという華々しい舞台で、婚約破棄を言い渡された。
──ついに、このときが来た。
絶望の最中、自分だけがアナスタシアに手を差し伸べる。
彼女を助け出す準備は当の昔に出来ている。
レンコに有利な証言をしたのは、聖国民であり、ラヴィスマンの手下だ。
彼らが一斉に証言を覆せば、アナスタシアの無実が証明される。
アナスタシアは自分のものになる。
──さあ、我を頼れ。
ラヴィスマンが手を差し伸べる前に、アナスタシアは亡くなった。
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